2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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エディットプラン合同会社が主催した「親のためのリベラルアーツ入門」をテーマとしたイベントに、新刊『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』の著者で、探究型学習の第一人者の矢萩邦彦氏が登壇。編集者・松岡正剛氏の弟子でもある矢萩氏が、経験を糧にして自分の人生をレベルアップする人の特徴などを語りました。
矢萩邦彦氏(以下、矢萩):社会がどのように変わっているのかについて、イメージをつかんでいただくために1つ図を作ってきました。
もともとこの社会には、信頼される大企業や終身雇用制、信頼される学校など、そういう確固たるものがあった。
それを身につけるため、あるいはそこに行くために、逆算的に作られたのが従来型の学びです。なので、範囲が決まっていたり、競争原理が働くようになってしまったんですね。自分の主体でいろいろ幅広く学んでいく探究型の学びやリベラルアーツの学びは、この世界観の中ではあんまり意味がないとされていたんですね。
体験ベースだと、「感想も感情の動きもバラバラで変化や成長が見えずらいし、点数をつけにくいですよね」と。しかも、教科書と外れたりもするので、役に立つかどうかよくわからないと評価をされてきたんですよ。
ただ、体験で身につけたものは、けっこう汎用性があったりします。コロナ禍でDXが加速した時に、探究的にやってきた人たちは、けっこう活躍したんですよ。今までのやり方をコロっと変えて、柔軟に移行する人が多かった。逆に、今までと同じやり方しかできない人は、環境が変わった時にものすごく戸惑ったんですね。
そして今、「探究型とかリベラルアーツ的な学びのほうが、これからの世界に、社会に合うんじゃないのか」とみんなが思い始めている。
さらに去年から今年にかけて、生成AIが実用化され始めました。もっと動きます。ガラっと働き方が変わってきます。さらにその先には、量子コンピューターが実用化されたりする未来も待っている。
そうすると、どんどん限定的な未来から逆算された偏差値を高くするための勉強からは遠い学びが必要になってくるんですね。このあたりが今、リベラルアーツ的なものに求められている学びであり、リベラルアーツに注目が集まってる1つの理由なのかなと思います。
というわけで、「親のためのリベラルアーツ入門」。リベラルアーツってものすごく幅広いんですよ。とてもじゃないけど、1時間でしゃべれるような話ではない。そんな壮大なお話をしていきますので、逆に肩の力を抜いて聞いていただければと思います。
まず、Section01として、「そもそもリベラルアーツって何なの?」という話をしていきます。日本においてはずっと、「職業に直接関係ない学び、実用的でないもの(純粋な教養)」「一般教養」「教養的雑学」とか、そんなイメージで軽視される傾向がありました。
ところが、古典の世界とか、あとは西洋ではぜんぜん違う捉え方をされているんですよ。まず古典的なリベラルアーツを紹介させていただくと、「古代ギリシャ・ローマ時代から、肉体労働から解放された自由人のための教養」と考えられてきたのがリベラルアーツです。
どういうことかと言うと、古代ギリシャ・ローマ時代の価値観を現代の日本に当てはめると、自分で仕事だとかやることを決めている人が自由人です。誰かが決めた仕事をやっているのが肉体労働者と考えてください。別にどちらを選んでもいいんですけど、古典的には、自分で仕事を決めたい人が学ぶべきことが、リベラルアーツだと言われていました。
西洋においては、そこから発展して、「専門家である前に優れた人間でなければならない」に変わっていきます。その優れた人間になるための教養が、リベラルアーツです。これが、西洋の捉え方です。
「専門家になる前に優れた人間でなければならない」。孔子も似たようなことを言っていたと思いますけれども、ちょっとこの「優れた人間」について考えてみたいと思います。
ちなみに、(スライドの)左下に本のマークがついているのは、この『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』の中で、関連事項を詳しく扱っていますよ、というご紹介になります。
さて、「優れた人間」とはどういう人のことでしょうか? 頭の中で思い浮かべてください。みなさんが思う「優れた人間」「優れた人」「優れた人物」「優れた人材」。いろいろな意見があると思うんです。
高学歴だったり偏差値が高い人なのか、高収入だったり有名企業に勤める人なのか。あるいは合理的な人とかコミュ力が高い人。あるいは他者のため、社会のために活動する人を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。
じゃあここで、クリティカルに考えてみましょう。本当にそうだろうか? 今みなさんの頭の中に思い浮かんだ優れた人間像は、本当にあなたの答えですか? ここにリベラルアーツの1つの肝があります。
もしかしたら、「周りの人がそういう人間が優れていると思っているのではないかな」と思って、答えを作っていませんでしたか。あるいは、多くの人が「そういう人が優れている」と言っているから、自分も無自覚に無批判にそう思ってしまっていないだろうか。それぞれが思う「優れた人間」は、違う答えでいいはずです。
ちなみに、私は、「幸せに生きることができる人」だと考えています。人として生を受けたのだから、その人生を全うできる能力がある人は「優れた人間」と言えるのではないでしょうか。
高学歴、偏差値が高いことで非常に幸せになれる人は、それでいいと思うんです。合理的なこと、コミュニケーション能力が高いことで、幸せになれるんだったらそれもすばらしい。社会のために活動することで、幸せになれるんだったらそれもすばらしい。とにかくそれぞれの自分軸の中で、自分の価値観の中で幸せになれる。それが大事なのかなと思います。
どんな状況であっても、幸せな選択をするための知識・技術が、リベラルアーツだと言い換えることもできます。自分が幸せな人生を歩むために、人助けをするのが自分の幸せだというなら、人助けをするために何をすればいいのか。何を知っていなければいけないのか。それがリベラルアーツです。
じゃあ「幸せな人」とはいったいどういう人なのか。考えてみてください。あるいは、みなさんが「幸せだな」と思う瞬間はどういう時だろうか。「子どもが幸せになってほしい」と思いますよね。じゃあ、どんな状況を想像していますか。どうなったら子どもは幸せなのか。私たちは幸せなのか。
ルネサンス期の哲学者ピーコ(ピーコ・デッラ・ミランドラ)さんがこんなことを言ってます。「自由に選択できる人間が、最も幸せである」。私は基本的にこの考えに非常に共感しています。選択肢を自分で持っている。そして自分で何をするのかを選んでいる。これは非常に幸せなことだろうな、と。
フランクル(ヴィクトール・フランクル)さんは『夜と霧』で有名です。彼はホロコーストを経験し、アウシュビッツ収容所から生還した心理学者ですけれども、死にゆく人々を毎日見ていたわけですよね。「彼らは絶望しなかった。最後まで自分の生きる意味を探していた。『自分が生きていた意味はありましたよね』と聞いてきた」という話を、フランクルさんは伝えています。
人間が最も求めるのは意味ではないのか。ということは、「意味があるな」と思っている人は幸せなのではないか。物事や人生を主体的に選択できる人。あらゆることに意味を感じ、意味を作り出せる人。こういう人が「幸せな人」だと言うことができるのではないかなと思います。
もうちょっと掘り下げてみましょう。物事や人生を主体的に選択する人は、自己有用感、自己効力感、責任感などを持つので、自分で成長することができます。
私はもう30年近く、毎年受験生に指導をしているんですけれども、自分で受験する学校を選んで決めている場合と、親に言われて「別にこの学校に興味はないけど、親がここに行けって言うから」という子たちもたくさん見てきたわけです。
本人はこの学校に行きたい。でも親はそれに反対している、というパターンもたくさん見てきました。その時にどういう選択をしたらいいんだろうか。みなさん悩まれるんですけれども、リベラルアーツ的な考え方をするならば、主体性が一番大事です。本人が一番大事。
本人が「この学校に行きたい」と言ったら、例え模擬テストの成績が足りていなさそうだろうが、合格しそうだろうが、難しそうだろうが本人が「受けたい、行きたい」という学校を受けさせてあげたほうがいい。例えうまくいかなくても、自分で選んだことは、次の糧になります。
「なんで失敗したんだろうか。ああ、こういうことで失敗したかもしれないな。じゃあ次はがんばろう」と。もし人に言われて受けたんだったら、人のせいにしてしまう可能性がありますよね。受験だけでなく、何事もそうです。「あの人に言われてやったらこんなになってしまった」「あいつのせいだ」とかね。「親に言われてやったから俺のせいじゃない」みたいに考えてしまったりする。
成功とか失敗ではなくて、経験をすべて糧にして、自分の人生のレベルをアップするための、プラスの経験値にしていく。そのためには自分で選ぶ必要があるんですよね。逆にうまくいった時だって同じですよ。言われてやってうまくいったことって、なんだか自分の手柄半分ぐらいな感じがしてしまうんですよね。
自分で選んで自分でがんばって、そしてうまくいったからこそ自己肯定感も上がるし、自己効力感も上がる。なので、主体的に選択をすることは、成長するためにも非常に重要なポイントです。親目線としては、本人が主体的にやりたいと思っていることを、どのようにサポートし、バックアップしていくのか。そこに主眼を置くといいと思います。
もう1つ、あらゆることに意味を感じ、意味を作り出せる人は、経験を価値に転換することができます。そして自分で成長することができます。キャリアコンサルタントの現場で仕事をしていると、「私、人に話せるようなキャリアがないんですよ」という方がいらっしゃいます。
キャリアとは何なのか。別にプロとして仕事をしていたことだけが、キャリアではないはずです。何かに没頭していた。探究していた。ものすごく長くこのスポーツをやっていた。何でもいいんですけど、自分の身体や思想に影響するぐらい、真剣に長期間やっているもの。そういうものは何でもキャリアになる。
でも本人は、趣味とかはキャリアだと思っていないんですよね。「あんなのは好きでやっているだけだから」となってしまう。そこを外側から、親でも先生でも、キャリコンでも誰でもいいんですけど、「こんなに長く登山を続けているのがすばらしいですよ」とか、「そんなに電車が好きだったんですね。それってキャリアとして考えられませんかね」みたいな。
外側から「それは立派なキャリアですよ」「そこまで好きでそこまでやったなら、何かに役に立つ能力が身についているはずですよ」「絶対、転用できる何かを持っているはずですよ」とサポートがきるといいのかなと思います。
関わる側が「そんなこと何の役に立つの?」と思ってしまうと、なかなか本人も「それっていいことなんだ」と思わず、自分が好きなこと、興味を持っていることが、なんだか後ろめたいものみたいになってしまう。
特に子ども時代からそう言われ続けてしまうと、どうしても自分が持っている良さを、外に出せなくなるんですね。「何でも経験になる」と思考が変わってくると、無意味なことはなくなります。無駄なこともなくなります。他者の気づいていない価値を、他者に教えてあげたり付与することもできるようになります。これは非常に「幸せな人」ではないのかなと私は思います。
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