新たな事業領域に参入する意思決定

岡島悦子氏(以下、岡島):一方で、これは立ち入った話ですけど、ヘルスケアのところは(取締役の)南場(智子)さんがご家族の原体験みたいなものがおありで入っていかれたということだと思うんですけども。

その領域を決めるときには、誰かそういう強い思いを持った人が「ここは構造的におかしいぞ。うちでやりたい!」と言って(意見が)上がってくるものなんですか?

守安功氏(以下、守安):それは南場なのか、誰なのかにもよりますけど、やっぱり推進しようという人がいないとなかなか始まらないので、それが自発的に上がってくるのか、僕が担当を決めて、領域を考えてくれと依頼するのか。

岡島:それもあるんですね、なるほど。

守安:それもあるんです。そういう中において、いろんな領域が上がってきて、その中で産業の大きさとか、じゃあわれわれが何かできそうなのかとか。

あとは事業の種がないと、いくら「この産業は大きくて、変わっていきそうだね」と言っても具体的なアイデアがないと入れないので、そういう意味ではどういう産業がいいのかっていうのと、入るとしたらどういう事業からいこうというのが出てきて、それが経営会議で出てきて、揉んでいくという感じですよね。

岡島:そこをすごく伺いたいなと思っていて、おそらくDeNAさん、いろいろとモテモテじゃないかと思ってるんですよ。つまり、大企業さんがベンチャー企業の中では比較的組みやすい、信頼感を醸成しやすい。だから住商さんとか任天堂さんとか組んでいくという話があって。

一方では、中にいる方たちも非常に優秀で、実装する力もありそうっていう話でいうと、インバウンドで入ってくるものも、「こういうのやりたい」と内部から上がってくるものも、いろいろとあるんじゃないかと思うんですけども、その選別はどんな感じでやっていらっしゃるのか、可能な範囲で教えてください。

年内に10個のキュレーションメディアを展開する

守安:今おっしゃったように、今回われわれいろんな産業に入っていくにあたって、共創というテーマ。

岡島:Co-Creationというか。

守安:はい、それは既存の大企業の場合もあれば、ベンチャー企業の場合もあるんですけども、やっぱりわれわれの持っていない強みを持っていらっしゃる方と、われわれの強みを合わせてやっていこうということを中心に考えていまして、その中で、これまでわれわれいろんなパートナーさんと事業をやってきたので。

岡島:すごいパートナリング上手ですよね。

守安:結果的にそうですね、そういうふうにして事業を展開することが多いですよね。

岡島:意思決定はどういうふうに?

守安:いろんな種がありますと。社内からも上がってくるし、社外からいろんなお声掛けをいただけます。その中で、われわれゲームに次ぐ柱をつくろうと思ってやっているので、それなりの規模が。

岡島:インパクトということですかね。

守安:はい、大きなインパクトが目指せる領域なのか、その事業単体というよりは全体観も含めて、重視しますよね。そうすると、1つのアイデアというよりは、それが拡がっていくとどうなるんだろうと。

岡島:そうすると、iemoさんとかペロリさんとかを買われて、あれも特化したメディアというだけじゃなくて、横展開が見込めそうかどうかというところもあるんですかね。

守安:もともとiemoを買収するときに、これ僕が推進したものなんですけども、非常な勢いで伸びてる。いろいろ話を聞いていると、これは同じようなノウハウと横展開ができそうだ、と。

岡島:インテリア、ファッション……と。

守安:食とか。

岡島:まだまだあるんですか?

守安:今一応ね、女性ファッションでしょ、リフォーム……。

岡島:言えないのとか言ってくれるとうれしいですけど(笑)。

守安:いや、言えないのは言わないんだけど(笑)。あと6個くらいあって。

岡島:男性ファッションとかあります?

守安:男性ファッション、ありますよ。あと、食と旅と子育てみたいな。子育てはこの間始まったのかな。今6個やっていて、年末までに10個にするというので。

岡島:あと4つ。

守安:あと4つ以上ですね。

岡島:なるほど。逆に言うと、社内でそういうのやりたいですというのも、挙がってくるかもしれないですね。

守安:社内公募みたいなものをやっていますので、そこで手が上がって、やりたいというのがどんどん上がってきますし、あるいはベンチャー、スタートアップの方で「自分たちでやってるんだけど、一緒にやりたい」というお声掛けもいただくので、内部からつくってくものやインバウンドも含めて、ガーッとつくっていく。

大企業がDeNAと組むことのメリット

岡島:社内での意思決定は、今おっしゃったインパクトであるとか、いろんな観点で順位付けをされて、きっと全部おやりになれるわけじゃないので、それからやる。一方では、外から入ってくるものもたくさん来てるというお話なんですけども、外からそれだけいろんなお話が来る理由はなんですか?

守安:いくつかあると思うんですけども、特に既存の大企業はそうだと思うんですけども、インターネットに対応しなければあかんと思ったときに、なかなか内部でそういう人材がいない。

岡島:しかもどこからやっていいかよくわからない。

守安:これ、われわれインターネットの会社で、そういうコミュニティにいるとどこでもそんなに難しくなくできるんじゃないかと思うんだけども、これがやっぱり相当難しいとおっしゃる会社があるので、今後の時代を考えるとインターネット化していかないといけないんだけども。自分たちじゃできないよね、餅は餅屋に任せようというところが増えてるんですよね。

それだけならいっぱいあるじゃん、って感じなんですけども、特に任天堂さんや住商さんの場合はそうですけども、ある程度の規模のある会社だと、自分たちの基幹になるサービスだと、ちっちゃいところだと怖いですよね。ある程度体力のある所じゃないと、こわい。そうなると、名前を出すのはあれですけど、たくさんあるわけじゃない。

あと、もう1個の軸が、例えばヤフーさんとか楽天さんになると思うんですけども、当然そういうノウハウもあるし、人もいっぱいいますよね。でも話を持っていったときに、何かしようとなると、おそらく「楽天○○」とか「Yahoo!○○」とかになる。

岡島:ブランディング。

守安:はい。じゃあ、ブランド名称どうするんだとか、会員の帰属みたいな感じの話をすると、オプションの組み方は結構限られてくるんじゃないかなと。それに比べたら、われわれ、圧倒的な強いサービスがない裏返しでもあるんですけども、いろんな柔軟な組み方ができる。

岡島:黒子側でもいいですよと。

守安:岩田(岩田聡氏:任天堂元代表取締役社長)さんにも黒子って。

岡島:黒子って言ってないっていう(笑)。

守安:黒子って言ったか覚えてないんですけど、そういうニュアンスですよね。

岡島:一緒にやるパートナーとしては、自分たちが全面に出なくてもいいやっていうことで。そうすると、業界を変えていけるパートナーとしてやっていきたいと。

守安:そうすると、限られている。その上で、いろんな業態の業種の方とか、いろんな規模の会社の方とか、ある程度大人の……といえばあれですけど、いろんなプロトコルで会話ができて、っていうのを踏まえると、あんまりないんじゃないかなって。結構ユニークな立ち位置にいるなっていうのを最近思ってですね。

岡島:いいですね。しかも、これをやっていくと「あ、これやってるからDeNAさんと組むと大企業でも大丈夫だ」っていう前例にもなっていくので、ほかの方たちも組みやすくなっていくっていう。

守安:はい、安心していただける。

エンジニアのリソース配分

岡島:なるほどね、いいですね。一方で、実装していくときにはエンジニアもいっぱいついてらしてということで、DeNAさん本当にエンジニアが豊富というか、タレントプールになっていらっしゃると思うんですけども。

よくある話っていうのは、ゲームのところにもすごくいいエンジニアがいる、でも新規事業でもこのエースを使いたいと取り合いになる。こっちは新しいところだからおもしろそうだけど、まだ全然稼いでない。こういうリソース配分っていうのはどうされてるんですかね?

守安:最終的にはバランスを見ながら決めていくということにはなるんですけども、これも企業の文化で、エースから抜いていくみたいなことをやるんですよね。

岡島:なるほどね。

守安:それによって、その下にいて、本来エースがいると育たない人間が持ち上がってくるというのを経験しているので、そういう意味でそれをみんな文化としてわかっているので、「何か新しいことをやるよ」というと、「じゃあ、出そうか」とか。

あとは社員のキャリアを考えた場合に、ウィルを早くして、「こういうのをやってみたい」という人がいればそこにあてようかとか、比較的そこはうまく進んでるかなと思います。

岡島:いいですね。2種類の会社さんがあって、コロプラさんなんかも「できる奴はどんどん動かしていく」って感じですけど、いくつかのベンチャーさんはそういう話を聞いて、エースを抜くとここ(抜かれたチーム)がずぶずぶになっていって、今までの収益の柱が落ちていく、みたいな感じもあるので。その意味では次の層、その次の層もタレントプールがいいんですね、DeNAさんは。

守安:うちも業績は落ちてるんでアレですけど、それでもやっぱりその下は頑張るんでね、何とかしていこうという文化でずっとやっているので、みんながマイナスになるというよりは、それで何とか頑張っていこうと。

岡島:しかも、サービスをつくるときにも、エンジニアわりとカツカツにして、飢餓状態にするというか、あまりたくさんつけないんですよね。

守安:そうですね。特に新しいものの立ち上げは、大企業さんでやるときは、ゼロベースでやるときよりちゃんとしないといけないこともあるんですけども。

とはいえ、いきなり何十人もかけて、SI(システムインテグレーション)っぽく要件がちがちに固めて、つくるかっていうとやっぱりそうじゃないので。そうなると少人数で、エンジニアがサービスまで考えてつくっていこうよと。

岡島:サービスも一貫してつくる。大体、エンジニアの方と企画の方が?

守安:エンジニアと企画、当然セットになるんですけど、僕はやっぱりエンジニアは言われたものをつくるんじゃなくて、どういうサービスにすべきかとか自分で考えてくれと。エンジニアが考えたほうが早いんですよね。

岡島:それは守安さんの経験からよくわかってるっていう。

守安:はい。

岡島:説得力ありますよね。

守安:考えて物つくって、自分でやったほうが早いんですよ。ある一定の小さいところっていうのは本当に少人数でやったほうが絶対早いので。

岡島:自立的に「こういうのやりたいです」「じゃあ、やってみなさい」って言って、上がってくるものもあるんですね。

守安:はい。

岡島:なるほど。

現場から上がってくるサービスの成功事例

守安:あとは、さっきの意思決定のところで、全部上で決めているのかっていう話題があったんですけども、実は大きな投資をするだとか、この大きな産業にいこうとなるとそうなんですけども、ある領域の中でいろんなチャンスってあるじゃないですか。その中で、そんなにお金をかけないでできることもあるので。

岡島:さっきのキュレーションメディアの横展開などはそうですよね。

守安:はい。投資額も少なくて、リソースもそれほどかからないものは、どこかで決済するというよりも、現場で立ち上がってきて、いつの間にか始まっているみたいなのもあります。

岡島:のろしが上がるみたいな(笑)。

守安:そういうのがね、上がって成功すればうれしいですよね。

岡島:いいですね。そうやって上がってきた事例でおっしゃれるのはあるんですか?

守安:そうやって上がってきたのは、それこそ僕が前作ってたモバゲーとかアフィリエイトとかそんな感じだったんで。

岡島:なるほど。それはご経験上、さっきの大きい領域はそうですけど、上で「こういうのやってね」と言うよりも、さっきのエンジニアの方が主体的に「こういうのつくりたい」という思い入れを持って進めてきたもののほうが筋がいい……。

守安:いや、よくわからないじゃないですか、やってみないと。

岡島:よくわからないですよね。

守安:よくわからない中にボカーンっと投資するのは怖いんで。そこはある一定の投資金額を精査してやりましょうというのはありますけど、「よくわからないなら、つくっちゃおうぜ」みたいなのも。

岡島:やってみて、ある程度……。

守安:できそうであれば大きく投資をするし、ダメだっていうことなら早めに閉じるし。

岡島:一定のレベルになってきたら、マス広告をやるということも含めて、自然体のリソースをもっと使って。

守安:「これはいけるね」ってなってきたら、それは人も張るし、予算もつけて大きくしていこうぜ、っていう。