水着に着替えるときには、変身ポーズ

稲田豊史氏(以下、稲田):九州ではどういった状況でしたか? 九州地方のセーラームーン事情は。

いけちゃん氏(以下、いけちゃん):変身シーンはずっと覚えてます。それこそシリーズが進むにつれて、変身シーンが変わっていくことが楽しみでもあったし。でもエロい感は持ってたと思うんですよね。自分が水着に着替える時に、あのポーズ(体を反る)をこうやってやって。

TANAKA氏(以下、TANAKA):かわいい(笑)。

稲田:九州進んでますね(笑)。

いけちゃん:普通に遊ぶ時には、そこまでは変身ができる感じじゃないんですよ。水着に、裸に近くなる時に、シュッてしたらふわって。

稲田:影響を与えてますね。

TANAKA:それをみんなでやってたんですか?

いけちゃん:スイミングスクールに行ってるときは、女子更衣室でみんなしてました。

稲田:1年目の変身ですよね。そうなるやつは。これは無印なんです。

はな氏(以下、はな):すごい覚えてる(笑)。

いけちゃん:一番最初なんで、それこそ保育園にあがる前とか。それは水着のときにしかできないっていうのは、「裸に近い格好」っていうのを思っていたと思うし。

稲田:着替えることを意味するものとしては一緒ですよね。

いけちゃん:1回裸になって、裸に近いものに着替える(笑)。

TANAKA:水着っていうところがポイントですよね。パジャマだと、パンツをはいてパジャマに着替えるじゃないですか。でも水着は1回全裸になって、着替えなくちゃいけない。

いけちゃん:そう。だから変身の意味が、子供ながらにわかってた。1回脱いで、もう1回綺麗になる。

セーラー戦士の体型への憧れ

稲田:コスチュームの構造が、スクール水着的な、白いの(ボディスーツ)の上にスカートが生えてる感じですよね。だから変身シーンを見ると、スカートと上の服があるんじゃなくて、水着の上に何かがくっついてるっていう状態。

あずきバー氏(以下、あずきバー):そうでしたね。

稲田:そこですよ。だからセパレートタイプの服じゃないんですよね。

いけちゃん:上と下じゃない。

あずきバー:だから、これ(TANAKAのコスプレを指して)正しいんですよね?

いけちゃん:この白いのが水着だったら、正しいんだと思います。

稲田:だいぶ見せちゃってますね(笑)。だから水着にスカートのひだが生えてる感じなんですよ。

あずきバー:ひらひらって出てきましたよね。

稲田:あれが綺麗なんですよね。

TANAKA:じゃあこれは結構正しい感じで……。

稲田:もう大丈夫です。

(一同笑)

いけちゃん:シルエットになるところの、胸がツンと上を向いて、キュッて絞れてて、お尻がプリッとしてるのは、小学生低学年くらいだと憧れがあったと思いますね。いつかこのペッタンコがこうなるんだろうなとか。

稲田:それは皆さん、結構おっしゃりますね。

いけちゃん:おしりがプリってなって細くてっていう大人になるんだっていうのは、漠然とあったと思います。

稲田:こないだ対談した女性も同じように言ってて、「私は背もちっちゃいし、胸もペッタンコだけど、いつかああなるんだ」って。でも13歳になっても14歳になっても一向にそうならなくて、「あー……」ってなったって。

学校がブレザーでショックだった

おもち氏(以下、おもち):体型のこともそうなんですけど、小学生だったので中学校に対する憧れも、セーラームーンから感じてて。

稲田:学園生活というか。

おもち:そうですね。学園生活もそうですし、あと制服に対しても、私の進学した学校がブレザーで。すごいショック受けて。

稲田:セーラー服っていうものに対する。そうなんだ。

おもち:そうですね。

いけちゃん:私セーラー服だったんで、すごくうれしかったです。めちゃくちゃ短くして、本当にヒザ丈くらいにして、セーラームーンとかしてました。

稲田:コギャル的な文脈じゃなくて、セーラームーンにしてたってことですか?

いけちゃん:そうです。「セーラー服だね」みたいな感じで、みんな短くして。あれはすごくうれしかったですね。

稲田:(セーラーチームの)5人は学校が違う(3つの中学にまだかっている)から、制服が違うんですよね。まこちゃんは前の学校の制服を着てるし、レイちゃんは私立でしょ。美奈子ちゃんは別の学校ですからね。あれもなかなか斬新というか。制服で並ぶとみんな違うっていうのは、すごかったですよね。

はな:個性が出ててよかった。

おもち:確かに。

稲田:制服話になっちゃいましたね(笑)。

(一同笑)

おもち:(私の学生時代のセーラー服の)「紐」のリボンはショックでした。大っきいリボンに憧れていたので。

稲田:あんな大きいリボンって実際あるんですかね?

おもち:どうなんでしょう。コスプレチックに見えちゃいますよね。

コスプレのお店が流行ったのはセーラームーン以降?

稲田:またちょっとおじさん目線というか、ゲスい話をすると、あれだけ社会的に流行ったから、(セーラームーンをモチーフにした)よくないビデオとか、よくないお店がいっぱいあったんですよね。

TANAKA:セーラームーン的な。

稲田:そうそう。だから、そういう服を着ている女の人達がいるお店。

一同:へー。

稲田:よろしくないお店とか、よろしくないビデオとか、山ほど出ておりまして。

いけちゃん:性的な対象にはならなかった?

稲田:僕はそうですね。そもそも「珍品アニメが始まった」と思って見ていた人間ですから、逆にそういうのがあらわれたら、本当に性の道具になってると(驚いたんです)。おもしろいと思って、おもしろいってつまり「ファニー」ってことですけど、滑稽な感じが入っているものを性の対象の商品になると、結びつかないというか。

でもそれはアニメを見ていたからであって、見ていない当時のおじさんからすれば、流行ってるものがそういうふうになっているというのは、ただ楽しいっていうか。それは、その後の時代にもあって。

すごく流行った美少女アニメがあったら、それのコスプレをしている女の子がいる店というのが、ここ15年から20年、存在し続けているわけで。だからそれの走りでもあったのかもしれないですけどね。「おじさんでもわかる、流行ってる美少女」みたいな。

あずきバー:むしろもっと前の世代で、「サリーちゃんのお店」とかそういうのは?

稲田:聞かないですね。つまり、なかった。聞いたことないですよね?

いけちゃん:サリーちゃんこそ性的対象には全くならない。

稲田:なってても別に不思議はないと思うんですよ。セーラームーンと一緒だし、そういうお店は昔からあったし。だけどやっぱりセーラームーン以降って気がするんですよ。その後、セーラームーンの後に『新世紀エヴァンゲリオン』があったわけですけど。あれは結構そういう物の対象になってたんですけど。

そういうのはちゃんと研究してないですけど、日本風俗史なんかを研究すると、(風俗店における)アニメコスプレみたいなものの始まりは、この辺にあるのかもしれませんね。

おもち:なるほど。

TANAKA:マネしやすいっていうのもありますよね。

稲田:出来が悪いコスプレでもわかるじゃないですか。特徴的だから。制服でヒーロー、ヒロインってあまりなかったので。今でも流行ってるアニメっていっぱいあるじゃないですか、『ラブライブ!』とかでもいいんですけど。

あれは、普通のAKB的な格好をしている女の子だから、それをマネをしたところで、そのアニメをじっくり見ている人じゃない限り、誰かはわかんないけど、セーラームーンって一発でわかるから。

アニメを200話見るのが大変だった

TANAKA:各自、座談会の感想という形で、感想をうかがえたらと思いますが。では、おもちさんから。

おもち:すごい楽しいひとときを、ありがとうございます。それぞれ好きなセーラー戦士も違って、聞いているとそれぞれいろんな意見があって、おもしろいな。同じ作品に影響受けているはずなんですけど、全然見方が違ってて、おもしろいと思いました。

稲田:みんな色分けされてましたね。

おもち:そうですよね。改めてセーラームーンをまた見直したいなと思って。

稲田:見直すといいですよ。結構楽しめますよ。

おもち:本当ですか?

稲田:200話見るの、すごいつらかったですけど。

(一同笑)

おもち:そうですよね。200話もあるんですね。

稲田:ぜひぜひ。

おもち:はい。本日はありがとうございます。

稲田:ありがとうございました。

TANAKA:はなさん、いかがでしたでしょうか?

おばあちゃんになってもグッズを集めたい!

はな:貴重な男性の意見を聞くことができて、すごく楽しかったです。小さい頃の思い出を、改めて、いろいろ思い出して。私は今でもセーラームーンが好きだし、これからの人生でも私からは切り離せない存在だと思っているので、おばあちゃんになってもきっと好きだと思います。

稲田:素敵ですね。おばあちゃんになってもグッズ集めてる。

はな:集めてると思います(笑)。

稲田:「おばあちゃんの大事なものだから、さわんないで!」って家族に言ったりなんかして。

(一同笑)

はな:そうですね(笑)。貴重な場をもうけていただいて、ありがとうございました。

あずきバー:私もとっても楽しかったです。親しい友達も、「好きだろうなセーラームーン、好きだったろうな」と思っても話すことなんてないから、こうやって初めてお会いした皆さんと稲田さんと、お話できてすごくおもしろかったです。ありがとうございました。

いけちゃん:セーラームーンのことを久しぶりに、どっぷり話したなっていうのはもちろんあるんですけど、本を読んだ時には、高校生の時にセーラームーンを見てたアラフォーの男の人……? ちょっとご本人の前で言うのも、面と向かって喋るのとか、ちょっとキモっ……(笑)。

(一同笑)

あずきバー:気持ち悪いかもしれないなって思ってたんですけど(笑)

稲田:まあ気持ち悪いですけどね(笑)。

「公開処刑」かと思いきや?

いけちゃん:実際にお話してみて、誤解も解けたというか。

稲田:誤解があった(笑)。

いけちゃん:私達の大好きなセーラームーンを、性的対象として見ていたわけではないという誤解もとけたし、すごく分析をして文章にあらわしてくださって、私たちが漠然と考えていたことを文章にあらわすのが上手な方だなって。という安心できる場で。

稲田:今日はよく眠れます。

(一同笑)

いけちゃん:ありがとうございました(笑)。

TANAKA:最後に、稲田先生いかがでしたでしょうか。

稲田:本当に皆さん優しくてよかったです。この企画を担当編集の方から聞いた時に、「あー、公開処刑なんだな。でも書いちゃったからしょうがないよな」と思って、ドキドキしながら挑んだんですけど、皆さんお優しくて、さすがセーラームーン世代だと。

(一同笑)

素晴らしいな、ということで。あとは「SPEED関係者の方、すいません」っていうぐらいですかね。すごく楽しかったです。全然まだまだ、もし各話リストとかがあったら「この話よかったよね」で1個15分ずつ、喋れる感じがするんですけど、今日はこれくらいで。どうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

TANAKA:『セーラームーン世代の社会論』全国書店で大好評発売中ですので、よろしかったらぜひお手に取ってみてください。ありがとうございました。

セーラームーン世代の社会論