矢沢永吉が売っているのは生き様

尾原和啓氏(以下、尾原):ハイコンテクストっておもしろいのが、今度は、僕も所属してる尖った人を応援するQREATOR AGENTっていうところの佐藤詳悟さんが言ってた言葉がおもしろくて、「必ず人って、作品だけでハイコンテクストを味わうっていうのでは物足りなくなる」って言ってるんですよ。

彼は同じく漫画家の支援をやってるんですけど、漫画家の、漫画が好きっていう人たちって、人間で構造化すると心技体になっていくって言ってるんですね。

要は漫画っていうアウトプット、体の部分が先に好きだった人たちは、「やっぱり手塚のタッチって、こうだよね」っていう技が好きになるんですよ。

技が好きになると、「手塚は、こういうペンで書いてる」とか「こういう服で帽子でやってるから帽子を買いたくなる」って言って、技を消費し始めるんですね。でも最後、必ず心技体の心に行くんですよ。要は心意気ですよね。生きざま。

多分、心技体の心を一番世の中で売ってる人間が矢沢永吉っていうビジネス。永ちゃんって、もう歌を売ってるんじゃなくて矢沢永吉という生き方を売ってるじゃないですか。

これが僕は、ものって絶対、値段競争になっていっちゃうけど、生き様って絶対値段競争に陥らないので、そういうヒューマンな、人を売るっていうと何かちょっと悪く聞こえるけど、生き様を売るっていうものに近づいてくるんじゃないかな。

日本人特有の「関係性消費」とは

川原崎晋裕氏(以下、川原崎):それは、店長が自分をキャラクター化するだったりとか、何かすごい特徴的な内容のメルマガを書くとか、例えばそういったことになるんですか?

尾原:もちろん、そういうのもあります。あともう1個、日本人のおもしろいところで、日本人って関係性消費がすごい好きなんですね。関係性消費って何かっていうと、僕だと北川さんって、すごい残念なことに小中高、同じなんですよ。

15年離れてるんですけど、でも彼は一生僕に逆らえないっていう関係にあって、その関係を周りからいじって、いじられて、それを楽しむみたいなね。

北川拓也氏(以下、北川):はい(笑)。

尾原:この関係性消費をビジネス的にむちゃくちゃ再現するっていうことでビジネス化したのが、実はAKBなんですよね。昔は宝塚なわけです。

AKBって、わざといろんな人の組み合わせをカップリングして、そこに関係性の物語をつくることによって、その関係性を消費しやすくする。

関係性をどう商品化していくかっていうのは、どこまで自覚的にやっていくかというのはあると思いますけどね。

本田宗一郎は部下を泣きながら殴ってた

川原崎:その辺、大西さん、いかがですか?

大西康之氏(以下、大西):だからそれが、今、川原崎さんちょっとおっしゃった、店長のブログとかで、ただ思いを書くだけだと、多分ブランディングとしては浅くて。

川原崎:なるほど。手厳しいですね。

大西:やっぱり今の尾原さんの話の延長なんだけど、伝説になる。

川原崎:伝説ですか?

大西:伝説。ハイコンテクストの一番上は俺、伝説だと思ってるのね。そういう長い3000年とか4000年とかって文化があると、必ずそこには伝説があるのね。

でもその伝説的なものって、ほかの異文化の人からは、よくわからないのね。何の意味だかわからないんだけど、その中に入ってるとその伝説って、すごい効くのよ。「怖え」とか。

川原崎:はい。

大西:それ言うと子どもが泣きやむみたいな。

川原崎:(笑)。

大西:だからそこをやっぱり、どこまで店長さんが自分のやってるビジネスに没頭できるかっていうか、もう無心の境地。

どうやってページビューふやそうかとか、どう売上をふやそうかとか、そういう、ある種こざかしいことではなく、「俺は好きなんだこれ!」みたいな。俺、よく言うのは本田宗一郎、社長のとき社員殴ってたのね。

川原崎:本当ですか?(笑)

大西:うん。今で言うと完全にアウトなんだけど、パワハラでアウトなんだけど、そのときの言葉が「何で、いい車つくんねえんだ、ばかやろう!」って言って殴るんだよ。自分、泣いてんだよ。泣きながら殴るんだよ。

殴られたほうも、泣きながら謝るんだよ。「すんませんでした!」みたいに。でも、そういうものは伝説になるじゃん。

川原崎:日経さんでは、殴ったり泣いたりしてるんですか?

大西:原稿、捨てられるとか。

(会場笑)

川原崎:じゃあ間接的に(笑)。

大西:さすがに直はないですけど、ダイレクトもないですけど、でもそういう野蛮なとこあるよね。

川原崎:(笑)。

大西:でも、何て言うのか、そういうのがやっぱり伝わるわけですよ、何となく。

伝説が商品に乗り移る

大西:そういった伝説が、その商品に乗り移るみたいな。S600、すげえとかいう話になってきて、マン島レースで勝ったとか、F1で勝ったとかってなってきて、セナが死んだとか、そういうのも全部、伝説になってくじゃん。

でもそれはやっぱり根幹には宗一郎の、泣きじゃくりながらエンジニア殴るみたいな、すさまじい車への思い入れ。

あの人多分、会社をでかくしたかったわけでも、稼ぎたかったわけでも、自分が偉くなりたかったわけでもなくて、レースで勝ちかったんだよね。ひたすら、それだったと思うよ。

だから半端な車をつくると、本当、怒るんだよね。「ばかやろう!」って。その心意気みたいな、めちゃめちゃ人間臭いよね。

川原崎:そうですね。これ北川さん、楽天さんの中で伝説的な何か、ちょっとお手本にしてほしいみたいな店舗さんだったりとか、あるいは楽天さんじゃなくてもいいんですけど、ほかの、あえて外部のECさんで、これちょっと伝説になるんじゃないかみたいなものとか。

北川:店舗様の間ではもちろん、誰もがご存知のようなたまごやさんの話だとかはあるのですが、最近で言えば、僕が感動したのは、「壁紙屋本舗」の濱本さんの話です。「壁紙って日本の文化じゃなかったよね」と思って。

僕、アメリカにいると、わりと壁紙って使うんですけど、日本って壁紙の文化じゃなかったはずなのに、そんなにも売れちゃうんだっていう、そういうトレンドや文化を生み出した伝説として僕は捉えています。

世界から支持される村上春樹のすごさ

北川:もう1つ、お話聞いていて、コンテクストはつくんないといけないってお話もあったと思うんですけれども、僕はあえてアメリカにいたときに非常に感じたことのひとつとして、村上春樹の話があるんですね。

村上春樹って異常なハイコンテクストな気がするんだけれども、あのコンテンツは実は一読で世界の人間の心をわしづかみにするコンテンツなんですよ。

何でかはよくわかってなかったんですけど、僕がアメリカの大学にいたときに、ちょうど同級生の1人と何となく話をしていて、当時すごい村上春樹が好きだったんで、「日本人の作家なんだけど村上春樹のこの本のこと知ってるか」みたいな話をしたら、「もちろん、知ってるよ」みたいな、「好きだよ」っていう答えが返ってきたんです。

特にびっくりしたのが、そこでまさに先ほどの「それ、わかる」みたいな話で、「どこが好きなの?」みたいな、その本は何か、別にテーマがあるわけではないから、「好き」って言われたとき何が好きかわからなかった。

それで、「何が好きなの?」と聞いてみたら、「いやいや、冒頭に出てくるアイロンかけてる男とかも最高だよね」みたいな話をしていて、「え、わかるんだ」と、僕の中で結構ガーンと来て。

本当につくりこまれた商品だとか作品っていうのは意外とコンテクストを乗り越えて、文化を乗り越えて、言語を乗り越えて、伝わるもんは伝わるんだなと思ったので、逆に楽天の店舗様も、実は実践されてると思うんですよ、実は。

かなり文化とかを乗り越えた商品をつくられてる方っていらっしゃって、下手をすると、その壁を乗り越えて伝わっちゃうんじゃないかなと。

別に、そういう意味ではまさにレジェンドは、これからまさに、特に中国のお客さんだとか海外の方に売るときに、いきなりレジェンドの店舗が生まれてきても全くおかしくないなと思うんですね。

だから逆にそういう、あのオーナーはすごいという話がどんどん出てくることをこれからも期待しますし、今でもたくさんの店舗さんがそういう形で生まれている気はします。

アナ雪が世界でヒットした理由

尾原:今言った話って、大西さんの話は没頭っていう話なんですよね。没頭して、あり得ないぐらい突き抜けるから、その突き抜け感が人の心を動かす。

一方で村上春樹って実は共感なんですよ。日常のあるあるですよね。村上春樹は自分のことを親切な作家だって言っていて、どれだけ世界中の誰もが、そのシーンを思い浮かべられるかっていうところをかみ砕いていく。

だからさっき言ったようにアイロンをかけるだとか、ただ起きて水を飲むとか、そういった誰もが日常の中でやってる行為っていうことを、ものすごく丁寧に書くことをやられていて、実はアナ雪とかがヒットしたのも、それなんですよ。アナ雪って、すごい作品で、ディズニーなのに、あれカタルシスないんですね。

要は、だいたいディズニーの作品って最後ヒーローになったりとか、かっこよくなって終わるんですけど、あの作品だけ仲のいい兄弟が、仲悪くなって、仲よくなって終わるっていう、何も変わらない映画なんですよね。

なんだけど、ものすごくあれに感動するのは、実はピクサーのスタッフが全世界から姉妹の物語とか、全世界のグルーインをやって、姉妹のちょっとよかったエピソードっていうの、ものすごい集めてきてるんですよ。

ストーリーの物語のプロットの中に、この共感するエピソードを入れていけば必ず世界中の誰かが「うん、うん」って言うってものでつくってってるんですね。

ただこれだけだと、つまんない日常の物語になっちゃうから、そこにものすごい感動的な歌とか、雪のCGとかっていうものを重ねて、歌がなかったらエルザが山に引きこもるシーンって、単に山登ってくだけのシーンですからね。

そこが感動させるための、ちょっとびっくりするような物理的な衝撃っていうことを与えることでつくってるんですよ。

『ベイマックス』で使われた共感を呼ぶ手法

尾原:さらに、その手法って進化していて、『ベイマックス』って新しいものになったら、ベイマックスって実はアメリカでは『Big Hero 6』(ビッグ・ヒーロー・シックス)っていう名前なんですよ。

それはなぜかっていうと、日本は何かに柔らかいものにギュッとされることが好きっていう文化なのでベイマックスをフィーチャーしてるんですけど、アメリカはチームで何かを乗り越えるのが好きなので『Big Hero 6』って言ってて、ちなみに韓国ではヒロシっていう兄貴と弟の主人公の関係性が、やっぱり儒教の国なので好きなので、兄と弟の関係がフィーチャーされてるんですよ。

そういうふうに世界共通の共感をちりばめときながら、その国によって感度の高い共感というものを演出することで、世界中に通用するヒューマナイズな物語っていうのを提供してるんですよね。

川原崎:なるほど。

尾原:あれとかって、すごい皆さんがやるときのヒントになるんじゃないかなって思うんですけど。

ニュースアプリやコミュニケーションアプリと同じ土俵で戦うことに

川原崎:ちょっとお時間も少なくなってきたので、最後ちょっと具体的な質問をしてみたいと思うんですけど。

さっきちょっと北川さんがしゃべられていたんですけど、じゃあどういうコミュニケーションだったりとか、店舗上のコンテンツをつくっていけば、人はものを買いたくなるのか。

コミュニケーションによって、商品や売り手のことは好きになるかもしれないんだけど、じゃあ買うのかどうかって、また別の話である可能性もあるという。北川さん、お願いします。

北川:そうですね、僕が思ったところを皆さんに説明すると、スマホになってアプリを皆さんも、よく使われると思います。

スマートニュースだとか、ニュースアプリだとか、LINEだとか、コミュニケーションアプリっていうのは非常に使用はふえていて、今後、皆さんがものを売られるときも、これからそういったコンテンツと勝負をする形で商品を売られるっていう意識を持たれることになると思うんですね。時間を奪い合ってるという考え方。

結局じゃあ、そのスマホ上で勝っていくためには、コンテンツも消費の延長線上に商品がなければ、もう若い人はものを買ってくれないんじゃないかって、僕はちょっと思っていて、

じゃあ店舗さんは、これからはコンテンツをつくんないといけないのかっていうことに、僕は「どうなの?」と強く疑問に思ってることがあって。このセッションの皆さん、すごいコンテンツに関してエキスパートばかりですので、そこをちょっとお聞きしたいなと思っています。

ジャーナリストとしてあるべき姿

大西:ECの話になっちゃうと、ちょっと門外漢なんで、メディアの話をしますと、たまたまというか先日、弊社が買収いたしましたFTという会社がございまして。

完全に恐れ多い買収をしてしまったと思って(笑)。「これ手に負えるわけがねえだろう」と思ってるんですけど。

川原崎:フィナンシャルタイムズですね。

大西:僕、ロンドンにいたときにFTの記者と話してて「なるほどな、勉強になるな」と思ったんだけど、ベテランのFTの記者が言ってたのは「要するに俺たちはシェフだろう」と。

「読者の体のことを思えば、スピナッチ(ほうれん草)を食わせたいよな」と。「だけどスピナッチをそのまま出したら、読者は食べないよね、手出してくれないよね」。「じゃあ読者が手を出してくれるのはチョコレートバーだよな」と。

「じゃあチョコレートバー出しときゃいいのか」と言うと、「チョコレートバーだけ食わしとくと体壊すよな、どうする?」と。

「俺は良心的なシェフだから、スピナッチを食わすんだ。食え」と。「食えないやつがバカなんだ」と言って、「俺はやることやったぞ」と言って終わるのか。

それとも「俺は、だからおめえらが望むから、しょうがないからチョコレートバーを食わしてやるよと言って、チョコレートバーを並べて読者が不健康になっていくのを見過ごすのか」と。

「どっちもプロの仕事じゃねえだろう、だから俺はチョコレートバーの中にスピナッチを練り込む」と。

「チョコレートバー食ってるつもりが、スピナッチ食ってるという状況に持ってくのがプロの仕事だ」ということを言われて、やっぱり俺らジャーナリストって、どうしてもかくあるべきだとか、これを知ってほしいとかって、どうしても自分の思いが前にのめるのね。

それ店舗さんも同じだと思うね。「これは、いいから食え」とか、「これは、いいから着てみろ」とか、「いいから使え」っていう思いが、でも溢れちゃうとスピナッチになっちゃうんだよね。引いちゃうんだ。

若い女性はメルカリを女性誌として見ている

大西:でもかといって、「何なら買ってくれるかな」ばっかりで、先回りして、引っかけようとする。食いつきがいい見出しばっかり。誰と誰が結婚、「えっ」と思ってペラってはがすと、「か?」って小っちゃく書いてあるみたいなスポーツ新聞的な。

尾原:あるいはログミーのタイトルみたいなやつ。

大西:(笑)。

川原崎:そうですね。

大西:結局それをやれば部数は伸びるし、ページビューも伸びるんだけど、やっぱり読者のためにならないですよね。だから食いつかせといて、でも読み終わったら1つ賢くなってる。

必要なことがわかってるみたいなのが、俺はコンテンツのプロとしての態度だなと思ってます。

尾原:でもそれすごいわかって、一方でそれってやっぱりスマホの時代に合ってるんですよね。

さっき言ったようにスマホの時代のキーワードは、あともう1つの話をするんですけど、キーワードとしてあるのが、先ほど言ったリーンバックインターネットっていう、だらだら使うインターネットの時代だっていう話と、やっぱりアプリですよね。

この2つの時代で、やっぱり明らかにメディアの経験が変わってきていて、だらだら使うもんだったら、メディアだろうがコマースだろうが何でもいいんですよ。究極言うと。

そうすると、もう全部がほうれん草が混ざったチョコレートになっていて、メディアで人は買うし、逆にコマースを読む時代でもあるんですよね。

だからコマースを読む時代で象徴的なのがメルカリっていうアプリで、あれフリマのアプリだって皆さん思ってらっしゃるかもしれないんですけど、若い方ってあれを女性誌みたいに見てるんですよ。

要は自分の等身大の女の子たちが何を出品してるんだろうと。何を出品するっていうことは、何を買うってことの裏返しですよね。

だからほかの子たちが何を買ってるのかしらっていうのをだらだら家帰って、今まではMERY(メリー)とか女性誌を見ていたものをメルカリを見ちゃう。

だから、ほとんど買わないときもあるわけですよ。だけど時々「あっ、これ」っていうのに出会ってしまうと買ってしまう。

だから普通のインターネットのマーケティングだとCTRをいかに上げていくか、コンバージョンレートをいかに上げていくかという勝負をやってるんですけど、メルカリはそうじゃなくてページビューを10倍100倍にしてだらだら使わせてしまえば、CTRとかコンバージョンレートが5分の1になっても倍人が動くわけですよね。そういうもののつくり方をやってるっていうのが1つ。

メディアとコマースは融合する

尾原:今度、逆にメディアで買う時代っていうのもあって、これがMERYが象徴する、2,000万人もユニークユーザーがいる、女性をかわいくするっていうニュースサイトなんですけど。

これニュース読んでるうちが、いつの間にかリンクになってて、結局お客さんからするとワンクリックすれば、そこでECのサイトに飛んでくので、そっから先がECのサイトなんて理解してないんですよね。

そういうふうにメディアで買ってコマースを読む時代っていうところを、逆に僕らが意図的にどう仕込んでいくかってこともすごい大事だし、あとはアプリの時代になってくると、どんどんどんどんツール的なものが、もう皆さんアプリの中に乗換案内とかっていうのがあると思うんですけど、ツールを毎日使ってるうちに、ツールから情報が提供されて人が行動するようになってきていて。

そういった傾向とかを、どう使っていくかっていうのがすごい大事。だからそういう意味でいくと、僕は北川さんへの答えは、対立関係じゃなくて融合していくもんだよ、メディアとコマースは、っていうのが僕の答えですけどね。

北川:そうですよね。

コンテンツのフロー性とストック性を見極める重要性

北川:対立関係というよりか店舗さんが時間を使われるときに迷うんだろうなと思うんですよ。

コンテンツをつくるのって非常に時間がかかるし、やり方も違うので、じゃあキャンペーンを仕組むべきなのかとかと、あと商品ページもつくる際に、たくさんの商品をいっぱい並べるのが大事なのか、すごくディープに1個のトピックについて書くのがいいのかっていうのってすごい迷われると思うんで、それについて何か、もうちょっと示唆とかがあれば嬉しいなという感じですね。

尾原:それ多分、この裏番組でフォーラム開催している仲山進也(楽天大学 学長)さんが得意なところなんですけど、やっぱり時代は検索より探索だと僕は思うんですよね。

最初の話に戻っちゃうんですけど、もう買うものが決まっていて、最短距離で買わせるっていうためのEコマースをどうつくっていくかっていうのも当然すごく大事。

なんだけど父の日、母の日みたいなシチュエーションの中で、「何を買おうかしら」っていうことを決める買い方っていうのもあるし、あと3番目に、いや、そもそも今スマホでふえてきてるのは、そもそも買う気すらないんだけれども、だらだら何か自分の好きなものに囲まれて、その情報を浴びてるだけで幸せっていう人たちが時々買っちゃう。

この3番目をどうやって、ふやしていくかっていうのが大事で。それはキャンペーンをやったほうがいいかどうかって言ったら、楽天の立場で言えば「キャンペーンは、やってください」という話にはなるんですけど、でも大事なのは、僕はコンテンツのフロー性、ストック性を見極めることだと思いますね。

なぜハロウィンの市場はバレンタインを超えたか

尾原:それは何かっていうと、コンテンツって今言ったようにストックとフローのコンテンツの2種類あるんですよ。ストックっていうのは何回も使えるってことです。要は父の日とか母の日とか、毎年行われるものって、翌年もトレンド性あるけど使えるじゃないですか。

とか、何か衝動が起こったときに、例えば庭いじりをしたくなったときのファーストステップとかって、必ず初心者は通るじゃないですか。

こういうもののストックコンテンツなので、1回つくっておけば、同じ人は2回使わないかもしれないけど、何回も使われるから、そういう人たちの探索の場っていうのをどう提供していくかっていうのが1つ。

あともう1つ、スマホの時代でも強くなってきてるのがフロー。要は一瞬のコンテンツですよね。これはもうInstagram世代がふえてきて、どんどん傾向が激しくなってきて、やっぱり体験型、一緒にこのひとときを共有するっていうのに、ものすごい人がお金を使うようになってきてて、これの象徴がバレンタインデーよりハロウィンにお金使うようになっちゃいましたよね、日本。

こうやって象徴的で、結局バレンタインって1対1の関係でしか、お金が発生しないわけですよ。でもハロウィンって街中で騒ぐから、みんなで一緒に騒げるから、そこの体験にお金を払うし、もっと言うと「渋谷でこんな仮装してるぜ、俺かっこいいぜ」って言ってFacebookで写真で、いいねがつく。そこに、お金を払ってるわけですよね。

この一瞬の体験の祭りっていうものを、どういうふうに演出するか。それは自分で祭りをつくるみたいなAKBのやり方もあれば、地方であったり、いろんなとこにある祭りっていうものをどういうふうに利用するか。

それは必ずポイントがあって、やっぱりソーシャルでシェアしたくなるようなものを、どう提供してあげるかっていうところだと思うんですよね。

川原崎:なるほど。

オウンドメディアがもつ欠点

川原崎:そうですよね、コンテンツの話、今、大西さんだったりとか尾原さんのお話を聞いていて、コンテンツマーケティング、はやってるじゃないですか。

オウンドメディアも、すごいたくさんできていて、オウンドメディアの案件というかお話とか僕もいただくんですけれども、結構オウンドメディアって不可能性みたいのがあるなと僕は思っていて、それは何かというと客観性を担保できないっていうとこだと思ってるんですよ。

情報の信頼性ってイコール客観性だっていうふうに、メディアをやってる人間からすると思うんですよね。安倍さんの話には反対派の意見も載せなきゃ、それはフェアじゃないみたいな。

それとマクドナルドがオウンドメディアをつくりたいとなったときは、やっぱりモスバーガーとかケンタッキーとか、他店の情報も載っていないと客観性が保てないけど、多分お金を出してそんなことやらないじゃないですか。

そこって、すごい難しいなと思ってるんですけど。これはちょっと大西さんに、ぜひ聞いてみたいですね。

大西:だからそれはあれですよね、僕の若い頃の体験で言うとバイク雑誌だよね。バイクを買うには、まだお金もないし免許も取れないうちから、ずっとバイク雑誌を読むでしょう?

川原崎:はい。

大西:あれがメディアですよね。バイク雑誌を読む中でカワサキはどんなバイク、スズキはどんなバイク、ホンダはどんなバイクっていうのができてきて、それが何年も何年も熟成されて18歳になりました。

免許取りました。バイトして金ためました。さあスズキ買おうかっていうときには、今度はカーセンサーを買うほうへ行くわけですよ。

だから、やっぱりバイク雑誌的な、一歩引いたところでマックとモスを比べるみたいなので、でもそれはハンバーガー好きの人たちが見るページみたいなところは、やっぱいるんだろうな。それが、バイク雑誌も、ホンダも、カワサキも、スズキも、ヤマハも、みんな広告出してるじゃん。

川原崎:はい。

大西:みんな出してることが大事なのね。

川原崎:なるほど。

大西:バイク雑誌がPresented byホンダだったら、そんなもんカタログじゃないかといって読まないわけで、そこは難しいよね。情報の受け手としては、やっぱりPresented by誰っていうのは見るよね。

それはだからPresented byどこそこで、そこのいくらいい話だけを見せられても、やっぱりどうしても比較したい、中立的な意見が聞きたいと思うし、やっぱり最後値段も価格も見る。

楽天のプラットフォームとしての役割

川原崎:それで言うと先ほど伝説とか没頭というお話ありましたけど、自分の店が扱ってるお酒のブランドだけを推すんじゃなくて、お酒全体にすごい造詣が深くて、自分に直接的な利益をもたらさない話もしていく人じゃないと、ちょっと信頼性がないのかなとかって思っちゃうんですけど北川さん、その辺どうですか?

北川:その役割を楽天はプラットフォームとして、そこを担えるといいなと思うところもあります。店舗さんのお薦めはそれはそれでプラットフォームのなかでは大事なので。

逆に、じゃあお客さんから見たら何がいいのかっていうのを真剣に僕らが考えて、店舗さんは商品をキュレーションしてください。僕らは店舗さんをキュレーションしますっていうふうに分けられると、公平性が保たれたりするのかと。

僕らが見るのは、主にお客さんの声を拾うこと。お客さんが何してるか。どれを見て喜んでるかというふうに僕らが評価していく。

ランキングは客観的に見える

北川:その中で多分、1つ正直なのは、今すごくランキングページが非常にスマホではよく見られているんですけれども、これはひとつの公平性を意識されている現れなのかと。

だからお客さんからすれば、誰がどういうふうにキュレーションしたのかわからないページに関しては、どう受け止めていいのかわからないと。

ただランキングって言われると、何となく、ほかのお客さんが評価したようなものに見えるから、客観性がそこにあるように見えて、わりとそこに信頼を置いて、買ってくれたりしてんのかなっていうのも感じます。

川原崎:なるほど。相当ニュースメディア、僕いろいろたくさんつくってきたんですけど、ランキングって、どんだけ下のほうに置いても絶対押されるんですよね。

ランキングを探してニュースサイトを見るっていうか、異常にCTRが高い場所ってやっぱランキングで、それは客観的に見えるからなんだろうなというふうに思うんですよね。

じゃあ、そろそろお時間となりましたので、これで終わらせていただきます。どうも本日はありがとうございました。

制作協力:VoXT