ブランド買取の査定金額は「自分の値段みたい」

辛酸なめ子氏(以下、辛酸):今まではフリートークみたいだったんですが、私もファッションのことはアドバイスをいただきたくて、ちょっと最近の写真を持ってきたんですけど。これはメモ代わりに撮ったので、すごい汚いんですけど……。最近服を売りに行ったんですよ。最初は渋谷の「ラグタグ」っていうところに行って。

平松昭子氏(以下、平松):わかります。

辛酸:それで、これが中身を適当に撮影したものなんですけど、セレクトショップとかで買った(洋服が)十何着ぐらいです。

(出典:辛酸なめ子) (出典:辛酸なめ子)

平松:かわいいですよね。

辛酸:高すぎず、安すぎずぐらいの服なんですけれども。14点持っていったら査定で0円って言われたんです。

(会場笑)

平松:ショックですよね。

辛酸:本当に人間性を否定された感じがしてすごいショックで。

平松:ああいう査定って、自分の値段みたいに(感じますよ)ね。

辛酸:はい、足元を見られた感じ。でも、それぞれ……。

平松:でも、フリマのアプリとかで自分で上げれば、何千円とかきっと売れると思います。

辛酸:そうなんですかね?

平松:うちのアシスタントさんも、せっせと今フリマアプリで(売っています)。

辛酸:フリマアプリというのがあるんですね。

平松:「フリル」っていうのとかいろいろあるみたいなんですけど。

辛酸:これが何か待合室で、一応その0円だったんですけど、買い取りに行った人はお茶を飲ませてもらえるって。800円ぐらいの紅茶を飲んで。

平松:いいんだか何だかわからない。また持ってきてくださいっていうことですよね。

辛酸:いや、そういうわけでもないと思うんですけど。そこでラグタグの人が査定のときに、すごくきれいに畳んでくれたんですよ。「これなら行ける」と思って。

(会場笑)

辛酸:次に同じ渋谷にある「ブランドゥール」に、これだったら1枚100円はつくかなと思って行ったら、また0円って言われて。

平松:ひどいですよね(笑)。

辛酸:はい。それでもう「寄付します」と言って、発展途上国とかに寄付に回して、(領収書に)0円を書いたっていうことがあったんです。やっぱり服を売るというとなかなか(難しい)。先ほど、ダイアン……。

平松:はい。フォンファステンバーグ。

辛酸:ファステンバーグの服だったら値段はつくと思うんですけど、セレクトショップで買ったぐらいだと0円になってしまうんですかね。

平松:そうですね。今、わかりやすいブランドのほうが(売れる)。その買い取りのお店も取り扱いブランド、買い取りブランドってリストが出ているので。

辛酸:はい、ありますよね。

平松:多分そのセレクトショップのものでも、同じそこに置いてあるブランドと一緒だったらいいと思うんですけど、(違うと)あんまり。2~3年までですかね、きっと。

辛酸:ああ、そうですかね。

平松:10年とか経っちゃうと(難しい)。シャネルとかまでいっちゃえば、ヴィンテージになってきっと(売りやすい)。

辛酸:でも、(持って行ったのは)結構1年以内の服が多いんですよね。

平松:そうなんですか。そうしたらなめ子さん、絶対「フリル」でね。なめ子さんが着て、出したら、すぐ売れそうですよね。

辛酸:そうですかね?

平松:ファンの方が買ってくれそう。

辛酸:その売りに行っている途中に、フクロウのリュックを背負っている(方がいる)という。

(会場笑)

(出典:辛酸なめ子)

平松:かわいい。

辛酸:偶然さっきのkate spadeの袋と共通ですね。

平松:幅はちょっと違うけど。おもしろいですね。

辛酸:はい。

平松:これはどこのなんでしょうね?

辛酸:何ですかね? ちょっとわからないんですけれども。じゃあ今度は私も、そのアプリを試してみようと思います。

平松:はい、お試しください。

辛酸:はい、ありがとうございます。

仕事のない人は、仕事を選り好みしている人

辛酸:今までのお話でも伺ったかもしれませんが、何か今まで仕事でご活躍された、成功の秘訣とかそういうものというのは、あったりしますでしょうか?

平松:成功しているかどうかは、本当にいつもわからないんですけど。このイラストと好きなファッションのお仕事でちゃんとご飯が食べられて、今息子と11歳のゴローという黒パグがいるんですけど、そうやって生活ができているっていうことは、やっぱり「人の3倍は働こう」っていうのは、バイト時代のときにもう決めていて。

なぜかっていうと、父がずーっとそれを言ってて。今年の2月に亡くなったんですけど、やっぱりそういう一番近い人の働き方に影響を受けるのかなと思うんですが、父にずっと教わったことで。

近くにいる人が、それで生活がちゃんと成り立っていると信用できるのかなと思って。でも、単純に人の3倍働けば生きていけそうなね(笑)。

辛酸:1人でも? 

平松:はい。大体仕事がなくなっちゃう人っていうのは、バイト探しにしても(仕事を)選んでて、「あれは嫌だ」「これは嫌だ」って断っているから。いくらでも募集はいろんなところであるから、選ばなければ(仕事はある)。

やっぱり人の嫌がる仕事をやれば生きていけるんだなって思います。調子がすごくいいときとかも、つい気持ちが天狗っぽくなっちゃうときも、「あ、いけない」って思い出して気をつけてます。

辛酸:絵はちょっとそういうふうに思っちゃうと、線に出ちゃいそうですよね。

平松:そうですね。絵は自分が全部出ますよね。怖いなって思います。

辛酸:体調とかも。

平松:うん。やっぱりそれ気づかない人もいますけど、自分が一番それは知っているので、みんな見えない振りはできなくてね。ずーっと追いかけられちゃうので。ちゃんと心はね、きれいにしていたいなって。

辛酸:何かすさんでいるときとか描いた線が雑になっちゃうとか。

平松:なっちゃいますね。

霊界で「似顔絵を描いてくれる」と評判になった?

辛酸:あと、何か霊に取り憑かれると、すごい気持ち悪い顔の絵とかを描いちゃったりするんで。

平松:そうですね、はい。だから霊に取り憑かれないように(気をつけています)。なめ子さん、よく取り憑かれるんですか?

辛酸:たまにですかね。前に住んでいた江戸川区の部屋ですと、たまに取り憑かれて意識が飛んで、紙を見たら全然描こうと思っていたんじゃない、すごい怖い顔の女性の絵が描かれてて……。

平松:でも、なめ子さんが描かれたんですよね?

辛酸:そうなんですよ。だからやっぱり、半分寝てる。魂が抜けたのか、霊に似顔絵を描かせられてたんですよ。そういうのがあると多分霊界のほうで、「あの女は似顔絵を描いてくれるんだよ」みたいなのが評判になっているのか、そういうのがちょっとたびたび重なっちゃって。

平松:ああ、重なったんですね。

辛酸:そうですね。多分、その部屋自体があんまり……北向きだったりとか、よくない波動を出していたんだと思うんですが。今はそんなことはなかなかなくなったので。だから仕事の環境とかも重要なんですかね?

平松:重要だと思います。やっぱり私には、町屋のほうとかここら辺(注:イベント会場は六本木)から見て、北とか西のほうは合わなかったみたいで、あんまりお仕事も増えなかったんですけど。

世田谷に引っ越して、家賃はちょっと高くなるんですけど、そうすると仕事はどんどん増えて。居心地もいいので下北で3~4回は引っ越しをしています。

辛酸:そうなんですね。じゃあやっぱり、自分にとって相性がいい場所を探す、お部屋の中をパワースポットみたいにする点もいいんでしょうかね。

平松:うん、やっぱりそう思います。自分との相性でしょうね。

SNSはツール、付き合い方は気軽なほうがいい

辛酸:あとは、やっぱり人間関係を大切にするとか? 

平松:はい、人間関係はそうですね。やっぱりカフカの漫画を描いていたときに、ものすごくカフカに憑依しちゃうっていうか。自分じゃない人の話を描かなきゃいけないときは、大体その人になり切って描かないと描けないほうなので。

それでちょっと人付き合いが悪くなったっていうか、去年の秋ぐらいからSNSができなくなっちゃったんですよ。

辛酸:そうなんですね、忙しくて。

平松:あれって小まめに返事しなきゃいけないし、本当にいろんなことが対応できなくて。

辛酸:それは、Facebookとかですか?

平松:Facebookもそうですし、Twitterも、Instagramも全部やめて。Pinterestとか1人で黙々とできるSNSはやってたんですけど。でもそうすると、やっぱり人が離れていくなっていうのは本当にあって。でも漫画を描いてたので、逆に静かでいいなと思ってたんですね。

それで描き終わったらやっぱり人恋しくなって。あとはやっぱり宣伝もしたいと思うと、自然にまたやめてたTwitterも始めて。だからそんな感じでいいのかなって。

SNSは気軽にやめたり、やったり。変につながらなくても、私の場合はもうちょっと気軽に付き合っていきたいなあぐらいが。でもそれは信用なくなりますかね?

辛酸:そこまで何年とかの空白じゃなければ、戻ってきてもいいんですかね? 私もそんなにSNSで人とつながっていないのでわからないんですけど。

平松:まだちょっと難しいところなんですけど、宣伝とか今回のイベントのお知らせとか、本当にSNSは広がるのが早いので、そういった「ツール」としてはとても大事にしたいかなって。

休みすぎると体調が悪くなる

辛酸:あとは人の3倍働かれるっていうことは、休みが取れないっていうことですか? 

平松:そうですね。休みはほとんど取らなくて。なぜかというと休みを取ると、大抵そこにお仕事ってずれ込んで入ってきてしまって、「休みです」と伝えておいても前日に全部がしわ寄せになっちゃうので。

もう休みは取らないで旅先でも仕事をするようにして。だから、あんまり20代のときの「仕事」っていう感じとは違って、やっと好きなことが仕事になったので、そんなに苦じゃなくなりました。

辛酸:私もあんまり休んでないんですけど。やっぱりつい何か空き時間があると進めたくなっちゃうというか。

平松:なめ子さんもきっとお好きなんですよね。

辛酸:そうですね。

平松:そりゃまあごろごろしたいなっていうときはね、あるんですけど。あんまりごろごろすると……今週も金曜日に、もう本当に疲れて、マッサージに行ってDVD借りて、土曜日ずーっと映画を見てたら、何か今度は起きれなくなっちゃうんです、急に休むと。

辛酸:そうなんですね。

平松:それで日曜日が本当に体が重くて、だからあんまりね、急に休んじゃいけないし。急に休むと過呼吸になるんですよ。なのであんまりこう(休まない)。

辛酸:じゃあ、休み直しで?

平松:そう、ブレーキかけすぎないのがいいのかなって。

辛酸:じゃあ、本当に体が慣れていないことをするから、ちょっと驚いてその症状になっちゃうんですね。

平松:あとは、オンとオフを上手につけられないので。つけてますか? なめ子さん。

辛酸:でも、マッサージに行くときぐらいですかね。

平松:ちょっとの時間ですぐ充電できる体になってきたような気がして。今のところ、疲れたらすぐ休んで、マッサージに行ったりちょっと寝たりとか。それで気をつけています。

辛酸:そうですね。私も休んでないほうかなと思ってたんですけど、今日平松さんの「人の3倍働く」という発言を伺って、ちょっとまだまだだなと。

平松:いや、なめ子さん10倍ぐらい働いている。

辛酸:そんなことないですよ。今日はありがとうございます。

平松:はい、こちらこそ。

制作協力:VoXT