2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
マサチューセッツ工科大学 卒業式 2013 ドリュー・ヒューストン(全1記事)
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今日皆さんは何回もこれを聞くと思いますが、誰よりも先に言わせてもらいます。2013年卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます! 今日この日を迎える事をとても嬉しく、誇らしく思われていることと思います。私もここに戻ってこられたこと、そして今日ここに迎えていただいたことをとても嬉しく思います。今でも毎日卒業記念リングをしています。この指輪を手にした瞬間は、今でも人生の中で最も誇らしく思った瞬間のひとつです。
この日がなぜこんなに特別な日なのか。これには、いくつもの理由がありますが、私にとっての理由は、今日から皆さんは常に「合格」を目指す必要がなくなるということです。ここまで来るのに、バスケットボールでスコアをとったり、テストに合格したり、大学に入ったり、クラスを取ったり、学位をとったり、請求書を払って仕事に行ったり。今日それが終わります。人生をプランする中で一番大変なのは、これからどこへ行くのかわからない、でも少しでも早くどこかにたどり着きたい。人々は「会社をやったらどうだ?」とか「きっと君は癌の治療法を見つけるよ」だとか「きっと君はベストセラー作家になるよ」とか言うかもしれません。
でも皆さんは、「そんなこと言われてもわからないよ! ものすごい失敗をするかもしれないし!」と言うかもしれません。私は卒業の日を迎えたとき、自分が何がしたいのか全くわかりませんでした。皆さんが座っている場所に私が座っていたのは、そんなに昔のことではありません。私の卒業の時も雨が降っていました。ここで皆さんの前で話をしているなんて……。こんな風になるなんて想像もしていませんでした。
というよりも、私には将来設計なんてものがありませんでした。今思えば「卒業時に将来設計をしておけ」と言う方が無理な話だと思います。今日から皆さんが歩み始める人生と、もしも私が2006年に戻れるのなら何をしたいか、ということを考えてきました。皆さんがここにいる理由は、皆さんが賢く、真面目に一生懸命やったからということに尽きるでしょう。
しかし誰も「変化すること」が成功へのキーだということは教えてくれなかったと思います。なので、私が皆さんにお話したいのは、「私が卒業式に聞きたかった話」です。難しいことはお話しません。「テニスボール」「サークル」そして「30,000」が鍵です。「何を言っているんだ?」と思っているでしょう? 説明します。
私は最初の会社を、あるチェーンレストランの座席で21歳の時に立ち上げました。共同設立者と私は今まで会社を立ち上げたことなどなかったので、市庁舎へはスーツを着ていかなきゃならないのかな? 重要書類に捺印するのに社印が必要なのかな? これは一大事だ! などと思っていたのですが、実際のところはオンラインで必要事項に記入して送信。ものの2分程度で会社を設立することができました。あまりロマンがなくがっかりしましたが、5分後には私達はビジネスオーナー、オニオンリングを食べながらSAT受験者の為の新しいオンライン講座を開設するビジネスをやることに決めました。
当時の若者は、800ページくらいある本を使って勉強しており、他社のオンライン講座にはあまり優れたものもなかったので、とてもいいアイディアだと思いました。それこそSATに出てくるボキャブラリー「Accolade」―これは名誉、賞の意味ですが―、これを使って 会社をThe Accolade Group, LLCと名付けました。この方がかっこいいと思ったからです(笑)。
チェーンレストランからの帰り道、文房具店に寄って名刺プリント用紙を買いました。会社を始めたらまずまずやることは、フォトショップでロゴをつくって、「Founder」とプリントされた名刺を刷ってカンファレンスでばらまく! そして女性を口説くキメ台詞「そうなんだ、僕は会社をやってるんだ」を練習することだと思っていました。楽しかったですね(笑)。
真面目な話に戻ると、一番楽しかったのは新しいことを学ぶことでした。毎年夏はフラタニティーハウスで過ごしました。その家の5階には屋根の上へ続く梯子がありました。私は屋根の上にナイロンの緑色の椅子とAmazonで買い貯めた本を毎週末持ち上がり、新しいことを学びました。セールス、マーケティング、企業方針、マネジメント等、私の知らなかったことすべてです。まさかフラタニティハウスの屋根の上でMBAの勉強をするなんて思ってもいませんでしたがね。
しばらくはよかったんです、でもそれから数年後事態は悪化し始めました。どんどんやるべきことが滞りはじめ、ある日思ったんです。「もうこんな数学なんかやってられるか!」と。私の何かがいけないんだ、と思いました。やるべきことをきちんとできない自分にイラつきましたし。自分の会社をやるのは長年の夢でしたが、元々私にはできるはずもなかったことなんだと思い始めました。
なので少し休むことにしました。皆さんがコース6(コンピューターサイエンスのクラスのひとつ)を取ったかはわかりませんが、私は取っていたんですね。コース6を休むということは、時に「ポーカーボット」を書くことと同じなんですね(笑)。
オンラインポーカーゲームをやったことがない人の為に説明しましょう。オンラインポーカーの世界では、長時間パソコンの前に座ってクリックし続けた結果、負けてお金も持っていかれるというのが常です。ポーカーボットが何をするかというと、コンピューターにゲームを任せて、負けて、お金を持っていかれる。そう、このシステムをつくったのです。
でも私は、もうこれに夢中でした。この時期に両親はニューハンプシャーのコテージで家族で週末を過ごそうじゃないか、と言いだしたのですが、私はポーカーボットの開発を続けたかった。私は彼らのところへ出かけます。「元気、母さん?」とあいさつした次の瞬間、私は車のトランクから100パウンドはあるであろうワイヤーとコンピューターを取り出して、湖畔のコテージにずるずると担ぎ込みました。ダイニングルームのテーブルは少し小さかったのでコンロの上のフライパンなんかをどかして、モニターなんかを置く場所をつくったんです。母が入ってきて、「あなた何やってるの!?」と言いました。彼女は私の刑務所行きは決定だと思ったのです。
ここでちょっと話が逸れますが、私は両親には多大な迷惑をかけました。ここにいる皆さんも、皆さんのご両親にたくさん心配をかけられたことと思います。なのでここで皆さんがここまで来るのをサポートしてくれた、皆さんのご両親、大切な人たちに感謝しましょう。ありがとう!
(拍手)
好きなことを仕事にしなさい、と言おうと思ったんですが、それって実はあまり助けにならないんですよね。それは、今やっていることが自分の好きなことなんだと思い込むことがとても簡単だからです。でも考えてみると、私が知っている「幸せで成功している人」というのは、好きなことを仕事にしているだけではなく、自分の仕事に心を奪われているんです。その熱心ぶりはもう大変なものですよ。彼らにとって、とても重要な問題の解決に打開策を見つけることに心を奪われているんです。
小さな頃、犬を飼っていました。犬とテニスボールで遊んだことはありますか? テニスボールを手に持って見せただけで彼らはものすごく興奮します。そして投げた瞬間興奮して走り出し、ボールに向かって一直線、リードが持っていかれたりしますよね? そう、これが幸せに成功している人々の姿です。皆さんもこんな気分になれるものを見つけて欲しいと思います。いい給料をもらって、一生懸命仕事をしていてもデスクに縛り付けられているみたいだ、と文句を言っている友人もいます。問題は、多くの人が「テニスボール」を簡単に見つける事が出来ないという点です。それは私も同じです。SATはとても好きですよ? 能力検定試験ほど面白いものはありません(笑)。
でもね、SAT試験対策講座の王者、それは私の「テニスボール」ではなかったんです。ポーカーボットとドロップボックスはメインの仕事の気分転換にやっていたものなんです。頭の中で「こうしろああしろ」「自分の仕事をしろ」という声が聞こえてくるので、私は「もう黙ってろ! 仕事ができないじゃないか!」と言い続けました。
でも時に、この頭の中の小さな声が正しいんですよね。これを理解するのには時間がかかりましたが、人が一生懸命働くというのは、彼らは人より優れているから、というわけではないのです。問題解決するのが楽しくて仕方がないから一生懸命働く人もいるのです。
今日この日を境に、皆さんに覚えておいて欲しいことがあります。がむしゃらに一生懸命やることが重要ではないのです。「テニスボール」を見つけることが重要なのです。わくわくすることを見つけてください。時間はかかるかもしれませんが、探し続け、心の声を聞いてください。
では、私が卒業してすぐの夏の話に戻りましょう。皆さんにもこの夏が待っています。フラタニティの中で仲が良かった友人アダム・スミスが、彼の友人マット・ブレジーナと共に会社を始めました。私は嬉しく思い、「なぁ、みんなでアパート借りて一緒に仕事しないか? きっと楽しいよ! みんなで住めば家賃も安く上がるしさ」と提案し、私たちは共にアパートへ引っ越します。完璧な夏でした。いや、ほとんど完璧な夏でした。
というのはエアコンは壊れていて、パンツ一丁で仕事をするハメになりました。アダムとマットは起きている時間中ほとんど仕事をしていましたが、ある時どこかに呼ばれて出かけて行く様子だったので、「どこ行くんだい?」と聞いたら「投資家に会いに行くんだ」と言います。私は「そうか」と言って仕事に戻ります。投資家がヘリコプターに乗せてくれるとか言いだすので、マジかよ? と思いましたね。
私はその時点で自分の会社を2年やっていました、でもアダムは立ち上げてまだ2か月です。「僕だってヘリコプターに乗りたい!」と思いました。でもそれはまだ悪い知らせのほんの始まりだったのです。事態はどんどん悪化し、8月がやってきて、アダムが悪い知らせを持ってきました。アダムたちが引っ越すと言いだしたのです。ただ引っ越すのではなく、彼らは業界本場のシリコンバレーに引っ越すと言いだしたのです。私は先を越された気がしました。まあ、そういうこともある、アダムにたまに電話して様子を聞こう、と思いました。
ある日アダムに電話すると「今日ビノッド・コースラさんに会ったよ」などと言うのです。ビノッド・コースラはシリコンバレーの大の成功者で、サンマイクロシステムの共同設立者です。私だって知っていました。「それはすごいね、彼はなんて言ってた?」と聞くと、アダムは「コースラさんが僕らに500万ドル投資してくれるって言うんだ!」と嬉しそうに言いました。私も喜びましたが、反面とてもショックでした。アダムはフラタニティの弟のようなもので、飲み仲間で、2歳年下です。言い訳できない! アダムは成功への道を進んでいる!
アダムは知りませんが、彼のおかげで目が覚めました。自分を変えなければいけないと思いました。「あなたは、あなたの周りにいる最も近しい人(サークル)5人の平均だ」とよく言われます。ちょっと考えてみてください、皆さんの最も身近にいる5人は誰ですか? 良い知らせがあります。MITはこの「身近な人の輪(サークル)」を高めるのに世界で最も適した場所です。もし私がここで学ばなければ、アダムには会うこともなかった。私の共同設立者のアラシュに会うこともなかった。そしてドロップボックスも生まれなかった。「自分に刺激を与えてくれる人と一緒に時間を過ごす」というのは、才能があることや一生懸命に仕事をすることと同じように大切なことである、ということをここまでに学びました。
もし、例えばマイケル・ジョーダンがたくさんのイタリア人に囲まれていたら、彼はNBAにはいなかったと思いませんか? ポイントは、周りの人(サークル)が私をより高めてくれるということです。アダムが私の目を覚ましたように。これからは皆さんの周りのサークルは広がるばかりです、同僚や皆さんの周りに住む人々ですね。
どこに住むかはとても重要です。MITは世界にひとつだけ、ハリウッド、シリコンバレーも世界にひとつだけの場所。これは偶然ではありません。皆さんがどの道を選ぼうとも、その道には必ずその道でトップの人々が集まる場所があるはずです。その場所に皆さんも行くべきです。妥協してはいけません。その道で尊敬する人々と実際に会えること、彼らから学べることはとても素晴らしいチャンスです。皆さんの尊敬する人を、皆さんのサークルに含めるのです、そして彼らに学びます。
卒業後に陥りやすい最後の危険な罠は「準備すること」。誤解しないで下さい。学び続けることは最も重要なことのうちのひとつですが、卒業したら「変化」が必要です。これからは、実際に行動してみて初めて学ぶことができるのだ、ということを覚えておいてください。夢の為に計画し、勉強して一生を過ごすことも出来ますが、皆さんがしなければならないのはとにかく始めることです。
私だって、準備が完璧にできていたわけではありません。サンフランシスコに引っ越して間もない頃、投資家達が「オッケー! 投資しようじゃないか! どこにお金を送金すればいいかな?」と言った日を覚えています。24歳だった私にとって、それはもうクリスマスみたいなものでしたね。プレゼントを開けるみたいに月曜の朝一番、パソコンを開き、オンラインバンキングにアクセス、更新ボタンをひたすらクリックする。自分の会社の口座残高が60ドルから1.2百万ドルになったとき、「うぉぉ! すごいぞ! 残高数字にコンマが二つも(120,000,000)!」(笑)。
でも次の瞬間なんだかすごく変な感じがしたのです。「待てよ? このお金、取られやしないだろうか? 一体僕は何をしようとしているんだ?」。皆さんもこの感じを経験するでしょう。MITはこれを「消火ホースから酒を飲む」と言います。これはこの例えに見るように、とてもわくわくすることですがね、内出血確実です。
今日卒業する皆さんのやるべきことは、「誰も使っていない消火ホースを見つけること」。私にとってそれはドロップボックスでした。ご想像の通り、この会社を立ち上げた時のことは、今までの人生で最高に楽しく満たされた経験のうちのひとつです。あまり話してこなかったのですが、それと同時に最も辛く、苦しく、恥をかき、イライラした経験でもあります。ここまで来るのに犯した失敗の数は数えきれません。ラッキーなことに、それはたいした問題ではありません。
つまり、誰も実際の人生でパーフェクトな成績を収めることはできません。大学を卒業すれば、学校の成績など関係ないのです。ビル・ゲイツの最初の会社は信号を操作するソフトウェアをつくる仕事をしていました。スティーブ・ジョブズの最初の会社は、無料通話ができるプラスチックのホイッスルをつくっていました。彼らの最初の会社は成功しませんでしたが、彼らがそんなことを気にしているとは思えません。これからの人生で失敗したってそんなに大したことではありません。人生の中で一度だけ正しければいいのです。
昔は私も心配ばかりしていました。でも落ち着いて物事を考察し、心配癖を吹き飛ばした日のことを覚えています。サンフランシスコに移ったばかりのある夜、眠れずにインターネットを見ていたところ、「あなたの人生は30,000日」と書いてあるページを見つけました。最初は「あぁそうかい」と見ていたのですが、なんとなく気になり、計算機を取り出し24歳×365日をやってみたところ 「わぉ、9,000日も使ってしまった! 今まで何をやっていたんだ!」と思いました。ちなみにここにいる皆さんはすでに8,000日使っていますよ。これが初めに言った「30,000」です。
その夜、気が付きました。「準備や練習なんてしている暇はない、毎日時間は過ぎていくばかり。これからはパーフェクトな人生ではなく面白い人生にしよう!」。冒険して人生を終えたいと思いました。祖母が今日、ここに来ています。来週は大好きな祖母の96歳の誕生日です。
(拍手)
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