2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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岩瀬大輔(以下、岩瀬):皆さんこんばんは。私事ですが、来月からライフネット生命の社長になることになりました。爆速で経営して参りたいと思いますので(笑)、皆さんも、保険加入、どうぞよろしくお願いします。それでですね、今日のテーマ、社会起業家ということで。IVS、意外とこういうセッションなかったなって思うんですね。(インフィニティ・ベンチャーズの)小林さんと話をしていて、最後にこういうのを持ってきた趣旨、どういう思いですか? っていうのを確認したんですけど。
岩瀬:やはり、多様性をこの参加者の中に求めるということが一つ。やはり、多様性をこの参加者の中に求めるということが一つ。特に我々、女性の参加者が著しく少なくて、特にベンチャーの世界ですと、なかなか女性のトップの方って少ないんですが、このSocial Entrepreneurs(社会起業家)では、わりと女性の影響力のある方が多いと。
あとはベンチャー経営者としてどんどん利益を上げて雇用を増やすというのが、もちろん一義的な責務なんですけど、やっぱりベンチャー・コミュニティ全体として、社会的な責任とか、社会へ返していく、そういったことについてもっとコミュニティ全体としての意識を高めることもいいんじゃないか。そういう趣旨がありますので、皆さん聞きながら関心を高めていただければと思います。
今日は、この世界では論客と言われるお三方が来ていますので、最初に10分ずつぐらいそれぞれの活動についてお話しいただいて、そのあと僕から色々質問させていただいて、あとは会場の皆さんからQA(質疑応答)させていただければと思います。では最初に、手前からですね、公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団、いつもISAKと呼んでいる、代表理事の小林りんさんです。
りんちゃんは僕、大学の同級生でして。東大だったんですが、その中にはすごい派手な美男美女グループがあって、だいたい男子は麻布高、女子は学芸大付属とか、素敵な女子高出身で。それで僕は開成でですね、遠くから羨ましそうに眺めていたんです。それで卒業して、りんちゃんは最初モルガン・スタンレーにいて、それから2000年にネットベンチャーに転職したんですね。ちょうど僕もベンチャーに転職した頃だったんで、その頃からわりと交流するようになって。
実はライフネット生命の生みの親っていうのは投資家のあすかアセットマネジメントの谷家さんなんですけど、りんちゃんのISAKも同じく、谷家さんが生みの親なんですね。間接的に同じようなバックグラウンドでやっているので、こういう場でご一緒できることを嬉しく思っています。ちょっと長くなりましたが、りんさんからISAKの活動についてお話いただければと思います。
小林りん(以下、小林):皆さま、こんにちは。インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢、が正しい名前ですので(岩瀬氏のほうを見ながら)覚えてください。あまりにも長いので頭文字を取って、ISAK、アイザックと呼ばせていただいています。学校がそもそもどんなものなのかということを、まったくご存じない方がほとんどだと思いますので、まず学校がどんなものかということをお話しさせて頂きます。
それからなぜ私がこんなこと、外資系からネットベンチャー、そして学校を作っているのかということを2つ目に。それから、これ実は6年がかりのプロジェクトに期せずしてなってしまったんですけど、そこに至るまでの軌跡と、これからこの学校がどこへ行くのかということをお話させていただきたいと思います。
まず学校そのものですけれども、ミッションとしては、時代に変革を起こすリーダーを育てる、というものを掲げています。リーダーシップ教育というと、なんか政治家養成学校とかに誤解されがちなんですけど、決してそうではなくて、むしろ、本当ここにいらっしゃる皆さんのような新しいバリュー、新しいフロンティアを築ける人を育成していきたいという思いが非常に強くあります。
小林:学校で大事にしている3つのポイントっていうのがあるんですけど、1つに多様性を掲げています。本当に色んな価値観とか、文化観とか、歴史観、それらが渦巻く中で、意思決定ができたり、新しいものを創造できるような人を育成していきたいということ。
2つ目に、問題設定能力って言ってます。問題解決能力ってよく聞く言葉だと思うんですけど、解決することも大事なんですが、やっぱり混沌とした世の中、あるいは混迷とした世の中、しかもものすごく早いスピードで変革していく世の中で、そもそも解かれるべき問題が何なのかということを、嗅ぎつけられる嗅覚を養うことが非常に大事なことになっていくという風に考えています。
3つ目、ここはもうこの場では釈迦に説法なんですけど、リスクテイキングと言っています。やっぱり新しいことを成し遂げるためには、失敗も問題も障壁もたくさんあると思うんです。でもそれを乗り越えて、失敗を越えていける強靭な精神力、あるいはむしろ楽観力っていうんですかね、それを養ってもらえるような学校になりたいと思っています。
小林:学校の詳細はここにつらつら書いていますけども、来年の9月に、9月全面入学ということでやっていきますが、ここで生徒さんの3割が日本の国内、7割は実は海外からの留学生を想定しています。文科省さんの認可は頂いているので、ここを卒業すると日本の高等学校卒業資格と同時に、国際バカロレアという、今世界75の国々の2,500の大学で通用する大学入学資格というものを得ていただくことができます。
ただこれを、本当に質を追求して、少人数で全寮制で、とやっていくと、やっぱりコストが掛かってくるんですね。ですので多様性と言った時に、必ずしも国籍が多いだけではダメだと思うので、経済的、あるいは社会的なバックグラウンドの多様性を担保するためにも、奨学金が非常に重要だと考えています。今は最低5人に1人の生徒さんに対しての奨学金を確保していますが、これを来年の開校までに5割に引き上げる、ということを目標に今、活動をしています。
小林:なぜ私が、こんな無謀だと思えるプロジェクトに挑むことになったかということを、少しお話させていただきたいと思いますが、2つ原体験があります。1つ目は高校時代で、小中高1まで、ずっと日本の公立の学校に行ってたんですね。でも高校まで来て、受験戦争というものに対して非常に疑問を持ち始めて、なんか違うなと思い、高1で中退しました。
学校を辞めて、たまたま全額奨学金をいただけたので、1人で初めてカナダの全寮制の高校に留学するということをします。まったく英語ができなかったので、英語ができない者同士、メキシコ人の友達とすごく仲良くなって、メキシコに、高2、高3の夏休みの間に行くんですね。これが非常に大きな原体験になりました。
メキシコで友達の家に行ったら、この演台の半分ぐらいのスペースに家族が住んでいて、友達はトラックが通ると揺れるようなバラックに住んでいたんですね。私、びっくりして、しかも彼女のお兄さんもお姉さんも学校に行かず、自動車の整備工とかをやってました。
私はそれを見た時に、自分ってなんて恵まれてたんだろうって。学校に行けて当たり前、家があって当たり前って思ってきたことが、世界の多くの所では当たり前じゃないんだってことを痛烈に感じて、当たり前だって思ってるこのことを享受できたこの運は、きっと自分だけに使うために授かったのではないんじゃないか、という使命感を強く持ったのが17歳の夏でした。
そういった原体験があったので、外資系の金融とか、ネットベンチャーのあとにですね、30代になって大学院に行き直して、ユニセフの現場で教育に従事するという大きな舵取りをするわけですけれども。フィリピンに単身赴任で、本当に最貧困層のお子さんたちの教育のお手伝いをさせていただきました。これ自体は本当にやりがいがあって、17歳の私から見たらドリームジョブだったと思うんですね。
でも一方でフィリピンという国に初めて住んで、あまりの格差と渦巻く汚職にすごく無力さを感じ始めました。9千万人の人口の国において、国政のたびに90人、100人という人が暗殺されて、それ以上のもっと数えきれないような票が買収されていくんです。
そして相続税の最高税率が10%という国において、果たして貧困層教育だけやっていても何か変わるんだろうかと思った時に、社会の色々な立場でアクションを起こせる人、何かおかしいなと思ったら何かを出来る人、生み出せる人、そういう人の教育に携われないかなと思うようになりました。
そうして色々思い悩んでいた時に、たまたま帰国中に岩瀬君に会って、うだうだ言ってたんですね。そしたら谷家さんをご紹介いただいて、じゃあ、学校を作ればいいんじゃないかという風に思ってですね。
小林:また、これ運がいいんだか悪いんだか、帰ってきたのが2008年の8月、翌月にリーマンショックが起こって、もう本当に苦難の船出でしたね。2008、2009、2010年とほとんどお金もなく、ひたすら色んな人のところに行って、「学校作りたいんです」、「ふーん」って言われる日々みたいなのが続いたんです。でも、2010年の1回目のサマースクールをきっかけにたくさんの人にご支援をいただけるようになって、今こちらにも何名か本当にお世話になっている方がいらっしゃるんですけれども。
小林:ようやく今年の6月にですね、校舎等が全部竣工して、10月には学校法人になって、来年の9月に向けて、開校の準備が最終章を迎えています。
小林:先生方も世界中から、これ本当に私と校長で、世界中の学校を歩き、あるいはサマースクールで実際に教鞭を執っていただいて、選び抜いた先生方が集まりました。
小林:生徒さんについても、1回目のサマースクールは、実は30人の枠に対して、34人しか応募がなかったんですね。そこからお金も人もなかったので、毎年クチコミとメディアの方の応援だけで、今年4回目、35の国々から、これはちょっと古いデータですが、400名を超える方々のお申し込みをいただくようなプログラムまで成長しました。日本以外、アジア外からもたくさんの生徒さんに集まっていただいています。
小林:最後のスライドですけれども、やっぱり学校も企業と一緒で、学校ができて終わりじゃないんですよね。特に学校の場合、私が死んでも続いていくような、そして更にお約束した教育の質が持続できるような、あるいはずっと常に進化し続けていくような学校にするためには、どうすればいいのかという、次の第2フェーズに入ってきています。
1つ目は持続性ということで、ユナイテッド・ワールド・カレッジという、これは世界中に12校の高校を持つ連盟ですけれども、ここへの加盟が進んでおります。これは12校の学校を持っているだけではなくて、そのメンバーの学校に対して、生徒を募集して選抜をして送り込むということだけをやっている組織が、世界140ヵ国にあるんですね。なので、ここに加盟した瞬間に毎年世界140ヵ国から選ばれた生徒たちが送り込まれてくる、という非常に大きなメリットがあります。
ここの卒業生は、世界各国の名門校に送られていることで知られているんですけれども、ここに早ければ、今年の10月には加盟が決まるのではないかという風に思っております。2つ目、多様性という何度も繰り返しているキーワードですけれども、やはり決して安い学校ではないので、これがひと握りの富裕層の方のご子女のものになってはいけないということで、できるだけやる気があって能力があれば、門戸が開かれるような学校にしたいということで、奨学金の充実というのを続けております。
最後ですが、これは多分、ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)とか、そうでない企業も同じだと思うんですけど、ソーシャルインパクトをものすごく追求していきたいなと思って。たった150人前後のちっちゃな学校なんですけれども、この学校がこれからどうやって、日本の教育界に対してインパクトを持っていけるのかというところに、今少しずつ主軸を移し始めています。
スタートとしては、やはり日本の同じような問題意識を持った、でもどうやってやったらいいかわからない教育者の方がたくさんいらっしゃるのを感じます。毎年毎年、色んな名門の私学や国公立からたくさんの先生方がサマースクールにいらしてくださるんですけれども、こういう方々と一緒に、日本の教育をどうにか現場から、あるいは制度設計も含めて変えていくようなことができればなと思っています。ちょっと長くなりましたけれども、10分ということで、自己紹介とプロジェクトの紹介を含めてお話させていただきました。今日はよろしくお願いいたします。
岩瀬:ありがとうございます。次の登壇者の話しを伺う前にいくつか、りんちゃんに質問したいんですけれども。人がどういう風に育つかとか生まれるかって、僕、興味があって。りんちゃんはお母さんの影響って結構あったかなって思うんですけど、お母さんがずっと市役所で働かれていて市長さんをやられたんですよね。母の背中みたいなのって、どういう影響があったんですか?
小林:今おっしゃったように、私の母はもともと福祉がやりたくて市役所に入って、何十年もずっと福祉のことをしていて、週末になると多摩川のゴミ拾いとか、点字教室とか、毎週末ボランティアをしていて。
ある時、彼女が30年間市役所を勤め上げた時に選挙があったんですけど、前の市長さんが突然汚職で捕まってしまわれて出直し選挙になって、市民の方がワ~って実家に来て、「市長選に出てください」って。うちの母は「え?」っていう感じだったんですけど、で、結局出たら大勝してですね、市長を2期8年勤めさせていただいたんですけど。
そういう母の背中を見ていて、多分ちっちゃい頃からボランティアをするっていうことが自然の中にあったっていうのもあります。逆に「リーダーになるぞ」みたいなほうじゃなくて、やりたいこと、何か役に立ちたいなって思ったことをやっていて、ふと気がついたら、何かが出来ていたということの中で、育ってきたかなというのはあると思います。
岩瀬:ありがとうございます。あともう1つ質問があって、実はりんちゃん、最初日本に帰ってきた時は学校を作るって言ってなかったんですよ。最初は、ただボトムアップでは国は変わらないからリーダーを育成したいと。それで、ソーシャル・アントレプレナーのファンドを作りたい、アジアのファンドを作りたいと、そういうことを言ってたと思って。
で、僕がライフネットをやろうって誘われてる時が2006年だったんですが、例の谷家さんに「将来何がやりたいんですか? 」って聞いたら「僕、学校作りたいんです」って言ってたんですね。
それを聞いて、この人すごく素敵な人だなと思って一緒にやろうと思ったんですけど、それから「校長先生できる人いない?」って、ずっと言われてて、帰ってきてたりんちゃんを谷家さんに紹介して、その出会いから今が生まれたんですけど。
なんかその、ソーシャルアントレプレナーファンドって、もやもやって考えてた頃から学校っていうものへのトランジションというものは、どういう風に頭の中で整理したんですか?
小林:ユニセフでフィリピンの現場で過ごしながら、色々悩んで、こういうアプローチじゃないんだろうなって思ってて。ギャップをどうやって埋めていくのか、どうやって変革って起こるんだろうって考えて、1つそういうソーシャル・アントレプレナーを助けるっていうこともあるかな~っとは思ってたんですね。
けど学校っていう話を聞いた時に、正直、個人で学校が作れるっていう発想がなかったっていうのもあるんですけど、そういうアプローチの仕方もあったのか~っていう、天命みたいなのを感じました。あとは自分がそういう高校に行っていたということもあるので、すぐに鮮明に見える化というか、自分の中で想像ができたんですね。これだな! って思えたので、感謝してます。岩瀬君の紹介に。
岩瀬:ありがとうございます。次にTeach For Japanの松田さんからお話をいただこうと思います。松田さんも僕からメールして「お会いしたい」とかって突撃しましたよね、確か。あとで説明あると思うんですけど、アメリカに留学してる時にTeach For Americaというものの存在を知って、これは本当に素晴らしいなっていう風に思ったんですね。
これは一番優秀な学生が志願して、そのプログラムに参加して、恵まれていない地域の子どもたちに勉強を教えに行くというもの。で、実はそれに参加することで結構いい就職先が見つかるというか、その経験者を優先的に取りたがるっていうのもあって、すごいエコシステムが出来ていて、こういうのすごいなって思ったんですよ。
そしたら日本で同じものを立ち上げようとしている人がいるって聞いて、もうすごい興奮して会いに行ったのを覚えています。そういった意味でぜひ期待しているんですけど、ぜひTeach For Japanの話、皆さんに聞かせていただければと思います。
松田悠介(以下、松田):ありがとうございます。Teach For Japanの松田と申します。NPO経営者として、まさかこういった場に立つとは思っていませんでしたが、少しでもTeach For Japanのことをお伝えできればなという風に思っております。Teach For Japanは大きく2つの問題意識を持って取り組んでおります。
松田:まず社会で求められている能力と、今学校で、教育現場で子どもたちに提供している教育のギャップが存在しているんじゃないかということが1点目。2点目が、生まれた地域環境や家庭環境によって子どもの人生が決まってしまうという教育格差の問題でございます。1点目ですけれども、もうここはくどくど言うつもりもないんですが。
松田:やはり、20世紀型のベルトコンベアの前に立って、ある製品を高品質に創り出していくといった時代からですね、情報を組み合わせながら、新しいものをクリエーションしていく、もしくは課題解決をしていかなければいけない時代に突入しているんだろうなという風に思っております。
なぜこういうことをまずお話しているかというと、教育というのは10年後、15年後の子どもたちがいる社会を生き抜いていくために必要なスキルを教えていく、伝えてく場でなきゃいけないと思うんですね。
松田:そういった中で、21世紀型の教育というのは恐らく、お互いの個性を尊重し合いながら手を取り合ってシナジーを生んで切り抜いていく力であり、もしくは情報を組み合わせて、本当に新しいものを創造していく、もしくは課題解決していく場を、教師自身がファシリテーションしていくっていうのが求められてくるんじゃないかなと思うのです。
やはり今の学校教育現場においては、いまだに前へならえ右向けの教育であったり、もしくはある情報を一方的に伝えていく暗記偏重型の教育であったり。つまり、時代は変わっているんだけれども、実際提供している教育は、まだまだ変われてないよね、といったところが1つ目の問題意識になります。
松田:教室というところを見て、実際に子どもたちがどういった現状にあるかというお話なんですが、将来に希望を持っている中学生の割合。これは筑波大学が出した調査なんですが、中国は9割以上の子どもたちが将来に希望を持っているわけですね。ただ日本は3割に満たないといった状態でありますし。
松田:合わせて、自分はダメな人間だと思っている高校生の割合が、日本はダントツで高いんですね。もう65%の高校生が自分はダメな人間だと思い込んでしまっている。
松田:で、ちょっと違った切り口の課題なんですが、生活保護率もどんどん上昇していて、戦後間もない時っていうのは200万人を超える生活保護受給者がいたんですが、今それを超えて215万人に生活保護受給世帯が増えていて、財政規模で言うと3.8兆円の規模になってきています。
松田:2点目の連鎖のところに入っていきたいんですが、実は貧困率で見ても、世界で相対的貧困率というのは、OECDの調査によると、日本は4番目に高いんですね。その国で生きていくための最低限の生活水準以下の世帯の割合は、格差社会であると言われるアメリカに次いで4番目に高いと。
松田:こういった年収が子どもに対する影響も大きくって、やっぱり世帯収入が高ければ高いほど子どもの学力は高く、低ければ低いほど、学力は低いと。東京大学の確か59.5%が、世帯年収が1千万円以上の世帯になっているという記事も見たことがあります。
松田:そういったところで、高校の進学率であったり、大学の進学率に影響を与えていき、
松田:最終的には就労の機会ですね。結局、大卒か高卒かによって得られる賃金にも差が与えられてくるわけです。間を足し合わせると、生涯賃金になるんですが、それはもう1億円以上の生涯賃金差になってくるわけです。
松田:ここで伝えたいことが1つあって、連鎖してるってことですね。
松田:結局こういったところの部分で、あまり賃金を得られない職業に就いている人たちは、結果的に自分の子どもに与えられる教育も限定的になってしまい、結局そこが大学進学であったり、また次世代の就労にも影響を与えていく。
私はたまたま松田家に生まれたからここにいるかも知れませんけれども、それがたまたま他の〇〇家であれば、全くもって違う人生が待ってたっていう、そういう社会を果たして本当に私どもが創りたいのかというと、そうではないと思うんですね。どういった家庭の子どもであっても、可能性が最大限生かされる社会というのを創っていきたいという風に思っています。
松田:それに対して2つのプログラムを展開しておりまして、1つは学習支援プログラムといって、これは学校外の活動になります。放課後や週末に、生活保護を受けている子どもたちですとか、震災で被災してしまった子どもたちに対して、ある種、勉強を教えていくといったプログラムですね。このプログラムは大学生ですとか、大学院生を選抜して研修を提供したあとに、支援をしていくんですが。
選抜をしてる理由っていうのは1つあるんですが、子どもたちは色んな課題を抱えているんですね。その子どもたちの環境を良くしていくということは、課題を解決していかなければいけないんです。なのでボランティア精神だけではダメでして、それに伴うスキルといったものも必要といったところで、課題解決能力であったり、リーダーシップといったところを見て選抜をしております。
研修の内容はもちろん指導力に関わるところもあれば、子どもを導いていくという意味では、リーダーシップも必要になってきますし、先ほど申し上げた課題解決能力も必要になってきますので、そういった研修も学生教師に提供しています。
松田:今全国で35プログラム展開しておりまして、
松田:こういった形で研修をしてから、実際に教壇に立ってリーダーシップを発揮して、で、まあ、こういうやんちゃな子どもたちが多いところに入ってくんですよね。
松田:本当にこれは中学生なんですけれども、見た感じ、やっぱり喫煙であったり、窃盗であったり、家庭裁判所が当たり前な子どもたちです。ただ、この子どもたち、悪くないんですよ。生まれ持ってこうなるために生まれてきたわけではなくて、やっぱり周りの環境なんですよね。
松田:この子どもたち、もう1つわかるのがですね、好きなものは一生懸命やると。
松田:好きなものは一生懸命取り組むんですよね。なので、いかに学びというところをこうやってゲームであったり、スポーツのように、ワクワクして率先して取り組めるものにできるのか。
松田:そこには、やっぱり人というのは大きな要素として介在すると思っていて、こういう学生教師が一緒に課題解決をしながら、子どもたちと向き合って、信頼関係を築いていって。
松田:で、実際に勉強するようになるんですよ。ちょっと多くの子は、まだ足を立てながら勉強していたり、ちょっとまだ改善しなきゃいけないところはあるんですが、でもやっぱり机に向かって勉強するんですよね。
松田:放課後居残って勉強教わってやってもいいぞって、なぜか上から目線なんですけれども、でも勉強するようになると。
松田:とは言えですね、週に1回のプログラムとか、夏休み中の5日間のプログラムをやっていて感じたんですけれども、まだまだこの子どもたちの人生変えられてないんですよ。中学3年生でも高校進学率100%です、僕らが見ているプログラムだと。今までは定時制に進んでいたであろう子どももですね、普通学校に進学するようになっていて、色んな素敵なストーリーがあるんですが。
松田:この子たちの人生、変えられてないんですよ。10年後、15年後のことを想像して、果たして、じゃあ自立して、自分の生計立てられるようになるかというと、まだそこまで見えていない。
松田:これを365日出来ればどんなに素敵なことだろうかと思って、今年の4月からスタートしたのが、このネクスト・ティーチャー・プログラムになります。これは、同じように採用選抜するんですが、これは若手社会人だとか、新卒、まあ既卒生を採用選抜していって、研修も30時間とかではなくて、もう200時間を越える1ヵ月の集中合宿で研修をしたあとに、困難校に配置をしていくと。2年間教師として働いてもらうプロジェクトになります。
松田:先ほど岩瀬さんのほうからもありましたけれども、元々はアメリカにありましたTeach For Americaに、私がアメリカに留学中に出会って、これを私が是非ともやりたいという風に思ったんですが。23年前、アメリカで立ち上がったNPOでございまして、困難校に全米で最も優秀で情熱のある人材を2年間教師として送り込んでいこうというプロジェクトで、もう23年の実績があります。
松田:年間6千名ぐらい採用していて、2年間のプログラムになりますので、1万人以上の優秀なリーダーが、困難を抱えている子どもたちと向き合って、課題解決をしているといったところになります。ひとつ驚くべきはですね、2010年の文系学生の就職ランキング、Teach For Americaが1位になってるんですね。
松田:グーグルさんですとか、アップルさんとか、マイクロソフトさんですとか、FBIを抜いて、誰もが働きたい職場といった形で、かつハーバード大卒業生の18%の人材がアプリケーションを提出すると。そういった形で、課題解決できるリーダーがどんどんこの教育というところに携わっていくというのは非常に印象的でした。
松田:そういったリーダーたちが現場に入ってきますので、一つひとつの学校現場の課題を整理して、あるべき姿を描いて解決していく。そうすることによって、子どもたちの進級率、学力、進学率が上がっていく。
もう1つはですね、2年間のプログラムが終わったあとに、様々なセクターのリーダーとして巣立っていくわけですね。教育の現場に残り続けるケースもあれば、ビジネスの世界、行政の世界、政治の世界に入っていく人たちもいます。
ただ、今も色々いるんですが、例えば連邦議員だとか、政治家、教育長になっている人もいるんですが、Teach For Americaの卒業生で、各々の立場から引き続き、教育課題の解決にコミットしていくんですね。ビジネスセクターに入っていった人であれば、ヒト・モノ・カネの投資をするようになっていったりだとか、社会を巻き込みながら教育を良くしていく仕組みを作ったTeach For Americaに、非常に私は印象を感じました。
これはアメリカだからうまくいったよね、ではなくて、今もう世界27ヵ国で展開されております。インド、中国、イギリス、ドイツ、オーストリア、オーストラリア、ニュージーランド、色んなところで起こり始めているインパクトなんですね。イギリスも10年になりますけれども、就職ランキング2位になって、PwC(プライスウォーターハウスクーパース:世界4大会計事務所の一角)に次いで2位になってきたりとかもしている状況です。
松田:日本でも育成はスタートしておりまして、我々は新卒のみならず、若手社会人、中途も採用しておりますので、この中には、例えば、楽天で新規事業を立ち上げていて新人賞を取ったような優秀な人たちですとか、あとは青年海外協力隊で、海外でやっていましたというような人たちもいますけれども、そういった課題解決できるリーダーたちと共にですね。
10年後には1千名、学校現場に送り込んでいくと。そうして、子どもに対するインパクトっていうのは数十万人、数百万人といったところまで、持っていきたい。かつ、就職ランキングも1位にしていきたいと。
なぜ1位にしていきたいかと言うとですね、別にファンシーだとかそういったことを目指しているのではなくて、やっぱり教育というのは国づくりの根幹であると私は信じているんですね。で、その根幹部分に、私はぜひとも一番優秀な人たちに入ってもらいたい。教師をカッコいい仕事にしたい、という世界を夢見てですね、
松田:私は今でも活動しております。次世代の教師に、リーダーシップを。そしてすべての子どもたちに、時代を切り拓く力を。とは言えですね、今描いているものは大きいですけれども、まだ始まったばかりで。本当にやっぱり、社会課題というのはいちNPOで解決できるわけではなくて、色んな皆さまのお力添えいただきながら、ぜひともこのムーブメントを一緒に創っていければなと思っております。ありがとうございます。
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