ヨード液より水のほうが効果あり
うがいと風邪予防の関係を調べる実験で出た意外な結果

Can gargling keep you from catching a cold? | Takashi Kawamura | TEDxKyotoUniversity #1/2

日本では「風邪予防のためにうがいをすること」は一般的な習慣になっています。しかし、京都大学の川村孝教授が論文などを調べたところ、風邪予防のためのうがいは世界共通ではなく、日本独自の考え方でした。そこで川村氏は、うがいが本当に風邪予防に効果があるのか臨床試験を行うことにしました。実験の結果、実際に風邪の発症が40%減少し、うがいは風邪予防に本当に繋がることが判明しましたが、ヨウド液でのうがいよりも、水でうがいをしたほうが効果が高いこともわかりました。うがいと風邪の関係には、まだわからない部分も残っています。(TEDxKyoto2015 より)

うがいは風邪予防になる?

川村孝氏:(会場、拍手)皆さん、こんにちは。うがいと手洗いというのは「最も基本的な衛生習慣」って言われてますけれども、皆さんはうがいを毎日していますか?

(スピーカー、観客に挙手を求める)

うがいをしているという方は、1日何回されているでしょうか? 1回でしょうか? 2回でしょうか?それとも、3回以上でしょうか? もっとも、ここで言う「うがい」というのは、歯磨きの後に口をすすぐ「クチュクチュうがい」のことではなくて、喉の奥まで水を入れて、乱流をおこす。そして、喉をしっかり洗う。あの、「ガラガラうがい」のことです。

日本では幼稚園の頃から、うがいを教えられていますので、「風邪の予防にうがい」というのは当たり前のことになっていますが、世界を見渡すと決してそうではありません。

日本でうがい薬をつくっているメーカーの社長さんが、販売拡張のためにアメリカに行きました。そして色々なところでうがいの説明をするんですが、「あんな下品な音がすること、とても私たちにはできない!」って言われて、うがい薬はさっぱり売れなかったんだそうです。

アメリカに限らずお隣の中国や韓国でも、そしてヨーロッパの国々でも「風邪の予防にうがいをする」という発想はほとんどないようです。うがいは日本独自のユニークな衛生習慣ということで、果たしてそれが本当に風邪の予防に有効なのかどうか、世界の文献を調べてみましたが、その有効性を証明した論文は見当たりませんでした。

「エビデンスがない……。ならば自分たちでつくろう!」というわけで、うがいの風邪予防効果を検証する、世界初の臨床試験を行うことにしました。そのやり方はこうです。

世界初の臨床試験

日本全国18ヵ所で、390人のボランティアの方の協力を得ました。その390人の方を3つのグループに分けます。1つは水でうがいをするグループ。1つはヨード液でうがいをするグループ。そして3つめは、特にうがいをしないグループです。

この3つのグループに分かれるんですが、参加者が自分の好きなグループを選ぶわけではありません。くじ引きをして貰います。

くじ引きと言っても、実際は封筒を引くんですが、その封筒を広げると、割り付けが書かれています。この割り付け、コンピューターで乱数を発生してつくりましたので、封筒を順番に引いてもランダムになるんですけれども、この研究では参加者に自分で封筒を引いて貰いました。つまり「自分の運命は自分で決める!」という、一種の演出なわけです。

このような割り付け、ランダム割り付けは、3つのグループの間で背景因子、すなわち日頃の衛生習慣ですとか、健康意識ですとか、そういったものを均一にする、そのための科学的な方策です。

3つのグループのうち、うがいをする2つのグループには、うがいのやり方も指定しました。少量、20ccくらいのお水、もしくは薄めたヨード液を口に含み「クチュクチュクチュクチュ」と、うがいをやります。これ、1回目。

そして2回目は喉の奥まで入れて「ガラガラガラガラガラガラ」という、この「ガラガラうがい」をやって頂きます。そして3回目は2回目と同じように喉の奥まで水を入れて、ガラガラうがいをしっかりやって貰います。この3回で1クール。

この1クールのうがいを1日に3回以上、そしてそれを2ヶ月に渡ってやって貰いました。うがいのやり方には色々な流儀があると思いますが、ここは科学研究ですから、やり方を1通りに決めます。そして全員の参加者に2ヶ月間に渡って記録をつけて貰いました。うがい日記です。

うがい日記には風邪に関する色々な症状が列記されていて、そのそれぞれを「なし」「軽い」「中くらい」「重い」の4段階で評価して貰います。これを1日に1回、寝る前に、その日1日を振り返って書いて貰います。これを2ヶ月やって貰います。

最終的には3つのグループの間で、風邪をひいた人の割合を比べるわけですが、風邪を引いたかどうかは自分で判断するわけではありません。この風邪日記の中の、どの症状とどの症状が組み合わさって、それがどのくらい悪くなって何日続いたか?こういう事を予め事前に決めておいて、そして風邪日記を入力して自動的に判定するわけです。

これもですね、科学的に判断する、出来るだけ客観的な判定をするという1つの方策です。さあ、結果はどうだったでしょうか?

これがメインの結果です。横軸はうがいを始めてからの日数、縦軸は風邪をひいた人の割合です。うがいをしない、特にしないグループは黒い線のようになっていまして、2ヶ月間でおよそ40%の人が風邪を引きました。

ところが、水でうがいをしますと青い線のように、割合にして36%、減ります。多変量解析で背景因子を揃えると、40%の減少という風に計算されます。

一方、ヨード液でうがいをするとどうでしょう? 赤い線のようになります。何故かうがいをしないグループと、あまり変わりませんでした。風邪をひいた場合の症状についても比較してみました。水うがいをしたグループでは、風邪の症状がいくらか軽くなるという傾向も認められました。

では、何故、水でうがいをすると風邪をひきにくくなるのでしょうか?風邪のウィルスが、うがいで洗い流されたのでしょうか? う〜ん……。風邪のウィルスというのは喉の細胞のレセプターにくっついて、割とはやく細胞の中に入ってしまいますので、1日に2回や3回、うがいをやったくらいで、これが除去されるとはちょっと考えにくいですね。

じゃあ、何故でしょうか? ウィルスの感染を助けるプロテアーゼ、一種の酵素ですけれども、これは口の中にたまたま入ってきたある種の細菌がつくったり、あるいは空気中の埃の中にもあったりしますが、このプロテアーゼ、これでしたらタンパク質ですから、うがいによって比較的容易に除去することが出来ます。ウィルスの感染を助ける物質を洗い流したんじゃないか? という風に我々は考えています。

では、ヨード液は何故あまり効果がなかったのでしょうか? ヨード液は非常に強力な消毒薬です。確かに、風邪の原因となるウィルスをやっつけることが出来ますが、口の中に住みついていて微生物世界の秩序を保っている細菌たち、これを「常在細菌叢」って言いますけれども、この正常な細菌叢、これもヨード液によって根こそぎやっつけてしまいます。

そのため、口の中は丸裸の状態になってしまって、かえって感染に弱くなったのかも知れません。もっとも、我々の研究は「実際にやってみたらこうだった!」ということを証明する研究であるので、メカニズムのことまでは説明できません。よって、そちらのほうは他の研究者にお任せすることにします。

ところで日本では、風邪の医療費、これが年間およそ5千億円です。その他に市販の風邪薬のマーケットが年間およそ1千億円です。もし、世の中の人が、しっかりとうがいをしてくれたら、これらの経費はかなり節約できそうですね!? 経済的な面だけでなく労力の損失という面でも、うがいは貢献しそうです。

実際に会場でやってみる

それではここで、実際にうがいをやってみましょう!

(会場ざわつく)

(色のついた水の入ったペットボトルを持ちながら)皆さんに見やすいために、色のついたお水でやりますけれども、これは水道の水で全然かまいません。(水をコップに注ぎながら)60ccくらい入れます。そして、口に含みます。(クチュクチュうがいをする。次にガラガラうがいをする)3回目を、今と同じことをもう1回だけやります。簡単ですね。

うがいをすると口の中がスッキリするだけでなく、風邪の予防にも役立ちます。今日、このお話をお聞きになった方は、世界のお友達に是非、うがいを勧めてみて下さい。「健康は毎日のうがいから!」これが今日のテイクホームメッセージです。どうも有難うございました!

(会場拍手)

<続きは近日公開>

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1 ヨード液より水のほうが効果あり うがいと風邪予防の関係を調べる実験で出た意外な結果
2 近日公開予定

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