人を肌の色で見ることはしなかった

アマンダ:ところで、あなたはキャリアにおいて、常にマイノリティであったことでしょうね。唯一の女性だったであろうとも思います。唯一1人の黒人女性、唯一1人の貧困家庭出身者だったかもしれません。

それは、プロとしてのキャリアパスに影響を与えましたか? 孤独を感じる状況をどのように切り抜けて来ましたか? そしてそれは、似たようなことを感じる人々を導き、助けようという思いにどんな影響を与えましたか?

オプラ・ウィンフリー氏(以下、オプラ):オーケイ、アマンダ。たくさんの質問ね。

アマンダ:ああ、すみません。では……。

オプラ:ちょっと眼鏡をかけるわね。

アマンダ:オプラさんが来て下さるとわかった時に、できる限りたくさんの質問をしようと思ったのです。

オプラ:アマンダは、私について興味津々なのね。ちょっと待ってね。最初の質問は何だっけ?

アマンダ:「孤独を感じる時にはどのように切り抜けてきたか」です。

オプラ:常に女性は私1人だったわ。部屋(仕事場)にいる女性は、いつも私が1人だけ。今でもそうよ。白人男性は大勢いたわ。大抵が年上だけど、それが楽しいの。わくわくするわ。黒人が私1人ということについては、私はあまり気にしなかった。人を肌の色で見ることをしなかったから。

他の人を肌の色で見ていたら、今私がいる場所までは来られなかったし、今の私になることはできなかったと思うわ。私は心から、マーティン・ルーサー・キング牧師の言葉を信じているの。「相手の性格を理解する」。他の人にも、私を肌の色で判断させないわ。だから、とても楽しいのよ。

マヤ・アンジェロウによるすばらしい1節があるわ。「祖母たちへ」という詩の1節で彼女は書いている。「私は1人で来ましたが、1万人の代表としてここに立っています」。

だから、私が業界で、とても大変なことをしなくてはいけなくなった時や、大きな困難に立ち向かうことになった時は、まず座って、この1万人に力を貸してくれるように呼び掛けるの。私の祖先や、先達、私がこうして白人男性たちと同じ土俵で働けるよう道を築いてくれた女性たちにね。それがとても楽しいの。

なぜって、私が今ここにいられること、何よりもまず、私自身でいられることは、私1人でできたことではなくて、私が受け継いで来た遺産なの。そしてそれは私の力なのよ。だから私が部屋に入る時は、私だけではなく、その全ての力を背負っているの。

同じ仕事をしている共同司会者のほうが多く給料を貰っていた

オプラ:孤独は全く問題ではなかったわ。ただ、23歳の時、まだボルティモアで働いていた時は別だった。上司の所へ行って、こう言ったことがあったの。「『ピープル・アー・トーキング・ショー』の私の共同司会者は、私より多く給料をもらっています」。私は23歳過ぎで、1979年、もう1980年だったかしら。

上役への直談判なんて、どんなに勇気がいるか、わかるでしょう? でも私は言ったわ。いつも自分で自分のために立ち上がるの。

私は言ったの。「リチャードのほうが、私よりもお給料を多くもらっています。同じ仕事をしていて、同じショーに出て、同じ業務をこなしている以上、これが公正だとは思えません」。

すると、私の上司は言ったの。「なぜ彼と同じ額面の給与が欲しいのだね?」って。だから私は言ったの。「2人が同等の仕事をしているからです」って。すると彼は言うの。「しかしリチャードには子供がいるんだよ。君にはどうかね」って。私は、「いません」と答えたわ。

すると、彼は言ったわ。「リチャードは、子供の大学の学費を払わなくてはいけない。マイホームのローンも持っている。きみには持家はあるのかね」。私は「いいえ」と答えたわ。「リチャードは保険料もローンも支払わなくてはいけない。君はどうなのかね」「そういったものは何も無いです」「では、どうして君は、彼と同額の給与が必要なのかね」。

だから私はこう言ったの。「お時間を頂き、ありがとうございました」そして退室したわ。文句は言わなかった。訴訟も起こさなかったわ。

その時、私は潮時だと思ったの。だから、私自身のためのプロセス、私自身のための準備を始めたの。ここには長くは居ない、必要なものを得られるのはここではないとわかったから。

当時の上司はアフリカ系アメリカ人として初めて副報道部長に就任した人で、その権力に酔っていたの。多分、彼は朝起きたらまず、どうやって私に嫌がらせするかを考えていたんじゃないかしら。

時代として、絶対私が負けるってわかっていたから、訴訟は起こさなかったわ。良いことは何も期待できないし、テレビ業界から締め出されるだろうし、大騒ぎにもなるわ。それに、ここには長くは居ないだろうとわかっていたもの。

私には将来像があった。まだはっきりとはわからなかったけど。でも、将来を握っているのは私だとちゃんとわかっていた。私より大きな何者かが私を導いてくれたの。この地上に生まれたのは、私のみの存在のおかげではないことをちゃんとわかっていたのよ。

アマンダ:それをきっかけとして、不要なものを切り捨てて、前に踏み出したのですね。

オプラ:いいえ、ただ単に過去のアーカイブに保存しただけで、また機会は巡ってくるのよ。

アマンダ:ふーむ、また戻ってくるわけですね。なるほど。そうかもしれませんね。

オプラ:そのうち、私たちは同じ部屋に座ることになるの。

そして、それは90年代のことだった。私は自分の番組、オプラ・ショーで、そいつに再会したのよ。ああ、イエス様。ありがとうございます。神様。素晴らしいことが起こったわ。

(会場笑)

全ての決断は内なる声に耳を澄ます所から始まった

オプラ:次の質問をどうぞ。

アマンダ:はい。ではお言葉に甘えて。今現在、私たちはシェリル・サンドバーグさん率いるFacebook社から5マイルしか離れていません。昨年、彼女は『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』という本を出版し、すさまじいけん引力を発揮しています。同時に、批判も受けています。もし、あなたが女性のキャリアについて本を書くとしたら、どんなタイトルにしますか。

オプラ:私だったら、タイトルは「リーン・イン」前に乗りだそう、というタイトルにはしないわ。「ステップアップして内なる自分に踏み込もう」にするわ。それが真実だからよ。

この世界では、まず自分が何者かになる前に、まず行動するなんてことはありえないわ。自分が自分であること、自分との繋がりを保つこと、そして自分自身よりも大きなものとの繋がりを持つことは、行動よりも大切よ。それに、そうすることは、行動への活動源にもなってくれるの。

そしてここスタンフォードのような大学院で起きる、極めて大事なことがあるわ。それは、自己実現を果たし、世界を変えるために貢献するには何ができるかを自覚したリーダーが輩出されること。

自分は何者かがちゃんとわかっていなければ、リーダーシップは発揮できないわ。自分を知ること、なぜ生まれて来たのかを知ることに時間を割かなくては、こういったことはできないの。

私は、全ての人は天命を持って生まれて来ると確信しているわ。天命は、職業の定義をも超越しているの。生まれ持った究極の運命の瞬間は、全ての人に訪れる。ボルティモア時代の私が、違和感を感じていたのはそのためよ。

そして、シカゴで25年間ショーで成功した後も、「これも何か違う、私は更に何か別のことをやるべきなのだ、究極の瞬間たる天からの求めがあるはずだ」と感じ始めたの。

全ての人にそれはあるの。そして、一定レベルの自己認識や、内なる声、つまり本能とちゃんと繋がっていないと、それを充足させることができないわ。そのように自分にとってのベストの選択をもたらす感覚を、私は「心のGPSシステム」と呼んでいるの。

私に利益をもたらす決断は全て、内なる声に耳を澄ます所から始まったわ。そして、耳を傾けないことによってトラブルに巻き込まれたの。

声、つまり本能を自らの考えで無視し、なんとか合理的に丸めこみ、自分に言い聞かせるの。例えば、「きっともっとお金を稼げるわ」って。でも、それは間違っているのよ。耳を傾けた結果、世の中で言う所の、いわゆる裕福で成功した私が皆さんの前にいるわけ。

でも私の奥深い所で鳴り響いているのは、私の人生がとてもすばらしいものだという感覚。私の内なる人生は、まったく損なわれていないわ。私は、内側からまるごと人生を謳歌しているの。

つまり私が持っているもの全ては、自分が何者かを理解することによって、人生を満たしているから手に入れたの。どうやって世界に貢献できるかを自覚することによって、内なる自分を満たしているからよ。

私はもう2度とテレビに利用されない

オプラ:私が真に世の中に貢献できるのは、一見は、トークショーのホストをすることによってだわよね。映画出演や、自分のテレビ局を所有しているからできているようにも見えるわ。でも、私にできる真の貢献、私が生まれて来た理由は、人の間に絆を作り、より高い自己認識に結び付けることなの。

私は、人が自己を認識する手助けをするために生まれて来たの。だから、私のテレビ番組の理念は「自己認識の支援」よ。最初はそれをわかっていなかったわ。「自分のショー番組ができたわ!」と舞い上がっていたの。そして、転機はクー・クラックス・クラン(KKK)のメンバーをインタビューすることによって訪れたわ。

想像できる? すばらしい事を学べるのは、時には大変な苦難からなの。アフリカ系アメリカ人として私は、「クー・クラックス・クランのメンバーをインタビューして、彼らをやっつけてやる」「ユダヤ人の皆さんを始め、被差別対象の人達のために頑張るんだ」と思っていた。

でも、コマーシャル休憩の間に、クー・クラックス・クランのメンバーが互いに合図をして、目配せしているのを見たの。

その時に内なる声、あの本能が、「私がやっていることは、誰の得にもならない」と告げたわ。彼らは、この状況を喜んでいたの。私を利用していたのよ。私が、彼らをインタビューしているのだと思っていたけど、彼らの方が、私を利用していたの。その時には気づけなかったわ。

最後の放送の年に、同じ連中を連れて来たの。すると彼らは、あのショーを、「新規メンバー募集に利用していた」と話したの。私には、薄々それはわかっていたわ。そしてショーが終わった後、もう2度とこのようなことは起こさないと決意したの。私の番組を利用させまい、私自身も絶対に利用されないって。

90年初頭、喧嘩番組が流行していたの。私は、そのような喧嘩騒ぎとは無縁だと思っていたわ。ジェリー・スプリンガーのようなことはしないし、自分のショーはそこまでひどいものではないと勝手に思い込んでいたの。でも、結局は私も、テレビでばか騒ぎを起こしてしまったわ。男性の情事をオンエアしてしまったの。

番組のゲストに「妻に浮気の告白をしたい」という男性が出演したの。彼は極めてエキセントリックな人物で、妻と一緒に、ガールフレンドもつれて出演したの。「なんでそんなことをしたの」と人に聞かれたけど、今まで彼にそんなことをさせた人がいなかったからよ。「奥さんとガールフレンドを連れて来てくれますか?」と聞いたら、彼は「構いませんよ」と答えたの。

アマンダ:彼には、考えがあったのですね。

オプラ:そう、腹案があったのね。男性は、奥さんとガールフレンドを連れて出演した。この放送は、私の人生を変えたわ。クー・クラックス・クランと、この女性がね。奥さんがいて、男性がまん中で、隣にはガールフレンドがいたの。そして、彼は生放送で奥さんに告白したの。彼は、全世界と奥さんに、ガールフレンドが妊娠したことを告白したの。

私は口を開けて、「ああ神様!」って言ったの。客席が、息を呑んだわ。思い出すだけで、涙が出るわ。奥さんの顔を見て、彼女の受けた恥辱と恥ずかしさをまざまざと感じたわ。そして「こんな生放送は2度とごめんだ」って言ったの。こんなことをするくらいなら、テレビ業界を辞めてやるって。

プロデューサーとミーティングを開いたの。直前がクー・クラックス・クランでしょう。そして今回の不倫騒動でしょ。なんて道徳的なショーなのでしょうね。だからプロデューサーに言ったの。「これは変えなくちゃいけない」って。方向転換よ。

私はもう2度とテレビに利用されないわ。私がテレビを利用するの! なんてすてきなコンセプトでしょう。

企画は私自身がやりたいかどうかで決定を下す

オプラ:ではテレビの力をどのように使いましょうか、ということになったわ。その時には、長く続く理念はすぐには出なかったけれど。世界に向けて、何を発信したいのかを問うたの。世界に向けて何を発信する手段としてテレビを使おうかって。

「世界をどのように変えたいか。どのように世界に影響を与えるか。そこに焦点を絞って、中心として考えましょう」と話し合ったの。

そして、皆さんにバックステージでお話ししたことと、そっくり同じことをプロデューサーに言ったの。「制作意図をしっかり練ってから、ショーの企画を持って来て」って。

私が信じる宗教、マントラ、法律があるとすれば、それは「運動の第3法則」よ。スタンフォードの皆さん。「一方が受ける力と他方が受ける力は向きが反対で大きさが等しい」これが、私が唯一信じるものよ。私は考えをちゃんと持っているの。だから私が行動すれば、巡り巡って私の所に戻って来るの。引力みたいにね。上に行くものは、落ちて来るものよ。

本人の意図も、行動を後押しするわ。私も、なぜそれをしたいかという意図をはっきりさせるまでは、行動には移さないわ。なぜなら意図によって、反応や成果、結果が決まるから。どんな状況でもそれは同じよ。どんな意図でも私には構わないわ。

だから、プロデューサーたちに言ったの。「制作意図を持って企画を上げてちょうだい」って。何であろうと、何を提案しようと、どんなアイデアを提案しようと構わない。私はその制作意図を基準に、私自身がやりたいかどうかで決定を下すわ。本当に私がそれをやりたいかどうか、私たちの番組を使ってそれをやりたいかどうかでね。

これが、私たちが長年ナンバー1の座を保っている秘訣よ。制作意図に後押しされ、制作意図を基準としていて、目的意識のあるプログラムだからなの。そういうことよ。

アマンダ:すばらしいです。そして、この答えは、インタビューの2番目のセクションへの導入にうってつけです。

私が初めてこの引用を読んだとき、あまりにも深く心打たれたので、深くお聞きしたくなったのです。

「私はショーで3万人の人とお話ししたけれど、3万人全員が、同じことを言っていたわ。全員が自分を認めてほしいと言っていたの。皆さんが出会う全ての人に共通の願望よ」オプラ・ウィンフリー

オプラさん、あなたは真にルネッサンスな女性です。ご自身のテレビネットワークを所有し、ショー番組は25年の間、大人気を博し、映画にも出演され、同時代の最も有名な慈善家の1人でもあります。それに必要なのは、どんな資質なのでしょうか。

オプラ:あなたとお話しするのは楽しいわ。他にどんなことを言ってくれるのかしら。すてきな賛辞だわ。

アマンダ:私も、オプラさんとお話しするのは楽しいです。

オプラ:「ルネッサンスな女性」っていうくだりが特に気に入ったわ。どういう意味で言ったのかまではわからないけど、とてもすてきだわ。

アマンダ:私は史学専攻なので、自然に出てしまいました。

オプラ:私はルネッサンスな女性なのね。他にはない発想だわ。どうぞ、先を続けて。

アマンダ:気に入っていただけてうれしいです。