アラブ諸国で初めて石油が採れたのはバーレーン

まきちゃん先生(以下、まき):ちょっとその話から離れるんですけど、1932年にバーレーンでアラブ諸国初めての石油が発見されたそうです。

やすやす君(以下、やすやす):何年?

まき:1932年です。

やすやす:石油ってそんなに最近に採れるようになったんだ?

まき:最近ですね。たぶんほかの地域では採れていたかもしれませんが、湾岸のアラブ世界で最初に石油が採れたのは、バーレーンが最初です。

やすやす:でも、アラブ世界は基本的に湾岸以外にはないからね。

まき:ということは、やっぱりつい最近だったということですよね。

やすやす:いわゆる中東という地域では初なのか。

おおたに君(以下、おおたに):たしかに昔は何もなかったというイメージではあったけど、生まれてないからな。

やすやす:ちょっと待って。おおたに君、いくらなんでもそんな歳じゃないよね?

おおたに:でも、最近石油が採れてアラブが豊かになったというのは聞いたことがあります。

やすやす:中学くらいの授業で?

おおたに:そう。

やすやす:そうか。おおたに先生の時代はまだそれほどじゃなかったのか。

おおたに:旧課程ですから(笑)。

まき:石油に関連してなんですけど、その石油が1934年に日本に初めて入ってきたそうなんです。1934年にバーレーンの石油が日本の横浜港に入ってきたらしいです。

やすやす:そうなんだ! 当時は何に使っていたんだろうね?

まき:軍事産業とか。

おおたに:戦艦の燃料じゃないですか? 違うかな?

まき:私もイメージとしてそんな感じです。重工業か何かに使われていたんですかね?

やすやす:内燃機関というのは、いつできたんだ?

おおたに:またそんな難しい話を。

やすやす:ひよこが先かたまごが先か、じゃない?

おおたに:産業革命とか? ダイムラーベンツとか?

やすやす:この話を我々がわかるのは、当分先の話だね(笑)。産業革命の国をやればわかるんだろうけど。

石油が経済の柱となり、国が発展

おおたに:でも、日清日露とか日本海海戦とかあったころでしょ?

やすやす:それはそうだよね。

おおたに:だから、軍艦はバンバン重油が欲しい頃ですよね。

やすやす:ということはどういうこと? 石油が初めて発見されたのは1934年。

おおたに:それはアラブでしょ。昔からアメリカでは出ていたじゃないですか

やすやす:アメリカが先だったということ?

おおたに:先かどうかはわからないけど、少なくとも建国の時からあったんじゃないですか?

やすやす:そうなの? 全然わからないです。

おおたに:あとで確認しますが(笑)。

やすやす:そういうことにうといので(笑)。そういうことなんだ。そうか。それはそうだよね。

おおたに:鳥のくちばしみたいなポンプで、ギッタンガッタンと掘っていたじゃないですか。

やすやす:全然わからない。灯油チュルチュルのこと?

おおたに:いや、なんでしょうね。それに似たやつ。

やすやす:灯油チュルチュルに似ているの? 余談でした。

まき:そうですね。ちょうどその時に、真珠貿易が崩壊していたらしいんですね。ずっと前から採っていたので真珠がなくなってしまったんでしょうね。それでバーレーンの石油発掘によって石油の生産が経済の柱となりました。その石油収入で教育や医療施設が劇的に改善されて、急速に近代化が進みました。

バーレーンの近代化は、石油を元にしてハリファ家のハマド・ビン・アリ首長の元で始まったそうです。サルマンという息子がいたらしいのですが、1942年にはその人が首長になってさらに近代化は加速します。そのサルマン首長は19年間在位したらしのですが、1960年くらいまで在位したらしいのですが、その間国家の生活水準は飛躍的に上がりました。

やすやす:石油のおかげもあってね。

まき:はい。その石油を使っての開発、保健衛生、教育とかにすごく力を入れて、バーレーンのそれらのレベルに匹敵する国はなくて、バーレーンは湾岸諸国の中でも主要な企業国になったそうです。すごく栄えたということでしょうね。

1971年に独立宣言

まき:その偉大なるサルマン首長は1961年に亡くなって、息子のイサ・ビン・スルマン・アル・ハリファが後を継ぎました。

1968年にイギリスが今までバーレーンを保護国というか、事実上保護国にしていたのですがスエズ以東撤退が発表されたのを契機に、イギリスの手から離れました。

やすやす:スエズ以東撤退って何?

まき:エジプトのスエズってあるじゃないですか。

やすやす:スエズ運河ね。

まき:そこの以東でけっこう保護国としている国があったと思うんですけど、たぶんそれを全部撤退するということでしょうね。

やすやす:イギリスが弱くなってきて。

まき:弱くなってきたのもあるし、あと財政的な問題もあったのかもしれないですよね。それで撤退するのをきっかけに、イギリスの手から離れました。

やすやす:このへんは、当時イギリスの保護領が多くて、たぶん無理やり寄せ集めというか、連邦にして、国として形成していたんだよね。それでイギリスの力がなくなってきて、維持できなくなってしまい、撤退せざるを得なくなったという背景だろうね。

まき:そうですね。たぶんそういう背景だろうと思います。

やすやす:元々このへんをイギリスが統治するというのは、当時でも無理があるといえばあるんだよね。

まき:そうですね。けっこう無理がある話かもしれないですね。

やすやす:「何とか系」みたいな、豪族系の支配者がいるところは遠くから操作できないと思うんだよね。

まき:情報とかも、なかなか入ってきにくいでしょうしね。とりあえず、自分のところで手いっぱいになってしまって、そのようなことが発表されたということですね。一応、1968年にイギリスの手を離れたのですが、正式に独立宣言をしたのは1971年。

やすやす:じゃあ、30年……40年前か。

まき:はい。1973年に憲法が発布されました。その時は総選挙も行われて議会が招集されたんですけど、1975年に入って急進的な議員が多くなってしまって、政府の職務が不可能であるという理由で、その首長は国民議会を解散して政党活動を禁止したそうです。

つまりは、せっかく議会を作ったのに、それをなし崩しにしてしまうということでしょうね。それでバーレーンは次第に絶対君主制の体制を強めていくことになりました。

2000年代に入り、民主化を推進中

おおたに:それからですか。それから独裁的になっていくという。

まき:はい。さきほど説明した2001年か2002年くらいまで、ずっと絶対君主制みたいな感じで進んでいったんでしょうね。

やすやす:あまり政治のことはわからないけど、議会が廃止されると立憲君主制から絶対君主制になるということなんだ。法律がなくなるということ?

おおたに:あっても守られないという。

やすやす:議会廃止ということは、そういうことだよね。

まき:はい。そういうことですね。でも、首長のイサ・ビン・スルマン・アル・ハリファは経済面に関してはすごくがんばって、その時インフラの整備をちゃんとして、経済の多様化、さっき説明した金融センターを作ったり、環境運動を進めて、石油への依存も減ったそうです。

やすやす:絶対君主制でも、君主が本当に優秀だったらいいわけだからね。

おおたに:ある時急激に発展するためには、強烈なリーダーが必要ですよね。

まき:イサ・ビン・スルマン・アル・ハリファは、国のトップとしては優秀だったんでしょうね。

やすやす:だから絶対君主制でやってきたんだけど、バーレーンが独立した時に突然立憲君主制にしようとしたんでしょ?

まき:はい。

やすやす:それも数年で廃止されちゃったんだ。

まき:廃止されちゃいました。1999年に、けっこうがんばったイサ・ビン・スルマン・アル・ハリファが亡くなって、シェイク・ハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ。おそらく現首長ですね。現首長が即位して、政治改革に着手しました。

さきほど説明したんですけど、2001年にふたたび民主化推進に向け、国民投票を実施しました。2002年には、国名をバーレーンからバーレーン王国に改称して、絶対君主制から立憲君主制に変えました。

さらに、議会の設置や普通選挙の実施、男女平等参政権や司法権の独立など、中東には珍しい体制を整え、民主化路線を進めているそうです。

ミキモトの真珠がバーレーンに影響を与えていた

まき:外交面では、多くの国と良好な関係を築いているそうですが、イラクとは湾岸戦争以来、関係は悪化しています。たぶん湾岸戦争の時にアメリカ軍に基地などを提供したんでしょうね。

湾岸戦争後、アメリカと防衛協定を結んで、現在もアメリカ軍が駐留して、南部の約25%がアメリカ軍基地となっています。

やすやす:これはアメリカ軍基地になっているんだ。ペルシア湾を封鎖するという話にも1枚かんでいるかもしれないね。

まき:はい。これはあくまでも予備知識なんですが、真珠業がすごく栄えなくなってしまったという話をしたじゃないですか。石油が発掘された時に真珠が採れなくなったかで、真珠業が衰えてしまったという話をしたのですが、実はその原因の一つに、日本のミキモト真珠の創業者の方が真珠の養殖法を発見して、真珠が安く採れるようになったために、中東の真珠産業が栄えなくなってしまったという話もあるんですね。

やすやす:そういうことね。それまで真珠は天然ものしかなかったから、そこで採るしかなかったんだけど、ミキモトさんが養殖できるようにしちゃったんだ。

おおたに:御木本幸吉さんですね。

まき:はい。それで安価な真珠ができてしまって、元々あった中東の真珠が落ちてしまったというお話があります。ということで、以上で講義は終了です。

バーレーングランプリは暑くて大変?

おおたに:バーレーンといえば、ワールドカップの予選でよく出てきますよね。

まき:そうなんですよ! サッカーが有名です。

おおたに:小さいのにすごいね。

まき:国民の中で一番人気なスポーツはサッカーみたいですよ。

やすやす:いつからそうなったのかね。サッカーというスポーツが入ってきてね。

まき:いつでしょうね。そこまではちょっとわかりませんが、「サッカーはすごく人気ですよ」という話は聞いたことがあります。

やすやす:日本との一番の接点は、やっぱりサッカーだね。目にするのはね。

まき:そうですね。それ以外にも調べてみたら、真珠とか石油とか、意外とそういったつながりもあったのですが。

おおたに:私はF1が好きなので、バーレーングランプリもありますよ。F1グランプリを開催してるんです。

やすやす:バーレーンで走るんだ。僕、F1は一切見たことがないのですが、そんなに暑い国でやってもいいの?

おおたに:「タイヤ大丈夫かね? 溶けないかね?」という感じですよね(笑)。

やすやす:「オーバーヒートしないの?」とか思ったりするけど。

おおたに:機械はなんとかなるでしょ。人間はきつそうだよね。F1カーにはエアコンがないしね。

やすやす:あれはなに? 締めきっているの? ちょっとは窓を開けていない?

おおたに:屋根ないですよ。私の好きなオープンカーです。

やすやす:F1ってオープンカーなの?

おおたに:雨が降っても屋根がない。

やすやす:それはけっこう過酷ね。

おおたに:あのスピードで走ったら、雨は中には降り込まないでしょ。真横に飛ぶから。

やすやす:屋根がないほうが空気抵抗が少ないんだ。

おおたに:ほとんど開口部がないし。

やすやす:開口部って何?

おおたに:開いているところがないし、人間一人が入れるところしか開いていないでしょ。頭もヘルメットもほとんど埋まって、ちょこっと突き出しているくらいなんですよ。

やすやす:そうなんだ。空気抵抗としては、屋根をつけるまでもないんだ。

おおたに:そうですね。

やすやす:つけたほうがダウンフォースが強くなるのかなと思ったけど、そういうわけじゃないんだね。このレースは過酷だね。

おおたに:過酷ですね。

まき:暑さにも耐えなくちゃいけない。

F1のルールはけっこう変わっている

おおたに:そうですね。それにF1はドライバーが交代しないしね。

まき:大変!

おおたに:ラリーとか、ルマン24とか交代するじゃないですか。F1は最初から最後まで1人ですからね。

やすやす:そうなんだ。ピットインしても交代はしないんだ。

おおたに:ガソリンも最近は給油しないしね。

やすやす:なんで給油しないの?

おおたに:そういうルールになったんですよ。タイヤ交換だけ。

やすやす:ピットインする理由は?

おおたに:うん。しかも、2種類のタイヤのそれぞれを必ず1回ずつ変えなくてはいけないというルールになっています。

やすやす:ピットインの最低回数が決まっているということ?

おおたに:回数は決まってないんですけど、必ず2種類のタイヤを1回ずつは使わなくてはいけないというルールです。

やすやす:「1回は入りなさい」ということだよね。

おおたに:そうですね。

やすやす:どんな種類のタイヤがあるんですか?

おおたに:毎回コースによって2種類のタイヤが供給されるんです。全部で4種類あって、ノーマルとハードとソフトとスーパーソフトがあって、地域によって2種類提供される。たぶんバーレーンだとノーマルとハードとか、硬めのやつ。温かいと溶けちゃうから。

やすやす:俺、F1のゲームはやったことがあるんですよ。けっこうやるのね。でも、F1のタイヤって、それは運転者の技術とか戦略によって変わってくるわけでしょ?

おおたに:だけど、開催者のほうで決められるんですよ。このサーキットはこのタイヤとこのタイヤというふうに指定されます。

やすやす:そうなんですね。昔、そういうのはなかったですよね。

おおたに:それは一昨年からのルール改正ですね。

やすやす:だよね。そんなゲーム、やったことないもんね。

おおたに:レギュレーションがくるくる変わるんですよ。

やすやす:じゃあこれがハードで、これがソフトでという境目がしっかりしているということだ。

おおたに:そうですね。それぞれタイヤの横に色がついているんですよ。緑、黄色、赤とか白。

やすやす:それはパッと見てソフトさがわかるということ?

おおたに:走っているのを見ても、「あ、今あいつはあのタイヤをはいている」というのがわかるんですよ。

やすやす:じゃあ相手のタイヤを見て、今抜きに行くかどうかの戦略も変わってくるということだ。

おおたに:まあ、抜く時は見る必要はないけど。チームとしてはね。

やすやす:チームとして。そうか。同じチームの人が2台とかで走るんだよね。

おおたに:あとほかのチームが何を使っているのかも見えますから、ピットの指示で「お前も替えろ」とか。というのがバーレーンで見えるんだよな……。行ってみてもいいな……。

やすやす:何の話をしているんですかね(笑)

バーレーンのGDPは一人あたり3万ドル以上

おおたに:さっきの世界遺産の要塞とF1とひっかけて行くのがいいかなという。遠足に。

まき:遠足! いいですね(笑)。

おおたに:エリトリアよりはちょっと危険無さそう。

やすやす:エリトリアはやめとこう一応、バーレーンは経済都市として発展しているんだよね。

まき:発展していますね(笑)

やすやす:じゃあ、バーレーンに行きましょうか。

まき:赤道ギニアは?

やすやす:赤道ギニアはいやだな。

まき:バーレーンでゆっくり過ごしたいですね。バカンス的な感じで。

やすやす:やっぱりバーレーンはGDPとか高いんですか?

まき:高いと思いますよ。失業率は15%と高いんですけど、他の湾岸諸国に比べるとGDPはけっこう高いみたいですよ。

おおたに:1万ドルくらいいっているんですかね?

まき:GDPは合計で、バーレーンの通貨で表記されているのでドルではわからないのですが、79億バーレーンディナールらしいです。自国通貨表示で。あ、ありました。ドル表示だと212億ドルで、一人あたりは34,605ドルです。

おおたに:高いじゃん! それは高いじゃん。

まき:めちゃめちゃ高いですね。

やすやす:それは行きましょう!

まき:はい、じゃあやすやす君を遠足係として任命します(笑)。

おおたに:何の係でも一人しかやる人いないから(笑)。

(授業終了のチャイムの音)