米メディアのネイティブアドへの取り組みについて

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):例えばさっきの紹介した例で言うと、ニューヨーク・タイムズがInstagramをやってると。

Instagramはリンクを貼れないので、ここで見ても誰もどこにも行けないわけですよね。新興メディアは、Instagramのこの写真1枚で、ネイティブアドが成立すれば、それでいいっていう考え方だから、これ見てもらえればいいっていう発想なんだけど、多分ニューヨーク・タイムズは、そこまでは考えてないんでしょう。

実際にネイティブアドをやってるっていう話もあるのかな? 

大熊将八氏(以下、大熊):そうですね。NYTは、T Brand Studioっていって、ネイティブアド用のブランドスタジオをつくって。そこで例えば動画ですとか、新しい広告の取り組みをガンガンやっているようです。

ネイティブアドっていうのに対しては結構真剣なものの、その両立をどうすればいいんだっていう、その一方で呼び込んで課金したいっていうところの両立ですごく揺れているところだと。

佐々木:だからネイティブアドも始めました。でも有料課金は、やっぱりある程度ユーザーに課金できたし、外れないよね。でも一方で新興メディアも、ネイティブアドも、ガンガンいっていることに対する焦燥感みたいなものがきっとあったりして。一応、こういうのもやっていきましょうっていう、そういうようなニュアンスなんですかね。

大熊:そうだと思いますね。

クオリティが高いQuartzのネイティブアド

大熊:あと、たまに、ポジショントークもされるというか、ウォール・ストリート・ジャーナルの人にお会いしたときには、ネイティブ広告ってあんまり市場伸びないと思うんだよね、みたいなことを言ってて。

それは、課金中心であってほしいウォール・ストリート・ジャーナルの人だから言うのかなっていうのは思いましたけどね。

佐々木:なるほどね。経済誌でもネイティブ広告成り立たないかっていうと、そんなことは全然なくて、今ある新興メディアのケースだと、Atlanticっていう雑誌社がやってるQuartzっていう新興メディアは、ほぼネイティブアドのみで突き進んでいます。

以前話題になったのは、ゴールドマン・サックスのネイティブアド。ゴールドマン・サックスの社内シンクタンクが考えるテクノロジートレンドみたいな記事があったんですね。

それがレポートとしてもすごい内容が秀逸で、同時にGSのネイティブアドみたいなものにもなってるみたいな、そういうモデルが出てきてるんで。割に経済メディアでは、ネイティブアドは信用性が高いですよね。

大熊:そうですね。各メディアの個別の記事については、担当者の対応がしっかりしているかどうかっていう個人の力量次第かなとは思うものの。

バーベルの真ん中はデッドゾーン

佐々木:このバーベル理論って何ですか? 

大熊:さっき、紹介しそびれたんですけど。これは、マシュー・イングランムさんという方がいらっしゃって、向こうのコラムニスト、オピニオンリーダーでありながら、メディアの面にも関わられた方で。バーベルって、両端に重りがついてるじゃないですか。これがメディア業界に言えると。

徹底的に広く浅く、例えばバズフィードとかハフィントンポストみたいな、ここってもう月間で2億人ぐらいのユーザーがいるわけなんですけど。それぐらいとるような、すごい広く浅くのモデルに行って、そのかわり課金を求めませんと。

とにかく、拡散することが目的なので、課金は求めずにネイティブ広告で稼ぎますっていうようなとこに行くか、もっと徹底的に逆に、狭く深く行くところですと。

例えば、このRe/codeっていうのは、最近買収されたんですけど、例えばすごいレベルの高いテック系メディアって言われてて。ここの稼ぎ方っていうのは、結構イベントが中心だったんですね。

例えばFacebookのザッカーバーグとかティム・クックとか呼んで、しゃべらせるみたいなイベントをやってて。1回の参加費が2000ドルとかぐらいでしたね、めちゃくちゃ高いですよね。

そうやってイベントをやっているところで、そこはそこで生き残り得ると。だから、中途半端な真ん中に行っちゃうと、すごくしんどいですよという理論なんですよね。

NewsPicksは一般人が増えて議論が薄まった?

佐々木:Gigaomは今、つぶれちゃったんじゃなかったっけ。

大熊:そうですね。まさにマシュー・イングラムさんというのは、このGigaomをされてた方なんですけど。僕が3月2日に着いて、ここも是非行こうと思っていたら、3月3日に確か、つぶれちゃって。それで翌日に、つぶれましたみたいな話があって。

ある種、広く浅く行くか、狭く深く行くかっていう中で、ここも深い方のプレイヤーとして、頻繁にイベントを開いていたんですけど。で、僕もそのイベントに参加しようと思ったんですけど。

別のイベントで、ここのイベントによく参加してた人に話を聞けたんですけど。言ってたのは、最近はちょっと何かイベントおもしろくないし、人も増えてきて前よりつまんなくなっちゃったと。だから空席も目立ったし、頻繁に開かれても行くものじゃなくなっちゃったっていうことを言っていて。

狭く深くの人たちには、多分もうちょっと広げよう、何か、わざとスケールしないふうにやっているわけですけど、もう100人ふやしてもいいんじゃないかとか。

例えばコミュニティをもう100人ふやしてもいいんじゃないかとか、もうちょっと頻度上げてイベントをしてもいいんじゃないかって拡大する誘因が常に働いて、それが行き過ぎてしまうとコミュニティが薄まってしまって、コアなファンの人が離れていってしまって失敗してしまうというのが、言えるのかなと思いました。

佐々木:そこは、すごい難しいですよね。日本の事例だと、NewsPicksはどうなるんだろうなみたいな議論があって、もちろんNewsPicksってすごく素晴らしいサービスだと思うんだけど。

やっぱり当初と比べると、掲示板とかコミュニティー部門に人がすごい増えたおかげで、初期は経営者とか、いわゆる専門家がたくさん集まっていたのが、一般の人が増えていったことによって議論が薄まってしまったよねっていう意見も、やっぱりあるわけですよね。

それもわかってて、そこを記号化っていうか、スケール化をある程度しないと、マネタイズが難しいんじゃないのって話があり。

だったら、小さいままのほうがいい。小さいままで、どうやって維持していくのかっていうのが難しいと。いっそ、1人か2人でやってるならいいけどみたいな話になって。それに分岐点の問題とかも絡んできて、結構マイナーというか、非常に難しい問題なんです。

Webサービスに立ちはだかる2000万人の壁

佐々木:Re/codeは確かにすごい質が高くて、僕もふだん欠かさず見ているんですけど、たまに、おっと驚くような、すごい深い考察の記事が載ってるんで、このモデルは素晴らしい。これ、どこが買収したんです? 

大熊:ボックスメディアっていうところがあって。

佐々木:ボックスメディアが買収したの。これ広く浅くか、狭く深くかっていうのも、ちょっと微妙にどうなのかなっていうのは思ってて、個人的には。必ずしもマスリーチする必要は、ないんじゃないのかなっていうのが。

何か特定の文化圏、例えば日本だと、2000万人壁説っていうのがあって。人口は1億2000万です。で、そのうちインターネットやってるのが1億人ぐらいいますよと。で、その中で例えば今、Facebookで2300万人。で、Twitterが2000万人弱。で、全盛期のミクシィもやっぱり2000万人。それからなかなか超えない。

それを超えるものはどういうサービスかっていうと、実はgleeとかDeNA、モバゲーね。あそこは5000万とかなんですよ。

大熊:国内でそのぐらい行ったってことですね、国内だけで。

佐々木:国内だけで。なぜ5000万人いったかというと、要するに、その2000万人じゃないところに道ができてるからと。例えば、地方だったりだとか、そういうことなんです。で、2000万人って、これすごい仮説なので、あんまり根拠ないんだけれど、都市文化に属してる層ってのが、大体そのぐらいなのかなと。

一方で全然1億2000万人にしなくても、その2000万があれば、あるいは、もうちょっと年齢層狭めて1000万なり、そこにうまくはまりこむぐらいの規模感かサービスがあれば、そこまで広く浅くしなくても、うまくはまるだろうと。

だからネイティブアドって、ブランド広告でしょう。ブランド広告だとすれば、そのブランド広告のブランドが、ターゲットとしている層にきちんとはまることのほうが大事で。だって全員、直に広めるんだったら、やっぱりテレビのほうがいいわけですよね。誰でも見てる。

ネットの情報メディアってのは、もうちょっとターゲッティングされてるので。そうすると、1億2000万が見てる誰でも見てるメディアっていうよりは、もう少し、この都市文化に希求してますよとか、あるいは、ひょっとしたら地方のメディアが山村に希求してますよみたいな、その辺の絞りが、ちょっといいんじゃないかと。

だから、どっちかというとマシュー・イングラムさんの意見に反対するわけじゃないけど、真ん中辺も僕はありなんじゃないかなと思うときがあります。

大熊:なるほど。ちょうどいい規模が存在するんじゃないかと。

佐々木:あくまで仮説なんで、よくわかんないんだけど。