身内の社員の手助けからはじまった「たがいにプロジェクト」

伊藤ようすけ氏(以下、伊藤):最終的にはそのリリマリのメンバーがそれぞれ地域のことをよく知るようになって、何をすればもっと新潟の町が盛り上がるのかっていうことを考えるような集団になっていくってことなの?

今井美穂氏(以下、今井):そうですね。新潟に30市町村あるとして、私リリマリを300人、400人とか大きくしていって、いずれは各市町村ごとに支部をつくりたいんですよね。

本当にローカルなネタを観光ガイド並にしゃべれる女の子たちが増えると、すごくおもしろい絵になると。

例えば新潟で何かイベントをやるっていったときに、「リリマリなら300人の女の子を一気に動かせますよ」っていうぐらい新潟の強いガールズのネットワークができたら、企業さんとすごくメリットのあることができるんじゃないかなとかは描いてるんですけども。

伊藤:なるほど。それとこの、「たがいにプロジェクト」っていうのは「にいがた」の逆だっていう話でしたけど、これは具体的にはどういうことをやってるんですか?

今井:これは、新潟も中越大震災とか災害が多い地域だったんですけども、もともとは全然チャリティー色が強いものではなかったんですね。

3.11のときは何が違ったかというと、したみちオフィスの社員に岩手県大船渡市出身の者がいまして、ニュースよりも早く身内の話を聞いたりとかして。

うちの会社は大きいことはできないんですけども、まずこの社員のためにちょっと手助けしようかっていうことで、震災が起こった1週間ぐらいに私も事務所の車で物資と食料だけ積んで。

まだ高速も全然開通してなかったんですけども、新潟から大船渡まで運転して行ったんですね。

やっぱり気仙沼とかで水浸しになったりとか、そういう地域を通ってきて大船渡に着いたときに、私はもう現地を見て正直何も言えなくなってしまって。

でもあっちの現地のお母さん方は「遠いところからありがとね」って。「私たち頑張るからまた遊びに来てね」ってすごい明るく迎えてくれたのに、私がその感じに応えられないまま帰ってきてしまって……衝撃的過ぎて。

その帰り道に、私が今まで地域のためとか、人をつなぐとか言って活動してきたタイミングで、この出会いとかこの現場を見たって何かあるんじゃないかと思いまして。

そのときにに思ったのが、この「たがいに」っていう言葉だったんですよね。今までも「たがいに」っていうワードは新潟でも出てたんですけども、あんまりフィーチャーされていなくて。

すごいわかりやすくていい言葉だから、これをもっと発信してったらおもしろいんじゃないかなっていうことで、「たがいにプロジェクト」って名づけて、私たちにできる支援をやってこうっていう形で始めて。

大々的に募金活動とかいうよりも、やっぱり地域活性化っていう面も忘れずに永続的に何か支援につながるような形がいいなと思ったので。

今やってるのが、復興支援自動販売機を設置したりとか。今新潟県で40台。県外にもちょっとあるんですけども、ちりも積もれば山となるみたいな。

それを集めて私がまた今度は石巻に届けに行って。その現地でまた出会った人にただ募金をお渡ししてじゃなくて、「じゃあ、このお金を使ってこういうことを一緒にやったらおもしろいんじゃないですか」って。そしたら新潟とそこの地域のつながりもできて。

そういうちょっとプラスになるような支援活動をやっていきたいなというので、始めている感じですね。

春は気仙沼で新潟のコシヒカリの炊き出しとかも行ったりとかして。結構いろいろやらせてもらってます。

女の子の起業家をどんどん出していきたい

伊藤:したみちオフィス自体はもともとあった占いの事業とか飲食の事業とか芸能事業。芸能事業っていっても、芸能とはちょっと違うよね。

「どうやったら新潟が元気になるのか」をそれぞれ考えていこうということだから、タレントさんとはちょっと違うんだよね?

今井:最初、タレントさんになってみたいっていう子に向けて、ウォーキングレッスンとか、プロの講師を呼ぶっていうのもできなかったので。

まず私とか今の部長クラスが自主練習して、東京で学んできたことを生かしながら、自分たちで教える教室をつくったりして今回ってる感じです。

でもやっぱり、いずれはここから女の子の起業家をどんどん出していきたいんですよね。若いうちにいろんな企業の方と出会ったりとか、人と出会ってこういう経験をすると将来の選択肢が広がるかなと思っていて。

その中で自分のやりたかったことを、本当に雇われじゃなくてやれる女の子が増えていったら、少なくとも新潟で女性起業家が増えてきて、元気な絵がまたできるっていうのを実は描いています。

伊藤:なるほど。そんな将来の展望もありつつ、この支援事業っていうのはビジネスとはちょっと違うんだろうけど、占いとか飲食とか芸能をやりながら、最終的にはこのしたみちオフィスをどういう会社にしていきたいの?

今井:今はバラバラなように見えて4業態だとして、今後はもっと増えてくると思っているんですね。っていうのもうちの会社、ちょっと変わっているのがいいとこなんですよね。

「地域と人をつなげて元気にしていく」っていうコンセプトであれば、新しく私たちにひかれて入ってきた社員がこういうことをやりたいっていうようであれば、社員が一丸となって、そういう事業つくってみようかっていうことができるので。

これからの可能性は本当に出会う人、社員によって変わってくる、何かアメーバみたいな会社であり続けたいなとは思います。

私が代表になってすごく思うのが、「地域活性化」って言ってしまえばきれいごとに聞こえちゃう部分も多いんですけど。

やっぱり起業家として考えたときに、私はお金も稼いで地域に還元していくことが大事だなと思ってるので、やっぱりビジネスとしての立ち位置をしっかりさせていきたいと考えてはいますけど。

青年農業士の会から受けた影響

伊藤:一番ビジネスとして伸びそうだなって考えてることって何なんですか?

今井:私が今取り組んでいるのが農業なんですね。私も実家が兼業農家だったので、当たり前のように自分の家で穫れたお米とお野菜を食べて育っていたんですけども。それが当たり前においしかったので、そこまで感謝の気持ちがなかったんですよ。

それがなぜ農業かっていうと、3年前に私がこういう活動を始めて今ありがたくも講演会として呼んでいただくことが増えてきたときに、新潟県の青年農業士さんの会に呼ばれたんですね。

そのときにびっくりしたのが、正直農業はおじいちゃん、おばあちゃんのイメージしかなかったんですけども、青年農業士っていうだけあって30代前半とかみなさん若い方がめちゃくちゃ熱く、うちはこういうアスパラつくってるんだよねとか、豚つくってんだよね、おいしいから食べに来てねとか。

泥作業をするのに真っ白いハットと真っ白いつなぎを着て「かっこいいしょ」みたいなことを言ってる方とかがいて。

「農業盛り上げてかないとやばいから、地元の飲食店と組んでこういうことやってんだよね」とかそこまで考えてる方々と出会ったときに。

今まで当たりまえに食べていたけども、そういう人たちは熱い思いを受けて育ったものだからおいしいんだなっていうのを実感したんですよね。

そのときに、地域活性化モデルとして私なりに関わりたいなと思って、当時は本業があったので、すぐ土に触れるっていうことができないなと思ったので。

よくあるんですよね。イメージアップのために見た目からかわいい農作業着をつくってみようかなと。一時は野ギャルさんとかいらっしゃいましたけども。新潟産のかわいい農作業着を作ってみたらおもしろいんじゃないかなっていうことで。

私の頭の中だけだったんですけども、さっそくつながりのあった農業女子に連絡を取って、「ちょっと私考えてることがあるんだけど、聞いてくれないかな」って言ってその話をしたときに、

「実は私たちもつくりたいと思っていて、もうアンケートまでとっていたんですよ」って。「こういうのがあったらいいな」「でも私たちじゃ作れない」と思っていたところに、そういう話ですかってなって。

地元の縫製工場さんを知っていたので、ここつないだら3社でできちゃうかもねってことで始まって、去年完成させたものがありまして、今売ってるんですけど。

地元さんでつくったので値段がちょっと高くなってしまったんですけども、やっぱり細かいアイデアで首元を日焼けしたくないから襟は立てたいとか、しゃがむと土が入っちゃうからポッケは絶対ファスナーがいいとか、

そこに縫製工場さんのアイデアが入って、トップスの後ろにスリットを何センチ入れると3キロ痩せて見えるよとか、そういうのが合わさって1個完成させて。

私にできることはPRなので、それを着てパンフレットをつくってみようかとか言って、まずは公にいっぱい売るというよりも本当に現場に立っているチームの女の子たちが着て。

伊藤:要は、農業に従事してる若い女の子たちに着てもらおうと。

今井:はい。実は去年つくって3年目の今年、やっぱり現場の方の声をもっとリアルに知りたいと思ったので、私は今年、コシヒカリづくりを始めたんですね。

田植えと稲刈りだけして「経験した」っていうのがすごく嫌だったので、今回は新潟県の田上町っていうところの農家さんにご協力してもらって本当に小っちゃい種もみから苗にするまでからも見学に行って勉強して。地域のおじいちゃん、おばあちゃんと苗運んだりとか。ちょうど5月末に田植えをしてきて。

ただコシヒカリをつくるっていうのも何かユニークじゃないので、何か地域性ないかなって考えたときに、田上町っていうのは青々とした竹が有名で。それを使った竹パウダーっていう肥料があると。それをまいてみよう。

伊藤:竹パウダー。

今井:ちょっと特殊な肥料で、確かに割高なんですけど。農家さんもすごい協力してくれてそれをまいてこういうのをやりますって言って。また安易なんですけど、プロジェクト名を「いまい米おむすびプロジェクト」とか名づけて(笑)。

やり始めたらそういう活動を見て、地域の方々がどんどん集まってきてくれるようになりまして、地元の旅館の若女将さんとかが「一緒に田植えするよ」とか、「収穫になったらうちの旅館で取り扱うからね」とか言ってくださったりとか。

やっぱり私の活動は全部その思いが派生していって、みなさんに助けてもらってる感じですね。

子ども世代に農業を伝えていきたい

伊藤:じゃあその農業っていうのも、したみちオフィス株式会社の事業の柱になっていったりするの?

今井:そうですね。やっぱり生産者さんと消費者をつなげるようなまた新しい形をやっていけたらいいなとは思っていて。

まだ確固たるビジネスのイメージはできてないんですけど、今実は新潟県の元気大使とか健康大使っていうのをいただいていて。

そういうものもこういう農業とか食とかってつながるし。これからの新潟を背負う小っちゃい子たちに伝えていきたいので。絶対農業っていう分野はこれから活きてくるなと思うので、力を入れたいなと思っている感じですね。

伊藤:はい。そういうことでもうちょっとぼちぼち時間がなくなってきたんでございますがFacebookは……いわゆる個人のFacebookページになってるんでしたっけ?

今井:はい、そうです。

伊藤:ということはこれ、友達にならないと見られないの?

今井:一応オープンにしてあるので、「今井美穂」で検索していただくと出てきます。

伊藤:何かもう友達5000人以上いて。新潟を元気にしようということで頑張ってる活動なんかをご覧になっていただけるかと思いますんで、ぜひそちらのほう見ていただければと思います。本当に今日は長い間ありがとうございました。

今井:ありがとうございました。