音頭をクラブミュージック解釈で語る

DJフクタケ(以下、フクタケ):こんばんは、DJフクタケです。よろしくお願いします。

アボカズヒロ(以下、アボ):アボカズヒロです。よろしくお願いします。

(会場拍手)

アボ:とんでもない企画ですよ、今日は。音頭をクラブミュージック解釈で語るというトークテーマをいただいたときに、僕は基本的にフクタケさんから「何かできない?」って言われたときに、とりあえず何も考えずに「できます!」って言うっていうルールにしているので。例によって僕は「はい、わかりました。やってみます」って二つ返事で言ったんですけれども。

いろいろ調べてみたんですよ。調べてみればみるほど、クラブミュージックと音頭に本当に歴史の裏付け、確固たるソースとかがあって、「これはここから繋がっているんです」という事実は、残念ながら見つけられなかったっていうことなんで(笑)。

音頭とクラブカルチャーをクラブカルチャー視点で、というところでこれからいろんな話をするんですけど、基本的に何ひとつソースがある話ではないという。

だから、クラブカルチャーにどっぷり浸かってきた人間が音頭を聴いたときに頭の中に広がった、夢想したうたかたの夢のような話なんだけども。けど意外と物事の核心みたいなものがそこに含まれているのではないか、みたいな。

ちなみにソースがしっかりしている話は、大石始さんの『ニッポン大音頭時代』っていう本に載っています。

ニッポン大音頭時代:「東京音頭」から始まる流行音楽のかたち

フクタケ:ライターの大石始さんが7月27日に発売された、河出書房新社から出てる本なんですけれど、音頭の歴史的なことから現在に至るまでの流れっていうのを書いていて。

巻末のほうにインタビューが載っていて、その中に私DJフクタケも、クラブでDJをしながら音頭をかけてる人としてインタビュー受けています。こういう基礎的な文献っていうのもありつつ、今回のトークのほうは、ちょっと妄想率高めというか。

アボ:飛躍系で。

フクタケ:「実はこうなんじゃないか?」みたいな感じで進めさせてもらえればなと思います。

DJフクタケ氏が音頭DJを始めたきっかけ

フクタケ:で、ちょっと大前提の話をさせてください。まず今回のトークは、私の歌謡曲のMIX CDで『ヤバ歌謡』というCDをユニバーサル・ミュージックからシリーズで3枚出しています。オフィシャルの、メジャーからのリリースで、7月に出た3枚目が音頭編だったんですね。世の中に存在する音頭のレコード、7インチシングルのみでMIXしたものが出ております。

ヤバ歌謡3 NONSTOP DJ MIX –音頭編 - Mixed by DJフクタケ

今回このお店の方に「音頭のトークと、DJのほうも」ってお声がけいただいて。「トークの相手はどなたが良いですか?」って聞かれたときに、いろいろ誰が良いんだろうって思って、やっぱり「ディガーの聖地」でもある渋谷宇田川町、HMV record shopさんってなったときに、僕はやっぱりアボカズヒロくんにお願いしようと思ったんです。

というのは、僕がそもそもクラブで音頭DJをやろうって思ったというか、やる羽目になったきっかけを作ったのがこのアボカズヒロ氏なんですよね。その辺の経緯なんか話してもらえますか。

アボ:その辺からいろいろ話に入っていけそうですね。フクタケさんは「まんがジョッキー」的な感じで、アニメソングというよりかはテレビまんがの音楽をかけてる方で。昔の昭和のテレビマンガっていうのは、大体夏になるとテーマ曲が音頭になってたんですよ。そのノヴェルティ的な音頭とかを、あれは何だろう? 漫画歌謡?

フクタケ:レアグルーヴ解釈で昔のアニソンをかけるっていうDJをしていたんですね。

アボ:そういうDJをしてたときに音頭もちょこちょこかかってたんですけれども、そこでクラブのサウンドシステムで音頭を聴くという体験を、僕は初めてするんですね。

そのときは音頭だけではなかったんですけれども、そういうものもポロッとかかって。そのときに音頭の持ってるビートの帯域のサブベースのデカさというか、「えっ! 音頭ってこんなに下(低音)が入ってたんだ!?」という驚きを体験して。

そのころ僕は結構、ベースミュージック的な、ダブステップ以降のベースミュージックの流れにどっぷりだったりとかもして、とにかく低音のデカいところに寄ってく虫みたいな感じあったんですけれども。

音頭が持つダンスミュージックとしての機能性

アボ:その中で「音頭は相当下(低音)が気持ち良いし、これだけ1時間とか聴いたら、かなりグルーヴィーで良いのではないか」っていう直感があって。

たまたま夏、サマーシーズンにパーティをやることになったので、フクタケさんに、「すみません、音頭だけで1時間ってできますでしょうか?」っていうご相談をしたら「多分できると思うからやってみる」ということだったんで。

フクタケ:わりと見切り発車っていうか、半分無茶振りみたいなオファーで頼まれたっていうのが流れとしてはあって(笑)。僕もある程度、20分くらいとかはまとまって音頭をかけたことあったけど1時間はなくて。本当にこれでクラブミュージックマナーのDJで成立させられるのかなっていうのは、自分でもちょっと半信半疑のまんま、いざやったら……っていう。

アボ:いざやったら、音頭というものがリズムパターンとかグルーヴにある種の一定感があって、それをちゃんとグルーヴで繋いでMIXできる音楽だったっていうのがまず1つ明らかになって。

フクタケ:ダンスミュージックとしての機能性という部分で、ちゃんとDJ的にも使いやすい部分があった。

アボ:レコードコレクター系の方だと、DJとかやるときに1曲ずつかけるみたいな方がわりと多いんですけど、フクタケさんは本当にオンビート、オングルーヴというか、グルーヴにちゃんと乗っかってかけていくっていうスタイルで、そのフクタケさんのスタイルと音頭っていうものが、ものすごい相性が良かったっていうのもあるんですけど。

音頭の本当の姿を体験したことはあるか?

アボ:僕が音頭にバンッて引き込まれた、クラブのサウンドシステムで聴いた体験っていうのが、多分音頭っていうものをクラブミュージックの文脈で語る上で、非常に重要になってくるのではないかと思ったんですね。

それはなぜかっていうことをいろいろ考えていったときに、多分僕らって、きちんとした、音頭という音楽形態が「こういう形で受け止めて欲しい」と考えて作られた、「音頭の本当の姿」「本当の音頭の音響体験」というものを、あまりしてこなかった、結構不幸な世代なのではないかという仮説が、いろいろ調べていった結果僕の中にあって。

フクタケ:環境としての?

アボ:そうです。「音響体験としての音頭」ってやつですね。町の盆踊りとかで、音頭ってよく流れてるじゃないですか。でもあれって、だいたい町内会のラッパのスピーカーみたいなやつで鳴っていて、上(高音)と下(低音)がばっつり切られている。帯域が狭いし低音ももちろんばっさりカットされている状態で聴いていて、何となくそれが僕らのノスタルジックな音頭の音像だったりするじゃないですか。

フクタケ:レコードのアナログの溝にちゃんと刻まれてる音を、十分には再生しきれない状態で聴いていることが多いと。

アボ:しかも、そもそも大前提として、そのスピーカーとかいわゆるPAシステムが確立される前、つまり生の演奏しかなかった時代の盆踊り、そして音頭というものは、どういうふうな音像だったんだろうかっていうのを考えていって。

楽器とか調べていくと、まず規模がデカくなるにつれて、当時は電気で音を大きくすることはできないので、太鼓の経、丸がデカくなるか、もしくは量が増えるかなんです。大きさと力。腕力。強く叩けば音がデカくなるっていう。

フクタケ:強く叩くとアタックが強い音、みたいな(笑)。

アボ:もう本当に、楽器とサウンドシステムが全く同一だった時代っていうのがあるわけで。その時代に鳴ってた音っていうのは、やっぱり近くで聴いたら結構圧倒されるものがあったりするんです。

それでそういうのがちょっと残ってるのが、秋田のほうで、何ていう祭だったかな。とにかくデカい! 世界一の芋煮を作るみたいな、10人くらいの野郎が太鼓の上に乗っかって、超デカいバチで叩くレベルのやつがあるんです。

それってどんどんエクストリーム化していって、ジャマイカの(スカやレゲエの)サウンドシステムのウーファーの数が増えていったみたいな話ですよね。

フクタケ:それを同じ感覚で太鼓が大きくなっていってる。和のサウンドシステムなんですね。

盆踊りと渋谷・円山町の類似性

アボ:盆踊りというのは、そういうサウンドシステムの中で祭の享楽性、いわゆるサマー・オブ・ラブ的なことが行われてた。

フクタケ:まあ、年に1度はっちゃけて良い場所。そこで色恋があってっていう、クラブでも夜な夜な同じようなことがあるわけで。

アボ:どちらかというと、戦前のそういうカルチャーを追っていくと、日本人って昔からヒップホップやってたなあ、みたいな感じがあって。盆踊りって元々のルーツが「歌垣」っていう文化なんですけど、唄掛ってご存知の方いらっしゃいます? ご存じない?

盆踊りのルーツの1つであろうと言われている歌垣っていうカルチャーは、即興で男女が詩を読み合うんです。それは夏祭りで行われているので、真ん中ではもうドンドコドンドコやっている。ビートが流れている、その横のほうにカメラが移っていくとカップルがいて、即興で「5・7・5」を言ったら「7・7」で即興で返す。それで口説くんですよ。

フクタケ:上の句、下の句なんだ。

アボ:そうそう。上の句下の句で、こっちが「君どこから来たの?」的な5・7・5でちょっと気の利いたのを投げる。そうすると、女の子が7・7で上手くかわす。でも5・7・5で食い下がる、みたいなのを即興でキャッチボールしていくっていう、唄掛っていうカルチャーがあって。

フクタケ:これは、ヒップホップで言うところの?

アボ:これは完全にヒップホップで言うところのサイファーですね!

フクタケ:なるほど(笑)。

アボ:そういうふうなところで、一方その頃、櫓のブースではビートがずっと流れているっていう。それでそこでカップルが成立すると、山の方にね。

フクタケ:消えていくわけですね。

アボ:まあ大体円山町的な話ですよ。そういうふうに考えると、結構日本人って昔から円山町あたり、AsiaやHARLEMあたりで遊んでる感覚が、わりとスタンダードとしてあったのではないかっていう。

フクタケ:なるほど。これはやっぱり音頭の開放性とか享楽性みたいなところですね。