水面に浮かぶ極薄ガラスの上を歩く水族館は実現可能?
想像力の大切さを若手建築家が語る

想像と現実の幸せな関係 #1/2

2020年の東京オリンピックに向けて、さまざまな建物や空間が新たに作られようとしていますが、若手建築家で東大講師の海法圭氏は、建物を作るときには空想の世界と現実の世界を行き来しながら考えることが重要だと語ります。例えば極薄ガラスを浮かべて、その上から水の中の生き物を見ることができる、ちょっと変わった水族館や、豪華客船をつなげて17000人を収容する「ふねの城」など。常識にとらわれないアイデアは、1つの展示や1軒の家のような比較的小さな建築から、オリンピックのような巨大なプロジェクトまで、常に大切であると語る海法氏。他社への想像力を忘れず、そしてその場にいることで想像力を喚起するような空間づくりを心がけている氏のスピーチに耳を傾けてみましょう。(TEDxUTokyoより)

スピーカー

建築家の仕事は住宅の設計だけじゃない

海法圭氏:海法圭といいます。今日は思った以上にたくさんの方に来て頂いていただいて、緊張しています(笑)。僕は建築家として活動させていただいています。建築家というと、どんなイメージをお持ちですかね? 僕はだいたい、企業にプレゼンしに行ったりすると「もっと、厳つい人が来ると思ってた」と言われて。今、東大で非常勤で教えているんですけど、学生に馴染んじゃって、学生に間違われるのが今の悩みの種です(笑)。

まずは、建築家として普段どんなことをやっているか、建築家ってどんなものかを最初にご説明したいなと思っています。皆さん、住宅を設計するってイメージがあると思うんですけど、住宅って過剰に供給されていて余っている状態ですので、今の主なテーマは住宅の増改築、リノベーションだったり、あとはマンションのリノベーションですね。そういったものをやっている建築家が多いです。

その一方で、住宅以外にも小さなギャラリーを設置したりだとか。右側の写真は、今、 表参道に設計中の屋台、商業建築みたいなものを設計したりとか、そういったこともやっています。

一方で、展覧会の会場構成をしたりだとか、左側の写真は、宝石のデザイナーさんの個展を小さな部屋で設計させていただいたりだとか。そういったこともやっています。

まちづくりワークショップというものに参加させていただいてまして、学生さんがメンバーとなって、ワークショップを繰り返しながら、砂浜でインスタレーションの提案をしたりだとか。左下は照明の行灯ですね。行灯をデザインしたりだとか、あとは、学生さんと町の人たちとみんなでDIYで町の無人駅の改修をしたりとか。そういった、地域と一体化した活動もしたりしています。

まだ若手なもので、公共建築のコンペに参加したりとか、あとは展覧会に自ら出展したりとか。あとは著名な先生といっしょに、都市計画に共同で参加したりとか、そういったことをしています。

一般的にはそんな活動をしているのですが、今日はもうちょっと規模が大きめのプロジェクトを2つご紹介したいと思っています。

規模が大きいもので、僕の手にも余るようなプロジェクトなんですけど、皆さんにもお聞きいただいて、いっしょに考えていただけたらなと思っています。

ちょっと変わった水族館

1つ目です。これはちょっと変わった水族館の提案でして、皆さんご存知の通り、地球って海が7割あります。人間は陸上のことしか考えていないんですけど、一度海の中に入ってしまうと、陸上の常識が通用しないような世界が、この地球上に7割存在しているのがすごいおもしろいことだなと思っています。

一方で人間は水族館というものを作って、擬似的な海の世界を陸上に再現して、非常に安全で、非常に見えやすい海の世界を陸上に再現している。

今回、ガラスメーカーさんから「会社のガラス製品を利用して、何かおもしろいことを考えてくれ」と言われたのがきっかけで始まっています。僕が注目したのが、厚さ0.1mmの極薄の膜ガラス。これは実際に液晶テレビの表面やケータイの表面に貼られている、そういったガラスの製品なんですけど、それを建材として展開できないかなというのを考えて、これを使ってみようと思いました。

やったことは極めて簡単でして、極薄の膜ガラスを直径100mのものにして、それを海に浮かべるっていう提案を出しました。そうすると、何が起こるか。

これは水中ガラスの写真です。水面が波打っているんですけど、そこにガラスを置いたときに表面が硬質化するんですね。それが硬くなった瞬間に、中がすごく見えやすくなると。それが水中ガラスの特長です。今回もガラス膜を浮かべることで、急に中が見えやすくなると。そういった現象が起こるということを発見しました。

大人は乗れないガラスの膜

実際に浮くのか、どうやって水族館にするんだ、というのを考え始めました。ガラス膜はすごく薄いので、すごく軽いんですね。なので、浮かべると0.25mm沈みます。それだけで、自重と浮力とが成立するので、浮きます。ただし注意しないといけないのは、端部から海の水が入ってしまうと、水の重さで沈んでいってしまうので、端っこだけは何とかして水が入らないように工夫しなければいけません。

左側のグラフが何を表してるかというと、ガラスの厚みに対して、どれぐらいの重さの物が載っても割れないか。ガラスが厚いほど、重い物が載るということを表しています。ガラスを薄くしていくと、当然ガラスの強度が小さくなっていくので、載せられる物が軽くなっていくんですね。ちょっとここでおもしろいものを発見したというのが、今回の話でして、厚みが0.5mmを下回った瞬間に、より重い物を載せられるっていう、不思議な逆転現象が起こったんですね。これは構造解析の構造家の人と一緒にやっているんですけど、そういった逆転現象が起こったっていうことが発見できました。

これがどういうことかをわかりやすく絵で説明しますと、ガラスが薄ければ薄いほど、柔らかくなるイメージです。ガラスが柔らかくなるので、重い物が載ったときに曲がり具合が大きくなるんですね。薄ければ薄いほど、割れる前に曲がってくれるんですけど、割れる前に海の浮力が勝ってくれて、割れる前に体重が成立してしまうという構造解析の結果になりました。

これが断面図っていうんですけど、上の小さいのが人です(笑)。ここにガラスを載せて、ここから見ます。

こういう感じで、場合によっては見づらいんですけど、陸上の水族館とは違うよと。すごい水の塊を持った水族館になるかなと思っています。

さきほどのグラフに出ていた、厚さ0.1mmのガラスですと56kgまで耐えられると。でも56kg、片足に体重が掛かっちゃうと割れてしまうんですよね。

なので大人は歩けないんですね。子供しか立って載れないことになっちゃいまして。大人は載れません(笑)。あと子供も、すごく丸い靴を履いてもらわらないと、ちょっと困る。

これがイメージの絵です。ここに立ったときに、下に海の世界が広がっているような、水族館にならないかと思って提案しています。これは、大人です。大人は寝れば載れます(笑)。寝てもらいます。

2020年以降を見据えたオリンピック開発

もう1つが、「水上のかもしか道」っていう提案なんですけど、これはある雑誌の企画で「オリンピックについて何か提案をしてほしい」と言われたのがきっかけで、動き始めたプロジェクトです。

2020年にオリンピックが決まったことはすばらしいと思うんですけど、今のところ、2020年以降の話ってなかなか議論にあがってないなぁってところが正直なところでして、今回、巨額の資本が動きますし、あとは若い世代に対して負の遺産を残していかないような、そういったオリンピックにする必要があるなと、すごく感じるので、その辺を問題意識として捉えて、提案を考えさせてもらいました。

ここが、競技場がたくさん集まっているベイゾーンとよばれる湾岸エリアです。ここをテーマに考えています。

僕が考えたことは、簡単に言いますと、2つです。戦後に栽培して、今、伐採期を迎えつつあるのに、なかなか切り出して使うことができない国産の木材を利用して、筏を作りまして、その筏を大量に海に浮かべて、「筏の大地」というものを作ります。これがオリンピック期間中に市民活動のプラットフォームになるっていう提案が1つです。

もう1つが、「ふねの城」とよばれてまして、民間のデベロッパーの方が、マンションを建てて、選手村を作るんですけど、結局マンションが乱立していく風景があまり良くないなと思ったので、世界中の豪華客船を誘致しまして、豪華客船を繋げて、1万7000人を収容する選手村を作れるだろうというのが「ふねの城」という名の提案です。

現状、こういう場所なんですけど、こうなりますよと。

ビフォーアフター。ちょっとTEDっぽく、英語で(笑)。この茶色いのが筏の大地。だいぶ敷き詰めたんですけど(笑)。左側にあるのが、ふねの城。これが1万7000人を収容できています。オリンピック期間中は、歩行者用のインフラにもなって、競技場を歩きながら巡っていけるような場所になっています。

例えば、市民の自由な活動というのは、水上マーケットのような、あんまり地価に左右されない自由な経済活動をする場所。あとはレジャーとして海水浴をする所。あとは、パブリックビューイングをするような場所。お祭をみんなで楽しめるという場所になればいいなと。誰のものでもない土地が海の上にできたらいいなと思って提案しています。

これは、今いくつかの協力者を得て、スポンサーを探しながら、一部でもいいので実現したいと思って動いているところです。

空想と現実の両方を意識した空間を提示したい

以上、2つのプロジェクトをお見せしたんですけど、ちょっと壮大だったと思うのですが、最初にご紹介した、マンションのリノベーションのような小さなプロジェクトであっても、今回のような大きなプロジェクトであっても、僕が常に考えていることがありまして、それは空想と現実とを行ったり来たりして、提案を考えていくということです。

このときの、空想というのが、本当ならばパラレルに存在していたはずの世界があるはずだと常に想像して、そこからのヒントを得る、という空想です。現実というのは、自分ひとりの想像力には限界があるので、その想像力の限界を乗り超えるためのステップとして現実を捉えていて、空想と現実とが対立的にあるのではなくて、相互補完的に、どちらもポジティブな意味で空想と現実とがあると。それを常に意識して、提案を考えています。

なぜそんなことをしているかというと、どうしても空想と現実というと、基本は現実と向き合っちゃって、空想なんてのは、無視されていくのが一般的だと思うんですけど、それだけだと他の人に対するおもいやりだとか、ここにないモノに対する想像力だとか、そういったものが少しずつ矮小化していってしまうんだろうなぁっていうのを、現代社会を見て思ってまして。

そういうものを少しでも喚起できるような空間であったりイメージを、常に社会に提示し続けていきないなと思っています。

以上です。

(編集協力:柴田美郁)

<続きは近日公開>

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