「佐野氏本人が会見に出席しない理由は?」記者からの質問に回答

2015年9月1日 東京オリンピック組織委員会記者会見 #3/4

「東京2020エンブレム取り下げ問題」では、デザイン業界の常識と一般常識の“ズレ”が議論の焦点になりました。一連の問題がここまで大きくなってしまった原因はどこにあるのか。エンブレム取り下げを申し出た佐野氏の様子や、会見に本人が出席しない理由など、記者からの質問に事務局長・武藤敏郎氏が回答しました。

デザインの専門家の意見を今後も尊重していくのか?

記者:NHKのコセと申します。何点かあるんですけど。

今のエンブレムが撤回されたことで、組織委員会としてグッズなどの発注をかけているものに影響するものがあるとしたら、その状況を教えていただきたいのと。

あとは、今までお話を伺ってると、土日で状況が変わったと。この間、直近のポスターの「T」は素人が見てもちょっと似てるという印象を持ったと。リエージュのは似てないとおっしゃるのはずっとわかるんですけど。

それでいてデザインの専門家の意見は今後も尊重したいっておっしゃってると思うんですけど、そこがちょっと論理的におかしいんじゃないかなと思って。

守るのであれば、ドットだろうと日の丸だろうと、違うものは違うってお考えだったら、このまま貫き通せばいいという意見もあると思うんですけれど、そこの最大の違いがちょっとよくわかんないんですけど。

武藤:永井先生も、「専門家から見るとそういうことだけれども、この場合には一般の国民の納得を得るのは難しいでしょう」というふうにおっしゃったと。そこが最大のポイントでございます。

もちろん、「これを使い続けたらいいじゃないか」と。「専門家がそう言ってるんなら使い続けたらいいじゃないか」ということも、私は理屈の上ではよくわかります。

しかしこれを続けていくと、おそらくいろんな批判が続いて。本当に原作者自身も、もうご本人が「誹謗中傷」と言われたわけだけれども、大変大きな批判の中で心身ともに問題だと自分でも感じているという中から、取り下げるということをご本人がおっしゃったんですね。

そうだとすればそれを尊重するというのが我々の正しい選択であろうと。こういうことであります。

ご本人が「本当にこれは自信あるから続けてくれ」と言ったときに、我々としても「本当にこれ大丈夫ですか?」と思っておりましたけれども。

永井さんもご本人も我々と同じように、これを使い続けることはやっぱり一般国民の理解を得られないだろうというふうにご判断なさった。それが非常に大きな理由でございます。

それから、いろんな形で発注かけてるとこってのはあると思います。それが一体どの程度のものであるのかっていうのは、まだ我々把握しておりません。

修復可能なものなのかどうか把握しておりませんので、先ほど申し上げたとおり、なぜ我々がこういう判断をしたかという状況を説明した上で、ご理解を得たいと申し上げているわけであります。

一連のお粗末な対応で、オリンピックを運営できるのか

記者:日刊ゲンダイのイマイズミと申します。よろしくお願いします。

要するに、一連のプロセスを見ていますと、武藤さんの会見のお話から、土日に新たな局面が生じたと。新たな危機が生じたというふうに何度も繰り返してますけれども。

結局、金曜日のあの原案公表の会見によって、新たな危機を生む材料を世間に提供したんではないかなと。

その会見というのは、なぜ開かなけれぱいけなかったかといえば、ずっとこの1ヵ月間、ベルギー(のリエージュ劇場のロゴ)と酷似しているあのマークを結局使い続けると。訴訟の問題も生じました。

そのため、「酷似していない」ということを主張しなければならなくなりました。それでああいった会見を開いて、しかも新たな(危機を生む)材料を提供するに至った。あまりにも組織委員会として対応がお粗末過ぎせんか?

果たしてこの5年後、あれだけの国際的なイベントを開かなければいけないんですけれども、あなた方に任せていいのかっていうのが、おそらく国民の正直な意見なんじゃないでしょうか。その点についてどうお考えですか?

武藤:リエージュのロゴに似てるかどうかってことについては、我々は自信を持って似てないということを申し上げております。

その理由を早く明らかにしたほうがいいということについては、我々はずっと思っておりましたけれども、訴訟になっているということから訴訟の手続き上、訴訟の弁論が行われる前に何かいろんなものを出していくのは控えたほうがいいのではないかという、訴訟を実際に対応しておる法律家からのご忠告もありました。

しかし、そういう事態の中で、佐野さんの当選した当初案のものを示す時間が経ったのは確かでありますけれども、一方でそういう事情があったっていうことは、客観的な事実であります。

そこで、しかし日本の中で「リエージュ」に似てるということを強く言う人たちもいるのも事実でありました。これはもうみなさん方ご承知のとおりであります。

そこで、それがコンセプトとして全く違ったものであるということを言うことは、対応としては必要であろうという判断をいたしました。

その結果、原案にまた似たものが出てきたと。これは私どもはむしろやって良かったと思っております。あれがやらなかったらどういうことになったんだろうかと。

ずっとしばらく経ってから、「またこんなことがあった」「あんなことがあった」というように物事を引きずるよりは、やはり公開したほうが良かったと思っております。

「公開がもっと早くできなかったのか」というご批判は、私は甘んじて受けますが、しかしそれには訴訟、戦略上の問題があったということをご理解いただきたい。

結果においては誠に残念なことになりました。その意味では我々も大変申しわけなく思っております。国民のみなさまにもそういう意味でご迷惑をかけたと思いますけれども、

これを1つのけじめとして、新たなエンブレムの作成に全力投球していくというのが現時点における最も望ましい対応ではないかと思っております。

展開例の流用は佐野氏本人も認めている

記者:共同通信のハセガワと申します。

まずちょっと確認なんですが。展開例の「羽田空港と渋谷駅前に展開されているような画像を流用されてる」というような指摘がなされたとおっしゃっていたんですが、これは佐野さん自身が「流用した」と認めているのか。その理由については何と言ってるのかということをお聞きした上で。

「国民の理解を得られなくなった」というお話があったと思うんですが、その国民の理解を得られなくなった理由に、ベルギーとの訴訟うんぬんは別として、サントリーの商品の模倣を佐野さん自身が認めたり、

今回の展開例の件でも、他の人のサイトを流用したというような、デザイナーとしての姿勢に対して疑惑の目というか、疑念の目が持たれたというのが1つ大きな要因ではないかと思うんですが、この点についてはどういうふうに受け止められてますでしょうか?

武藤:まず展開例の流用は、佐野さんは認めておられて、それの原作者にすでにアプローチをしたということであります。

当初、この展開例を示したのは、審査委員会の場でありました。審査委員会の人たちによると、そういうクローズドな場ではよくある話で、そのこと自身は別に問題ではないと。

しかし、それを一般に公表するということになると、その権利者の了解なり経済的な対応をするべきものであるということであります。それを怠ったというのは佐野さんも、自分としてはミスだったということを認めております。

組織委員会が7月24日にそれを使ったわけですので、我々ももうちょっと、「これは本当に権利処理がなされていますか?」ということを聞くべきであったのではないかと言われれば、それはそういう面では我々にもミスがあったかもしれません。

しかし、そのミスコミュニケーションで、7月24日にそういうことになると、8月28日の段階ではもういったん公表されたものですから、あまり疑念なくそれを使ったというのが経緯であります。流用を本人も認めているということであります。

サントリーについては、これは私どもが関知するものではありません。組織委員会のロゴと何の関係もないことであります。加えて、佐野さんはご承知のように説明をされて、我々はそれを聞いたということであります。

29日から30日にかけてのその問題は、いずれも我々のエンブレムに関する問題であります。確かに日曜日の原案というものが一番大きな影響を与えましたけれども、土曜日の展開例についてもきちっと処理がされてないということは、

これはやはり適切なことではなかったと思っておりますので、この2つともに我々が事態を深刻に受け止めた理由であると思います。

国民の理解が得られなかった一番の原因は?

記者:朝日新聞のウシオと申します。

ここまで事態が混乱したことと国民の理解が得られなかったのは、一番何が原因だと思っていらっしゃいますでしょうか?

武藤:まず当初は、私は話していけばわかると。なぜなら今ご説明していたような、オリジナリティがあるということだからであります。

訴訟手続き上の訴訟になったので、訴訟の結論を言うことはできないんですけども、その上であえて申し上げれば、我々はちゃんと説明ができると思いましたし、我々ばかりじゃなくて、IOCとともに連携を密にした上でそういうことを申し上げているわけであります。

ですから、まさにこの土日のことがやっぱり最大の問題であったというふうに私は思っております。

国際的信用の失墜についてはどう考えるか

記者:読売新聞のキラと申します。

いろいろと状況を説明されたんですけれども。今回、一体誰に責任があって、その責任を一体どういう形でとっていくのでしょうか? 

それともう1つ、それだけ国際的に信用失墜させていると。この件についてどのようにお考えでしょうか?

武藤:この問題は、関係者三者三様にそれぞれ責任があると思いますけれども、我々は事態の状況を見極めた上できちっと対処して、新しいものをつくっていくということが我々の責任であるというふうに思っております。

佐野さんご自身は「盗作したことはない」「模倣したことはない」という具合に明言されておりますので、私はそれはそれで、デザイナーとしての立場を理解いたしますけれども、

その上で、取り下げるという決断をされたということをもって、佐野さんは佐野さんとして責任を果たされたのではないかと思います。

審査委員会は、佐野さんのエンブレムを一番優れたものとして推奨していただいたわけですけれども、最終的にはそれを取り下げるということはやむを得ないと。

そのデザインとしての問題に加えて、やはりオリンピックエンブレムが国民に愛されたものでなけりゃならないっていうことは理解いたしますという形で決断をいただいたということではないかと思います。

国際的信用失墜したというのは、これはもちろんこの問題が国際的にある程度影響していると思いますけれども、

これを長く続けていくことのほうが、私どもはもはや適切でないと、国際的信用を失墜してしまうので、むしろ新たなものをつくってそういう決断をしていくということによってご理解を得ていきたいと。

IOCもそれはサポートしてくれるということでございますので、そういう形で我々の信用を確立していきたいと思っております。

エンブレム取り下げを申し出た際の佐野氏の様子

記者:TBSテレビのコバヤシと申します。

確認なんですけれども、佐野さんが自分のほうから取り下げたいとおっしゃったという説明がありましたけれども、そのときの佐野さんの具体的なご様子、例えば疲れ切った様子だったのか、何か怒っているような様子なのか、具体的なご様子がわかればと思います。

武藤:怒っているといったようなことは全くありませんでした。冷静な意見交換ができたと思います。

佐野さんが一番訴えたいと思ったのは、「これが模倣であるから取り下げるということでは、自分は納得できません」ということを強く言われました。私はデザイナーとしては当然そうだろうと思います。

しかし、自分がオリンピックに関わるというのは昔からの夢であった、憧れであったと。それでやっと関われたと。これは当選したときにもそうおっしゃってましたけども。

それが自分のロゴによって、国民からサポートされるべきオリンピックのロゴにかくも批判が出てきたということは、むしろ取り下げてオリンピックを成功させてほしいという気持ちのほうが強くなっていますということをおっしゃいました。

佐野さん個人の様子っていう、外見的な様子は何ら普段と同じでありますけども、その思いは非常に印象深く私は思いました。お答えになるかどうかあれですけども、そういうことであります。

佐野氏本人が会見に出席しない理由は?

記者:ニコニコ動画のナナオと申します。当初の受賞会見から、「佐野さんは『コンセプトがオリジナルだ』っていうことを強調されておりました」とおっしゃっていますけれども、そもそも劇場と五輪とでは目的が違う時点でコンセプトが違うのは当たりまえだと思います。

商標登録については、その作品がオリジナルかどうか、他に形状などが似ているものがないかが問われるんであって、そもそもコンセプトについては、メインとしては審査の対象にならないのではないかという声があります。

国際商標登録の際には、コンセプトを審査する項目があるのかっていう点と、その辺りも含めて、佐野さんご自身が直接国民にお答えするべきだという声があるんですが、

今回佐野さんが会見に出席されないのは、ご本人の意向よるものなのか、それとも組織委員会のお考えによるものなのか、はたまた組織委員会として佐野さんの会見の場を設けるのか、お願いします。

武藤:取り下げたということは、組織委員会が取り下げると、結果的にはそういうことであります。佐野さんの考え方は私が説明いたしました。したがってこの席に佐野さんがいなきゃならないっていうふうには私どもは判断しませんでした。

佐野さんがまたどういうふうに対応されるか、これは佐野さんのご判断だろうと思います。

それからコンセプトの話は、私は専門家でないので、今ご指摘のあったことに対してお答えするだけの詳しい知識がありませんけれども、永井さんによると、実はこういうものに対しての考え方はここ何年かの間にずっと違ってきたということなんですね。

もういろんなアイデアが次々と出てきて、コンセプトのこういうエンブレムにはもう類似品がたくさん出てきてるわけなんですね。

その類似品が似ているからといってアウトということが、デザイナーの創作性というものを育てるんだろうかと。

「結果的に似てしまったからあなたは責任を取れ」っていうのは、デザイナーを育てないのではないかということから、コンセプトを重要視するようになったそうです。

結果的によく似てても、全くコンセプトが違うということをもって、それは違うと説明されるものがたくさんあると伺っております。

今回の問題の責任はどこにあるのか?

記者:TBSテレビのハスミと申します。よろしくお願いします。

一生懸命説明をされている姿は印象としてあるんですけれども、どなたが、あるいはどういったセクションで、今回問題が生じたのか、そして責任の所在があるのかが、いまいちよくわからないところがあるんですね。

なぜこのような質問をするかといいますと、ネット情報社会、インターネットの社会の中で、今後こういった事例はありうると思うんですが、国民の理解も得ながら、あるいはデザイナーとしての意向や尊重、そういったものも汲みながら1つに選定するというのはなかなか難しい作業だと思うんですが。

この審査委員会が難しい判断なのか、それとも理解しようとできなかった人たちのせいなのか、それともそれをうまく取りまとめられなかった組織委員会なのか、あるいはもともとデザインを提供した佐野氏、原作者の問題なのか。

これはどのように振り返って、そして今後どのように生かしていきたいと思われてますか?

武藤:今ご指摘のあったような、分解してどこかの一ヵ所に責任があるとかってそういう問題とは私は理解しておりません。

これは大勢の人が関与して、いろんな手続きをとって、私はこの問題をいかに進めるかというのが非常に大事だと思います。

誰か1人がいいから決めたんだというようなことであってはならない。むしろいろんな形で専門家が関与して、みんなが責任を分担してこういう結論を出すと。誰か1人が責任を持って結論を出すということではないだろうと思います。

もちろん組織としては、そのトップの者が責任を持つんだという論理はわかりますけれども、今ご指摘のように、分解してどっかの誰かに責任があるのかという、そういう議論はちょっと私はするべきではないし、またできないだろうと思います。

それからご指摘のように、ネット社会でデザインの独自性というものをどうやってうまく確保していくのかっていうのは難しいのではないかっていうのは、全くそのとおりだと思います。私もとても難しいと思います。

これをまた次回やったときに、同じ問題が起こる可能性はおっしゃるとおりあると思います。それをどうしたらいいのかと。これは我々も考えたいと思いますけれども、

いろんな方々のお知恵も拝借しながら、今までは例えば1964年の当時は、こんな状況はありませんでしたので、もうちょっと伝統的なやり方で良かったんでしょうけどれども。

今日のネット社会においては今までの伝統的な専門家が集まって決めればいいといったようなことでは必ずしもないと考えるべきなのかもしれません。

ご指摘のことはよくわかりますので、その点をどうしたらいいか我々は考えていきたいというふうに思っております。

<h2>エンブレム取り下げは佐野氏本人によるものなのか

記者:朝日新聞のマルヤマといいます。今日の話し合いの中で、佐野さんが自ら取り下げたという話というふうに受け取ってるんですけれども、原作者だから取り下げるうんぬんっていうご説明もされました。

これは佐野さんが本当にご自身で「取り下げます」とおっしゃったのか、それとも周りの方から、同席した方から取り下げられますよというふうに水を向けられたのか、どういう話し合いだったのかもう少し具体的に教えていただけますでしょうか?

武藤:結論は、佐野さんが自ら取り下げるというふうにおっしゃいました。そのときになぜ取り下げるのかということについて、「模倣だから取り下げるというふうに自分は全く考えていないので、その点をはっきりしてほしい」と。

しかし先ほどから申し上げているような一般国民、世論のサポートを得られない状況から取り下げたほうがいいと自分は判断しましたとそういうことであります。

記者:じゃあもう、最初からそのことをおっしゃってたんですか?

武藤:その判断を我々はどうすべきかという議論をしてますので、「それぞれ考えていることは何か」っていうことはわかると思いますので、その話を前提に三者で取り下げが適当という結論になったと。

最終的にはそういう形でございますけども、最初に取り下げという言葉をお話になったのは佐野さんであるということであります。

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