PMS・月経前症候群に関する誤った常識にさよなら

The good news about PMS

生理前にイライラしたりうつ症状が出るなどの精神的な不調や、身体的な症状が表れる月経前症候群 (PMS)。女性は月経周期の間には怒りっぽくなったり、ホルモンによる感情の浮き沈みが激しくなると一般的に言われています。しかし、心理学者のRobyn Stein DeLuca(ロビン・スタイン・デルーカ)氏によると、PMSの定義は標準化されておらず、科学的根拠はないと語ります。デルーカ氏は、PMSによって利益を莫大な利益を得ている医療業界のカラクリや、女性は男性よりも感情的だという誤解など、PMS神話が根強く続く理由について説明しました。(TEDxSBU2014 より)

多くの女性を悩ます月経前症候群 (PMS)

ロビン・スタイン・デルーカ氏:月経前症候群 (PMS) について聞いたことのある人は何人いらっしゃるでしょうか? 皆さんありますよね? みなさんがご存知のように、女性は生理前に少し変になります。

月経周期の間には、理性がなくなったり怒りやすくなるといった、ホルモンによる感情の浮き沈みは避けられません。世間一般に、生殖ホルモンの変動が極端な感情を引き起こし、多くの女性がその影響を受けていると信じられています。

私はここでお話ししたいのは、科学的根拠によると、こういった憶測はどちらも真実ではないということです。PMSについての朗報をお伝えいたします。

まずはPMSがアメリカ文化にいかに根付いているかを考えていきましょう。新聞や雑誌の記事を調べてみると、誰もがPMSになると広く信じられていることがわかります。

『レッドブック』の「あなた:PMSフリー」という記事によると、女性の80~90パーセントがPMSに悩んでいるそうです。

『L.A.マッスルマガジン』は 女性の40~50パーセントがPMSに悩んでおり、それは女性の精神的、肉体的健康に多大な影響を及ぼすと警告し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」ですら数年前にカルシウムでPMSを治療するという記事を載せており、「毎月あなたは魔女になっていませんか?」と女性読者に尋ねています。

こういった記事によると、膨大な研究がPMSの本質を突き止めたのだと思われるかもしれません。しかし半世紀にわたる研究によってもPMSの定義や原因や治療法、そもそもPMSが存在するのか否かすら、はっきりしていないのです。

心理学者による最も一般的な定義は、PMSは排卵から月経時の間で生じる、ネガティブな行動や、認知的、身体的な症状です。

PMSの定義は標準化されていない

ここからが問題なのです。PMSの診断には150種もの異なる症状が用いられています。これらは、そのほんの一部です。

ここで私ははっきりさせたいと思います。私は女性にこういった症状は現れないと言っている訳ではありません。これらの症状がいくつかあったとしても精神疾患の領域ではありませんし、心理学者がこんなに曖昧な疾患を定義するなら、その診断が意味をなさなくなるというわけです。

こんなに症状に種類と幅があるなら、私もPMSかもしれませんし、 あなたもPMS、3列目にいる男性もPMS、うちの犬ですらPMSということになってしまいます。

5つの症状があればPMSだと言う研究者がいれば、3つだという人もいます。日常生活に多大な支障が出るなら問題になると言う研究者もいますし、些細な症状も重要と言う人もいます。

このように何年もの間、PMSの定義が標準化されていないため、心理学者が有病率を報告すると、その予測は女性の5パーセントから97パーセントまでと幅広くなり、結果、PMSはまれな症状でもあると同時にありふれているともいえる状況です。

つまり、PMSの調査方法に弱点があることが大きいのです。まず、多くの研究では女性に回顧的に過去の症状について尋ねています。

過去に遡り、記憶に頼っているため、少なくとも2カ月連続して日々の症状の記録を取る、「プロスペクティブ・レポート」と呼ばれる報告と比較すると、PMSの報告が誇張される事がわかっています。

また多くの研究での対象が中流の白人女性に限られており、研究結果を女性すべてにあてはめるのには問題があります。

PMSに関しては文化的要素が強いことが知られており、西側諸国以外でそれについて聞くことはほとんどありません。

3つ目に、対照実験でない研究が多いのです。PMSの症状がある女性の特徴を理解するためには、PMSの症状のない女性と比較する必要があります。

そして最後に、PMSの診断をするのに、それぞれ異なる症状、発症期間、症状の重さに重点を置いた、まちまちな調査票を使用していることです。

どんな状況下でも信頼できる調査を行うには、科学者は病状を構成する特定の特性に同意して初めて、同じ対象についての調査ができるのですが、PMSについてはそうではありませんでした。

しかし1994年に「精神障害の診断と統計マニュアル」が、ありがたいことに略してDSMとして知られています。これは精神科医の手引き書でもあります。これが、PMSを月経前不快気分障害PMDDと再定義しました。

不快気分とは、落ち着きのなさや、不安感の事です。この新たなDSMガイドラインによると、前年の月経周期のほとんどで、11の症状のうち、少なくとも5つ以上の症状が月経開始の1週間前に生じていなければなりません。

その症状は月経が始まると緩和されなければならず、月経終了後の翌週には完全になくなります。症状のうち1つはこの4つのリストのうちのどれかに当てはまらなくてはなりません。

気分の浮き沈み、神経過敏、不安障害、うつ症状。

他の症状は、感情をコントロールできない事や、睡眠や食欲の変化などを含む、1枚目のスライドや2枚目のスライドにあったような症状です。

DSMは更にこれらの症状を、臨床的に激しい苦痛を伴う症状―仕事や学校生活、社会的な人間関係に支障が出るといった症状―と関連付け、その症状と重さを連続して少なくとも2周期にわたって毎日記録されなければならないとしました。

女性を怒らせるのは女性ホルモンではなく環境の変化

そして最後に、DSMは既に罹患している症状を悪化させるのとは別の、情緒障害の診断を必要としました。科学的な観点からみると、これは大きな進歩です。

これで症状の数が限定され、より重度の機能障害が診断に必要とされ、症状の記録と期間も具体的になりました。この基準を使用して最新の研究を調べると、平均して3~8パーセントの女性がPMDDでした。

すべての女性ではなく、ほとんどの女性でもなく、大多数でも、多くの女性でもなく、たった3~8パーセントだったのです。

どんな人でもストレスを感じる出来事や楽しいひと時、または特定の曜日といった不確定要素の方が、月経周期よりもずっと正確に気分の変動を予測できるのです。

これこそ科学の世界では1990年代から得られている情報なのです。2002年に、私が同僚と共著でPMSとPMDD研究に関する論文を発表し、また同様の論文が複数心理学専門誌に発表され始めました。

疑問なのは、なぜこの情報が一般に広まらないのでしょう? なぜこの神話は廃れないのでしょう?

たしかに、女性が本、TV、映画、ネットから、誰もがPMSになるという膨大なメッセージを受け取ると、これは本当に違いないと思うようになります。

研究では、誰もがPMSになると信じている人の方が、自分はPMSだと誤って訴える傾向があります。「誤って」とはどういう意味かを説明します。もしその人に「あなたはPMSですか?」と尋ねると、彼女は「はい」と答えます。

しかし、2か月にわたって心理的症状を毎日記録してもらうと、その症状と月経サイクルには何ら関連がないのです。

PMS神話が廃れないもう1つの理由は、狭い女性の役割の制限と関係があります。ジョーン・クリスラーといったフェミニスト心理学者はPMSというレッテルがあれば、女性らしくないとされるであろう感情を表すことができるのだと指摘しました。

普遍的な理想の女性の定義は、幸せで、愛情深く、他人への思いやりがあり、その役割に深い満足を感じている女性です。PMSなら理想の女性というタイトルを失うことなく、怒ったり不平を言ったり、いらついたりできるのです。

本当は女性のホルモンよりも、周りの環境の変化の方が女性を怒らせる理由に成り得ますが、ホルモンを怒りのせいにするならば、責任や批判から逃れられるのです。

「これは本来の彼女じゃない、自分ではどうにもならないんだ」 これが都合のいい言い訳であり続ける限り、女性の感情は無意味なものとなってしまうのです。

女性の怒りに対して、「ああ、毎月のあの日なんだね」と考える人がいるなら、女性が社会で深刻に受け止められたり、変革を起す機会は非常に限られるのです。

PMSによって利益を受ける医療業界

さて他に誰がPMS神話によって利益を受けるのでしょうか? お話ししますが、PMS治療は今や利益を生み出す好況産業になったのです。Amazonでは現在1900以上のPMS治療関連の本が見つかります。

簡単にGoogleで検索してみると、豊富な病院やワークショップ、セミナーを見つけることができます。インターネットの医療情報源として評判の良い、WebMDやマヨ・クリニックもPMSを知られた病気としてリストアップしています。これはありふれた病気ではありませんが、彼らはそのようにリストアップしているのです。

医師が処方する薬品まで一覧表化されています。例えば抗うつ剤やホルモン剤などです。興味深いことにどちらのサイトでも、効能には女性それぞれ個人差があると言っています。

これは理屈が通りません。PMSもですが、特定の原因による特定の病にかかったら、その治療により、非常に多くの女性の症状が良くなるはずです。でもこの治療法はそうではありません。

FDA(米国食品医薬品局)規制によると、効果があるとされる薬品は、対象となる人口のうち多数の人に、臨床的に著しい改善を見られなければならないのです。

ですから治療と言われているこれらのものには、それは当てはまりません。それでもPMSはありふれた精神的病であり、治療が可能だ、という神話がもたらす経済的利益は莫大なものです。

もしある女性に、抗うつ剤やホルモン剤といった薬品が処方されると、医療業界の常識では、3カ月ごとの医師のフォローアップが必要となります。そうなるとたくさんの通院となります。

製薬会社は、女性が皆、出産適齢期にある間はずっと処方薬を飲まなくてはならないと信じるなら、莫大な利益を得られるのです。

マイドルといった市販薬でさえ、緊張や興奮といったPMSの症状を治療するとうたっていますが、実際それに含まれているのは、ただの利尿成分や鎮痛成分そしてカフェインだけです。

カフェインの持つ魔法の力に私は反論する気はさらさらありませんが、それが緊張を緩和するとは思えません。2002年以来、マイドルはティーンマイドルを思春期の少女に売り込んでいます。

製薬会社は、早くから若い少女をターゲットにして、誰もがPMSになり、モンスターになると信じ込ませようとしています。「ちょっと待って、対処方法がありますよ。マイドルを飲めば人間に戻れますよ」と。2013年にマイドルは総売上高4千8百万ドルに達しました。

人の感情に男女差はない

PMS神話によって利益を得る者がいる一方、女性には深刻な悪影響が出ています。まず、女性の生殖保健の医療化が進むことです。

医学界は長い間、女性の生殖プロセスは治療が必要な病気であるとしてきた伝統があり、これが過剰な帝王切開、子宮摘出やホルモン療法といった代償をもたらし、女性の健康を促進するどころかむしろ損なっています。

次に、PMS神話は、女性は理性的でなく感情的すぎるという固定観念の一因となっています。月経周期が、ホルモンの浮き沈みにより女性を荒っぽい野獣とするものだとみなされるなら、女性全般が持つ力量が簡単に疑問視されてしまいます。

女性は職場で飛躍的な躍進を遂げてきましたが、未だに政界や実業界といった分野で高い地位につく女性は極めて少数です。

優れたCEOや上院議員の資質を考えた時、合理性や安定性、力量といったことが挙げられますが、私達の文化では、これらは女性より男性の特性のように思えますがPMS神話がこの一因になっているのです。

心理学者は人の感情には男女差はないと知っています。ある研究では4カ月から6カ月間、男女の被験者を調査したところ、双方が経験する感情変化の、質にも量にも差は見られませんでした。

そして最後に、PMS神話が、女性が感情的になる原因と向き合う障壁となっています。人間関係の質や労働条件、人種差別や性差別といった社会問題や、貧困による生活苦のほうが、日々の感情に影響を及ぼすのです。

PMSの影に感情が隠れてしまうことで女性はネガティブな感情の原因を理解する機会を失い、その原因に取り組む機会が奪われているのです。

つまり、PMSに関する朗報は、なかには月経周期により何らかの症状が現れる女性もいますが、 ほとんどの人は心の病になったりはしないという事です。ほとんどの人は仕事や学校に通い、家族の世話をする中でいつも通りの生活を送れるのです。

感情や機嫌に男女の差はほとんどないとわかっているのですから、女性は魔女だという古いPMS神話には別れを告げ、大多数の女性は情緒豊かでプロ意識に満ちた日常生活を送っているという現実を受け入れようではありませんか。ありがとうございました。

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