バズフィードの新技術「POUND」はメディアをどう変えるか--佐々木俊尚氏がテクノロジーの進化を解説

アメリカ新興メディア業界の最前線を知る #4/5

LIFE MAKERSトークセッション
に開催

佐々木俊尚氏がプレゼンターを務める有料会員制コミュニティ「LIFE MAKERS」に今年3月から3ヶ月間アメリカ新興メディア業界に現地取材を行った大熊将八氏をゲストに迎え、トークセッションを行いました。「アメリカ新興メディア業界の最前線を知る」をテーマに、過渡期とされるメディア業界の変化について意見を交わします。本パートでは、佐々木氏がバズフィードの競争力の源泉となっているデータ分析手法「POUND」について解説し、今後メディアに生じるであろう変化について語りました。

メディアが他社の記事をシェアする!?

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):質疑応答をはじめようと思うんですが、何か聞いてみたい人。はい、どうぞ。

質問者:以前、BLOGOSのTwitterアカウントがBLOGOSの記事じゃないものをリツイートしているのを見たんですけど、そのNowThisとか以前見たときも、例えば海外のNowThisとかそういうところでも、自分のものではない記事とかをサーバーに発信できるとかっていうのはあったりするんでしょうか? 

大熊将八氏(以下、大熊):例で言うと、結構なところがやっていると思いますね。例えば、Mashableとかって、ひっきりなしに更新しているんですけど。拡散するものであれば、自分のところと異なっても他の記事を拡散した著名人の話とかリツイートしてるところもあるっていう感じですかね。主流とかではないんですけど。

質問者:それは例えば、ユーザーに対して質の高い記事を届けるっていうことで、そういう第一原理みたいなものがあるっていうことですね。

大熊:そうですね。難しいんですけど、例えばより分散型になるとするとソーシャルのTwitterのそこのアカウント、例えば、Mashableのアカウント、NowThisのアカウントへの信頼感とか、そこにフォローしてもらえるかどうかが、全てになってくると思っていて。

そうしたときに、結果的にそこの信頼感、ゆくゆくのフォロワー増につながるのであれば、他のいい記事をリツイートするってのは、ひとつ合理的なのかなと思いますね。この辺りをちょっとソース不明瞭のため記事にならないといいなと思います……。

質問者:ありがとうございます。

米ハフィントンポストに見られる若者離れの兆候

佐々木:事前質問が来てるんで、それも混ぜながら。勢いがなくなってるメディアとかありますか? その理由も教えてください。

大熊:勢いがなくなってるメディアですか。アメリカでってことですかね。

それで言うと、日本の関係者の方とかがいたらちょっと悲しいんですけど、ハフィントンポストさんが例えば向こうでメディア系の技術とかは、毎日それこそさっきおっしゃったように1週間、目を放したら、いろいろ出てくるっていうような感じで、どんどん動いてるっていうイメージだったんですけど。

ハフィントンポストさんって、もともと2008年のオバマ大統領の当選を後押ししてきたんじゃないか、人を動かしたんじゃないかというぐらい影響力があって。で、今ユーザー数で月間の訪問者数でいうと、一番多い2億人ぐらいなんですけど。

何かいまいち、ひとつ存在感がなくなってるかなっていうのは思っていて。ちょっと主観も入ってるんですけども。例えば、向こうの大学生とか大学に潜ったりして、どういうメディアを読んでるんですかとか聞いたときとか、うまくつながった友達が、そのFacebookで何を「いいね!」してるか見てたんですけど。

大学生以下、大学生が中心なんですけど、大学生ら辺で、あんまりハフィントンポストに「いいね!」してないんです。バズフィードとかが多くて。ある種、中途半端になってるのかなと思います。

佐々木:若い人に、あんまり読まれなくなってるってこと? 

大熊:そうですかね。立ち位置が、結構中途半端なのかなと思っています。

一極に、バズフィードみたいなのが、めっちゃ娯楽なものがあって、その対極にウォール・ストリート・ジャーナルとかニューヨーク・タイムズみたいな高級紙みたいなものがあるとしたときに多分今、真ん中ぐらいにそれこそなっていて広く浅く読まれてるけども、そういうブランド、存在感みたいなものが、ちょっとないのかなと思います。

佐々木:もしそうだとしたら、栄枯盛衰は恐ろしいですね。

データ解析がメディアの競争優位性に

佐々木:他、質問はいかがですか。はい、じゃあどうぞ。

質問者:今日は、貴重なお話をありがとうございます。先ほど話が出たバズフィードのPOUNDというアクセス解析について教えていただきたいと思ってます。

分散型メディアは、結局プラットフォーム上に流すので自社でデータを持ってない中で、バズフィードはPOUNDというのを使って、いかに分散したかっていうのを分析するようになったという中で、2つ質問がありまして。

分散型メディアの他の媒体も、同じ方法なのか違う方法なのかわからないんですけども、やはりそこの解析をとりに行っているのかっていうのが1点目で。

もう1つは、じゃあ日本のメディアは、それができるのかと。普通のメディアだと、どっちかというと旧媒体はいわゆるコンテンツ型なので、技術をあまり持ってない媒体がそれはできるのかと。バズフィードさんはメディアといっても、結局テクノロジー会社だからできることなのかというのをちょっと知りたいです。

大熊:それで言いますと1個目の質問のほうの、バズフィード以外にもやっているのかっていう話ですかね。それで言うと基本的には、そこが競争優位性の源泉になってるぐらいで。NowThisも動画がどう拡散されるかみたいなのに関しては、独自の分析ツールを開発しているらしくて。

基本的には、そこが優位性の源泉らしいですね。エンジニアの独自のCMSですとか、コンテンツの拡散解析ツールっていうのを各新興メディアと言われるところとかは、大体全部独自開発していて。そこのサーバー、結局コンテンツの拡散差になってるのかなという面が強いかなっていうところですかね。

バズフィードの分析ツール「POUND」について

佐々木:POUNDって、多分ご存じない方もいらっしゃるので少し説明しておくと、これはよく使われている有名な図で、1つの記事を流したときにどう拡散するかっていうのを左側で見れる。

Facebookのいいね数と、Pinterestのピン数、それからTwitterの中のリツイート数、あるいはメールの中の、こうやって見るんだけど、これが正しいとは限らないっていう話があるのね。

例えば、その実験としてバズフィードが公表してるのは、「青黒か白金ドレス、どっちに見えますか」って記事がありましたよね。あれ、ものすごい読まれたんだけど、あれって確かFacebookのいいね数が1,000万ぐらいで、数字的にはあれですけど1,000万ぐらいあって、Twitterのリツイートが300万ぐらいしかない。

全然TwitterよりFacebookのほうが多いっていう、こういう見え方だったんだけど、実際にそれがどう拡散しているかって経路まで見ないと、それはわからないと。

実際に経路を調べてみたら実はTwitterから、僕はTwitterで読んでTwitterでリツイートすればTwitterの数字になるけど、Twitterで読んでTwitterで何の反応もしないで、それをFacebookにコピーして拡散したら、見た目上はFacebookで拡散したように見えるじゃないですか。

だから実は、そのFacebookいいね数の1,000万の結構大きな割合で実はTwitter発で拡散していたことがわかった。だからTwitterって意外と影響力大きいんですよねってことをこういうやり方で調べることができたってのが、POUNDって新しいバズフィードの開発した分析ツールなんですね。

何でそんなことができるのか。そもそもSNSってのは、自分のところでデータがとれない。普通、自社サイトであればGoogleアナリティクスとかを使って、どんな人たちがどこからの流入で検索エンジンから来たのか、アプリから来たのかって全部調べられるんだけど。

そもそも、それをFacebookで流した時点で、そこから先はブラックボックスなんです、通常は。

で、彼らがとったのはハッシュ値という、要するにURLの尻に毎回毎回わかるユニークな数字をひっつけて表すんですよ。それで、「いいね!」とかが拡散されるたびに、その数値がどんどん変わっていくっていう仕掛けをとって。

そうするとどっかのやつで、そこにふっと現れたときに、そのハッシュ値を調べると、その数値は一体、どっからどういう経路なのかが、全部わかるような仕組みにしたんです。だから、そのURLのみで分析するっていう新しいやり方をとったのが、POUNDのすごいところですね。

これがゆえに分散型メディア、つまり自前で公式サイトを持ってなくて完全にSNSとかに流しっ放しにしても、全てデータがとれるっていう仕組みをとったということなんです。

バズフィードが生んだメディアのイノベーション

佐々木:これ新しい垂直統合って呼んでいて。昔の垂直統合ってのは自社で例えばテレビなんか、自社で番組を制作し自社で編成し自社で電波で流すっていう全てを自分たちでやって、これが垂直統合。

これインターネットの時代につくって、特にPCの頃ってのは、自社でせっかく記事をつくっても、ヤフーに流します。で、ヤフーが配信をしてヤフーが流通するのでそこから先はコントロールできない。

で、お金ももうからない。ヤフーばっかりもうかるっていうのが、いわゆる古いメディアから見ると、ネットメディアは恨みつらみになってたわけですよね。

この新しい新興メディアがすごいのは、もう完全にヤフーに流します、Facebookに流します、Twitterに流しますといっても、完全に向こうは放置なんだけど、そのかわり何やってるかというと収益は、でも我々が取りますよ。

なぜ取れるかというと、配信先の広告じゃなくてコンテンツそのものを広告にするからである。これがネイティブ広告ですね。

同時にデータも、今までは採れなかったんだけど、このPOUNDのやり方をすれば、自社でデータ分析ができてしまう。だからSNSに全部流しっ放しだけど、お金もデータもコンテンツもとりますよっていう、新しい手法をつくり出した。これこそが、実はバズフィードの新しいとこなんですね。

これが、今のところ僕が補足している範囲で言うと、今のメディアのイノベーションの最先端であり、多分ここが本質なんじゃないかなっていうことだと思います。

でもこういうやり方というのは、原理とかは何となくPOUNDの仕組みっていうのは、みんなわかってるので、恐らく同じことをやる会社はいくらでも今後現れてくるだろうし。

そのときにFacebookとかそっち側が、どこまでそれを許す、許さないって問題じゃないのかもしれないけど、どうやってデータを囲い込むのか、あるいは囲い込まないのかっていう。

そこら辺、SNSとFacebookとか、プラットフォームとコンテンツの、ある種のせめぎ合いみたいなのが、今後起きてくる可能性は結構あるんじゃないかなと。

資金調達次第でメディアの可能性は広がる

佐々木:2つ目のご質問は、それは日本企業ができるのかっていうと、例えばバズフィードも別に当初は技術者集団なんかではなかったんです。単なる猫の写真を共有するサイトだったんです。猫サイトって言われてたぐらいで。すごいチープなバイラルメディアだったわけですよね。

チープなバイラルメディアなんだけど、自前で一生懸命いろんな写真をキュレーションして集めて、それを配信する。日本でよく、固定バカだとか言われてる、バイラルメディアという世界なんだけど。

でも、やっぱりそこで拡散能力がすごく高くなると、だんだんそこに対する期待感みたいのが高まってきて、その拡散能力への期待感が、多分VCとかの投資を舞い込んだことにも、結構あるんじゃないのかなっていうんで、巨額の投資が入るわけだ。

その巨額の投資をてこに技術者をどんどんふやして、同時に自前のキュレーションの中ではなくて、自前のオリジナル記事もつくるんだっていうんで、旧来メディア、新聞社とかからどんどん記者を入れて、今のように巨大にしてったという構造なんです。

だから、日本でも同じように、別にチープなどこかのメディアが資金調達さえうまくいけば、そこに技術者をどんどん入れ、古い業界から優秀な編集者とかをどんどん入れてやっていけば、こういうふうになってく可能性は十分あるし、特に同じような道は開けるなと思うんですね。

大熊:そうですね。まだまだ、日本ではカオスなので、チャンスがあるかなとは思います。

佐々木:まだ始まったばっかりですものね、このやり方。

コミュニケーションアプリの躍進

大熊:あと1個つけ加えていいですか。そのデータトレンドから、こういうPOUNDができるようになってきたっていう話なんですけど。さらにもう1個新しい流れがあるかなと思っていて。

それはコミュニケーションアプリですね。WhatsAppとか、さっき言ったSnapchatですとか、今はコミュニケーションアプリで一緒に使ってる時間が、今ソーシャルメディアを追い抜かそうとしているっていうような状況がある。

佐々木:日本でいうとLINEみたいなやつ。

大熊:そうですね。WhatsAppとかは、あんまりメディアにとって優しくなくて、データがすごい取りにくいと。だからコミュニケーションアプリは、ダークソーシャルっていうふうな言われ方を向こうでされていて、そこに対する対応っていうのは、まだまだ考え中で。

例えば1つの例としては、WhatsAppっていったら、どんだけうまいコンテンツをつくって出しても、どんだけ拡散したのかとかって、いまいちデータとして取りにくかったんですけど、そこはたくさんリンクを貼って、どのくらいリンクバックがあったとかっていうので調べているようです。

そこに関しては向こう、アメリカでもかなり模索中っていう感じでして、そこが次の新しいものの課題といいますかチャンスといいますか、というのがそこにあるんですが、そのダークソーシャルをどうするかっていうのはあるんですね。

佐々木:常に、囲い込みとオープンの狭間で揺れ動くっていう。あまりにも囲い込むと、それはそれでSNSで自分で自分の首を絞めることになるので、ある程度、囲い込めても、ある程度オープンにしながらっていうことで、コンテンツ側とプラットフォーム側で、いろいろ戦いながら、やっていくっていう展開もあるんじゃないかなと、そういう気がしますね。

アメリカにあって日本にないメディアのジャンル

佐々木:アメリカメディアと比較して、なんでまだ日本でないのっていうジャンルメディアってありますか? 

大熊:なんで日本にないのっていうジャンルですと、そうですね、基本的にはあまり変わらないかなと思って。流通とかが生まれてるかどうかの問題かなと思っていて。

僕、結構昔から好きなんですけど、すごい専門的な話とかをしてるサイト、メディアでもない、個人ホームページみたいなのって、たくさんあるじゃないですか。何々県のお土産についてはこれ! みたいなやつとか、そういうメディアとか。

というのは、アメリカとかだと僕の行ったニューヨーク市立大学で起業家、アントレプレナーの起業家ジャーナリストコースっていうのがありまして。

そこの人とかが例えば英語で北朝鮮のニュースを追いますとか、食育についておいしそうなご飯の画像で引きながら、実は食の問題について考えるようなメディアがありますみたいな感じで、いろいろなそういう新しいメディアつくるぜっていう人たちがいて、ペットフードについて学んでもらうメディアとか、すごいこまい、いろんなメディアがあるんですけど。

日本で、そういう情報を発信している人がいないかっていうと多分、何らかしてるとは思うんですけど、それが十分に拡散されてないっていう話なのかなと僕は思いますね。

佐々木:NPOの調査報道はないよね。あれ、でも多分やる人がいないということよりは、マネタイズがしにくいっていう。アメリカみたいなお金持ちがたくさんいて寄付してくれるみたいな社会じゃないと、調査報道NPOって、成立しにくいんじゃないかなって感じがします。

制作協力:VoXT

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