ディズニーランドとハロウィンの時だけ遠出する

稲田豊史氏(以下稲田氏):(川崎出身の若者研究所の女子大学生に向かって)どうですか? 川崎なんて、あんまり地方じゃないじゃないですか? 巨大モール文化って川崎のほうってどうですか? あんまりない? 

学生:そうですね、巨大モールがまずないんですけど。買い物をするならラゾーナ川崎っていう、ららぽーと的なものがあるので、そこで買い物をすれば1つで済むっていうのは昔からあって。買い物っていうと、憧れで「109に行ってみたい」って年に1回行ってみる……。

稲田:年に1回行ってみる(笑)。

学生:っていうのは昔はあったんですけど。今は、私は都内に出てしまったのでわからないんですけど、やっぱりラゾーナで済むっていうのは感じてます。

稲田:ラゾーナができたのって何年前くらいですか? 10年経ってます? 経ってないくらい? でも、普通に考えると、若い女性だったら、中学高校だったらラゾーナよりも渋谷ってふうにならないんですか? 

学生:そうですね。まず、渋谷が怖かったっていうのがあります。子供だけで行っていいところだと中学生くらいまでは思っていなくて、やっぱり子供だけで行っていいのは南武線沿いの武蔵小杉と川崎までかなっていうのがありました。

稲田:(笑)。南武線が限界っていうことですね。

学生:東横線は子供だけで行くところじゃないなって感覚があって。

稲田:あそこに大きな壁があるんだ? 南武線と東横線の間に。なるほど、大きいですね。すぐですけどね、乗り換えたら。

原田曜平氏(以下原田氏):でも、最近ハロウィンではマイルドヤンキーの子も渋谷に来たりするんでしょう? ハロウィンの時だけは。

学生:はい。去年から六本木のハロウィンに皆で参加をするようになったんです。

稲田:それは地元の子たちとですか? それとも大学の子たちと? 

学生:地元の子たちと皆でゾロゾロと。

原田:基本的には地元に引きこもっているっていうか、地元近辺で過ごしているんだけど、ハロウィンの時だけは出ていくと。

稲田:あー、なんかハレの日みたいな。

原田:ハレの日みたいな。ディズニーランドとハロウィンの時だけは遠出するみたいな。

電車に乗るのは精神的に抵抗がある

稲田:(笑)。因みにハロウィンは何をしますか? 六本木で何をするんですか? 

学生:まず六本木の居酒屋でお酒を飲んで、テンションが上がってきたら皆はクラブに行ってました。

稲田:そういう扮装をしているんですか? 

学生:そうですね。地元から皆の家に集まって、ゾンビメイクをして。

稲田:そのまま電車に乗るの? 

学生:電車に乗って行きました。

原田:良かったですね、ハロウィンができてね。電車に乗る機会増えたもんね。

稲田:(笑)。本当ですね。ハロウィン様様ですね。

稲田:電車が嫌いっていうヤンキーの声は複数ありましたよね? 確か。

原田:かなり多いですね。

稲田:だからさっきのミニバンの話に多分繋がってくると思うんですけど、ああいうプライベートの空間がずーっとそのままで移動できるっていうほうが好みであって、オープンスペースで公共の場所で電車に乗るっていうのは精神的に抵抗があるのか……。

原田:基本的には同じような人間関係で過ごしている人たちが多いので、いろんな人の目に晒されるっていうのがあんまり好きじゃないと。それよりかは自分の空間で移動するほうがいいと。

車の外側ではなく、内側の改造が増えている

原田:多分かつてのヤンキーよりも強くなっているのは、車の改造でいうと外側に改造するっていうよりも内側の改造が増えているんですね。

外側をいかつくするっていうか、それをやる子もいるんですけど、(改造の結果が)比較的見えにくくなっている。群馬でもあんまりそんな、すごいいかつい改造車はかなり減ってますよ。

稲田:竹槍出っ歯的なのは減っている。

原田:減っている。その代わり内装で、地元友達を乗せて快適なようにふかふかシートにするとか、そういうタイプの子がすごく増えているのにびっくりしましたよね。

稲田:昔はエアロパーツとか、所謂外側の物ですよね。見た目に威嚇行為みたいな感じで改造してましたけど。ホスピタリティーのほうに行ってる。

原田:だからマイルドっていう言葉が示す通り、すごく優しい子らが増えてきているような気がしますね。

稲田:そうなるとやっぱり、企業の商品開発とかもそっちの方向で物を作っていったほうが可能性があるっていうことですかね? 

原田:そうですね。あんまりビックマウスで、俺は何十億稼いで東京で何とかっていう子たちが減ってきてるんで、もうちょっと快適な地元生活をサポートしてくれるようなコンセプトの何か商品がいいでしょうし。車もいかに悪く見えるかっていう物じゃなくて、皆と楽しめますよって方向性のほうが彼らにウケるでしょうし。かなり時代によって価値観変わってきてるっていうのは言えると思うんですね。

マイルドヤンキーは優良消費者

稲田:実際どうなんですか? 原田さんは広告代理店なんで、いろいろ企業の動向なんかも耳に入ってくると思うんですけど。そういうふうな商品開発をし始めている企業もあるんですか? なりかけていたりするんですか? 

原田:全部の企業を知っているわけじゃないんですけど、基本的にはかつての若者像を引きずっている企業が多いなというふうに思います。それはいくつか理由があって、まず先程言った通り、日本の若い人の人口が減ってきているんで、企業も調査費をものすごく投じれないと。どっちかっていうと中高年、せいぜい団塊ジュニアに(投じている)。

稲田:人口の多いところに、どうしてもお金を使わなきゃいけないっていう。

原田:規模の経済ってそういうものですね。あともう1つが、やっぱりマイルドな動向がどうしても理解しにくいと。ヤンキーって言ったらきっとこうだろうっていうのがずっと変わらなくて。悪い物が好きで、リーゼントしてて、ってイメージが未だに残っている。

あとは、調査しにくいっていうのがあるんですね。先程言った通り、地元が大好きなんで。昔のヤンキーの子たちって地元に残ってる子もいたと思うんですけど、心のどこかでは「東京に行きたい」とか上昇志向がすごいあったり、ちらついてたりとかあったと思うんです。今の子たちは本当に行きたくないっていう感覚なんですね。

だから、調査会社を通して謝礼何万円払うから、ここの調査会場に来てくださいって言っても、なんか面倒臭いし嫌だっていう子が増えちゃってるんですよね。

稲田:(笑)。実際そういうことがあったんですよね? 来てくれないんですよね? 

原田:1回ある地域のヤンキーの若者たちにインタビューをした。ある企業の新商品を試すというんで。ただ、これは新商品なんで外に出せない。密室空間でやんなきゃいけないから、赤坂のうちの会社でやることになった。

そのため彼らを呼ぶ。ところが「来たくない」と。「謝礼いっぱい出すよ」と。それでも「来たくない」と。最終的には来てくれたんですけど。しょうがないから、貸切バスを送って赤坂まで連れてこなきゃいけないかなってところまで追い詰められました。

稲田:そんなに電車乗りたくなんですかね? それとも動きたくないんですかね? 

原田:あと、やっぱり、何でしょうね? 赤坂ってよくわからないし、企業にテストされる、人体実験されるのかもとか、良からぬ想像とかもしちゃうのかもしれないですけど。

稲田:(笑)。すごいですね。21世紀にそんなことが起こるんですね。

原田:だからやっぱり企業が、実は優良消費者でありながらその優良消費者にタッチできてないっていうのが、今の若い人たちの消費の停滞にかなり繋がっていて。

喫煙者、パチンコ、パチスロユーザーがいまだに多い

原田:例えば、この本にも書いてますけど。お酒が厳しい。若者飲まなくなった。でも、この子たちは比較的飲む子が多いわけですよね。

車に対してだってすごく温度がある程度高いわけじゃないですか。昔とタイプは違ってきてるけど、車の温度は高い。それからタバコだって、すごく吸う。

稲田:吸うんですよね。この喫煙率低下の波とは全く関係なく。

原田:今、実は20代の男女に一番目売れてるたばこってセブンスターなんですけど、これが全て意味してますよね。セッターっていうのは、ヤンキーたばこって言われるんですけど、ヤンキーが吸ってる比率が高いんだよ。他の子は段々時代の流れと共に禁煙者が増えてるんで。

結果的に、20代で一番吸われてるたばこってヤンキーたばこになるっていう、そういう構造なんです。たばこも吸ってる子が多いですし。パチンコスロットってのもものすごい人口減っていますけど、(ヤンキーには)かなりやる子たち多いですね。

稲田:かなり金使ってましたね、パチンコパチスロは。

原田:可処分所得によって違うんですけど、全体的に言うと消費意欲が他の層に比べると旺盛で、かつけっこうお金を使ってるっていうのは言えると思いますよね。

稲田:何か会場からもし質問があればとりたいなと思ってるんですけど、どうですかね? ありますか? 若者研の方でもいいですよ。

「関わったけどこの点を知りたい」でもいいですし。あと、若者じゃない世代の方もいらっしゃってるので、是非何かありましたら。

原田:「俺の時代のヤンキーは違った!」とか。