中絶の話題をタブーにしないために
賛成反対の対立を超えて、個人の声に耳を傾ける場の必要性

A better way to talk about abortion

アメリカ女性の3人に1人が一生のうちに一度は妊娠中絶を経験するそうです。Aspen Baker(アスペン・ベイカー)氏も大学卒業後に妊娠、中絶を経験した女性の1人でした。そのことを友人に打ち明けたところ、友人も中絶経験者だったことを話してくれました。ベイカー氏は政治的な議論になりやすい話題についても、自分だけではないということ、誰かと話し合う機会があっても良いということを確信します。その後、ベイカー氏は中絶に関する話を聞くための組織、Pro-voiceを設立。タブーとされてきたことについても、誰かと経験談を共有し、共感し合うことによって、自分の決断とは異なる新たな道を模索するきっかけを作り出すことができるのです。(TEDWomen2015 より)

妊娠中絶について友人と語り合った

アスペン・ベイカー氏:それは夏真っ盛りで、私と友人のポリーが働くバークレーのダウンタウンにあるバーの終業時間のことでした。

普段なら仕事終わりに飲むのですが、その夜は飲みませんでした。私はポリーに「妊娠しているの。まだ産むかどうかはわからないけど」と打ち明けました。

ためらいなく彼女はこう言いました。「私は中絶したことがあるの」ポリーが中絶したことがあることを、そのとき初めて知りました。私は数ヶ月前に大学を卒業し、新しい恋人との関係が始まったところで妊娠が発覚しました。

どのような選択をするか考えたときに、正直に言って、どんな判断基準を使い、どう決断していいのかわかりませんでした。どうしたら正しい決断ができるのだろう。中絶をした後の後悔を考えて私は悩んでいました。

南カルフォルニアの海辺で成人を迎え、中絶論争の真っただ中で私は育ちました。ロー対ウェイド事件から3年経った頃に私は生まれました。

私たちの共同体はサーフィンをするクリスチャンでした。神や自分より不運な人々を気にかけ、そして海に関心がありました。みんな中絶反対派でした。

子どもだった頃、中絶という考えは私をとても悲しくさせました。たとえ妊娠したとしても、私には中絶することができないとわかっていたからです。

しかし私は中絶をしました。それは未知の領域への最初の1歩でした。しかしポリーは私に特別な気付きを与えてくれました。それは私は1人ではないということと、妊娠中絶について話す機会があっても良いものだということです。

堕胎をした人たちの話を聞くための組織を設立

妊娠中絶は一般的によくあることです。Guttmacher研究所によると、アメリカ女性の3人の内1人は生涯に一度は妊娠中絶を経験するそうです。

しかし過去数十年で、アメリカ合衆国内で妊娠中絶について語られる場は、妊娠中絶反対か賛成かという対話以外の余地はありませんでした。それは政治的で対立したものだったのです。

しかし中絶についての論争が激しくなっても、自分の中絶体験について話すということは稀でした。そこには隔たりがあります。政治上で語られるものと実生活でのそれとの間には論争点に隔たりがあるのです。

「あなたは私たちに賛成? 反対?」という立場に根差すのです。これは中絶だけに関することではありません。私たちが何らかの理由で話すことができない重要な問題がたくさんあるのです。

ですから、私はそういった論争から対話の場を設ける道へ移行できる道を見つけたいし、それが私の生涯の仕事であると思っています。

そうするために始めるべき重要なことが2つあります。1つは傾聴すること。そしてもう1つはその話を共有することです。

15年前、堕胎をした人たちの話を聞くためにExhaleという組織を共同設立しました。初めに取り組んだのは話を聞くための電話を開設することでした。

そこでは女性や男性が電話をかけることによって、感情的なサポートを受けることができました。裁きや政治から離れたものです。まさかとは思うでしょうが、このようなサービスはそれまで存在しなかったのです。

我々にはこうして聞いた話を全て包括するような新しい骨組みが必要になりました。中絶したことを後悔しているフェミニスト。そして感謝しているカトリック教徒。

個人的な体験は1つの箱の中に適切には収まりません。女性にどちらの味方に付くのか問うことは正しいとは思えませんでした。

この深く個人的な経験をすることで、世界は各々の見方があるということを伝えたかったのです。だから我々はPro-voiceを作りました。

妊娠中絶以外にも、Pro-voiceは難しい問題に何年もグローバルに取り組んできました。移民問題や宗教的寛容、女性に対する暴力などです。

それに加え、本人やその家族、親しい友人間での極めて個人的な問題にも取り組んでいます。末期の病を抱えていたり、特別な助けのいる子どもがいるけれど母親が亡くなってしまった人々。そしてそういったことを話すことができないといった問題です。

中絶経験者の良い聞き手になる方法

傾聴(けいちょう)と語ることはPro-voiceの特徴です。傾聴と語ること。とても良いことで簡単に聞こえませんか? 私たちみんなができることですから。

しかし全然簡単ではありません。とても難しいことです。なぜなら、我々は人々が戦っていることや誰も話したがらないことについて話しているからです。

もしPro-voiceの一員になったら、突破口を見つける瞬間や、花であふれる庭で、傾聴と語ることによって「なるほど」と思える瞬間を作り出せるんですよと言えたらと思うのです。

フェミニストの歓迎会をしたり、長い間失われていた婦人会のようなものがありますよと言えたら。しかし自分の話を語るということは傷つきやすく、誰も自分のことを気にかけていないと思いながら話をすることはとても疲弊します。

もし互いに本当に話を聞いたとしても、自分の都合の良いように認識してしまったりします。難しい会話を始めるのに、完璧な時や場所はありません。全ての人が同じページを同じレンズで見ることや、同じ歴史を知っているということもありえません。

ですから、話を聞くこと、それからどうしたら良い聞き手になれるのかということについて語りましょう。良い聞き手になるには様々な方法がありますので、今回いくつかお話します。

1つは、自由回答ができる質問をすることです。自分自身のことを聞いてもいいし、自分が知っている人のことでもいい。「どのように感じた?」「どのような感じだった?」「今、どんなことを願う?」などの質問です。

もう1つの良い聞き手になる方法は、反射的な言葉を使ってみることです。もし誰かが自身の個人的な体験を語っていたら、その人が使っている言葉を使うのです。

もしも相手が中絶について語っていて「赤ちゃん」という言葉を使ったら、あなたも「赤ちゃん」と言うのです。

「胎児」と言ったら、あなたも「胎児」と言うのです。もし誰かが自身のことを「ジェンダークィア(既存の性別に当てはまらない人)」と言ったなら、あなたもそう言えばいい。

見た目が男性だとしても、彼ら自身が女性だと言うのなら、素晴らしいことですよね、「彼女」と呼べばいいのです。自身の話を語っている人の言葉を反復すると、彼ら彼女たち自身や経験したことを理解することに興味をもっているということを伝えることができます。

私たちが自分のことを理解してもらいたいと願うのと同じように。Exhaleのカウンセラーとして会議に参加していた時に、ボランティア女性が神について語るクリスチャンの女性からたくさんの電話を受けることについて話していたのが忘れられません。 

我々の団体のボランティアの何人かは信仰を持っていますが、この方は違いました。初めは、彼女にとって神について話すことはとても変なことに感じられました。

そこで彼女は自分にとって心地よくなることを決めました。そして家で鏡の前に立ち「神様、神様、神様、神様、神様、神様」と口にしました。

何度も何度も彼女の口からその言葉が出てくるのが変に感じられなくなるまで。神という言葉を口にすることはこのボランティア女性をクリスチャンにすることはありませんでしたが、クリスチャンの女性の話を聞くことを上手くさせました。

経験談を誰かと共有する重要性

もう1つの方法とは、経験談を誰かと共有し、リスクを引き受けることによって、もしかしたら同じ状況にいる誰かに異なる決断をする機会を与えることができるということです。例えば、もしあなたが妊娠中絶について話をしたとします。

聞いた人は、もしかしたら子どもを生むかもしれないし、養子縁組を組むかもしれない。両親やパートナーに相談するかもしれないししないかもしれない。たとえ悲しみと喪失感を感じたとしても、解放感と自信を得るかもしれない。

それはそれでいいことですよね。共感とは誰かの靴を履くことを想像させる瞬間を作り出すことができます。それは結局、私たちは皆同じ場所にいるということではありません。それは同意であったり同質であるということでもありません。

そこでは私たちを特別でユニークにしてくれる価値観がある文化や社会が作り出されているのです。欠点や不完全さが私たちを人間らしくしているのです。この考え方は、恐れの代わりに尊敬の念をもって私たちの違いを見ることができるようにしてくれます。

そして汚名や恥、偏見、差別、抑圧など、他者を傷つける様々なものを乗り越える共感というものを生じさせます。Pro-voiceは伝染性をもっており、行動するほど広まります。

昨年、私は再び妊娠しました。今回は息子の誕生を心待ちにしていました。そして妊娠している間、「どのように感じているか?」ということを聞かれることはありませんでした。しかしながら、もし聞かれたらこう答えます。

「素晴らしい」とか「興奮している」、もしくは「怖かったりパニックになっていたとしても、そこにはいつでも側にいてくれる人がいます」。

それ(息子の誕生)はとても素晴らしいことです。中絶の複雑な感情を話した時の経験から始まった劇的な出発だったけれど、それは歓迎されるものです。

Pro-voiceは妊娠中絶について実際の人々の本当の話によって影響を与え、その他の政治問題化されたり汚名を着せられたような問題についても理解したり議論したりする場です。

性やメンタルヘルスの問題から貧困や投獄に関するものまで。答えは1つ、間違った決断という定義を超えて、私たちの経験談は幅広いグラデーションの上にあるのです。Pro-voiceは人々の体験談に焦点を合わせ、支援をし、すべての人に尊敬の念を持ちます。ありがとうございます。

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