コミュニティは大きくするとファンが離れる--佐々木俊尚氏が語る成功するメディア運営のバランスとは

アメリカ新興メディア業界の最前線を知る #2/5

LIFE MAKERSトークセッション
に開催

佐々木俊尚氏がプレゼンターを務める有料会員制コミュニティ「LIFE MAKERS」に今年3月から3ヶ月間アメリカ新興メディア業界に現地取材を行った大熊将八氏をゲストに迎え、トークセッションを行いました。「アメリカ新興メディア業界の最前線を知る」をテーマに、過渡期とされるメディア業界の変化について意見を交わします。本パートでは、佐々木氏がコミュニティサイトはスケールさせすぎるとファン離れが起きるという問題点を指摘し、様々なサービスを例に挙げながらコミュニティ運営のコツについて語りました。

米メディアのネイティブアドへの取り組みについて

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):例えばさっきの紹介した例で言うと、ニューヨーク・タイムズがInstagramをやってると。

Instagramはリンクを貼れないので、ここで見ても誰もどこにも行けないわけですよね。新興メディアは、Instagramのこの写真1枚で、ネイティブアドが成立すれば、それでいいっていう考え方だから、これ見てもらえればいいっていう発想なんだけど、多分ニューヨーク・タイムズは、そこまでは考えてないんでしょう。

実際にネイティブアドをやってるっていう話もあるのかな? 

大熊将八氏(以下、大熊):そうですね。NYTは、T Brand Studioっていって、ネイティブアド用のブランドスタジオをつくって。そこで例えば動画ですとか、新しい広告の取り組みをガンガンやっているようです。

ネイティブアドっていうのに対しては結構真剣なものの、その両立をどうすればいいんだっていう、その一方で呼び込んで課金したいっていうところの両立ですごく揺れているところだと。

佐々木:だからネイティブアドも始めました。でも有料課金は、やっぱりある程度ユーザーに課金できたし、外れないよね。でも一方で新興メディアも、ネイティブアドも、ガンガンいっていることに対する焦燥感みたいなものがきっとあったりして。一応、こういうのもやっていきましょうっていう、そういうようなニュアンスなんですかね。

大熊:そうだと思いますね。

クオリティが高いQuartzのネイティブアド

大熊:あと、たまに、ポジショントークもされるというか、ウォール・ストリート・ジャーナルの人にお会いしたときには、ネイティブ広告ってあんまり市場伸びないと思うんだよね、みたいなことを言ってて。

それは、課金中心であってほしいウォール・ストリート・ジャーナルの人だから言うのかなっていうのは思いましたけどね。

佐々木:なるほどね。経済誌でもネイティブ広告成り立たないかっていうと、そんなことは全然なくて、今ある新興メディアのケースだと、Atlanticっていう雑誌社がやってるQuartzっていう新興メディアは、ほぼネイティブアドのみで突き進んでいます。

以前話題になったのは、ゴールドマン・サックスのネイティブアド。ゴールドマン・サックスの社内シンクタンクが考えるテクノロジートレンドみたいな記事があったんですね。

それがレポートとしてもすごい内容が秀逸で、同時にGSのネイティブアドみたいなものにもなってるみたいな、そういうモデルが出てきてるんで。割に経済メディアでは、ネイティブアドは信用性が高いですよね。

大熊:そうですね。各メディアの個別の記事については、担当者の対応がしっかりしているかどうかっていう個人の力量次第かなとは思うものの。

バーベルの真ん中はデッドゾーン

佐々木:このバーベル理論って何ですか? 

大熊:さっき、紹介しそびれたんですけど。これは、マシュー・イングランムさんという方がいらっしゃって、向こうのコラムニスト、オピニオンリーダーでありながら、メディアの面にも関わられた方で。バーベルって、両端に重りがついてるじゃないですか。これがメディア業界に言えると。

徹底的に広く浅く、例えばバズフィードとかハフィントンポストみたいな、ここってもう月間で2億人ぐらいのユーザーがいるわけなんですけど。それぐらいとるような、すごい広く浅くのモデルに行って、そのかわり課金を求めませんと。

とにかく、拡散することが目的なので、課金は求めずにネイティブ広告で稼ぎますっていうようなとこに行くか、もっと徹底的に逆に、狭く深く行くところですと。

例えば、このRe/codeっていうのは、最近買収されたんですけど、例えばすごいレベルの高いテック系メディアって言われてて。ここの稼ぎ方っていうのは、結構イベントが中心だったんですね。

例えばFacebookのザッカーバーグとかティム・クックとか呼んで、しゃべらせるみたいなイベントをやってて。1回の参加費が2000ドルとかぐらいでしたね、めちゃくちゃ高いですよね。

そうやってイベントをやっているところで、そこはそこで生き残り得ると。だから、中途半端な真ん中に行っちゃうと、すごくしんどいですよという理論なんですよね。

NewsPicksは一般人が増えて議論が薄まった?

佐々木:Gigaomは今、つぶれちゃったんじゃなかったっけ。

大熊:そうですね。まさにマシュー・イングラムさんというのは、このGigaomをされてた方なんですけど。僕が3月2日に着いて、ここも是非行こうと思っていたら、3月3日に確か、つぶれちゃって。それで翌日に、つぶれましたみたいな話があって。

ある種、広く浅く行くか、狭く深く行くかっていう中で、ここも深い方のプレイヤーとして、頻繁にイベントを開いていたんですけど。で、僕もそのイベントに参加しようと思ったんですけど。

別のイベントで、ここのイベントによく参加してた人に話を聞けたんですけど。言ってたのは、最近はちょっと何かイベントおもしろくないし、人も増えてきて前よりつまんなくなっちゃったと。だから空席も目立ったし、頻繁に開かれても行くものじゃなくなっちゃったっていうことを言っていて。

狭く深くの人たちには、多分もうちょっと広げよう、何か、わざとスケールしないふうにやっているわけですけど、もう100人ふやしてもいいんじゃないかとか。

例えばコミュニティをもう100人ふやしてもいいんじゃないかとか、もうちょっと頻度上げてイベントをしてもいいんじゃないかって拡大する誘因が常に働いて、それが行き過ぎてしまうとコミュニティが薄まってしまって、コアなファンの人が離れていってしまって失敗してしまうというのが、言えるのかなと思いました。

佐々木:そこは、すごい難しいですよね。日本の事例だと、NewsPicksはどうなるんだろうなみたいな議論があって、もちろんNewsPicksってすごく素晴らしいサービスだと思うんだけど。

やっぱり当初と比べると、掲示板とかコミュニティー部門に人がすごい増えたおかげで、初期は経営者とか、いわゆる専門家がたくさん集まっていたのが、一般の人が増えていったことによって議論が薄まってしまったよねっていう意見も、やっぱりあるわけですよね。

それもわかってて、そこを記号化っていうか、スケール化をある程度しないと、マネタイズが難しいんじゃないのって話があり。

だったら、小さいままのほうがいい。小さいままで、どうやって維持していくのかっていうのが難しいと。いっそ、1人か2人でやってるならいいけどみたいな話になって。それに分岐点の問題とかも絡んできて、結構マイナーというか、非常に難しい問題なんです。

Webサービスに立ちはだかる2000万人の壁

佐々木:Re/codeは確かにすごい質が高くて、僕もふだん欠かさず見ているんですけど、たまに、おっと驚くような、すごい深い考察の記事が載ってるんで、このモデルは素晴らしい。これ、どこが買収したんです? 

大熊:ボックスメディアっていうところがあって。

佐々木:ボックスメディアが買収したの。これ広く浅くか、狭く深くかっていうのも、ちょっと微妙にどうなのかなっていうのは思ってて、個人的には。必ずしもマスリーチする必要は、ないんじゃないのかなっていうのが。

何か特定の文化圏、例えば日本だと、2000万人壁説っていうのがあって。人口は1億2000万です。で、そのうちインターネットやってるのが1億人ぐらいいますよと。で、その中で例えば今、Facebookで2300万人。で、Twitterが2000万人弱。で、全盛期のミクシィもやっぱり2000万人。それからなかなか超えない。

それを超えるものはどういうサービスかっていうと、実はgleeとかDeNA、モバゲーね。あそこは5000万とかなんですよ。

大熊:国内でそのぐらい行ったってことですね、国内だけで。

佐々木:国内だけで。なぜ5000万人いったかというと、要するに、その2000万人じゃないところに道ができてるからと。例えば、地方だったりだとか、そういうことなんです。で、2000万人って、これすごい仮説なので、あんまり根拠ないんだけれど、都市文化に属してる層ってのが、大体そのぐらいなのかなと。

一方で全然1億2000万人にしなくても、その2000万があれば、あるいは、もうちょっと年齢層狭めて1000万なり、そこにうまくはまりこむぐらいの規模感かサービスがあれば、そこまで広く浅くしなくても、うまくはまるだろうと。

だからネイティブアドって、ブランド広告でしょう。ブランド広告だとすれば、そのブランド広告のブランドが、ターゲットとしている層にきちんとはまることのほうが大事で。だって全員、直に広めるんだったら、やっぱりテレビのほうがいいわけですよね。誰でも見てる。

ネットの情報メディアってのは、もうちょっとターゲッティングされてるので。そうすると、1億2000万が見てる誰でも見てるメディアっていうよりは、もう少し、この都市文化に希求してますよとか、あるいは、ひょっとしたら地方のメディアが山村に希求してますよみたいな、その辺の絞りが、ちょっといいんじゃないかと。

だから、どっちかというとマシュー・イングラムさんの意見に反対するわけじゃないけど、真ん中辺も僕はありなんじゃないかなと思うときがあります。

大熊:なるほど。ちょうどいい規模が存在するんじゃないかと。

佐々木:あくまで仮説なんで、よくわかんないんだけど。

放送業界からネット業界への人材移動

佐々木:大熊君にもう1つ聞きたいのは、動画なんですよね。

動画って、今すごい日本国内でも盛り上がってきていて、なんで盛り上がっているかっていうと多分、ネイティブ広告モデルが成立するよねっていう動きが起きてきて、ネイティブ広告をもっとブランディングの質を高めるためには、やっぱり動画広告が必要だよねと。

そうすると、そこにお金が入るんじゃないの、あるいは入ってるよねっていう動きが出てきたことで、割に今までよりも高い金額、高い予算感で、動画をつくろうという動きが出てきているんですね。

その結果、従来の日本の放送業界、下請けの制作会社が山ほどあって、よく言われるんだけど、キー局の正社員の年収が1500万ぐらいあるけど、制作会社の年収が500万ぐらいで3倍ぐらいの開きがあると。

これ下積みからどうやって抜け出すんだっていうのが割に大きな課題だった。だけど、かといってその500万円の生活捨ててインターネットに来たって、チープな動画しかなかったら、そんなにお金もうかりませんよってのが今までの構図。

ところが最近そこが少し、予算感が向上してきたので、一気に人材が放送業界からネットの業界に流れ込み始めつつあるかなってのが、今の日本の状況なんですよ。その辺はアメリカは今、どんな感じだったんですかね? 

大熊:そうですね。アメリカでも、今まで紙とかというか文章といいますか、記事でやってたメディアさんも、例えば新旧問わずニューヨーク・タイムズさんも、さっきのInstagramとかで、動画の比率が2、3割をもう占めてると。Facebookとかで出すコンテンツの動画の割合が2、3割は占めてると。

やっぱり、動画のほうが見られるし、広がるよねっていうことが認識されていて、新しいメディアもそれにやっているし、古いメディアっていうか昔からあるメディアも、どんどん動画をやっていますというのがあると思うんですけど。

その裏側を見てみると、アメリカと日本でテレビ業界が違うのは、一番違うなと思うのは、向こうはケーブルテレビでいっぱいあったと思うんですけども、そこがどんどんしんどくなってきて。

今年の秋に上陸されると言われているネットフリックスとかっていうのによって、どんどんケーブルテレビとかっていうのが、倒れていっているっていう現状があるかなと思っています。

Facebookでの動画閲覧数がYouTubeを超える!?

大熊:向こうの人に聞くと、すごく安い、正直かなり割安だと思える賃金で、すごい技術持ってる人、動画制作に必要な技術を持ってる人を雇えるっていうようなことを例えばニューヨーク・タイムズの人とかが言っていて、なるほどなっていうふうに思いました。

あとは、彼らをマッチングしてるメディア系、コンテンツ系に絞ったクラウドソーシングサービスがあるんですけども、そこにフリーランスの人が5万人ぐらい登録してるんですけど。

「普通の記者やってました」とか、「写真撮ります」っていう人もいるものの、動画系の人もどんどんそこに増えているということで、ケーブルテレビとかを脱して新しいメディアに行こうっていう流れは、結構多いのかなと。もうかなりの割合で、例えばメディアのコンテンツとして、動画が増えてきてるなというふうに思いますね。

佐々木:制作者のマッチングっていうのは、日本でもViibarっていう会社が、もうかなりの規模感になって来てますよね。大規模な資金調達もしている。

大熊:2000人ぐらいです、確か。

佐々木:2000人ぐらいの動画制作者の人たちをマッチングさせるっていうのをスタートしてますよね。

動画は、例えばFacebookの動きとかおもしろくて。今日もちょっと調べ物してて、さっき数字見てたんですけども。今、Facebookの動画の1日のページビュー、デイページビューが、30億ビューぐらいあるのかな。すごいんですよ。

20億から30億に増えるのに、3カ月ぐらいしかかからなかった。YouTubeは今、数字を公開してなくて、調べたら。公式サイトで言うと、数十億ビューですとしか書いてないんだけど。YouTubeは、20億から30億に達するのに、8カ月かかったんですね。

大熊:勝ってるか負けてるか、現時点では分からないぐらいになってきていますね。

佐々木:Facebookの伸びのほうが強い。今30憶ビューで、YouTubeは数十億ってことは、100億はいってないわけだから。おそらく今後1、2年ぐらいのうちに、YouTubeをFacebookが少なくとも閲覧数で超える可能性はあるんじゃないのかと。

若者はYouTubeで音楽を聞く

佐々木:あと、今日アメリカのThe Vergeの記事に載ってたんだけど、Apple Musicって始まりましたよね、ストリーミングサービス。あれに、Facebookが参入するらしいっていう。で、へえと思って見たら、音楽配信じゃないんですよ。動画をやる。要するに、音楽を動画で聞く。YouTubeもそうですね。

実は今の若い人って、音楽をどこで聞きますかっていうと、実は一番流入が多いのはYouTubeなんですね。

これ、いいのは、例えばApple Musicとか聞くと、洋楽は大体あるんだけど、例えば日本のソニーミュージックのアーティストが全然入ってなかったりとか、邦楽はすごいラインナップが乏しいんですよ。でも、YouTubeには、大体全員あるんでね、動画が。

そうすると動画が入り口に、音楽聞かせるってのは結構よい入り口であって、そこはFacebookは動画で音楽を流しますっていうのをやろうとしてるっていうのは、これは目のつけどころはすごくいいし、結構可能性はあるかなってのは思いました。

制作協力:VoXT

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