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LGBT理解研修(全2記事)

同性婚ができないゲーム設定は差別にあたる? 企業はLGBTにどう向き合うべきか

リクルート住まいカンパニーが主催した性的マイノリティへの理解を呼びかける「LGBT理解研修」に、著書「職場のLGBT読本:『ありのままの自分』で働ける環境を目指して」(共著)が好評の虹色ダイバーシティの村木真紀氏が登壇。これは、同社に勤務するLGBT当事者による新規事業提案を受け実施したもので、「知っておきたい”LGBT”」と題し、グローバルにおけるLGBT対応への機運の高まりを紹介し、日本企業でも性的マイノリティへの支援を広げてほしいと訴えました。また、「LGBTの7割が学校でいじめを経験している」といった事実を公表し、社会問題の背景にLGBTの問題があることへの理解を求めました。

同性婚ができないことのデメリット

村木真紀氏(以下、村木):ここからは私のパートで、「その人たち(LGBT当事者)が社会的にどんな問題を抱えてるの?」って部分ですね。ぱっと思い浮かぶのは、性別の変更は大変とか、同性同士で結婚できないとか、そういうことだと思います。

確かに結婚できないのは、それはそれで大変なんですね。結婚式は、民間の式だけだったらできます。でも、あれは法律的にはなんの効力もないんですね。結婚式した後、片方に何かあった時になんの保障もないというのが、同性結婚ができないということの意味です。

例えば一緒にマンションを買うという際に、ローンを組む時に共通の名義にできないんですね。片方の名義で、片方の収入で審査を受ける。なので、少ないお金の物件しか買えなかったりするわけです。片方は居候みたいな形で住むことが多いですね。

そうなると、その買ったほうに何かあったら住み続けられなくなってしまうんですね。もし片方が異性だったら、何年か一緒に住むと事実婚っていう形になるんですね。なので、いろんな社会保障が受けられます。でも同性の場合はそれができない。遺産の相続なんかもできない。

最近シビアなのが在留資格ですね。片方が外国人の場合です。例えば海外で結婚していても、その2人が日本に来てしまったら外国人のほうに配偶者としての在留資格が出ないんです。

日本で住み続けられないかもしれない。実は私の友人がそうなんですが、2人で日本で家を買っているですね。日本人のほうの名義で買ったんですけども、そのパートナーは配偶者ビザではなく就業ビザで滞在しています。

やっぱり一刻も早く結婚制度ができないと、将来仕事ができなくなったら、2人が日本では一緒に暮らせないっていうことになってしまいます。これは大きな問題だと思います。

職場においてはLGBTだということがばれたとか、そう思われたということでいじめの対象になってしまったり、よく聞くのが男性従業員が女性として働きたいって言った時に「うちではそういうのに対応できないから」という理由で解雇されてしまうと。

そういった事例があります。

LGBTの7割が学校でいじめを経験

でも実は他の、いわゆる社会問題の中にLGBTの問題が含まれているんですね。この視点がすごく大事です。

私の親は、テレビで「オネエ」タレントが出てきた時に笑ったり、気持ち悪いって顔をしかめていました。私はそれを見ていて、親は理解がないんだと思ってしまいました。高校まで茨城県だったんですが、高校生の時に初めて好きな女の子ができて。

その時に私、茨城県でたったひとりだって思ったんですね。実家にいられないと思ったんです。親にも言えなかったし、学校にも言えなかった。友達にも言えなかったんです。

そして、茨城県から東京の大学だと、通えちゃうんですね。だから通えないところに行こうと思って、あえて関西の大学に進学をしています。実は人生の選択にも大きな影響があるんです。

特にトランスジェンダーの子どもは、先ほどもお話に出ましたが、学校の制服がバリアになるんですね。セーラー服を着たくない、詰め襟を着たくない。朝起きたら頭が痛い。学校行けない。引きこもりになってしまうんです。

親や先生がどうしたのって聞いても、やっぱこれは言っちゃいけないんじゃないかと思っているから、本当のことが言えないんですね。そうこうするうちに中退をしてしまう。でも中退するとどうなるかというと、就職困難層になってしまうんですね。なかなか正規の仕事は就けない。貧困ハイリスク層でもあります。

実は路上にもLGBTの方ってたくさんいらっしゃるんですね。でも路上にいるけれども、行政の支援施設にはいないんです。それは行政の支援施設が男女別だからです。どっちにも行きにくかったりするんですね。

学校でいじめに遭ったことがあるという人は7割です。やっぱり非常につらい状況に置かれがちです。うつなどのメンタルヘルスを病んでしまう方も沢山いらっしゃいます。

会社でも、上司がホモネタの冗談をよく言う。それでなんかコミュニケーションがうまくいかなくなって、うつになって休職している。そんな当事者がたくさんいます。

でもカミングアウトしないとわからないですね。いろんな社会問題の背景になっているのに、カミングアウトの壁があって、状況が見えず、なかなかその対応が進まないということでもあります。

LGBTを「変態」だと思っている人が未だに多い

日本の法律の原点は、犯罪では「ない」、けども差別禁止法が「ない」、そして同性間の法的保障が「ない」ということです。3つの「ない」で覚えてください。この状況は国連のほうから、人権侵害の状況であるということで勧告を受けている状態にあります。でもやっぱり多くの人はこれを知りません。

でもひとつ、皆さんに覚えていただきたいのは、今職場では実はLGBTに関する差別的言動ってセクハラなんです。男女雇用機会均等法のセクハラ指針に同性へのセクハラも入ったんですね。なので、これからは注意しなければいけないということになります。でも対応しましょうって言っても、なかなか進まないんですね。

こういったLGBTの講演会をしましょうってことを担当者が言っていたとしても、上司が認めなかったりするんです。

そういうのって病気なんじゃないのとか、好きにしているだけでしょとか、ベッドの上のことだけでしょと。なんで会社でやらなきゃいけないんだと。そういう反対の声がよく出てくるんですね。

確かに同性愛は犯罪だとか病気だって言われていた時代はあったんです。18世紀は本当に犯罪だったんですね。オスカー・ワイルドは同性愛の罪で牢屋に入れられています。そこで「獄中記」を書いてますので、転んでもただでは起きない感じはあります。でもそれはヨーロッパでは廃止されるんですね。

19世紀は病気だと言われたんです。この間、『イミテーション・ゲーム』っていう映画がありましたね。アラン・チューリングって、皆さんが日々使っているコンピュータの父と呼ばれた人物です。

彼はゲイだということでホルモン治療を無理やり受けさせられたんですね。それを苦にして自殺をしたというふうに言われています。

でも1990年、世界保健機構は同性愛については治療の対象ではないという判断をしたんです。これは日本でも適用されています。なので、もう同性愛は治療すべきものではないんです。

20世紀は「変態」だと言われます。日本ではまだこう思ってる方が沢山いらっしゃるかもしれません。

例えばイギリスでは、公立学校の先生はゲイであってはならないっていう法律まであったんです。それは、子どもに悪影響だと思われたからですね。でもその法律も今は廃止されています。

犯罪でも病気でも変態でもなければなんなのかというと、今は21世紀。これは人権の問題ですという流れにあります。でも、この歴史を学ばないんですね。学校で習ったことある方、きっといらっしゃらないですよね。

私も調べるまでは知りませんでした。でも、これを知っておくのは大事だと思います。歴史上の話が、それぞれの人の頭の中で残っていて、教育で正される機会がないってことなんですね。

でも知ってさえいれば、ちゃんと対応できるのではないかと思います。こういった職場で学ぶのはすごく大事なことだと思います。

「同性愛者は死刑」という国も

これをご覧ください。企業で説明をすると非常に注目される世界地図です。まず赤い色の国は、同性愛が罪になる国です。まだまだ沢山あるんですね。一番濃い色が死刑です。

こういう国に、例えば会社からゲイの人が赴任させられそうになってしまう時に困るんですね。社員を行かせても、身体の安全は大丈夫なんだろうかと。また当事者からしたら、行くのは怖いけど人事にどうやって断っていいかわからないと、そういった問題が出てきています。

逆に緑色の国。これ同性結婚ができる国ですね。これは年々増えてます。もうヨーロッパだけの話じゃないんですね。最初はヨーロッパだけだったんですが、カナダに広まってアメリカの各州に広まって、実は南米も結構できる国が多いんです。

そして南アフリカ、ニュージーランド。今、台湾やベトナム、フィリピン、オーストラリアなんかでも議論が進んでいます。緑色の国がどんどん増えてます。

となると、今度は先ほどの同性結婚、国際結婚の話が出てくるわけですね。国際結婚を同性同士でする日本人、たぶんどんどん増えていくと思います。その時に企業はどうするのかということですね。

この保護って書いてあるのは、差別禁止法がある国です。大体緑色とかぶるんですが。こうなると困るのって企業なんですね。

ひとりのゲイの従業員がいたとして、ある国に行かせたら犯罪者。ある国に行かせたら他の人と同じように守らなきゃいけない。「どうする?」ってことですよね。

やっぱりグローバルで企業活動をする上では、どこかに人権の水準を合わせる必要があります。なので、私たちは緑色に、同性婚ができて、他の人と同じ権利があるところに合わせてくださいという活動をしています。

でもそうすると、実は日本では法律以上になっちゃうんですね。日本は何色の国かというと、この薄い緑色。これは特定の法律がない国。

先ほどもお話ししましたが、罪ではないですが、特段守られてもいないって国なんです。やはりこの問題では、日本は先進国とは言えない状況にあると思います。

ちなみにこの黄色い色のロシアですが、これは表現禁止法です。同性愛であること自体は罪ではないが、それを公の場で言ったら罪なんですね。これ外国人にも適用されます。

もしこの講演会がロシアで行われていたら、皆さん捕まります。そういう法律なんです。それがオリンピックの年にできたんですね。だから国際的な非難を浴びたんです。

これから東京オリンピック、パラリンピックが来ますが、その前の夏の大会ってリオデジャネイロですよね。ブラジル、緑色の国です。「じゃあ、日本はどうなるの?」って、これは当然問われてくることだと思います。

LGBT支援のシンボル6色の虹

アメリカは州ごとに違っていましたが、今年6月に全州で結婚ができるようになりました。日本にも大きく影響するのではと思います。

一覧でもまとめています。今は20カ国になっていますが、これよりさらに増えてるんですね。最近アイルランドやグリーンランド、スロベニアでもできるようになりました。どんどん増えてるんですね。

昔は同性婚って、「Gay Marriage」とか「Same-sex Marriage」って英語で言われていました。でも「ゲイの結婚」と「普通の結婚」って違うわけじゃないですよね? なので最近は、「Marriage Equality」、結婚の平等という表現が増えています。

アメリカのカストロ・ストリート。カリフォルニア州、サンフランシスコ市の地域ですね。実はここは、ゲイだと公表して初めて議員になった人が出たところです。

カストロ・ストリートって、最初はそんなに注目される地域じゃなかったんですが、ゲイの政治家が出て、ゲイのアーティストなんかが集まるようになって。今やサンフランシスコの有名な観光地の1つになっています。

同じようなことがロンドンのソーホー地区や、パリのマレ地区でも起こってるんですね。LGBTが集まる地区、そこが観光地や文化の発信地として注目されるようになる。もしかしたら日本でも同じことが起きるかもしれませんね。

企業の取り組みを見ると、実はLGBTに関する広告を打っている会社がすごく多いんです。その広告もどんどん進化してるんですね。

最初はお酒のメーカーが目をつけたんです。LGBTの出会いの場、バーやクラブではお酒が多く出ますから。ウオッカなど、お酒のメーカーが虹色の広告を打ちました。

あ、私たちも虹色ダイバーシティって名前ですが、6色の虹というのがLGBT支援のシンボルとして世界中で使われてるものなんです。

次は旅行などのレジャー産業。結婚式なんかもありますが、例えばアメリカのマイアミ州の官民一体となった観光広告では、カクテルをうまいこと虹色に並べてるんですね。

最近だと生命保険会社の広告で、ゲイ・カップルとかレズビアン・カップルが掲載されてるものもありますね。

これはLGBTの生活が、変わってきたからです。週末だけとか、夜だけではなくて、パートナーと一緒に住んで、家族や友達と日常を過ごして、職場でも自分らしくいる。そんな人が増えてきたことで、広告もどんどん生活に密着した感じになってきてるんです。

皆さん不動産業界ということで言いますと、昔はゲイの人って長く付き合わないんじゃないかって言われてたんですね。でももう状況は変わりつつあります。長期間付き合う人、一緒に住む人、そして家族を作る人。どんどん増えてるんですね。今まさに実はマーケットができつつあるところなのではないかと思います。

トヨタはLGBTが働きやすい企業としてアメリカでは100点満点

トヨタって実はアメリカでは、LGBTが働きやすい会社として100点満点の会社です。アメリカでは広告を通じたメッセージも、しっかりやってるんですね。

アメリカのトヨタは、広告に、レズビアン・カップルと子ども、ゲイ・カップルと子どもを掲載したりしています。素晴らしいです。広告のなかに入ってるロゴ、「Best Places to Work」が100点満点の証です。

今アメリカで子育てしているゲイ、レズビアン、12万人いると言われています。同性愛者って子どもを持たないんじゃないかって言われるんですが、もうそういう状況じゃないんですね。

例えばレズビアン・カップルだと、昔男性と付き合っていた時にできた子どもを、男性と別れた後に女性のパートナーと育てていると。このパターンが日本で結構多いのではないかと思います。戸籍上はシングルマザーなんですね。

最近増えてきたのは人工受精を使って子どもを持つレズビアンカップルですね。例えばパートナーの兄弟やゲイの友人から精子提供を受けて子どもを育てると。そういった事例がでてきています。

ただゲイ・カップルの場合はなかなか子育てが難しい状況があって。日本で養子を取ろうとすると、これは法律で決まってるわけじゃないんですが、養子のあっせん団体が、例えば母親が専業主婦で、父親が定職を持っている家庭を選んでしまいがちなんですね。

しかし、子育てをしたいゲイがいて、施設で育つ子どもも多くて、という状況ですので、これをうまくマッチングできたら、それは幸せな家庭が増えることにつながるんじゃないかと、私は思っています。

LGBT、企業が取り組むのか、取り組まないのかが日本では話題になりますが、もうアメリカではその段階は過ぎています。それよりも同業他社と比べてどれだけやるかと。もう競争の段階に入っていると思います。

アメリカのゲイ雑誌の裏表紙に、トヨタのレクサスが一面広告を出しています。ここにも「Best Places to Work」のロゴが入ります。他の車メーカーでは、スバルが「Love」ってメッセージで、レズビアン・カップルやゲイ・カップルを取り上げる。そんな時代になってきています。ちなみに北米日産も「Best Places to Work」、100点満点をとりました。

同性婚の設定がないゲームは差別にあたる?

このゲーム、ご存知のかたいらっしゃいますか?

(会場挙手)

結構多いですね。ありがとうございます。これはゲームの中で自分の似顔絵が作れるんですね。結婚したり、子どもを作ったりできるんです。このゲーム、日本では同性結婚はできない設定で売っていたんです。

日本では問題にならなかったんですが、実はその設定のままアメリカで売ろうとしたら、これが大問題になったんです。これは差別じゃないのかって報道がされてしまったんですね。この企業は即座に謝っています。

これは謝って大正解だと私は思います。たぶん謝らなかったら、世界的なボイコットに発展していた恐れがあると思います。これは、当事者の気持ちになるとわかるんです。

同性婚ができる国で、法律ができてるところで、その法律っていうのは、単に生活上の不自由を解消するためのものじゃないんですよね。自分たちが社会に認められた証なんです。それを無視するのは、設定してないや知らなかったでは済まないんです。

緑色の国が今どんどん増えている中で、世界で物を売っていこうと思ったら、これはLGBTであっても気持ちよく使えるものなのかと、開発時点でそういうチェックが必要になってくると思います。ちょっと映像を見ていただきましょう。これ昨年発表されたCMです。セリフはありません。

(映像開始)

いかがでしたでしょうか。実はこれ、生命保険会社。オールステート生命の広告です。アメリカでは生命保険の受取人として同性パートナーも指定できるんですね。企業の広告ではありますが、私、最初にこれを見た時はちょっと感激してしまいました。

LGBTをマーケットとして見る。市場、顧客として見るのであれば、LGBTの人たちがどんな思いをして育ってきているのか、どんな社会的な困難があるのか、それを忘れないようにアプローチしないといけないと思います。これは本当にいい例ですね。

ゲイであることは目に見えないですが、それを片手が大きいということで表してるんです。でも片手が大きいということで周囲から変な目で見られたりするんですね。

暗い廊下をひとりで歩くようなシーンがありましたが、あれが社会的な孤立を表してるんです。自分しかいないんじゃないか。でもそれを乗り越えると、同じように片手の大きい人がいるんですね。感動的なCMだと思います。

ソフトバンクは同性パートナーでも家族割が利く

実は日本というのは、世論としてはもう意外と大丈夫な国なんですね。先ほどLGBTの友人がいるって手を上げてくださったかたも多いですが、「社会は同性愛を受け入れるべきだと思いますか?」と聞くと、これは国際比較データなんですが、日本は54パーセントがイエスという国です。アメリカだって60パーセントですから、意外と多いんですね。

同性婚について、どう思いますかと聞くと、これは2013年時点の日経新聞のデータですが、認めるべきだって人が43パーセントもいるんですね。

アメリカでは同性婚への反対の方が多いところからスタートしているんです。ほんの数年前まで、反対のほうが多かった。それが日本ではもう賛成のほうが多いんですね。

日本的だなと思うのが、「わからない」という回答が一番多いってことですね。31パーセントです。でも、強いノーは少ない。「わからない」って人は、たぶんこういう教育機会があれば、「いいんじゃない?」に変わってくれる人たちだと私は思います。

LGBTへの取り組み、日本企業もどんどん増えてるんですね。東洋経済のCSR調査、大手企業を中心にしたアンケートですが、昨年一年間だけでも大体1.3倍ぐらいになってるんです。なので、これからは当然やっていかなければいけないことになっていくのではないかと思います。

日本の事例を紹介すると、例えばソフトバンク。ソフトバンクって同性同士で家族割ができるんです。例えば私とパートナーだと、一緒の家に住んでますが、住民票は別々なんですね。向こうが○○さんで私はムラキさんで、何のつながりもないんです。住民票を見ても関係がわからないんですね。

じゃあソフトバンクはどうしてるかっていうと、住所が一緒だったらオッケーですよという形にしたんですね。私たちはふたりでソフトバンクに行って、免許証を出して住所一緒ですってことで家族割にしてもらいました。

最近は通話ってあんまりしないので、あんまり金銭的なメリットはないんですけども、でもやっぱり嬉しかったんですよね。

家族っていう名の割引、たくさんあります。旅行とか保養所とかでもいっぱいありますよね。でもどれもこれも私たちは使えないことが多いんです。でもここは家族割に入った。実質的なメリットよりも、そっちの嬉しさのほうが私は記憶に残っています。

LGBTのキャンペーンに対する社会の反応

次はGAP。GAPって普段のロゴは違いますよね。紺色に白抜きでGAPです。実は杉山さんが代表を務めた、東京でパレードがあった時。ゴールデンウィークだったんですが、そこに合わせて原宿にあるGAPの旗艦店、大きな店舗ですね。そこの看板を虹色に描きかえたんです。LGBTをサポートしますよって証です。

よく企業が、LGBTやってますっていうのを表明するのを怖がることがあるんですね。うちは年配のお客さんが多いから、お客さまが理解しないんじゃないかと。GAP、看板にこんなバーンと掲げたわけですよね。一般のお客さまも見るわけです。

反応はどうだったかというと、特に問題はなかったんですね。たぶんこれを見てもピンとこない人が多いと思うんです。でも中に入るとわかるんですね。

LGBTの写真展をしていて、パンフレットも置いてあったんです。一般のお客さまの反応がどうだったかというと、「ああ、GAPってこういうことやってるんだ。へえ、さすがだね」。そのぐらいなんですよね。

日本ではそのぐらいの反応が多いんだと思います。お客さまの反応を、そこまで恐れる必要はないのかなと個人的には思います。

GAPのキャンペーンは大成功だったんです。普段より入店数が増えたとおっしゃってました。一般の方は普通に行きますし、LGBTは遠くから見に来る。それで増えるんだと思います。

次は同性同士の和式のウエディング。これ京都で行われてます。京都の春光院というお寺さんと、ホテルグランヴィア京都。京都の駅ビルに入っている、JR西日本系列のホテルですね。

そこが宿泊と婚礼のパッケージを売っているんです。これがやっぱり成功しているんですね。お客さまが目に見えて増えているそうです。

実はこれは外国人観光客、インバウンド向けのプロモーションです。英語のパンフレットなんですね。非常にユニークな取り組みだということで、CNNなどの海外メディアで取り上げられてるんです。お寺さんがやっているって非常に面白いなと思います。

不動産で言うと、実はLGBTフレンドリーのシェアハウスが、もう東京にあります。ほとんど満室でなかなか空きが出ない状況だそうです。

LGBTの老後を考えるようなイベントもあるんですが、大盛況なんですね。どうやって将来を暮らしていくのか、そういったことに当事者が強い関心を持っている状況にあると思います。

LGBT当事者はうつを経験することが多い

実は今、私たちはアンケート調査をしています。毎年おこなっているんですが、ウェブ上でアンケートをして2,000人以上が答えてくれてます。それによると、職場で差別的な言動を経験しているって方は70パーセント。

うつを経験しているって方は、レズビアンで18パーセント、MTFでなんと45パーセント。MTFっていうのは身体が男性で性自認が女性のトランスジェンダーのことです。すごく多いんですね。

当事者を平均しても25パーセント。一般の人が生涯にうつを経験しているのは、大体10パーセントとかそれ未満なんですね。それを考えると、もしかしたら数倍、メンタルヘルスに問題を抱えがちのかなと思います。

商品やサービスの購入でその企業がLGBTに配慮しているかは重要ですと答えた人が、当事者の中で61パーセントです。その中で不動産って答えた人は65パーセントです。

一番ニーズが多かったのは医療・福祉・介護でした。生活に密着したところで、やっぱりLGBTフレンドリーなところがあると嬉しいと、そういった当事者の気持ちが表れてるのではないかと思います。

パートナーがいるって方が当事者で49パーセントでした。うち1年以上同居しているのが40パーセント。結構同居してるんですね。

49パーセントの内、11年以上同居してるって人が12パーセントです。ここに、住宅購入とか、生命保険とか、結婚式とか、そういった市場があるのではないかと思います。

企業がなぜLGBTに取り組むのか。企業はいい人を採りたい。LGBTであるかどうかに関わらず、ということですね。たまにメディアで言われるLGBTが優秀だという言い方は私はフェアではないと思っていて、企業が求める優秀な人材の中に数パーセントはLGBTがいる、という方が正確だと思います。

そして生産性向上です。例えば、今はメンタルヘルスを病んで休んでるような人に元気に働いてほしい、と。最後に離職防止。なんとなく居心地が悪くてやめてしまう当事者、非常に多いんですね。私も実は5回転職してます。

どの職場でもカミングアウトしていなかったので、なんとなく居心地が悪くて。職場へのロイヤリティが低いので、他の小さな問題が発生すると、割とあっさりやめてしまうんですね。私だけでなく、同じような経験をしている人、沢山いると思います。

今度はお客さま側を向くと、CSR(企業の社会的責任)ということで、法律を遵守する必要がある。海外からの目も気になります。そしてLGBTのマーケット、それに対応することによるサービス向上。LGBTは、お客さまの5パーセント、と考えたらそれは20人にひとりですよね。

例えば不動産屋さんに女性同士で部屋を借りたいんですとお客様が来た時に、ちゃんと店頭で対応できたら、それはやっぱり違いますよね。

そこで「お友達ですか」とか、なんかその人がウッとくるようなことを言ってしまったら、もしかしたらそのお客様は黙って逃げちゃうかもしれない。

日本のLGBTのお客様は、その場で直接クレームを言ってくるというよりは、不快な思いをしたら黙って逃げちゃう傾向があると思います。でも接客担当者がLGBTのことを知っていたら、ちゃんと対応できるかもしれない。

渋谷区の同性パートナーシップ条例について

最近は行政もLGBTについて取り組みを始めています。私たちは大阪の淀川区に事務所があるんですが、淀川区は虹色のポスターを作って、行政の掲示板、町中にありますよね。その全部に貼ったんです。

電話相談をおこなったり、講演会をおこなったり、お茶会をしたりしてます。これは本当に、もし私が淀川区に生まれた子どもだったら、すごく勇気づけられると思います。自分はここに住めないかもって思わなくて済む。すごく大事な事業だと思います。じゃあ、次は杉山さんにお願いしましょうか。

杉山文野氏(以下、杉山):はい。これはたぶん皆さんもニュースでご覧になったかと思うんですけど、今年4月に渋谷区で同性パートナーシップ条例がスタートしました。

この「同性パートナーシップ条例」というのはニックネームみたいなもので、本来は「渋谷区男女平等および多様性社会を推進する条例」というのが正式名称なんです。その条例の中で同性パートナーにも婚姻に相当するような関係を区が認めますよ、と。

一定の条件を満たすと、例えば20歳以上であるとか、2人とも渋谷区に住んでいると。あとは公正証書の作成などいくつかの条件が揃えば渋谷区としては同性パートナーとして認めますということで、その条例が3月31日に可決したと。

後ろでレインボーの旗を持っているのが僕なんですけれども、区役所から出てきたら、すごい今までにないほどのマスコミ、報道陣の数で、やっぱり注目度の高いニュースなんだなと改めて感じました。

村木:東アジアで初めてですから。これによって海外のメディアからの問い合わせも殺到しているような状況です。

LGBTは政治的にも大きなトピックに

「TOKYO RAINBOW PRIDE」

杉山:これが先ほど申し上げました東京レインボープライドといって、LGBTのプライドパレードなんですけれども、一応日本でも1994年、今から約20年前にスタートしたパレードなんですが、資金面や運営上の様々な課題で開催できた年もあればできない年もあったり。

やっぱり企業協賛でやらせていただいているので、なかなかお金が集まらないとか、そういったこともあったんですけれども、ここ4年はずっと開催していまして、4年前の参加者は4,500人だったんですね。でも今年は2日間の開催で5万5,000人と約12倍の参加者の方にいらしていただいてます。

村木:ものすごく増えましたね。代々木公園の中でやったんですが、もう人をかきわけながら歩かないといけないぐらいの状態で、びっくりしました。

杉山:昔はいわゆる「我らに人権を!」みたいなニュアンスが強かったんですけれども、今はどんどんお祭りやフェスティバルといった感じに変わってきています。例えばタイフェスをやったりしているのと変わらないような、もっとハッピーな雰囲気で会場は埋め尽くされていまして。

右上の写真が明治通りをパレードしている様子なんですけれども、こういった形で目に見えない存在でもちゃんとここにいるんですよとアピールしている。

左上の写真も、左から2番目なんかは民主党の細野さんですね。LGBTの話題は政治的な課題としても注目が高まっています。

東京レインボープライドはパレードだけの開催ではなくて、ゴールデンウィークの約10日間を利用してセクシュアリティに関する大小さまざまなイベントを全国でやっていて、今年も12日間で約60のイベントを開催させていただきました。それも含めると大体6万人ぐらいの方の参加ですね。

大小含め、100社以上の企業の方にご協賛いただいていて、御社にもご協力いただきました、ありがとうございましたと。今後ともよろしくお願いいたします。

村木:ダーッとお話ししてきましたが、皆さんいかがでしたでしょうか。LGBTがどんな人たちで、社会的にどんな問題を抱えていて、企業がどんな対応をしているのか、ご理解いただけたのではないかと思います。ありがとうございました。

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