ふるさと納税を利用した寄付

岩瀬:ありがとうございました。あと1つだけ皆さんに聞きたいんですが、今一番苦労していて困っていること。そして、この会場のみんなの力を合わせれば相当な発信力とリーチと、あるいは技術と、あるいは資金と、色んなものがあると思うんですけど、皆さんからこのIVSコミュニティに対して、なんかこういうの助けてほしいっていうのがあったら、ぜひお聞かせください。

小林:私からいいですか。ありがとうございます。そういう意味では、私たちのプロジェクトの抱えている3つの課題のうちの2つ目だと思うんです。さきほど持続性、多様性、社会的なインパクトって申し上げましたけど、2つ目の多様性、これはどれだけ学校の奨学金を増やしていけるかというところで。

今までは実はここにもいらしていただいている、本当にたくさんの方の個人のご寄付でご支援いただいていたんですれども、なかなかそういった持続性が出てこないということで、今ふるさと納税という仕組みを導入していて。

ふるさと納税ってちょっとお聞きになったことある方もいらっしゃるかも知れませんが、最初はご寄付なんですね。私たち軽井沢町なんですけれども、町にご寄付をいただいて確定申告をしていただくと、所得税と住民税の組み合わせで、全額、まあ、5千円を除いて全額返ってくるという仕組みがあるんですが。

これを通して、奨学金限定の基金をご支援いただくというのを初めて去年つくったんです。こういった形で財政負担なく、学校の奨学金を支援していただけるというのがあるので、寄付というとなかなかハードルが高いと思うんですけれども、そういった形でもしご支援いただけたらと思います。

岩瀬:IZAKに寄付すると、必ず子どもがインターナショナルスクールに行けて、英語ペラペラになるんですか?

小林:あの、いや……(笑)。そういうわけではないんですけれども、まあ、学校に来ていただいて、参観とか、もちろんしていただきたいと思いますが。あとは、お子さんが自分で行きたいって思うような能動的な意志が一番大事なので、親御さんに入れさせられる学校ではなくて、お子さんに行きたいと思っていただける学校になりたいと思ってます。

現場も嘆く教師の質低下

岩瀬:はい、ありがとうございます。松田さんは苦労で言うと、僕のイメージでは、行政とか、その教育委員会とかからすれば、自分たちはちゃんと一生懸命教育やってるのに、何をお前ら素人がっていう反発がすごくありそうな感じがするんですが、その辺の苦労みたいな話と、あと今困ってること、2つお願いします。

松田:行政の部分はすごく今まで慎重にやってきた部分があって、実は僕も少し教育委員会で働いていたことがあって、彼らのコミュニケーションは少しわかるんですね。あとは学校の教員もやっていたので、学校の現場の先生の苦労もニーズもわかる。

そういったものを組み込みながら話をして信頼関係を築いてきた部分があって、今のところそんなに行政や文科省から逆風があるわけでもないし、逆に応援してもらっていたり。今文科省とも一緒にプロジェクトをやろうとしているところもあったりするので。

あとは昨年70教育委員会ぐらいずっと回って、本当に足を運んで、話を聞いてっていうプロセスをしてきたので、そういったところを通して、ひとつずつ慎重にうまくいってきているのかなと思います。

岩瀬:現場もやっぱり困ってるんですか?

松田:困ってます。やっぱり優秀な教員欲しいですよ、学校も。最近「でもしか先生」と言われるように、教師でも~とか、教師しかなれない人たちが増えていて、就職活動がうまくいかなかった人たちが、教員採用試験を受けているような現状もあるわけですよね。そういった意味では現場も人材の質の低下には嘆いていますし、いい先生、思いがある先生にはぜひっていう風には言ってもらってますね。

NPO経験がキャリアパスになるような文化を

岩瀬:さっき言ったように僕の理解ですと、Teach For Americaになぜハーバードの18%が行きたがるかというと、そのレジュメがあるから。ゴールドマンとか、マッキンゼーに入りやすいみたいな。これは僕、悪いことじゃないなと思って、動機が何であれ、多くの人が関わるようになるっていうのは素晴らしいことだと思うんですけど、そういう理解でいいですかっていうことと。

あとなんかTeach For Japanもファッションみたいにしてしまえば、もっと多くの学生がキャリアパスとして通るようになるなあと思ったんですけどね。

松田:はい、いい人材を集めるためには、ありとあらゆる手を尽くしていきたいと思っていますので。自分、実は修士論文書いていて、日本で実現が難しいと思った理由が3つあって、寄付文化と教員免許制度と新卒採用文化の話なんですね。

やっぱり今日本だと1つ目のキャリアで教師をするとなかなか評価されないようなところがあって、ネクストステップがないと入り口のところで飛び込みにくくなるようなところがあると思うんですよね。そういった意味では、2年間こういった現場で経験した人たちを、ぜひともフラットな目で見ていただければなという風には思いますね。

岩瀬:逆にそういう意味で言うと、例えばここにいるトップ企業のヤフーさんとか、楽天さんとか、グリーさん、DeNAさん、LINEさんとか、サイバーさんとかが、なんかTeach For Japanの卒業生を1人2人受け入れるとか、そういった枠が例えば作れたら、そういう経験をした学生を優先的に採用できるし、学生にとっても、就職の不安がなくなるから、そういうのもあったらいいかも知れませんね。

松田:そうですね。あとは先ほど、アメリカのケースでもあるんですけど、例えばTeach For Americaとグーグルさん、両方とも内定している場合は、グーグルさんが2年間待つんですね。2年間行ってこいと。で、そこで2年間しっかり現場で課題解決すると共に自分自身も成長して戻ってくるというスキームもあるので。

やっぱり教員免許持った人がどんどん民間に行っているので、そこでもぜひとも教育に携わりたいという思いがある人たちには入社猶予みたいなものを認めていただけると、大変ありがたいかなという風に思いますね。

ジュエリーブランドとしての課題

岩瀬:なるほど、なるほど。ありがとうございます。白木さんのご苦労と、次のステージ行へ行くために悩んでること、困ってることって、どういうのがあるんですか?

白木:今創業して5年目でバーッと走ってきて、店も作って、材料も調達して。もう最初の頃は材料さえなかったので、それを調達するために、色んな国に行って、色んな人と会って、色んな人と交渉して調達しなければならなかったんです。けれども、ある程度ちゃんとしたジュエリーが作れる土台はできて、販売箇所も3店舗できたので、これからはもっと世界を目指して大きくしていきたいなという風に思っているんですね。

ジュエリーのブランドが成長するのってある程度時間が掛かるので、信用力とかつけるのにも、やっぱり歴史っていうものを、どんどん積み重ねていかなければいけない。なので、それを私自身も長い時間を掛けて熟成させていきたいなと思っていますし、ぜひ一緒にブランドを育てていただけるような、そういったご支援があったらすごく嬉しいなと思っています。

岩瀬:平均の価格帯ってどれぐらいのレンジなんですか?

白木:ラインが3つあるんですけれども、一番下のラインで、私がつけているこういうイヤリングとかは1万円とか2万円のものからありまして、結婚指輪、婚約指輪とか、ダイアモンドを使ったものになってくると、100万円超えてくるものもあります。

岩瀬:イーコマースとかはあるんですか?

白木:ウェブショップ、オンラインブティックはあります。

岩瀬:そういうの得意な方たくさんいらっしゃるので、なんか協力できたらいいですよね。それでは残り15分になりましたので、ぜひ会場の中からも質問などしていただければと思います。質問のある方いらっしゃいますか?

情報提供を通した「親」の教育

参加者:伊佐山と申します。今日、これからの未来の日本を支えるための教育って話で、色んな仕組みを説明いただいたんですけれども。私、海外に住んでいて、教育って多分子どもへの教育だけじゃなくて、実は親への教育っていうのも同じぐらい大事なんじゃないかなって思っていて。

色々と問題を抱えている家庭っていうのも問題があるんですが、そうじゃない場合は、子どもに色んな最先端の知識とか仕組みを与える以上に、なんか親への働きかけというか、そういうことも工夫されているのかどうかっていうこともお伺いしたかったんですけれども。りんさんから。

小林:ありがとうございます。私たちは今、色んなメディアの方にご紹介していただいているんですけれども、その中で、こういう親御さんに読んでいただきたいという媒体さんには、すごく積極的に色んな方に書いていただけるように、情報を提供させていただいたり、実際に学校のサマースクールに来ていただいたりとかということは、非常に積極的にしています。

ただやっぱり私たちの場合、高校なので、最終的にはこのぐらいの年齢になると、お子さんが自分の意志で能動的に選んでもらう、そういう生徒さんに来ていただきたいという思いが非常に強いので。逆に今までは大人向けのメディアの方が多かったんですけれども、これからは逆にこう、生徒さんにどうやったら、それこそSNSとかを使って、直接中高生にリーチするためには、どうすればいいのかということを悩んでいるというのが現状です。

参加者:ありがとうございます。

家庭とのコミュニケーションにITの活用を

松田:親に対してってことなんですけども、いくつかは一応取り組みはやろうとしていて。1つは例えば、1つ目にご紹介させていただいた学習支援の場とかになりますと、親自身とかが実は中卒であったりとかするんですね。で、親が一緒に来て一緒に学ぶなんてことをやっているプログラムというか、副次的なものもあります。

もう1つはですね、今後、親への情報提供もすごく重要だと思っていて。っていうのは、今学校での教育と、家庭での教育がなかなか連携できていないというのも大きな課題なんですね。学校で何が起きているかわからないからこそ、親はすごい心配で学校に色んな問い合わせをしてしまっていたりだとか、モンスター化してしまうだとかっていうことがあったり。

親御さんからすると自分の子どもは可愛くて、よりよい教育を受けてもらいたいという思いは共通なんだけれども、学校で何が起こってるかわからない。もしくは子どもが家に帰ってくると「今日もあの先生つまんなくてさ、明日学校行きたくないよ」みたいな情報しか入ってこないので、逆上してしまったり。

色んな自治体も動き始めましたが、今後いかにiPadとかタブレットを活用して、学校での通信簿みたいなものを、その日の夕方には家庭に送っといて、親御さんが「おかえり」と言う時と共に、「今日学校でこういうことがあったみたいだね」みたいなところで、コミュニケーションの円滑化が図れるような取り組みなんかもやっていきたいなっていう風には思っております。

ただこれ、子どもを取り巻く環境って、親ももちろん重要なファクターだし、教師も重要なファクターだし、地域も重要なファクターだと思うんですけど、私どもTeach For Japanとして主眼を置いているのはやっぱり、教師を通して、子どもを通して、親を変えていくっていうのを考えているんですね。

先ほどの事例からちょっとなぞって言うとですね、やっぱり子どもが家に帰って「今日こんなこと学んで楽しくて仕方がなかったよ」っていうことを毎日のように言っていれば、親も心配しないと思いますし、もっと協力的になっていこうという風に思うんですよね。なので子どもを通して、親に対してもアプローチがどんどんできていければなという風に思っています。

岩瀬:ありがとうございます。その他、ご質問ある方。

年収半分になっても働きたくなるだけの「やりがい」

参加者:グリーの美谷と申します。皆さんにお伺いしたいんですが、NPO組織に入られる方は、もちろんその目的に賛同されて入られると思うんですけれども、やはりその方々それぞれ生活があったりだとか、それぞれのキャリアパスというのもあると思うんです。一般的な企業とは違って、その賃金以外のところ、企業とは違ったところの配慮であったり、参加される方の次のステップであったり、働いているなかでその方がキャリアを積まれていくための工夫なんかを、ちょっとお伺いできればと思います。

小林:私たちの場合は2つ3つあると思うんですが、1つはやはり若手の方に多く入ってきていただいてる中で、賃金という意味では、外資系とか、商社さんから転職されてくると2分の1とかの方も多いんです。そこはやはり一人ひとりが組織にとってかけがえのない存在だっていうモチベーション、自分は絶対に不可欠な人間なんだという、やりがいを持ってもらうというところは、非常に気をつけていて。

どんな方でも、たとえボランティアの人でも、決して下働きっていう人がいないんですね。必ずサブプロジェクトを何らか持っていただいて、責任を持っていただいてっていうのを徹底している。かつ、あなたがいなかったら本当に成り立たないんだってことをきちんと日々伝えていくっていうのは、組織として徹底しています。

もう1つ、キャリアについては、やっぱりこれを3年、5年、10年やっていけるのか、あるいはファミリーを持ったらどうなんだろうってことについては、6ヵ月に1回ぐらい1on1でミーティングを全スタッフとしています。

これ、年齢層とかその人の立場によって、随分ニーズが違うんですよね。私たちの場合は半分ぐらいが女性のスタッフで、かなりの部分が母親なんですけれども。彼女たちの場合は、逆にキャリアを積んでいきたいというよりは、かなりフレキシブルな時間帯の中で、何か社会にインパクトをもたらしたいというニーズなので、彼女らの場合はキャリアアップというよりは、むしろ社会的貢献をしているということだと思います。

前半の若手の方で、これからキャリアアップっていう人については、かなり具体的に3年、5年後に何をしたいと思っているのか、であれば、このプロジェクトの中でどの分野をもっと見ていきたいのかっていうことは、かなり話し合うようにはしています。

想いだけでは持続性がない

松田:Teach For Japanもですね、特に民間と違うことをやっているかというと、必ずしもそうではなくて、経営者の色んなセッションを見させていただいたんですけれども、苦しんでいるところであったり、意識していているところは、すごく共通してるんだなということは改めて認識をいたしました。

ただ、民間と同じ水準で我々が給与を支払えるわけでもないし、私どもの職員で投資銀行の出身であったりですとか、コンサルタント出身であったりだとかするなかで、やっぱり給与が下がってくなかで、より思いの部分を熱く語っていくというか、いかに組織のミッションと、パーソナルミッションをアラインさせていくことができるのかっていうのは、日々すごく意識していることです。

とは言え、先ほどの経営者の方々の登壇セッションを聞いていていると、やっぱり民間でも同じことをやっているので、じゃあ特別に何か違うのかっていうとそうではないんですね。より重きをそこに置いてるのかなと思ってます。ただ、やっぱり、そこの部分を早く打開したいなと。本当にそのソーシャルセクターでインパクトを出したいんであれば、やっぱりNPOで働いている人であっても、価値を生み出してるんであれば、民間水準の給料をもらっていいと思いますし。

アメリカなんていうのは、やっぱりそれを支えているインフラがあるわけですよね。Teach For Americaなんて年間500億円ぐらいの寄付を集めるんですけれども、給与水準も、マッキンゼーから引っ張ってくる、どこどこから引っ張ってくるっていうのだと、想いだけではなかなか持続性がない。で、いい人をせっかく囲い込めたんだから、持続的に働ける組織作りというのは、やっぱりスタートアップの段階からしっかり意識していかなければいけないと思っていて。

すごく残念な例なんですが、例えば、国Ⅰ(コクイチ)の試験に合格して、思いを持ってうちの組織に入ってくれた職員がいたんですね。ただ彼は家庭を持って子どもが産まれた瞬間、もうこの水準じゃちょっと厳しいと、せっかく思いがあってスキルもあってやってくれているのに、DeNAさんに転職をしてしまったりだとか。

そういったケースになってしまうので、そこの部分で、いかに思いを持っている人たちを、まあ、今、(DeNAの)人事で働いているんですけれども、思いを持っている人たちをいかに留めておけるか。ただ単にやりがいの部分と、あとはスキルアップの部分と、あとは生活の部分でも持続的な組織作りは早く実現していきたいなと。

これが実現できれば、日本におけるNPOの考え方も変わってくると思うんですよ。より優秀な人材がどんどん携わるようになっていって、色んな課題、民間だけでは解決できない課題も解決されていく仕組みができると思いますので、ここには逃げずにしっかりと向き合って、色んな方々のお力添えをいただきながら実現をしていきたいなという風に思っています。

喜びを共有することがモチベーションにつながる

白木:うちは株式会社なのでNPOっていう組織の答えではないんですけれども、極めてNPOに近いやり方をしていたり、課題解決型のビジネスだったりします。お給料もそんなに高いほうではないんですが、みんな女性なんですね。

社員全員女性で、すごく思いを持ってHASUNAに関わってくれていて、もう一人ひとりがHASUNAウーマンだっていう風に言って、HASUNAを代表する女性たちで。すごく輝いていってほしいなっていう思いで、私一緒にやっているんですけれども。

やっぱりこのジュエリー1つ販売することによって、世界中に1つ笑顔が増えていく、2つ笑顔が増えていく、身に付ける人も笑顔になり、その裏側にいる鉱山労働者の人たち、職人の人たちみんなが笑顔になっているっていうことを、みんなで認め合うというか、感じ合いながら、いい社会を創っていく。これがモチベーションになっているのかなって思います。

人材育成に関しては、グロースビジョンって言って、もう1人の役員が経営コンサルタントだったので、かなりガチガチのビジョンなんかを作ったりして、振り返りのミーティングを設けて、今年のチャレンジは何をするかっていうので、一人ひとり目標を持って、がっつりやっているんですけれども。そんな形ですごく思いを重視して、人は育成しているというか、みんな成長しています。

日本の教育に欠けているのは「I can」

岩瀬:ありがとうございます。最後に何かご質問ある方いらっしゃいますか?

参加者:マテリアルワールドの矢野です。教育関係者の小林さんと松田さんのへの質問になるんですけれども、リスクテイクできる人材を育てるために必要な教育ってどのような教育とお考えでしょうか?

小林:私たちが全寮制である理由が実はそこにあるんです。リスクテイクって、「リスクを取りましょう」っていくら教室の中で言ってても、身に付くスキルじゃないと思うんですね。やっぱりそれを実践できる場がたくさんあるという必要があると思うんですけれども。

例えば、開校前なのでサマースクールの事例しかご説明できないんですけれども、サマースクールの場合は、食堂運営とかカフェテリアとかは全部生徒が運営するんですね。初日に、何十人もまったく知らない生徒たちが来て、席順とか配膳係とか何にも決めずに、「はい、運営してください」って言うんです。

最初、カオスになります。授業に間に合わない子とか、食いっぱぐれる子が出るんですけど、まあそれでいいと。失敗を繰り返しながらでも、自分で何か新しいもの作っていくとか、仕組みを作っていくとかっていうチャンスを、学校中に散りばめていくということを実践していきたいと思ってます。

松田:リスクテイクということなんですが、私どもが見ている結構厳しい状況の子どもたちにも、ぜひともリスクテイカーになってもらいたいなと。そうなんないと、恐らく10年後15年後の社会を生き抜くのは厳しいだろうなという風に思っているので、そういった意味では私ども教師そのものも、彼らをそう育てていかなければいけない。

その中ですごく重要視しているものとしては、子どもたちにI can と I want の2つの状態をしっかりと身に付けさせてあげること、っていうのをすごく意識しています。というのは、リスクを取るというのは、何かあそこに渡りたい、あそこに行きたいっていう思い、アイウォントと、あそこに飛べるんだっていう自分の自信がないと、なかなかリスクって取るのは難しいと思うんですよね。

なのでそういった意味で、子どもたち全般を見ていると、I want っていうのは、なんとなく昔あった、今でもああなりたいな、こうなりたいなっていうのは出てくる。やっぱり今すごく欠けているのは I can の部分。出来るんだっていうところがすごく欠けているので、より我々のフォロー、教師に伝えているのはこの部分、「やればできるじゃん、すごいね!」っていう小さなことなんです。

やっぱり称賛をしていく、褒めていく、「自分でもやればできるんだ」って気持ちにさせていく。で、この繰り返し繰り返しが自信につながってくんですね。なのでそこが、I canの1つの原動力になると思っていて。まあ、特効薬はないので、時間は掛かることですし。ただここは早い段階からどう根付かせることができるのかっていうのはすごく重要だと思ってます。

日本の教育は今そこがすごく欠けているんだろうなと。○か×かなんですよ。例えば、英語も中高大と10年間勉強していて、でも英語がなかなかしゃべれないのも、やっぱり完璧にしゃべれないといけないという恐怖心があるんですよね。

ちょっと話逸れてしまいましたけど、これ、リスクにも共通して言えていることだと思っていて、早くそういった自信を持って、先ほどの表で、自分をダメな人間だと思っている人が65%ではなくて、すべての子どもたちが自信を持って、リスクを取る必要があれば取れる体力を、しっかり身に付けておく必要があるなと思っています。

ITベンチャーと社会起業家に共通する精神

岩瀬:ありがとうございました。ちょうどそろそろ時間なので、ちょっと僕からまとめの言葉を言ったあとに、お三方からIVS会場へ、ベンチャーの経営者へのメッセージみたいなのをいただきたいと思うので、ちょっと考えておいていただいて。

昨日、グリーの田中さんが言ってたそうなんですが、この人たちって(スピーカー3人のこと)俺らと一緒だよね、と。つまり、なんかすごく突き動かされるものがあって、損得関係なく、それを実現するために走っている人たちっていう意味で、なんか話聞いてても本当に、社会起業家というか、「起業家」なんだな~っていう風にすごく感じています。

それで前から思ってたんですが、このIVSのコミュニティの情熱と才能と技術と資金と、それ全部を活かせば、なんかもっと色んなことできるんじゃないのかなっていう風に思っていて。世の中に新しい商品、サービスを生み出していくっていうのはもちろんやるんですが、また違う、行政も政府も助けてあげられない社会の色んな歪みを解決しようとしている、こういう人たちを我々の仲間として迎え入れて、コミュニティとして出来る限り応援できたらすごくいいんじゃないのかなと、そういう風に思いました。

それは資金面、寄付するとかが一番わかりやすいんですが、それ以外でも、なんかビジネス面であったり、あるいは人材面。

松田さんのは僕の思いつきですけど、その卒業生を受け入れられるような枠を作ったら結構、それはそれでいい学生が行く支援になると思うし、色んな形で支援できると思ったので、今回こういうセッションを最後の最後に設けた(インフィニティ・ベンチャーズの)小林さん、すごく素晴らしいなと思いますし。ぜひとも我々として、この社会起業家の皆さんとうまく協力しながら色んなことができたらいいなと思いました。ではお一人ずつどうぞ。

小林:私本当にこの今回のプロジェクトを通じて、ここにいらっしゃるDeNAの川田さんとか、グリーの山岸さんとか、ネクストの井上さんとか、ネットプライスの佐藤さんとか、本当にたくさんの方にお世話になってるんですけど。

もちろん資金的な面もすごくお世話になってますが、一番私が本当に感謝しているのは、ゼロからイチを作ることをご自身たちがやってらっしゃったから、私たちが本当苦労の連続で、土地が見つからなかったり、行政に阻まれたり、色んなことがあった時に、「大丈夫だよ、そういうことあるよ」みたいな、「そ、そうなんだ!?」みたいな感じで。

「大丈夫、大丈夫。つきものだから」って、どんなにどん底にいても、決して見放さずにずっと支えてくださったこと、私本当に感謝していて。なので今、岩瀬君が言ってくれた「起業家って実は同じ精神を持っているんだ」って言葉、本当にそうだなって。だからやってることがソーシャルかうんぬんかじゃなくって、本当にゼロから何かを生み出すっていうことに共感してくださって、こうやって応援してくださってること、本当に感謝してます。

私たちやっと開校できることになりましたけれども、これから多分日本では色んな試みが出てくると思いますし、特に最初のゼロの時に精神的な礎っていうか、その場をくぐり抜けていらっしゃった皆さんだからこそ、支えていただけるところっていっぱいあるんじゃないかなと思うので、ぜひ、そういった意味で、色々ご指導いただければと思います。今日はありがとうございました。

会場:(拍手)

最初の3年は種植時期

松田:今日は非常に楽しかったです。こういったコミュニティっていうのは自分にとっては本当に新鮮で、引き続き、自分のみならず、色んなこういう思いを持っている社会起業家と言われている人たちが、どんどんこういった場に立てるような機会を作っていただければなという風に願っております。

先ほどの人事面での連携も、もちろん興味を持ってくださる会社さまがあれば、お話させていただきたいという風に思います。ただこの部分もプログラムを作るには時間が掛かりますので、最初の1年目2年目から、TFAが23年間で作ったものができるとは思っていないんですね。TFAですらやっぱり、13、4年目ぐらいからですかね、企業との人事の連携面ができたのは。

そういう入り口のところで色んな企業さまの社会的投資があってできたプログラムなので、やっぱりここからは逃げたくないなと思っていますので、ご一緒できる企業さまがあれば、ぜひともご協力いただければなと思います。

資金的なところはやっぱり避けては通れないところで、他の26ヵ国すべてそうなんですけど、やっぱり最初の3年間はお金のことを考えず、とりあえず政治的な種植えであったりだとか、学校現場の事例作りであったりに注力しろと。まあ、国からの支援であったりとか、財団からの支援であったりとか、企業さんの支援があるんですね。

ただ日本は、まだちょっと今年のファンディングも確保できていない状態で、本当に自転車操業状態なんですが、早くちゃんとインパクトを作るためのインフラを3年で立てたいなと思っておりまして、そこでぜひともお力添えをいただけるところがあればですね、お願いしたいです。

私自身も、色んなセッション見させていただいて、自分も起業して株式会社作って、IPOして、がっつり稼いでそのお金で、こういったプログラムをやったほうがいいんじゃないかと思ったこともあったんですけれども、そんな甘い世界じゃないってこともわかってますし。

やっぱり自分が向いてるのは、教育というこの分野において、民間であり、国が解決してこられなかった課題に向き合うっていうことにやりがいも感じてますし、重要性を感じているので、ここに共感いただいた方がいれば、ぜひともお声がけいただければなという風に思っております。今日はありがとうございました。

事業がスケールアウトするための支援を

白木:今回私も初めて参加させていただいて、なんか自分はすごく視野が狭かったなと改めて気付かされました。こんなにたくさんイケイケな素晴らしいベンチャーの社長さんたちがいらっしゃるんだなと思って。

普段私、社会起業家として取り上げられることが多かったりだとか、あと、ジュエリー自分で作ってたりしているので、あまり人とわーっと会って話したりするようなことも、そんなにあるわけではないんです。こうしてたくさんの方と会ってお話をするなかで、すごい学びがあったんですね。

周りの社会起業家の子たちを見ていると結構ファンドレイジングとかもイニシャルの段階で、自分でできる200万、300万とかで集めて、スケールアウトせずに、そのまま止まってしまっているっていう子たちが多くて。なんかすごく目指しているもの、ソーシャルインパクトなんかは、すごく大きなものがあったりするんだけれども、そこのスケールアウトする段階で、すごく止まってしまっているって子たちがすごく多いなって思っていて、私自身もそうなんですけれども。

ここにいらっしゃる皆さんが少しでもそういう団体と連携したりですとか、NPOをぜひサポートしていただいたり、何らかの形で協力をしていただいたりするとソーシャルチェンジができるんじゃないかな、と私は思っています。

社会起業家がひとつ起業するときに、普通の企業と違うところって、普通の企業って、やっぱり利益だったり、リターンだったり、そういうところを目指していくと思うんです。

私もそうなんですけれども、問題を解決することだったり、いかにソーシャルチェンジをするか、どうやって社会を変えていくか、どういう世界が作りたいのかっていう、世界づくり、社会づくりなんですね。なので、協力するとこの社会が変わっていくことが、すごく小さな規模ではあるけれども、すごく見えたりすると思うんです。政治が変わったり、法律、本当に世界が変わっていく。新聞のニュースがこんなに変わっていくと。

うちも売上規模は全然1億にも満たない規模ではあるんですけれども、新聞に取り上げられたりだとか、色んなソーシャルチェンジをするところに、少し携わっているのかなと思っているんですけれども。ぜひそのようにして、みんなでこの世界をもっともっとよりよくするために、ぜひ力を合わせてやっていきたいなと思っていますし、ぜひご協力いただきたいなと思っています。ありがとうございました。

岩瀬:それではこれをもちまして、最終セッション終わりにさせていただきます。改めまして3人のパネリストの方に拍手をお願いします。