スタート時に事業理念を明確にした

宮崎英基氏(以下、宮崎):皆様も何となく感じてる部分なのかもしれないんですけど、新規事業立ち上げ時の悩みとして3つありまして、「ぶれる」「戻る」「忘れる」っていう言葉があります。

ぶれるっていうのは、「こっちの方向に行こうよ」と言っていたんだけれども、いろんな状況が変わることによって、自分自身も含めてプロジェクトや関連部門が、違うことを考え始めることが、どんどん出てくるんですね。なので、まずぶれちゃいけないなというところがあります。

なので、明快にしたのは、まずスタートのときに、事業理念と目指すことを明解にしました。実は他社にもそんな事例があると思います。プラスの中から事業化・分社していったアスクルも「お客様のために進化するアスクル」という誰でも記憶できるメッセージがありました。

事業立ち上げの時は、迷い、どうしてもぶれることがあるんです。そんな時も「事業メッセージ」に照らしあわせて「それは違うよね」と、確認することができたんだと思います。

経営の答申はストーリーで語る

ですから、そこはしっかりしなきゃいけないということで、私達はこの事業は何を目指すのかということで、「笑顔の介護をお手伝い」という事業メッセージをつくりました。

「笑顔の介護」というのは、介護職の方を指しています。介護職の方が、とにかくすてきに介護の現場で働けるように、私たちはサポートすると。これが仕事なんだと。社会的意義があるんだっていうのを明解にしたんですね。このことで方向性にぶれが無くなりました。

事業メッセージがあることで、思いを共にしてきたプロジェクトメンバーや事業責任者の執行役員や私が抜けても、ぶれることはないだろうなと、安心しています。

もう1つ、事業答申を何度も何度もするわけですが、戻るんですね。「この間、これって合意・共有したよね」みたいなことが、「そんなこと、決まった? 覚えていない……」みたいな話が出ることがあります。なので、プロジェクトでの打ち合わせ答申は、少し元に戻ってでも、ストーリーで常に語るっていうのが大事だと思います。

1個1個パーツで話すと、絶対人って忘れちゃうんですね。これはすごく当たり前なんです。企業内起業では経営やプロジェクトメンバーは沢山の経営判断や自部署の仕事をしているわけです。「これをやって、こうして、こうやるんだ」みたいなストーリーを常にプロジェクト内や経営に説明するときには入れなきゃだめだなと言うことを実感しています。 もう本当にオウムのように、何度も何度も言わないと、忘れちゃうんですね。

今でも迷ったらユーザーからのアンケートを見返す

1年弱プロジェクトをやって、去年の4月28日にサービスリリースをさせていただきました。介護の現場をお手伝いということで、カタログだけ見ると通販なんですけど、 裏側は先ほどお話したとおり、営業がいるからこそできることをしっかり組み合わせをして、事業を進めさせていただいております。

とにかく毎日毎日が、トライしてはエラーみたいなところがあって、いろんな修正をかけながら、お蔭様で事業スタートから1歳と3カ月になりました。

ですから、成功なんていうことはまだまだ先だと思っており、1個1個がお客様のところに答えがあると思っています。迷ったら、今でもお客さまのアンケートを見たりするんですね。「お客さん、何て言っていたかな」みたいなところですね。

新規事業はどうしても、迷っちゃう場面があります。間違いなくあります。そのときに、答えはやはりお客様だなということを、非常に実感しています。

介護職員の本業に使える時間を1分、1秒でも増やしたい

全国に7,000店の文具・事務用品店さんがありますというお話をさせていただきましたけれども、介護現場では専門的な言葉もいっぱいありますので、参画していただくには「福祉用具専門相談員」という資格を取っていただいています。

資格を取っていただいた販売店さん、営業さんには、iPadを弊社から無償で貸与させていただいています。中にはいろんな専門知識や商品の説明資料だったり、説明をするための動画だったり、くわえて代行注文ができるWebの仕組みも持ち合わせています。 つまり、究極の御用聞きとICTの組み合わせを実現しているのです。

お忙しい職員の方は座って商談ができませんので、「3分間の立ち商談」というコンセプトで やっています。これもお客様の声があって、できたことだと思っています。

ポリシーは、やはり「笑顔の介護をお手伝い」というところですね。この事業メッセセージも 1週間以上、いろんなキーワードを出しながら、チームでもんで、もんで、本当にすーっと腹に落ちる言葉は何だろうというところで、出来上がったものなのです。

介護職員の方はお忙しくて、本業は介護なんですね。なので、1分でも、1秒でもそこに使える時間を増やしたい、そんなお手伝いを目指して推進しています。

企業内企業で大切なのは経営資源を徹底的に生かすこと

1つめの大事なこととしましては、事業理念があるということですが、次に事業に社会的意義があるかということです。このことも私は重要だと思っているんです。

これは、事業に社会的意義がないと、お客様の評価につながらないんじゃないかというところを非常に実感しておりまして、パートナー販売店様・弊社営業関連部署にも、常に言い続けているところです。

結構大変なんですけれども、一人ひとり、自分の仲間に引き入れていくには、非常に大切なだと思っております。

最後ですね。繰り返しになりますけど、企業内起業で大切なことというのは、やはり吉井社長もおっしゃっておりました、経営資源を徹底的に生かすことだと思います。そこには、既にノウハウがあるわけですし、経営資源を使っていけるという、フィールドに私たちはいるので、それをしっかりやると。

もう1つは、既存事業から離れると、これは変な言い方なんですけれども、やはり既存のコアビジネスがあると、そちらを優先せざるを得ないことがあります。

ですから残念ながら、既存の中で出てくる発想は固定概念が多かったり、どうしても反対意見も出がちなので、少しでも離れたところで考えるというのは、大事だなと思っております。