シェアリングエコノミーの未来とは

琴坂将広氏(以下、琴坂):これ、未来ってどうなるんでしょうか? 今回のトピックは「シェアリングエコノミーの今」なんですけれども、みなさんはいわゆる未来をつくっていらっしゃるお三方ですので、シェアリングエコノミーがさらに進んでいったときにどんな世界があるのか、みたいなところをぜひお聞きできればなと思うんですが。これはやはり原田さんからお聞きしたいんですが、どんな未来像があるんでしょうか?

原田明典氏(以下、原田):私はもともと20年前にインターネットに興味を持って、最初はただ単におもしろいなと思っていたところから、だんだん本当にすごいなぁと思ってきた。本質的なところでいうと、地球上にもう1個新しい大陸が出てきたような。

アメリカ大陸が発見されてから、その後その大陸(アメリカ大陸)が一番発展を遂げたと思うんですけども、「地球上にもう新大陸はないよね」と言っていたところに突如サイバーな大陸、バーチャルな大陸が現れた。そこがものすごいなぁと思って(インターネットサービス)に没頭したんですけれども。

この15年、20年というのは、そのサイバー空間と、このリアルな地球がいい距離感を保ったままお互い発展をしてきたと思います。リアルのほうはリアルの歴史の時間軸で発展して、サイバーのほうは新大陸ですから、ブワーッとゴールドラッシュもあれば、いろいろなことが一気に発展して。

私は前職ではmixiっていうSNSをやってたんですけれども、SNSなんかはサイバー空間ですし、モバゲーとかああいったものもサイバー空間ですよね。そういうサイバー空間がどんどんどんどん発展していったのは、リアルとはまた別で、切り離されてたからこそだとは思うんです。

サイバーの空間とリアルな世界の距離が縮まってきた

(前置きが長くなりましたが)私はこのシェアリングエコノミーっていうのが入ってきて、何なんだろうなと、どんどんどんどん世界はサイバー化すると思ったんですけれども、サイバー化していっているんじゃなくて、サイバーの空間はサイバーの空間で発展していた。

一方で、リアルはリアルでちゃんと自分たちの時間で発展してたんですよね。で、その距離がどんどん縮まってきていて、今ちょっと融合が始まってきたなと。

この20年で広がったサイバーの空間と、それからいろんな歴史を持つこのリアルな世界というのがちょっと交わり始めたねというときに、これまでインターネットビジネスに関してそこまで「法整備」とか「法規制」っていう話題が出なかったのが、シェアリングエコノミーとなるとやたら急にその話題が増えたというあたりが、その1つのエビデンスだと私は思っていまして。

リアルの人類が作ってきた今までの世界と、20年間 IT業界の人(とユーザー)が中心に作ってきたインターネットの世界がうまく今からフュージョンしていって、新しい地球ができていくというのがここからの20年なんだなと思うと、すごく楽しみですよね。

もちろん大変なこともいっぱいイメージできるし、いろいろ問題はあるので、我々は真摯に向き合わないといけないんですけれども、ただ人類はこれまでも必ず乗り越えてこれたので、そういう意味では新しい世界が来るということそのものにはやっぱりワクワクするなと思っていますね。

日本にシェアの文化が根付くには「慣れ」が必要

琴坂:なるほど。別体だったインターネット上の空間というものが、現実世界により深く入り込んできたと。それによって生まれてきた新しい経済なんじゃないかということですね。どうですか? この先の事業の中でどういった未来像を持たれているんでしょうか?

金谷元気氏(以下、金谷):アメリカでは確実にシェアリングエコノミーはどんどん広がっていくと思うんですけど、日本については、日本人って世界で唯一家のことを「ウチ」って言うんです。「Inside」ですね。アメリカだとシェアの文化が根付いているので、大学生とかはほとんどの人がシェアハウスに住んでるんですが、日本の大学生はほとんど一人暮らしをしている。

シェアの文化が全然ないなかでいきなり「ウチ」に入るのは難しいので、まずは家の外からということで、駐車場とか、家ではなく会社の会議室とか、そういったところをどんどん使っていってシェアに慣れていってもらって、結果「ウチ」の中に入っていければ、シェアが本当に進化して当たり前のように使われるようになると思いますね。

琴坂:やっぱり駐車場から入っていって、玄関先から入って、だんだん居間に入っていくような感じでしょうか?

金谷:そうですね。akippaとかスペースマーケットさんはかなり重要なカギを握っていると思うので、そこは責任持ってやっていきたいと思ってます。

実家のスペースを会議用に貸し出している

琴坂:重松さんはどうですか?

重松大輔氏(以下、重松):最近のおもしろい話でいうと、実はうちの実家もスペースマーケットに登録をして貸し出しをしてるんです。今週の日曜日も、今回登壇された会社の経営会議みたいなものが私の実家の千葉の富津で開かれます。富津は「第2の夕張」と言われていて、財政がめちゃくちゃなところなんですけども、わざわざそこまで行って、半日ぐらい会議をすると。

実家は光ファイバーを入れていて、ホワイトボードとか会議に必要な物はいろいろと準備しているんですけど、うちの母親が対応するんですよ。うちの母親は結構おせっかいで、お茶を出したりお菓子を出したり、焼きそばを作ったり。終わりになったらビールとか出して、もう「泊まってく?」みたいな感じらしいんですよ。

実はもう何社かそこを使ってやってるんですけども、すごく評判がいいんですよ。「重松さんのお母さんおもしろいね!」と言われて。場所もすごくいいところなんですよね。それって今までなかった体験なんですよ。旅館で泊まってとかそういうのでもないし、個人の家で。でも見知らぬ人じゃないんですよね、ソーシャルでつながっていたりするわけですから。

それもそうですし、うちの母親はもう引退していて60いくつですけど、空きスペースと空き時間を楽しんで活用して、月に3万5千円ぐらいお小遣いを得るわけですよね。お互いに良くて、金銭も得られる、これは本当におもしろい経済だなと思っていまして。

そういうスペースが今どんどん出てきていますけど、これはたぶんやっぱり体験した人にしかわからない。この体験ってすごく原点的なものだと思うんですよね。醤油の貸し借りだったり、今までも人間がやってたようなことに戻ってきているだけなので、これがどんどん広がっていって、一度体験をするともう戻れないみたいな感じになってくるんじゃないですかね。

シェアリングエコノミーで広がる近所づきあい

琴坂:非常に興味深いと思います。ネットがない時代、村社会だったときに10~20人ぐらいのコミュニティでやっていたものが、より大きなところで行われているみたいなイメージでしょうか?

重松:はい、まさに。

琴坂:情報技術を使ってつながる人がバーチャルという形に変わってきたと。

金谷:そうなんです。ですので、実はすごく温かいものなんですよね。例えば家の前の駐車場を貸してくださっている80歳ぐらいの方がいまして、その方は息子さんがインターネットで登録されたんですけど、息子さんは北海道に住んでいて東京の実家の駐車場を貸しているんですけど、なかなか会いにはいけないそうなんです。

ただその人は駐車場に予約が入って挨拶をしてくれる人がいるみたいで、その人たちと話をするのが楽しくて、お金は別にどっちでもいいよというようなことを言っているんですよ。

琴坂:つながりを作っているということですよね。

金谷:そうです。まさしく先ほど言われた近所づきあいというものの「近所」というのが一気に広がったかなぁと。

重松:レビューで事前にお互いにどういう人かわかっているので、なおさらおもしろいつながりができたりすることもあります。

時代の流れは専有から共有へ

琴坂:せっかくですので、相互に聞いておきたいこととか、質問しておきたいことがあれば聞いていただきたいと思うんですが。

金谷:原田さんにぜひ聞いてみたいんですが、これから脅威となるような、シェアリングエコノミーの次のものは出てきそうですか?

重松:ネクストシェアリングエコノミー。

原田:そうですね、みなさんやっぱり事業をやられているので「脅威」という意識はあるのかもしれませんけども、やっぱり地球上のリソースは限られているので、人類が専有とか所有の幻想を捨てて、共有というものを受け入れて「専有よりも共有したほうが実は楽しいね」とか「豊かだね」っていうことを知るっていうステージに上がっていかないといけない。

BRICsの人たちが全員リソースを(従来みたいに)使ってしまうと地球のリソースは全然足りないということになるので、やはり必然的に、選ぶ選ばざるに限らず、みなさんシェアリングのほうに向かうと思うんですよね。

(だから)脅威というのはなかなかないような気がしますが、お二人はやはりフロンティアなので、当然これから待ち受けているいろんな課題を先頭で受け止めていかないといけないですよね。もしかしたらシェアリングエコノミーは世の中にはしっかり普及したけれども、お二人の会社は何かで負けてしまったっていうことはあるかもしれない。

一同:(笑)。

原田:そういうことはあると思うんです。それを脅威と捉えるか、それとも「いや、切り拓いたのはあの2人だよね」というように歴史に名を刻むかということは……。

琴坂:刻んでください(笑)。

金谷:生き残ります(笑)。

原田:短期的に見れば大資本が「やはりシェアリングだ」と大きく舵を切ってくるということは容易に考えられると思いますので、それによって社会全体がそちらに行くっていうのはあるわけです。それでも長期で見れば、やはり日本でそこを切り拓いたのは彼らだよねということで再評価されることもあると思いますので……。って、負けるって言ってるわけじゃないんですけど(笑)。

金谷:これからです!

一同:(笑)。

空きスペースと成功事例を増やすことに注力する

琴坂:逆に原田さんからご質問があれば、先頭を走るこの2つの会社に対してこんなことを言っておきたいとか、こういうことを聞いておきたいとか、こうするべきだというのがあればお願いします。

原田:聞いてみたいとすると、なるべく今の領域、専門性の部分をずっと掘り下げていかれたいっていうお考えなのか、それとも横展開というか、業容拡大をされたいというお考えなのか。そのあたりを、縦に行くにしろ横に行くにしろ、どちらをどのぐらいのバランスで重視されているかっていうのを聞いてみたいですね。

重松:今はどれだけべニューやスペースを集められるかっていうところをみんなで必死になってやっていまして、例えばお店に入って品物が全然なかったら「この店イケてないな」って帰っちゃうじゃないですか。品揃えっていうのはやっぱり大前提としてあると思っていますので、どれだけバリエーションを増やせるかというところに1つ注力しています。

とは言え「私の家ちょっと空いてる」「こういう空いてるスペースがあるんです」、でもどうやって活用していいかわからないという課題に対して、導入事例というか成功事例をどれだけつくれるかに今注力していますね。

それこそ私の家を貸し出して、ウチの母親をちょっと変革したり、あとはウチのオフィスの7~8名入れる会議室も貸し出しをして、月4〜5万ぐらい稼いでるんですよ。

あとはお寺でイベントというのも、実は何件か入っているんですけど、そこでの体験をわかりやすく写真で撮って、映像でインタビューも撮って、オウンドメディアで発信したりということで、この啓蒙活動みたいなことををここ1年ぐらいやっていこうと思っています。

いずれ、ケータリングサービスの話だとか、イベントの保険の話とかいろいろやりたいことはあるんですが、一旦はべニューを押さえ切るところと、事例を作って世の中を啓蒙するというところをやりきってから、その次の展開はあるのかなと思っています。

1つのことにフォーカスできるリーダーは強い

金谷:akippaの場合はまず駐車場でと思っていて、横展開はそんなに考えていないです。

重松:駐車場はいっぱいありますもんね。マーケットがでかいから。

金谷:そこをとにかく掘っていきたいんですけども、昨日のDeNAさんのお話じゃないですけども、将来的にはやっぱり次のことを考えていかなければいけないというフェーズが出てくるかもしれないですよね。

akippaはテクノロジーはそんなに強くなくて、やっぱり営業に強みがあるので、そういったときには営業で切り拓いていけるようなところにはなってくると思うんですけども。今は全然横展開は考えてはいません。

原田:私はこういう新しいものを社会に広めるときのリーダーって「フォーカス」している人だと思うんですね。やっぱりお二人のお話を聞いていても、わざと横展開に魅力あるように私がネタ振りしても、基本的にそれをマイルドに否定しながら縦方向に行くと。これはやっぱり強いなと思いますね。私のようにシェアリングエコノミーをいっぱい知ってるというのはろくなことがなくてですね……。

一同:(笑)。

琴坂:おそらくこの特別番組を見ている方々も、このフォーカスしている会社にものすごく興味がある人ばっかりだと思うんですが、ちょっともうそろそろ時間になってしまいますので、興味があるみなさん方に熱いメッセージをいただいて締めとしたいと思います。原田さんからまず一言いただけますでしょうか。

チャンスの大きさはインターネット勃興期に匹敵する

原田:シェアリングエコノミーというのはアーキテクチュアなので、その文脈で何か事業を考えるというのも1つの思考法ですし、全然違うところから考えてきて、結果的に第三者が見てシェアリングエコノミーだと言う場合もあると思います。

なのであまり枠にとらわれる必要はないと思うんですけども、ただ今のチャンスはインターネットの勃興期、スマートフォンの勃興期に匹敵するぐらい大きいと思いますので、何か最近成熟してきたなって思う経営者の方がいらっしゃったら、ちょっと趣向を変えて「チャンスがあるんじゃないか?」と思っていただけると非常にいいんじゃないかなと思います。

琴坂:ありがとうございます。じゃあ金谷さんお願いいたします。

金谷:今シェアリングエコノミーという領域でやっている中で、やはりどんなところに行っても「これもシェアできるな、これもシェアできるな」っていうところがスペース以外にもあるんですね。人もそうですし、ものもそうですし。

例えばメルカリとかだと完全にいらないものを売るっていう感じなんですけど、レンタルでもいいですし、何か本当は「これがこうなれば」って思うことはたくさんあるので、普段そう思ったときに、これやってみようと……。まぁ「akippaは別にテクノロジー強くないのにあそこまで一応行ってるな」みたいな感じで、勇気を持っていただけたら(笑)。

一同:(笑)。

琴坂:ありがとうございます。じゃあ最後に重松さんお願いします。

重松:スペースマーケットのビジネスを考えて、一番何がおもしろいかっていうと、例えば起業するだとか、何かイベントをやるだとか、合コンでもいいですよ、合コンやるとか飲み会やるとか、何か人が仕掛けようとするときに、必ず場所って必要になるんですよね。そこの場所探しを簡単にすることでチャレンジする量が増えるなって。

我々の理念はチャレンジする人を増やすということで、本当にいろんなユニークなスペース、みなさんがお持ちのスペースを含めて、そこの貸し借りを簡単にすることで、世界中のチャレンジの総量を増やして楽しい世の中にしていきたいなと思ってます。

この志に共感していただけるそこのあなた、スペースマーケットにお声がけいただければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

琴坂:ありがとうございました。本日は「シェアリングエコノミーの今」と題してお送りいたしました。長時間ご清聴ありがとうございました。お三方、ありがとうございました。

金谷・重松・原田:ありがとうございました。