Facebookは我々を支配しているわけではない

We are all cyborgs now #1/2

「私たちは皆サイボーグである」こう語るのはサイボーグ人類学を研究しているアンバー・ケース氏です。彼女は昔からのサイボーグの定義である「新しい環境に順応するために外部から加えられた生物体」ではなく、新しい定義でサイボーグを考えています。現在、私たちは携帯電話を使って遠く離れた人たちとコミュニケーションをとることができ、FacebookやTwitterなどのSNSを使えば自分の分身を生み出せることもできます。これらのようなことは、自分の精神を拡大することに他なりません。それでは、このようなサイボーグ化することには、どのようなメリットがあるのでしょうか? このような時代だからこそ大切なことはどのようなことなのでしょうか? アンバー・ケース氏が語ります(TEDWomen 2010より)。

現代のサイボーグの定義とは

アンバー・ケース氏:実は私たちは皆サイボーグであるという話をしたいと思います。

しかし、皆さんが思っているようなサイボーグではありません。皆さんはロボコップでも、ターミネーターでもありません。

コンピューターの画面を見たり、携帯電話を使う度に、皆さんはサイボーグになるのです。では、サイボーグの正しい定義とは何でしょう? 昔からの定義は「新しい環境に順応するために外部から加えられた生物体」というものです。

これは1960年の宇宙旅行についての論文から来ています。なぜなら、よく考えて見れば、宇宙とはかなり難しい場所です。人間が本来いるべき場所ではありません。しかし人間の好奇心は強く、ある時はアルプスに登り、ある時は海の魚になれるように、体に様々な物を付け加えたがるのです。

それでは今までの人類学の概念を見てみましょう。

誰かが外国へ行き、「この国の人々はなんて魅力的なのだろう。彼らの使う道具はなんておもしろいのだろう。彼らの文化はなんて興味深いのだろう」と言い、そして論文を書くのです。するとおそらく何人かの人類学者がそれを読み、我々はそこから異国情緒を感じるのです。何が起こったかというと、我々は突如新種を発見したのです。

サイボーグ人類学者として私はいきなりこう言うでしょう。「わあ! 人類は急に新しい形になったのね。魅力的な文化や、テクノロジーを使って皆がしている興味深い儀式を見てごらんなさい。何かをクリックして、画面を見つめているわ」

今起きている人間のサイボーグ化現象

私が従来の人類学に対比するこのことを研究するのには理由があります。

道具は発明され、その後何千年もの長い間、道具自身の物理的改良がなされてきました。そしてそれは私たちが速く移動したり、物を強く打ったりという身体的能力を超える助けとなりましたが、そこには限界がありました。しかし今日、私たちが見ているものは身体能力の拡張ではなく、精神の拡張なのです。そしてそのおかげで、私たちは速く旅行出来るようになり、今までと違ったコミュニケーションが取れるようになったのです。

そして今もう1つ起こっていることは、私たちが小さなメリー・ポピンズテクノロジーを持ち歩いているということです。欲しい物を何でも入れることができ、重くなることはありません。そして何でも取り出すことが出来るのです。皆さんのコンピューターの中身は実際はどのように見えると思いますか?

もしそれを印刷するとしたら、何千ポンドもの物質を常に持ち歩いているように見えるでしょう。もしある時突然記憶が抜け落ち、その情報を無くしたとしたら、それが何かは分からないけれど、何かが欠けていると感じるのです。とても奇妙な感覚です。

他に起こっていることは、あなたの分身がいるということです。

あなたが好きでも嫌いでも、インターネット上にあなたの存在が現れ始め、あなたがそこにいなくても、人々はあなたの分身とやりとりをしています。ですから、フェイスブックなどのページを開いたままにしておかないよう気をつけなければいけません。真夜中に誰かに書き込まれるのは、家を訪問されるとの同じようなものですからね。

そしていきなり、私たちはこの自分の分身を世話しなければいけなくなりました。実生活と同じように、デジタルの生活でも自分を良く見せなければいけません。朝起きて、シャワーを浴び、着替えるのと同じように、あなたのデジタルな分身のためにそれをすることも覚えなければいけないのです。

そこで問題なのは最近では多くの人が、特に青春期の人たちが、2つの青春期をやり過ごさなければいけなくなっているということです。彼らはまず最初の青春期を過ごさなければならず、それだけでもすでに厄介なのに、それから分身の青春期も過ごさなければならないのです。

そしてそれは更に厄介です。なぜなら、彼らがインターネット上で何をしたかは全て記録されてしまうからです。テクノロジーを新しく始めた人は皆インターネット上では未熟な若者なのです。そして彼らにとってこうしたことをすることはとても難しく厄介なことなのです。

人は皆ワームホールを使っている

私が子供の頃、父は夜私を座らせ、よくこう言いました。「未来の時間と空間について教えてあげよう」私は「やった!」と言ったものです。

そしてある日、父が「2点を結ぶ最短距離はどこだい?」と聞くので、私は「直線よ。昨日教えてくれたじゃない」と答えたのです。私は自分がとても賢いと思いました。すると父は「いやいや、もっと近道がある」と言ったのです。

父は1枚の紙を取り出すと、A点を片側に、B点を反対側に書き、A点とB点が重なるよう紙を折ったのです。そして「これが2点の最短距離だよ」と言うので、私は「パパ、パパ、パパ、どうやったの?」と聞きました。すると父は「時間と空間を曲げただけさ。たくさんのエネルギーを必要とするけど、やり方はそれだけだ」と言うので、私が「私もやりたい」と言うと、父は「やってごらん」と言いました。

それから10年、20年、私は夜寝る前にはいつもこう考えるようになりました。「最初にワームホールを作る人になりたい。色々な物を加速させたい。タイムマシンを作りたい」私はいつもテープレコーダーを使って、未来の自分にメッセージを残したりしていました。

しかし大学に通い始めて気がついたことは、テクノロジーは機能するだけでは取り入れてもらえないということです。人々が使えて、人間のために作られるからこそ取り入れられるのです。そこで私は人類学を学び始めました。

そして、卒業論文を携帯電話で書いていた時、皆誰もがワームホールをポケットの中に持ち歩いているのだと気がついたのです。身体的に瞬間移動していたわけではありません。精神的に移動していたのです。ボタンをクリックすると、AからBへすぐに繋がるのです。その時「これはすごい大発見だ」と思いました。

このため、時間と空間は圧縮されてきているのです。地球のどこかであなたが囁いた言葉が、その反対側のどこかで誰かに聞かれることがあるようになったのです。

他のアイディアの1つとしては、あなたが使うデバイスそれぞれが違う時間軸を持つというものです。ブラウザのタブ全てが違うタイプの時間軸を持っているのです。そしてそのために、あなたはどの状態にしておいたかというような外部的記憶を探らなければいけなくなります。

いつでも誰かと繋がれる今だからこそ大切な自己認識

私たちは皆、ポケットの中に入れ持ち歩いている外部的記憶の中に埋もれたものを探す古生物学者のようなものです。それはパニックを引き起こすこともあります。「あれどこに行った?」というように。私たちは皆、たくさんの情報が次々と出てくる『アイ・ラブ・ルーシー』(アメリカのテレビドラマ)のようなもので、とてもついていけないのです。

それらを全てソーシャルスペースに持ち込むと、何が起こるかというと、私たちは常に携帯電話をチェックしなければいけないハメになるのです。周囲の交友関係においても同じことです。皆と常に繋がっているわけではないけれど、繋がりたい時にいつでも繋がることが出来るのです。

もしあなたの携帯で繋がっている人たちを印刷することが出来たなら、部屋はとても混雑するでしょう。今すぐに連絡が出来る人たちのことです。友人や家族などあなたと繋がれる全ての人を指しています。

このことには、心理的影響もいくつかあります。私が心配していることの1つは、人々が自分の心に耳を傾ける時間を取らなくなってしまったということです。人々はゆっくりすることも、立ち止まることもせず、部屋の中にいるたくさんの人たちと常に一緒で、古生物学者になったりパニックになったりしながら、同時境界の中でどうすれば皆の注意を惹けるかと競い合っているのです。

ただそこにいて何もしてないわけではありません。あなたが何も外部入力をしない時こそが、あなた自身の創造の時であり、長期計画を立てられる時であり、あなたが本当はどんな人なのかを探し出す時なのです。そしてそれをしておけば、「これしなきゃ」「あれしなきゃ」と来たもの全てにただ返信するだけの代わりに、第二の自分をどうすればきちんと存在させられるかを考えることができるようになるのです。

ですから、これはとても重要な事です。私はとても心配しています。特にすぐにボタンをクリックする文化にいる最近の若者たちは、全てが自分のところにやって来て、そのことに興奮し、それが中毒のようになっているので、外部入力をしない時間を上手く扱うことはできないでしょう。

サイボーグ人類学を研究する理由

考えてみれば、世界が止まることもありません。

この世界にも外部の人工デバイスがあり、私たちがコミュニケーションを取り、交流する助けとなってくれているのです。

しかしこれを実際に視覚化してみると、今私たちが行っている全ての繋がりは……これはインターネットのマッピングの画像ですが……技術的には見えません。とても有機的に見えるのです。

私たちがこのように繋がっていることは、人類史上初めてのことです。そしてそれは、機械が支配しているというわけではありません。私たちがもっと繋がれるように、もっと人間らしくいられるように、手助けをしてくれているのです。

最も優秀なテクノロジーが、私たちが豊かな人生を生きる助けをしてくれています。そして本当に、テクノロジーというよりも、人間らしくなるのです。なぜなら、私たちは常にお互いを共に創造しているからです。

私がこのことを研究したいと思っている重要なポイントはここにあります。それはとても美しく、結局はこれも人間同士の繋がりなのです。ただ違う方法なだけです。私たちは場所を超え、人間性と結束力を高めていけるでしょう。これが、私がサイボーグ人類学を研究している理由です。

ありがとうございました。

(会場拍手)

(編集協力:伊藤勇斗)

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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