霞ヶ関の役人は「成績の上がらない受験生」

堀潤(以下、堀):この時間は「実践者の流儀…仕事を追え、仕事に追われるな―グローバルと仕事のソモソモ論―」というテーマでお送りして参ります。自分の天職は一体どのようにして見つけていけばいいのか。これまでも色々な意見出てきましたけれども、今日はパワフルな4人のゲストの方々をお招きしていますので、早速ご紹介していきましょう。

まずは私の左隣、人材育成、政策提言などを通して、日本を変えるために様々な事業を実施していらっしゃいます、青山社中株式会社代表、朝比奈一郎さんです。よろしくお願いします。朝比奈さんもともとは霞ヶ関の官僚でいらっしゃいますよね?

朝比奈一郎(以下、朝):そうですね。14年くらい経済産業省っていうところにいました。

:入省したのは通産省時代ですか?

朝比奈:そうですね。まだ通商産業省でしたけれども、通常残業省と言われてました(笑)。

:官僚を脱藩して一人で色々な事業をやっていくというのは、どういう決断だったのですか?

朝比奈:一人ではないんですけれども。もともと霞ヶ関にいるときから、役人がよく朝から晩まで働いているんですけれど、結果としてあまり出てないなと(思っていました)。僕のセリフでいうと「成績の上がらない受験生」みたいになっているなと。

皆優秀な人が集まって、財政問題なんとかしなきゃとか、景気を良くしなきゃとか、少子高齢化なんとかしようってやっているんですけど、なかなか結果が出てこない。政策の決まり方とか全部変えたほうがいいんじゃないかといった中で、勉強会を作って色々提言したり、総理大臣出したりしてたんですけれど。一部うまくいったところもあるんですが…。

:「勉強会したり総理大臣出したりしていた」というのは、それはつまり具体的にはどういうことですか?

朝比奈:具体的には組織や人事制度のあり方を、具体的な提言としてこういう形で変えたらどうですか、というのを本で出版したりですね。それを直訴でもないんですけど「こうやったらどうでしょうか」と政権幹部に持って行ったりとか。こういう活動をして、僕7年ずっと代表やっていたんでもうそろそろ次に譲って。今三代目が頑張っているんですけれど。むしろ霞ヶ関の外から、霞ヶ関を良くするだけじゃなくて日本を変える活動できないかなと思って三年前に(会社を)立ち上げました。

:なるほど、面白いですね。これまでのところ個人の選択というか、個人の生き方としての労働観という話は出ているんですけれど、まだまだ仕組み系というのはそんなに議論が煮詰まっていないんですね。なのでぜひここでお伺いしたいなと思っております。よろしくお願いします。

朝比奈:よろしくお願いします。

友達と居たかったから、会社をはじめた

:さてお隣は最近メディアにも引っ張りだこの方です。さまざまなモノ作りのスペシャリスト、ウルトラテクノロジスト集団であるチームラボを率いて、デジタルアートなど新しいコンテンツ政策に挑んでいらっしゃいます、チームラボ代表の猪子寿之さんです。

ちょうど猪子さんは1977年生まれで僕と同い年なんです。働くことについての議論が今日のテーマなんですけれど、猪子さんはどのようなスタンスなんですか?

猪子寿之氏(以下、猪子):えっ?

:働くことについて皆さんに色々な意見を聞いていて。ホリエモンさんは「事業計画を作ったりすることじゃなくて、何にも計画せずにまずやっていけ」みたいな話で熱弁をふるってくれたんですけれど。猪子さんはまさに色々なクリエイティブな仕事をやっているじゃないですか。働くというのは一体何が大切で、どんな姿勢が大切だと思っていらっしゃいますか?

猪子:うーん……生きていかなきゃいけないので……。大人になったら働かなきゃいけないですよね、お金ないから。自分は結構友達と居たかったんですよね。

:チームラボを立ち上げる前から?

猪子:友達と大人になっても居られる場所を作りたかったし。どう考えてもちょっと一人で社会に出られなかったので。僕下手すると河原で石拾って売ってたと思うんですよ。「この石超カッケー、2500円!」みたいな。ちょっと無理だったんですよ。

:いわゆる社会性を帯びた働き方ということが?

猪子:社会に出て一般的な企業とかで働くのって、個人としてある程度最低限の完成度が必要で。朝起きるとか、メールがきたら返事をするとか、電話がきたら応じるとか。ちょっと色々無理だったんですよね。個人として社会の中に入っていくのは無理なんじゃないかと当時思っていて。でも友達とか仲間がいるとそこらへんがギリギリ大丈夫なんじゃないかと。

:猪子さんのまわりの友達も完成度が低いといったらアレですけど……。

会場:(笑)。

:言葉を間違えました(笑)。まだパーツの状況というか、猪子さんみたいな感じの友達で、集合したら一つのものとしてすごくパワフルになったということですか?

猪子:そういう感じのことを今では言ってるんですけど。実際は友達と居たかったから友達と始めちゃったんですよ。全員欠陥だったんですよね。

:皆?(笑)

猪子:皆!(笑) それで結構どうしようもない状況だったんですけど、たまたま一人比較的完成度が高いやつが入ってきたんですよね。それで成り立ち始めたっていう。

:でも面白い表現ですよね。「ある程度完成度が必要だ」っていう考え方っていうのは。事の大小あるんだけれども、完成度が高くないと社会に受け入れられないかもしれない、と思って足踏みしている人って結構いると思うんですよね。就職戦線戦う中で。それが本当に完成度の高いものが必要なのかどうか、それぞれが知るっていうことはすごくいいことだと思うので。

猪子:一般的な大きな会社に入る、今の現状の日本社会の企業に入るときには、最低限の完成度が必要とされるんです。つまり長所よりも短所がないことを求められるんですよ。長所がなくてもいいから、短所が極めて無いことを求められるので。そこにはちょっと……。入れてくれるんだったら入りたかったですけど、なんか入れてくれない空気だったんで。

:なるほど。

朝比奈:入りたくなかったんじゃないの?

猪子:入りたいですよ、それは。入りたいに決まってるじゃん!(笑)

:猪子さん呼ぶと尺がすごい必要になるので(笑)。よろしくお願いします。

尖った人を丸くしてしまう日本企業

:ではお隣をご紹介しましょう。「留職」というコンセプトの仕掛け人で、NPOの立場で日本のビジネスマンのキャリアアップに貢献されています。クロスフィールズ代表の小沼大地さんです。よろしくお願いします。

小沼大地(以下、小沼):よろしくお願いします。

:小沼さん、この留職ってなんですか? 留学とかじゃなくて留職というのはどういう考え方なんですか?

小沼:留学ならぬ留職で、「留まってそこで職業をする」というような造語なんですけれど。

日本企業の人を数ヶ月間、途上国のNPOや行政機関に派遣して、そこで日本企業の持っている経験やスキルを使って現地の社会に貢献するという。青年海外協力隊の企業版みたいな取り組みですね。企業側にとってはグローバル人材の育成とか途上国の市場がどうなっているのかを知るとか、そういうことのために使っていただくと。そういうことをやっています。

:やっぱりグローバル人材と聞くと、本当に完成度の高いものを求められているような印象がありますけど、さっきの猪子さんの話を聞いて逆に小沼さんどう思われましたか?

小沼:僕猪子さんにすごく賛成なところがあって、大企業が今「完成度の高い人間を作りたい」ということをすごく言っているんですけれど、本当に「完成度の高い人間」を日本企業は必要としているのかというところなんですよね。

日本企業もですね、「すごく尖った人材が欲しい」と採用のときには言っていて、実際尖った人を採っていると思うんですけど。段々と尖っている角をとって丸くしていってしまうんですね。日本企業が昔求めていたような、上司が言うことをとにかくやってちゃんとこなす、ちゃんと朝起きてちゃんとメール返すような人。そんな人をとにかく作りたがって、入ってきた人を変えようとしてしまうんです。

そうではなくて、今って尖っている人をもっと尖らせるというのが日本企業の中でも求められていると思うんですよね。「留職」というのもある種、とんがりの部分というのを使って、日本企業の中から一旦はずれて途上国の現場に行くことで、枠を超えてもう一回成長する、という経験をしてもらいたいという想いがありますね。

:なるほど。

ダメな奴らでも集まればなにかできる

もうおひと方ご紹介します。新たなコミュニティ作りを目指す「よるヒルズ」など実験的なシェアハウスを立ち上げて、まさに自由に働くことをテーマにしたLivertyを創設。代表を務めておられます高木新平さんです。よろしくお願いします。

高木新平(以下、高木):よろしくお願いします。

:高木さんはこの中で一番若い世代なんですかね?

高木:いつも若い側で結構自由なこと喋れるんですけど、ちょっと今日は猪子さんに全部持っていかれるから適当なこと言えないな(笑)。

:猪子さんと高木さんはこれまでもセッションは…。

高木:いや初めてです。阿波踊りで一緒に飲んだくらいですね。

:阿波踊り……? 徳島出身だから?

猪子:僕、徳島だから阿波踊りやっているんですね。色々な方が勝手に来られるんですけど。でも(高木さんは)僕呼んでないのに、勝手に来られてひどかったっていう。

:高木さんは働くことについて、コミュニティ作りの観点から皆を支援していると。

高木:コミュニティっていうのはよくわかってないんですけれど。ぼく大企業入ったんですよ。広告代理店。でも一年で辞めちゃったんですよね。「やってらんねえ」って感じになっちゃって。

:エントリーされたブログが非常に話題を呼びましたよね。

高木:辞めたんですけど、辞めたら一人になっちゃって寂しいなあと。一人でできることなんて大したことなくて。シェアハウスやるときに、辞めたヤツら集まれって。一年か二年で辞めちゃったヤツ集まれって言ったら結構集まったんですよ。追いやられたり居場所ない奴多いなって思って。

そういう奴らが連帯すれば…、クソばっかりなんですけど基本的に、僕も含めて。でも何かしらできるなと思って、そういうシェアハウスを全国6箇所くらいで作っていて。あと今日ここにいないですけど家入一真っていうクソ起業家がいて。一緒にドロップアウト気味な人たちを集めたら何かしらできるだろうと、Livertyってそういうことをやっているんです。

けど、あんまり働くとかは意識していなくて、何かしらダメなヤツらでも社会に対して胸をザワつかせるようなことできたらいいなと。それを仕事として最終的にお金貰えたらいいなあと考えています。

異分子同士、利用し合う

:逆に、朝比奈さん。高木さんがやっているようなコミュニティが出来上がっていく様子というのは、ご覧になっていてどんなふうに思われていますか?

朝比奈: (そういうのって)まさにコミュニティデザインをしていくというか、コミュニティオルガナイザーっていう人たちがやっていくんですけど。やっぱり自分で問題意識持ったような人たちが、問題意識を形にしていくために仲間を作ったり問題意識を啓発したり、非常に素晴らしいなあと思っていまして。僕自身もそれをやりたいなと思ってやっているんですよね。

:シェアハウスしてて大変なことありませんか?

高木:実は今、堀潤さんと一緒に住んでいるんですけど、堀潤さんが帰ってこないことですよね。何をしているかわかんないですけど。でも今、色んな人と住んでて。

:大学生もいれば59歳のおじさんもいたりね。

高木:そういうワケのわかんない人がたくさん集まると何か起きるだろうと。まあムカつくこともありますけどね。

:たとえば?

高木:やっぱり堀さんが帰ってこないことですかね(笑)。そういう人達と価値観がぶつかるんですけど、やっぱり異分子が集まると「コイツこういうのを持ってるな」みたいな感じで、お互い利用しあえるというか。

:さっき猪子さんが言ったように、「それぞれが完成品じゃない場合」で集まっていって、出来上がっていく過程の装置としてのシェアハウスやグループ、みたいなのはわかりやすいですね。

高木:そうですね。それに僕、お金に追われるの嫌だったんで。皆で住めれば安いじゃないですか。オフィスも借りる必要ないし。そこで何か仕事が生まれていけばいいんじゃないかと思っているんですけどね。