昆虫を通して自然と会話をしている

小檜山賢二氏:こんにちは、小檜山です。虫と付き合い出してから、もう50年以上になります。まあ、歳がそれでわかるんですけれども(笑)。

虫の生態とか場所、それから季節と、あらゆる情報を駆使して目的の昆虫を探します。それは、昆虫を通して自然と会話をしている感じになるんです。こういう経験が、マイクロプレゼンスのコンセプトを作り出しました。

マイクロプレゼンスというのは、我々のそばにたくさんいる小さなものです。ただ、あまりにも小さい。いることはわかるんだけれども、小さくて本当のことがわからないという、そういうものです。小さなアリを考えてもらえば、わかると思うんです。それをビジュアル化して、みなさんに「本当はこういうものだよ」ということを見せる活動をしています。

我々、人類は自分たちの基準で世界を見ています。考えてみると、地球上にはものすごいたくさんの生物が住んでいる。彼らは彼らたちの基準で世界を見ていると思います。

ということは、地球上には無数の世界があって、人類はその1つを認識しているに過ぎないのではないかと考えることができます。

今の時代は人工の領域が広がってしまって自然との間に境界ができていると思います。ここで、Think like a child。子供のように考えてみましょう。子供というのは、人工と自然との間に境界を作りません。区別をしません。

古来、八百万の神が住んでいる日本では、全てのものに魂があって、対応している感覚があります。とてもおもしろいことに、現代の日本でもたいへん多くの人がこの感覚をどこかで共有していると思います。つまり、人間も自然の一員なので、そこに境界を作る必要がないんです。

こういう日本古来の感覚をもう一度呼び起こせば,人間と自然との関係も新たな道がひらけるのではないかと思っています。我々のプロジェクトがその1つになれば幸いだと思っています。それでは、我々のプロジェクトをもう少し詳しく説明していきます。

独自の技術で撮影した、小さな昆虫の世界

これは、小さな虫を撮影したものです。こういうものですと、見ているように全体にピントが合っていません。そのために、ピントを変えながら100~200枚の写真を撮ります。それをコンピューター上で焦点合成をします。

そうすると、全体にピントが合ってきます。いま、そういう良いソフトがあるのでだいぶ楽になりました。ただ、それだけでは不十分なので、最終的には手作業でコンピューターと格闘しながら作品を作っています。

これは私のラボです。小さな昆虫は顕微鏡で、少し大きくなったのはマクロレンズで撮影します。全て自動化されてまして、虫とカメラの間隔を自動的に正確に制御することができます。この技術を応用して、3Dの映像も作っています。

それでは、我々の作品を見ていただきます。まず、このキャンパス(慶應大学湘南藤沢キャンパス)にいる昆虫です。この一番上にある、黒いのは何でしょう? 

これは、目なんです(笑)。とてもおもしろくて、角の先に目があるみたいなんですけども、この辺にたくさんいるんですね。

おもしろい格好なんでウシヅラ、と呼ばれています。エゴの実に住みます。こんな小さな虫です。

秋になると、道路にクヌギの枝がたくさんと落ちていることがあると思うんですけども、これは、ハイイロチョッキリっていうんです。

これがクヌギのドングリに卵を産んで、卵を産んだドングリを枝につけたまま、枝から切り落とすです。それで、チョッキリって名前が付いています。ちょうど9月頃に見ると思います。

これはシギゾウムシ。鳥のシギに似た口をしているので、シギゾウムシって名前が付いてます。

小さい昆虫ですけど、とても綺麗です。これはエノキにいます。こういう小さいものってなかなか見つからないんですけども、よく見るととてもきれいです。

次はカオジロヒゲナガゾウムシといいます。この連中は、どれもおもしろい顔をしてるんですね。これ見るたびに、「誰かに似てるな」って思いません?

(会場笑)

私は好きなんです。これは枯れ木にいるんです。ゲストハウスの裏側にいたり。

さて、これは何でしょう? 何だと思いますか?

これは、虫の糞です。虫にとって、鳥が一番の天敵なんですね。それに、食べられないために虫に擬態しているんだといわれています。本当かどうかは知りません。で、非常に小さいものなんですけども。これが、ムシクソハムシと、ものすごい名前がついています(笑)。

このように、とても多様性のある昆虫がこの辺に住んでいることを感じて欲しいと思います。もうひとつ、かれらは一億年、命をつないできたものです。それらが今、我々と一緒に同じ所で生活しているということを感じて欲しいと思います。

次は外国の虫です。首が長いんですね。これは、首が長いのはオスだけなんです。メスを探すために首が長くなったと言われています。ちょっと、本当かどうかはわからないですけど(笑)。

(会場笑)

すごい小さいもので、これはフィリピンにいます。

サイチョウっているじゃないですか。あれが好きで、サイチョウモドキって名前を僕がつけました。ヒゲが生えているんですけども、わりあい大きなゾウムシで、とても頑丈な体をしています。

次は、ホウセキって名前が付いています。

こういうのは、蝶だと鱗粉と言いますよね。それと同じように、昆虫の場合は鱗片と言います。それが宝石のように輝いている。こういうふうに光っています。これは熱帯雨林とか暑い、熱帯地方の方がこういう派手なのが多いです。

これは鱗片が毛になった。同じ構造のものなんですけども、どういう格好になっているのかよくわからない。

実はこれ、マダガスカルなんです。マダガスカルっていろんな生き物がいるので有名ですけども、本当に昆虫もこんなのがたくさんいますね。

これはわりと大きいです。さて、これは私がラオスに行ったときに見つけました。トゲがすごいんです。

多分これは、鳥も喉につっかえそうなんで食べないと思うんですけど。日本にもこの種類はいるんですけど、これほどトゲが長いのはおりません。

人間の社会と自然の社会に境界を作らないでほしい

では、次に3Dの作品をご覧にいれます。

先程の写真の延長です。これは、メンガタクワガタといってアフリカにいるものです。まず、映像から3Dのモデルを作ります。この動きはビデオで撮影したものをマネした簡単なモーションキャプチャーで作っています。

次はニューギニアにいるカミキリムシです。昆虫って4枚羽がありますよね。そのうち、上の2枚を鎧のようにするので、下だけで飛ぶようになります。ぎこちないんですけども、足が邪魔になるのでこうやってバンザイみたいにして、なかなか可愛いと思いません(笑)?

(会場笑)

最後に、最近CTスキャンでもやっています。

これはさっきここに出てきた、ヒゲナガゾウムシの幼虫です。

ここに卵を産むんです。こういうふうに、これが幼虫です。7月頃になると、親になるためにサナギになります。8月に入るともうエゴの実の中で親になっています。

で、8月下旬になると外に出てきて親になるんですね。次の年、メスがエゴの実に卵を産んで、次の年にまた同じのが出てくる。そういうふうに子孫を残していく。

最後にもう一度言います。子供のように、人間の社会と自然の社会に境界を作らないで、自然と付き合ってみてください。昆虫をちゃんと見て欲しい。そうすれば、人間と自然の関係に新しい考え方やアイディアが浮かぶと思います。

ありがとうございました。