「自分が主役じゃなくなる怖さに直面した」成長フェーズにおけるCEOの役割の変化とは

経営者としての経験の積み方・経験の仕方 #3/3

IVS 2015 Spring Miyazaki
に開催

IVS 2015 Springの本セッションを前に行われた特別インタビューに、じげん・平尾丈氏、セプテーニ・佐藤光紀氏が登壇。たからのやま代表・奥田浩美氏をモデレーターに迎えて「経営者としての経験の積み方・成長の仕方」をテーマに意見を交わしました。本パートでは、会社が成長フェーズに入ったときの経営者の役割の変化について語り、自身の経験から後に続く若い起業家たちへアドバイスを送りました。

成長フェーズにおける経営者の役割

奥田浩美氏(以下、奥田):私も聞きたいと思っている質問がありまして、エッサホイサとやっていた経営者の時期と事業が拡大してきた段階で、ご自身に何か変化はあったのか。上場したとか、ある程度会社の規模が拡大したときに、経営者としてどういう変化があったのか?

佐藤光紀氏(以下、佐藤):やっぱり立ち上げるのが好きなタイプなので、ゼロから1をつくっているときは、すごくテンションが高い状態で、自分が意思決定してリードして事業をつくっていくので、そんなにストレスを感じないです。

一方で、組織をつくって、人に任せて会社を伸ばすというステージに入ったときに、自分のやり方が全く通用しなくなってきた時期があって。自分たちの場合は、大体売上100億円とか、社員数100人ぐらいになったときに、そういう時期が訪れた。

今考えると、明らかに踊り場を迎えていて、仕事の進め方から意思決定の仕方から、組織のつくり方から事業のつくり方まで、全部リビルディングするという時期が数年続いたんです。

それは、自分としてはものすごく変化の節目になっていて、自分がトップとして緊張感を持って事業をつくっていく時期から、優秀な人たちがたくさん入ってきて、その人たちが自然体で得意なことや好きなことに熱中して、優れた事業やサービスがつくられていく(時期)。

本当の意味での経営というか、自分が何でもするのではなくて、仕組みをつくって会社を伸ばすと。『ビジョナリー・カンパニー』でいうところの「時を告げるのではなく、時計をつくる」。そのときに読み直して、「こういうことだったんだな」と。一番最初に読んだときはわからなかったんです。

『ビジョナリー・カンパニー』はすばらしい本で、本当にいいことが書いてあるけど、一番最初に読んだときは、「本当にそれでいいのか」と。

当時の自分にとってはあまり腹に落ちなかったんですけど、自分が経営の踊り場に立ってみて、「ここから先どうやって伸ばしていこうか」と真剣に考えたときに、「自分は時間を告げる役割でしかなかったんだな」と思い、「時計をつくる仕事に集中しよう」と。それであらゆる仕事の仕方を変えたんです。

仕組みや環境づくりによって変わったこと

佐藤:長くなってしまうので割愛しますけど、自分のしている仕事を全部書き出してみて、それを採点していくわけですけど、はっきりいって0点。セプテーニのビフォーの部分においては正しかったことが、アフターにおいては全部間違っているという自己採点になりまして。

奥田:でも、次のあるべきセプテーニとしては、点数が変わってきた。

佐藤:1個1個のペケをマルに変えるために、毎日それだけを考え続けるセルフ通信簿。100点にするために、毎日1個1個のミクロな仕事の仕方を全部チューングして変えて、スイッチを入れ直していく。そういう時期は大変だったんですけど、ものすごく変われました。

それまで、起業とか経営は自分にとってつらいことだったんです。確かにビジョンはあるけど、それを実行するプロセスはすごく大変だな、つらいことばかりだなと思って、つらいことを超えていくしかないんだろうと(思っていた)。

耐えるとか、我慢することが必要だろうと思っていたんですけど、実はそんなことない。我慢しなくてもいい仕組みをつくるとか、つらくない環境をつくるとか、そういう仕組みや環境づくりができていないから、そう感じていただけで。

目指すゴールやビジョンが一緒でも、プロセスのつくり方や心持ちのあり方は全く違う方法で、会社を伸ばしていけるという深い学びがあって、それ以降はストレスが全然ないです。

奥田:佐藤さんはストイックな方だなというイメージをずっと持っていて、最近はストイック&キラキラみたいな感じで……恐らくそこの会社の変わり目から感じるものがあったんじゃないかな。佐藤さん以外の会社の方の空気が見えるようになってきたイメージがします。

佐藤:ありがとうございます。そう言っていただけるとすごくうれしいです。

部下に任せることで直面する怖さ

奥田:今度は平尾さんにも、会社の拡大にしたがって、経営者として何が変わってきたのかをお聞きします。

平尾:私も今の佐藤社長の話から、自分はどうだったんだろうと、相似形で比較をしていました。私のほうが全然小さいんですけど、その小さい三角形の中で見たときに、うちの会社はまだまだ課題もあると感じます。

ビフォーセプテーニからアフターセプテーニという話がありましたけど、我々はまだ前段階にいます。上場前はトップダウン型の組織でやってきて、前職がリクルートだったので、ボトムアップ型の会社の強さは知っていますから、組織力をもって強くさせていこうという変革をしてきました。

権限移譲をして、中間の右腕、左腕とか、いわゆる結節点になるような方を増やしていくということを頑張っていったんですけど、やっぱり口を出したいタイプということもあって、任せると自分がやってたときより下がっていくように感じます。

起業家からするとこだわりも強いので、「そんなレベルで本当にいいのか?」と言ってしまうようなタイプでした。自分の弱点だと思うのですが、当初はIT社長としてエンジニアがする開発もやっていましたし、デザイン以外は自分でできてしまうで、全部口出ししてしまうんです。

奥田:(こだわりの)やり方があって。

平尾:CEOはチーフ・エブリシング・オフィサーとも言われますが、本当にエブリシングなオフィサーとしてやっていたので、自分が主役じゃなくなる怖さ、やってもらうことで十分な成果が得られなくなる怖さに直面しました。

そこで、任せるための胆力や仕組みづくりが必要だと強く感じました。今までいかに仕組みではない部分で(会社が)伸びていたかが露呈して、それはそれで会社としての武器なんでしょうけど、やはり拡大再生産させていくことが株式会社の強さだと思うので。

『ビジョナリー・カンパニー』を読んだことはないですが、上場もして会社を大きく経営させていく中で、役割が増えてきました。IRもしなきゃいけない。グループも今6社やらせていただいているので、グローバル事業などの新しいテーマが出てきています。

いろんな宿敵が出ながら、個別具体に自分の時間配分で自由に決められるんですが、答えがない中で、その時間配分が分散していきます。その(時間配分の)分散に対してジレンマを感じていて、「自分が全て一気通貫でやったほうが伸びるんじゃないかな」とか。

自分の得意分野、メンバーの得意分野の区分をつける

奥田:今日はこの対談の中で、佐藤さんのアドバイスコーナーをつくることになっていて。佐藤さん、今の平尾さんの話(に何かアドバイスはありますか?)。

平尾:「じげん」をプロデュースしていただきたいんですよね。

佐藤:平尾丈を。

平尾:「じげん」の社外取締役になっていただいて。平尾丈はもういいんですよ(笑)。平尾丈はある程度自分で頑張ってつくっていっているので、だんだん変わらなくなってきていますから。

奥田:ここから5分間のアドバイスコーナーです。

平尾:「じげん」という会社は、どうやったらグレートカンパニーとかエクセレントカンパニーになっていけるのかと。

佐藤:もちろん詳しいビジネスの内容は全くわからないですけど、自分が経験した中で、ある時期に近いと思った部分もあって。自分の体験以上のことは伝えられないと思うのですが。

平尾さんが本当に好きで得意で、自分のなすべきこととして集中したほうがいいエリアと、創業者として口を出したくなっちゃうけど、実はほかの人のほうが得意なことの区分がよりクリアにできてくると、仕組み化が進むんじゃないかと。

仕組みをつくるところまでは、ボードメンバーかもしれないし、専門家かもしれないし、誰かほかの人がアサインされて、その人たちの力によって会社がよくなっていく段階に入ろうとしているのかなと感じたのと。

自分の経験からいっても、この分野については、自分でないAさんのほうがすぐれているし、心から尊敬できるという領域をふやしてきたことで、自分のストレスがなくなって、自然体で、毎日楽しく気持ちよく生きている。今でも課題は山ほどありますけど、会社も伸びているという循環が(あって)、前よりは今のほうが快適になっていると思います。

自分より優秀な人間のマネジメント方法

平尾:ベンチャーって成長途上じゃないですか。うちも創業からずっと増収・増益できていて、まだまだ伸びると思うんです。(その状態で)やったときに、「全部できちゃうのは自分である」みたいな驕りや慢心があると感じています。

社長としてよくないのですが、まだオーナーシップも雇用権も意思決定権も持っているので、これを全部失う以外に、直近の役割をどんどん増やしていくことって、1回振り切ったんですが、振りきり過ぎて失敗したと思っていて。

今おっしゃっていただいたのは、「少しずつ自分のドメインを決めましょう」という話だと思うんですけど、まだその各論で「(他の人に)自分が勝ってしまうのでは」と思ってしまうんですよね。

そこはどうやって克服されたのか(伺いたい)と思って、「この人には勝てないな」という方を外部から連れてこられたのか。新卒の文化もあると思うので、そこから出てきた方がすごい優秀だったのか。

佐藤:うちの場合はマネジメント層は、新卒の方と中途で専門領域を持ってきた方がちょうど半々ぐらいです。結果として、ブレンドした中で成熟してきた気がします。

ブレンドしていくと、お互いに学びがあって、人材の質が上がっていくということがあって。なので、うちは純血というよりは、完全にブレンドによる混血志向です。

奥田:外からの組み合わせで。

佐藤:ブレンデッド志向で人材開発をしていく。

奥田:ありがとうございます。何かすごく素敵な(議論の)場を近くで見れて。もうちょっとお話を伺いたいところですけど、本当に「経営者としての経験の積み方と成長の仕方」というテーマにふさわしい対談だったと思います。

今日は中堅という意味でお呼びしているので、経営を目指す若い人たちに一言メッセージをいただいて終わりにしたいと思います。平尾さん、お願いします。

意識すべき組織の課題と経営者からの学び

平尾:私も中堅になっちゃったんだなという若干のショックと、心はまだ10代でやっておりますが、32でございまして。経営も10年以上たっているということを考えると、いろんな問題が起きると思います。その中で、私がぜひやっていただきたいのは、組織のマネジメントです。

サービス開発にフォーカスされていらっしゃる方が今非常にふえているのは、チャンスがいっぱいあるのでいいことだと思います。私はちょっと古いタイプの経営者なのかもしれませんが、組織的課題に対して、上場前から早めに新卒採用を始めたりとか。

単純な業績対効果でいうと、そんなになかったりもしたんですけど。中途の方が100人力で1億売って、それが10人いればいけるじゃんという話もあったんですが、(新卒採用を)やってよかったと思います。

まずは経営の学びを先輩方に教えていただけるぐらい努力をするというのが大事だと思います。本来は暗黙値ですし、経営者の方々の血肉ですから。

全部出していただけるかどうかは、本人がいかに頑張っているかだと思います。私もなかなか教えていただけなかった。けれども「教えてください」と言いながら、しつこく食らいつくことができれば、教えていただけると思います。

実は私もかなり苦労しておりますので、そのあたりも聞きたいという方がいらっしゃったら、ぜひお尋ねいただければと思っております。どうもありがとうございました。

奥田:ありがとうございます。では最後を決めていただくのは、佐藤さんでお願いします。

常に枯れない情熱を持ち続けることが大事

佐藤:今、日本のスタートアップ市場ってすごくいい環境になってきて、前はシリコンバレーとの対比で、劣位であるみたいな話が多かったんです。

まだいろんな差はあるにせよ、前に進んでいることは間違いないと思います。その中で切磋琢磨できる方々がふえているのは、本当にありがたいと思っていて。一言でいうと、環境がよくなってきて、人や会社が老けなくなっていると感じます。

自分も会社を経営して、組織づくりにコミットしてきて自慢できることは、若々しい会社をつくれる(ということ)。

平均年齢が上がるとか、そういう物理的な年齢ではなくて、イキイキと働くという意味での老化しない組織というのがつくれるという手応えを最近感じています。実年齢は多層化して、いろんな人が会社で活躍しているけど、若々しい状態がつくれるという手応えを持っているんです。

なので、今の環境にものすごく感謝をしていますし、その経験をアウトプットして、後に続く人たちに伝えたいという(思いもあります)。IVSの場というのはそういう貴重な機会だと思っています。

もっと究極でいうと、年齢は関係なくて、何歳であろうと自分がいつも青春というか、何者かになろうともがいている状態というのがすごく大切だと思っていて。

その情熱がどこかで枯れてしまうのではなくて、ずっと青春で自分が何者かになりたいという、まだ見ぬ自分に対して期待をして変わっていく、変化して成長し続けるというような生き方を自分自身がしていきたいと思います。

あとに続く人も、自分が何者かになりたいという情熱を忘れずに、目の前の仕事に集中していただけるといいんじゃないかなと、それによってこの業界もさらに発展していくんじゃないかなと思います。

奥田:ありがとうございました。

佐藤・平尾:どうもありがとうございました。

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