アメリカのニーズに応えて制定された安保法制

山本太郎氏(以下、山本):生活の党と山本太郎となかまたち共同代表の山本太郎です。永田町ではみんな知っているけれども、わざわざ言わないことを質問したいと思います。答弁は簡潔、明瞭にお願いします。まず、中谷防衛大臣、よろしくお願いします。

中谷大臣はですね、7月30日の本委員会、福島瑞穂議員の「今まで周辺事態法で、できないとされていた弾薬の提供がなぜできるのか」という質問に対し、「現行法制定時には、米軍からのニーズがなかったので、弾薬の提供と戦闘作戦行動のために、発進準備中の航空機への給油・整備についてはのぞいていたが、その後、日米の防衛協力ガイドラインの見直しのなかで、アメリカ側から、これらを含む幅広い後方支援への期待が示された」と答弁されました。ということは、中谷大臣、今回の安保法制制定の立法事実として、米軍のニーズ・要請があるということでよろしいでしょうか。

中谷元氏(以下、中谷):現行法の制定時におきましては、米側からのニーズがなかったということで、あの支援内容から省いておりました。これは国会でも答弁した通りでございます。しかしその後、日米防衛協力ガイドラインの協議が行われまして、そのなかで米側から、これらを含む幅広い方針への期待が示されたということです。

また先ほど答弁いたしましたが、一昨年、南スーダンPKOに参加している陸自の部隊が、国連からの要請をうけて、韓国部隊のために弾薬提供を行ったように、想定外の状況によって弾薬を融通する必要がある場合も想定されるということ、またいろんな状況も変化してきたということで、今回、あらかじめ法的に措置をしておく必要があると考えたわけでございます。

山本:中谷大臣、現在の周辺事態法ではできなかった弾薬の提供などを、今回の安保法制でできるようにするのは、アメリカ側からの期待、米軍のニーズがあったからということでしたけれども、米軍からいつ頃、どのようなかたちで、どのような具体的なニーズがあったのかってことを教えてもらえますか。

中谷:日米防衛協力が進展をしたということ、またガイドラインの見直しが進められたということ、また自衛隊もそういった能力が向上してきたということで、米側から、これらを含む幅広い後方支援への期待が示されたということで、今回、重要影響事態に際しても、これらの支援ができるように、法的措置を講じることにしたということでございまして、基本的には、日米間の協議のなかでニーズが出てきたということでございます。

山本:あの……あんまり答えていただけないような状況だったと思うんですけれども、とにかく「米軍のニーズが立法事実になってるんだ」っていう話ですよね。リクエストされたから、ニーズがあったから、それによってこの国のあり方、ルールを変えていくっていう話ですよね。弾薬の提供・輸送すると。

弾薬は法律上は、銃弾、砲弾、手榴弾、ロケット弾、ミサイル、核兵器まで提供・輸送できる。また戦闘作戦行動のために、発進準備中の航空機への給油、整備も。これらは誰が見ても明らかに武力行使と一体となった輸送・兵站で、明白な憲法違反。

弾薬の提供・輸送と戦闘作戦行動のために、発進準備中の航空機への給油・整備については、これまで、武力行使と一体となった後方支援ということで、憲法違反だったんですよね。でも今回憲法解釈を変えたんですよね。米軍のリクエストで。実はアメリカ側のリクエストっていうのはですね、もっとスケールが大きくて、綿密なんだよってことをお知らせしたいと思います。パネルをお願いします。

日本の政策に影響をあたえた、アーミテージ・ナイレポート

山本:このパネルはですね、集団的自衛権を認める、昨年7月1日の憲法違反の閣議決定の2週間後、7月15日、首相官邸での写真でございます。首相官邸のホームページから引用させていただきました。安倍総理と握手している方、「ショー・ザ・フラッグ(日の丸の存在を示せ)」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上部隊を派遣せよ)」。この言葉で有名な、リチャード・アーミテージ元アメリカの国務副長官。

1人おいて、左から2番目、赤いネクタイの方、ほとんど側頭部、後頭部しか映っていない方ですけれども、この方がジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授。この2人、一体何者なのってご存知ない方のために、外務省のホームページで次のように詳しく紹介されています。

日米安全保障研究会、米側委員を代表して、「ジョン・ハムレ戦略国際問題研究所」CSISですよね。CSISの所長が、14年前にアーミテージ元国務副長官と、ナイ・ハーバード大学教授が、アーミテージ・ナイレポートを作成し、日本の安全保障に対するアプローチについて提言したと述べた、と書いてあります。

このお二人が提言してくださった、ありがた〜いお言葉の数々が、日本国の政策にそのまま反映されている。とても影響力のある方々というお話なんです。2000年10月に第1次、2007年2月に第2次、そして2012年の8月に第3次が公表された。アーミテージ・ナイレポートは、それぞれ日本の安全保障政策に大きな影響をあたえた。パネル入れ替えてもらっていいですか。

2枚目のパネルは、その第3次アーミテージ・ナイレポートのなかの、日本への提言9項目、そしてその他、注目すべき記述を抜粋したものです。これを見ると、今回の憲法違反の閣議決定から憲法違反の安保法制まで、ほとんどすべて、アメリカ側のリクエストのよるものだということが、よくわかる。まずパネルの下のほうですね。いきなり下でごめんなさい。

「その他」の10番をご覧ください。レポートの本文ではこのように書かれています。

『皮肉なことに、日本の国益保護に必要なもっとも過酷な状況下では、米軍は自衛隊と日本の集団的防衛を行うことは、法的に禁止されているのだ。日本の集団的自衛権禁止を変えることは、こうした皮肉のすべてを解決するだろう。政策転換において、統合軍やより軍事的に広義性の高い日本、日本の平和憲法の変更は希求されるべきでない。集団的自衛権の禁止は同盟にとって障害だ』と書かれています。

パネル1を一瞬、上にかぶせてもらっていいですか?

このときの写真、「一体何なんだろうな」と思ったら、集団的自衛権容認の憲法違反の閣議決定を提言した人たち、そうですよね? 提言した。しかもそれが実現した。だから彼らは官邸まで「よくやったね、君たち」とほめにきてくれた。そんな現場での心あたたまる写真の1枚なんじゃないかなっていうふうに考えてしまいます。2枚目のパネルに戻ります。

安保法制に盛り込まれたアーミテージ・ナイレポートの提言

 「提言の1」ここではなんと、原発再稼働を求めている。安倍総理はこれも安全性無視で実行しましたよね。

 「提言の3」TPP交渉参加。安倍政権は2012年の衆議院選挙での自民党の選挙の公約を堂々とやぶって、これを忠実に実行している真っ最中でございます。

 「提言の8」日米間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全。これ特定秘密保護法そんまんまじゃないかよって。これもクリアしてしまっています。

 「その他の12」日本の防衛産業に技術の輸出を行うよう働きかける。これ、防衛装備移転3原則で実現してますもんね。

今年4月27日、新しい日米防衛協力ガイドラインを承認したときの、日米共同発表文書には、「日本が国際協調主義にもとづく“積極的平和主義”の政策を継続するなかで、米国は、日本の最近の重要な成果を歓迎し、支持する。これらの成果には、切れ目のない安全保障法整備のための、2014年7月1日の日本政府の閣議決定、国家安全保障会議の設置、防衛装備移転3原則、特定秘密保護法、サイバーセキュリティー基本法、新宇宙基本計画および開発協力大綱が含まれる」と書いてあるそうです。   この第3次アーミテージ・ナイレポートの提言通りの新ガイドラインと、その他の重要な成果なんですよね。そして今回の安保法制、戦争法制はパネルで見てみると、

「提言の2」シーレーン保護。

「提言の5」インド、オーストラリア、フィリピン、台湾等との連携。

「提言の6」日本の領域を超えた情報監視、偵察活動、平時、緊張危機、戦時の米軍と自衛隊の全面協力。

「提言の7」日本単独で掃海艇をホルムズ海峡に派遣、米国との共同による南シナ海における監視活動。

「提言の9」国連平和維持活動(PKO)の法的権限の範囲拡大。

「提言の11」共同訓練、兵器の共同開発。

これらほとんどすべて、今回の安保法制に盛り込まれたという話です。岸田外務大臣におうかがいします。この第3次アーミテージ・ナイレポートで示された日本への提言などが、今年4月27日の新ガイドライン共同発表に書かれた、日本の最近の重要な成果や今回の安保法制で実現することになったとお考えになりますか?

安保法制制定はあくまで日本の自主的な取り組みである

岸田文雄氏(以下、岸田):ご指摘の報告書ですが、これはあくまで民間の報告書ですので、政府の立場から逐一コメントすることはひかえなければならないと思いますが、少なくともご指摘の今年の新ガイドライン、今、審議をお願いしております平和安全法制、これはご指摘の報告書を念頭に作成したものではないということです。

平和安全法制につきましても、あくまで我が国の国民の命や暮らしを守るためにどうあるべきなのか、これは自主的な取り組みであると考えておりますし、新ガイドラインにつきましても、安全保障環境が厳しさを増すなかにあって、日米の防衛協力について、一般的な枠組みですとか、政策的な方向性、こうしたものを示したものであると認識しております。

山本:ありがとうございます。中谷防衛大臣、配布資料でお配りした第3次アーミテージ・ナイレポートの概要、これ今でも、海上自衛隊の幹部学校のホームページに掲載されているものをそのまま使わせていただきました。この第3次アーミテージ・ナイレポートの日本への提言、今回の安保法制の内容にいかされていると思いますか?

中谷:防衛省自衛隊いたしましては、幅広く世界のいろいろな方々からの考え方も含めまして、情報収集・研究・分析をしております。今回の平和安全法制につきましては、あくまでも我が国の主体的な取り組みとして、国民の命と平和な暮らしを守るというために作ったわけでありまして、時間をかけて、オープンな場で、さまざまな意見・議論を経て決定をされたということで、特に政府内の有識者の懇談会、与党内、自民党と公明党の協議下において、25回におよぶ徹底的な議論を経て作成したものでありまして。

このナイレポート等の報告書を念頭に作成したものではないということでございますが、しかし、政府としましては、今後の点において、これからも研究・検討は続けてまいるわけでございますので、このレポートで指摘をされた点もございますが、結果として重なっている部分もあると考えておりますけれども、あくまでも我が国の主体的な取り組みとして、研究・検討して作ったものであるということでございます。

アメリカのための戦争法案には断固反対する

山本:「民間のシンクタンクなんだよ」って。「偶然の一致なんじゃないの?」みたいなお話ですけれども、民間のシンクタンクの方々がこれだけ頻繁に日本に訪れて、総理もそのシンクタンクで演説をなさったりとかしているわけですよね。

「随分……懇意だね」って。「それが偶然の一致なんて話になるの?」って。これらのレポートを念頭に作成したものでないと、結果重なってしまっている部分があると言うんですが、ほとんど重なっているんじゃないかって。そっくりそのままですよ! 「完コピ」って言うんですよ、こういうの。「完全コピー」。

昨年7月1日、憲法違反の閣議決定から今回の憲法違反の安保法制、戦争法制までだけを見たとしても、何だこれ? アメリカのリクエスト通りじゃないかって。おまけに原発再稼動、TPP、特定秘密保護法、武器輸出3原則の廃止、何から何まですべてアメリカのリクエスト通りに行なっているんだなって。アメリカ、アメリカ軍の要請・ニーズには憲法を踏みにじってでも、国民の生活を破壊してでも、真摯に全力で取り組むって……これ、どういうことなんですか?

これ独立国家って呼べますか? 完全コントロールされてんじゃないかよ。「誰の国なんだこの国は!」って話をしたいんですね。これだけ宗主国様に尽くし続けているのにも関わらず、その一方で、アメリカは同盟国であるはずの日本政府の各部署・大企業などを盗聴し、ファイブ・アイズと呼ばれる、イギリス、カナダ、ニュージランド、オーストラリアなどとその盗聴内容をシェアしていたと。もうマヌケとしか言いようがないお話。先月出てまいりました。

「いつまで都合のいい存在でい続けるんですか?」っていうことをお聞きしたいんですよ。「いつまで、没落間近の大国のコバンザメを続ける気ですか」って。今、後ろから声が聞こえてきました。(日本は)もうひとつの州、最後の州なんじゃないかって。そういう考え方もあると思います。(日本が)もうひとつの州であるならば、アメリカ合衆国の大統領を僕たちが選べなきゃおかしいんですよ。

そんな状況にもされていないって、諦めているんですか? いつ、植民地をやめんだって。「今でしょ!」って。対等な関係、健全な関係にするべきじゃないですか。すべて出されたリクエストをすべてかたちにしていくなんておかしな話ですよ。

今回の戦争法案、アメリカの、アメリカによる、アメリカのための戦争法案には断固反対。当たり前です。廃案以外はありえません。中国の脅威と言うならば、自衛隊を世界の裏側まで行ける、そのような状態を作り出すことはこの国の守りが薄くなるってことですよ。

どうして自衛隊が地球の裏側まで一体化して、アメリカと一緒にいろんな所に行かなきゃいけないの? アメリカ以外の国とも一緒に行けるような状況になっていますよね。歯止めありますか? ないですよね?

中国の脅威をうたっているわりには、国の守りが薄くなることに対しては全然平気っぽいですね。廃案以外はありえないこの戦争法案。廃案以外ありえないと申し上げて、午前の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。