辺野古に新基地は造らせない

翁長雄志氏(以下、翁長):本日、辺野古新基地建設にかかる公有水面埋立承認の取り消しに向けて、事業者への意見聴取の手続きを開始しました。

県は、去る7月16日、埋め立て承認の法律的な瑕疵を検証する第三者委員会の検証結果報告を受け、関係部局において内容等を精査してきたところであります。

その結果、承認には取り消しうるべき瑕疵があるものと認められました。

国に対する承認の取り消しについては、行政手続法は適用されないと解されますが、今回の不利益処分については行政手続法の趣旨に鑑み、意見聴取を行うことが適当と判断しました。

そのため、本日付で沖縄防衛局長に意見聴取にかかる通知書を発出したところです。なお、意見聴取日は平成27年9月28日としております。

私は今後もあらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えであります。

承認取り消しに踏み切った理由

記者:知事が就任以来、承認の取り消し撤回も視野にあらゆる手段を使って移設計画を阻止すると言ってきた。集中協議を経て、今回承認取り消しに踏み切るに至った決め手、このタイミングの判断の理由は。

8月10日から9月9日まで、集中的に協議をするということで工事を止めて、そして会議が始まったわけであります。

私はその中で沖縄県の今日までの置かれている立場、あるいは歴史、あるいは県民の心、それから基地の形成されてきた、いろんな形での状況、あるいは沖縄県の振興策のあるべき姿というか現状を説明し、ご理解を得るよう努力したが、残念ながら、5回の集中協議の中では、私は考え方をほとんど申し上げたが、返ってくる言葉はほとんど少なくて、残念ながら私の意見を聞いて考えを取り入れようというものは見えてこなかったような感じがします。

そういう状況の中で、最終日の集中協議の中で、私の方で工事を再開するんですかと申し上げると、そのつもりですという話があったので、その時点で取り消しの決意を固めたところです。 なぜこの時期かというと、事務的な調整含め、相手があることですから、そういうものを見ながら、一日二日というようなことではないと思ったので、私なりに今日の日を設定して、報告させてもらっているところです。

記者:知事として政府との話し合いでは移設計画を止めることはできないと判断したのか。

翁長:4回目の会議の時に、菅官房長官と話をした時に、私のいろんな歴史、県民の心を話をして、それについてのお考えはありませんかと申し上げたが、その時に何とおっしゃったかと言いますと、私は戦後生まれで、なかなかそういうことが分かりにくいと。

そういう中で、橋本・モンデール会談がベースにあるということ。それから、梶山(静六)先生の、この思いは一緒か何かそばにいるときに考えることがあったので、そういうのは持っているつもりですが、やはり原点はそういうことですと。

そういう中に、私が言葉を尽くしても聞く耳を持たないのか、本当にそういう感受性がないのか、それについては分析しようがないですが、いずれにせよ、ご理解いただけないということだけは4回目で感じた次第です。

記者:ボーリング調査が終わり次第、政府は埋め立て工事を着工すると思うが、取り消しは着工前を意識したか。着工を止めることができるとお考えか。

翁長:私がずっと今日まで申し上げてきたのは、いろんな時点時点で県民の声もありましたし、識者の声もございました。そういう中で私は横目で工事の進行状況、政府の言動、出方をにらみながら、あらゆる手段を駆使して阻止したいと、ずっと申し上げてきました。

そういう中で、おととい着工を開始したということでありますので、それまでは数日間の、やはり相手がいることですから、そういったものの配慮とか、いろんなことを考えましたが、おとといで着工しましたので、その意味からいうと週明けにはやりますということをその日に申し上げたのは、今日の日を選んだのは事前にみなさんには示したわけであります。

記者:埋め立て工事を今回の取り消しで止められるとお考えか。

翁長:私はありとあらゆる手段を講じて辺野古に基地は造らせないという、そういった意味での第一歩です。

これはまた当然のことながら、相手があることですので、どういう形で物事が進んでいくかは見えません。見えませんので、今は私たちからすると法律的な瑕疵があると、故に取り消しをする方向で手続きを開始したいというところでございます。

国側との法廷闘争の可能性について

記者:今後、取り消しがされた場合、国側の対抗措置が考えられる。法廷闘争を含めこの先の見通しは。法廷闘争になった場合の勝算はあるか。

翁長:今後のそういった法律的な展開は、今日までそういう意味合いでご相談した竹下弁護士はじめ、担当の弁護士のみなさんがおいでですので、今の法律的な問題は竹下先生にお願いしたいと思います。

竹下弁護士:今、取り消しに向けて意見聴取を始めたばかりなので、その先のことについて、今とやかく言うことが適当かどうかはともかくとして、取り消しをした後で、国がどういう方法をとってくるかということについては、それなりに検討して、それに対する県側の主張等は現段階で一応のまとめはしています。

これがどういう方向で行われるかは、国がどういう対抗策を持ってくるのかということに関わってくる問題ですので、今この場ですべて話すのは控えさせていただきたい。

記者:法廷闘争の話だが、国と県の間で法的措置が応酬されることが予想される状況についての印象を。

翁長:1カ月間の議論が残念ながら、私としては意を尽くしたつもりですが、議論にならなかったというようなことを受けての工事再開ですので、その意味では残念至極と。1カ月間で沖縄県民に寄り添うとか、県民の考え方を聞きたいという話も事前にはあったが、そういうことがほとんど感じられなかった中での工事の再開ですので、私からすると今日までの沖縄の置かれてきた歴史を含め、いきさつ、あるいは現状を踏まえると、大変日本という国が、本当にどうなるのかという感じがしています。

私は5回目の会議の中で、安倍総理にはこういう話をしました。私たちがアメリカに行って、ワシントンDCに行きましても、話は聞いてくれても、最後は国内問題だからと、日本政府に言いなさいとなります。

そして、日本政府に申し上げると、アメリカが嫌だと言っていると。こういうものが過去の歴史で何回もありました。私はそれを紹介したのちに、沖縄が米軍の施政権下におかれているときに、沖縄の自治は神話だと高等弁務官から言われましたが、日本の独立は神話だと言われないようにしてください、ということを総理に申し上げたわけです。

記者:実際に取り消す時期は、知事として見通しは。

竹下弁護士:今、意見聴取手続きにはそれなりの時間が必要だと考えていますので、もちろん国の方が、この意見聴取手続きに対してどのように応じてくるかで対応が変わってくると思いますが、常識的には3週間から1カ月ぐらいを考えています。

沖縄と日本の構造的な問題

記者:都道府県知事が国の事業を取り消すのは極めて異例。知事は国連での演説も予定しているが、これも異例だと思う。逆に言うと、知事がここまでせざるを得ない状況になってしまっている沖縄と日本の構造的な問題はどこにあるか。

翁長:ですから、私はその1カ月間の協議の中で沖縄の置かれている歴史等々を説明しました。その置かれている歴史の中で戦後の70年があったわけで、その中の27年間という特別な時間もありました。そして、復帰をしても基地が(日本の面積の)0.6%に(在日米軍専用施設の)74%とというようなことも、まったく動かないような形できておりまして、むしろ1950年代で海兵隊がアメリカ本国から日本本土に行ったものが、沖縄に配置されて沖縄の海兵隊が、いわゆる75%を占めるようになったわけです。

こういったこと等をいくら話しても、原点も含め、日本国民全体で日本の安全保障を考える気概も何もない。こういったこと等の中で、沖縄の置かれている立場を、どのように訴えても、このような形になってくる。

そうすると私は「魂の飢餓感」という言葉を使わせてもらったが、それがご理解をいただけないというようなものと同時に、こういった一つ一つの施策というのは、おそらく一緒になっているのだろうと思いますし、またアメリカも当事者ではないと話をしているが、まさしく当事者にならざるを得ないということも含めて、私はこのことを取り消しをし、国連でも人権委員会でその状況をお話をし、本当に自由と平等と人権と民主主義の価値観を共有する国と連帯して、世界を平和に導きたい、というような日米安保体制というものが、自国の国民にさえ自由、平等、人権、あるいは民主主義というようなものが保障できないのに、なぜ他の国々とそれを共有できるのか、ということも含めて、これは海外にも発するべきだろうという気持ちです。

記者:19日に出発して国連演説するが、今日の取り消し表明を含め、訴えたい概要を紹介してほしい。

翁長:まだ詰めていない段階なので、いま申し上げたことの内容が主になると思いますが、それに向けて調整中です。

記者:3週間から1カ月かかる見通しの意見聴取が終わらない限り、取り消しの決断を出さないですか。それとは別に作業の進捗(しんちょく)を見て先に取り消し決断することもあるか。

翁長:今日までもそうでしたが、横目で政府の出方もにらみながら判断していくと話をさせてもらいました。ですから、今の件も予測不能のこれからの出来事でありますので、それを見ながらということになりますが法律的な意味からすると、竹下先生に話をしていただいて、私が横目でにらむというようなものが、どの時点でどうなっていくかというのは、その都度判断していきたいと思っています。

仲井真弘多・前沖縄県知事について

記者:2年前の12月に前任者の仲井真知事が同じ知事の立場で埋め立て承認された。いまの時点で前任者の仲井真さんに何をおっしゃりたいか。

翁長:承認によって今日の事態が生じているわけでありますから、今思い返しても大変残念であり、無念な出来事だったと思っております。

やっぱり沖縄県民の心というものは、昨年の一連の名護市長選挙、知事選挙、4区にわたる衆院選挙、ぜんぶ、新辺野古(基地)は造らせないと(訴えて)圧勝したこと考えますと、あの承認が今、官邸の錦の御旗になっているようなことを思うと、胸がかきむしられるような気持ちでございますけれど、同じウチナーンチュ(沖縄の人)がやることでありますので、これに対して一緒になって反省の中から、私たちは強く、これからの沖縄の未来を背負う子や孫に責任を取れるような、そして沖縄県を古里として持って誇りに思えるような、そこにしっかりと地に足を立てて古里を思い、万国津梁の精神のアジア、世界の架け橋となって、将来の子や孫がやっていけるような、そういったものをこれからの一連の作業の中で取り戻していきたいと思っています。

普天間基地は本当に固定化できるのか

記者:普天間飛行場周辺の宜野湾市民からは2022年度には普天間が返ってくる期待があります。一方、翁長知事の決断は政府との合意に基づく返還の道を閉ざすことになりますが、移設が進まなくなることを残念に感じる市民・県民に県知事としてどう理解を求めていく考えか。

翁長:今のご質問は、まさしく菅官房長官との原点の違いなんですね。橋本・モンデール会談、これが原点であると話しております。普天間の危険性の除去ですね。

私が戦後の強制接収で沖縄の基地はすべて奪われていった、自ら差し出した基地はないんだというようなものが原点であるというのは、普天間の危険性の除去という意味で一緒ではありますが、奪われて、基地の代替地として、沖縄側が用意しろ、代替案はあるのか、そこしかないんだという話は、まさしく沖縄の戦後、原点の話がかみ合わなかったということになります。

県民も原点を持っていると思うので、知事選でも宜野湾市の票が、私の方が3000票多かった。衆院選挙でも6000票多かった。宜野湾市民からすると、基地の固定化は本当にやめてもらいたい、という気持ちであろうと思うんですけれども、なおかつ私たちに勝利させたというのは、それを沖縄県民が同じように受け入れることは、これはまた本当に苦しくてできない、という表れだったと思うんですね。

その部分においては、県民は理解して頂けると思いますし、なおかつ新辺野古基地ができないことが世界一危険だと言われている普天間基地、本当に固定化できるのかということを私は総理にも会議の時に申し上げましたが、返事はありませんでした。

本当に新辺野古基地ができなかった場合、普天間を固定化できるのかということは、政府からまだ言葉は頂戴していません。あの普天間基地を20年も30年もやるかどうかについては、僕は日本の政治の堕落だと思っているので、この辺のところは国民にも判断して頂きたいなと思っています。

沖縄の負担軽減ヘの取り組み

記者:知事として負担軽減にどう取り組んでいきたいか、所感を聞かせてほしい。

翁長:前知事が承認に踏み込んだ時に、4項目の要請がありました。その中で、一番大事なものが普天間の5年以内の運用停止、これが一番大きかったと思います。

去年の11月に私が当選して、去年の2月が起点でありますから、その2月から10月までに、仲井真さんが勝ったかもしれませんので、この選挙は。その意味からすると、10カ月で(日本政府が)何をされたか検証する必要があると思います。その間は、アメリカの高官から発せられる言葉は、そんなことは日本政府から聞いたこともない、と。私たちも考えていない、という言葉が発せられたんです。

その意味では、前知事が総理と官房長官が保証したことが担保であるという話をして、承認に踏み切ったわけですが、私が戦後の沖縄の基地問題の中で、いろんな壁がある時に、基地の解決あるいは振興策等々、大変いい話をして、その壁を乗り越えたらまた元通り、というのは何十回も経験してきていますから、私はこれを話クヮッチー(話のごちそう)、それを難しい課題が見えてきた時には、そういう話をして、それを乗り越えた後、知らんふりをする、というのがこれまでの流れです。

ですから日本の政治が、本当に安全保障というようなものをしっかり考える中で動いてきたかということになりますと、あるいは日本を取り戻すという中で動いてきたかというと、今日に至るも、まだ私はそういうのはできていないと思っています。

工事を止めるための手段

記者:意見聴取の手続きが3週間から1カ月かかる中で、防衛局は本体工事に向けた事前協議も再開しようとしています。埋め立て承認の取り消しとは別に、事前協議を通して工事を止める、あるいは潜水調査を踏まえて岩礁破砕の手続きで工事を止める手法なども考えているか。

翁長:横目で見ていくからこそ、今の質問にも直接、答えられないわけでありますけれども、私が去年の12月に当選して、官邸の方とお会いをしようとしても、まったく会ってもらえませんでした。いろいろ、周辺から意見がございましたが、私があの時ずっと言ってきたのは、今のあるがままを見て、県民も国民も考えてもらいたい、というようなことを私はじっと3月まで言い続けてきたわけであります。

ですから、これからの政府の出方、防衛局の出方、こういったものもある一種、私たちは暴力でもってそれを止めることはあるわけはないわけですから、権力としての法律含め、工事再開に向けてどういう風にしていくか分かりませんが、これもあるがままを全国民に、県民に見てもらう。

そして、それを今回は世界の人に見てもらいたいという気持ちで私は国連の人権委員会にも出て行くわけですし、ワシントンDCにも行って話をさせていただきました。この状況はすべての人が見る中で、民主主義国・日本、民主主義国・アメリカとして本当にこの状況に、みんなの理解を得られるのかどうか、あるがままを見るということも、日本の政治の在り方を問うという意味でも大切なことではないかなと思っています。

埋め立て承認の取り消しで工事は止められるのか

記者:承認取り消しに対して、国の対抗措置が考えられるが、実際に辺野古での工事を止めることができるかについてどういう認識を持っているか。

翁長:私は今日までも辺野古基地は造らさない、造れない、この2つの話をさせていただきながら今日まできておりますので、新辺野古基地ができないことの責任は日本政府、アメリカ政府にもあるというようなものであります。

あるいは、(辺野古新基地が)できますと国有地に変わります。私たちは今日まで自ら差し出した基地はないと話しながら、それが今沖縄にある全基地の7割方を民間の人や行政が持っているからこそ、私たちは沖縄のあるべき姿を問うことになれるわけです。ところがあそこ160ヘクタール埋め立てましたら全部国有地になってしまい、100年間も200年間も、今の政府の姿勢が変わらなければ、まさしく沖縄は基地の要塞としてこれからもどういう形であっても、受けざるを得なくなる。

こういったことを含めますと、今までの銃剣とブルドーザーで基地を接収したこともありますが、まさしく今回は海上での銃剣とブルドーザーで基地を造っていくと。日本政府自らやっていくということになりますと、これからの安保法制も議論されているわけですが、本当の意味での日本のあるべき姿は、この辺りからも見えてくるのではないかなという意味では、大変危惧(きぐ)をしているところであります。

記者:埋め立て承認によって工事が止めることができるかどうかについての知事の認識を教えてほしい。

翁長:まさしく法律的な問題で、法律的なものを判断することは現時点で言及することは差し控えたいと思います。

記者:まだ楽観できる状況ではないと思っているか。

翁長:楽観も、悲観もそういうこともまったく白紙の中で、沖縄のあるべき姿、日本のあるべき姿、この問題を通じて、国民に問いたい、世界に問いたいということです。

記者:一部で県民投票という話もありましたが、念頭にあるか。

翁長:いろんな方々がいろんなご提言をするので、少なくとも私から発想したことではまったくありませんので。ただ、いろんな方々がいろんな話をされているということについて、私がどうだ、ああだという風にはいきませんので。

記者:今後選択肢としてはありえるか。

翁長:そういう断定的なものはすべての分野において言いませんが、この件は私が発想したことではございません。