場面によって自己紹介で求められるものが違ってくる

野村尚義氏:こんにちは。プレゼンテーションアドバイザーの野村尚義です。今日はですね「あなたの自己紹介、それで大丈夫ですか?」このテーマでお話ししていきたいと思います。

世の中にはですね、自己紹介のノウハウ、具体的にどうやれば、受け手にぐっとハートをつかむことができるのか、自己紹介のノウハウというのが、いろいろ語られています。

私も、いろんなところでお話ししてきました。たとえばNHKとか、このYouTubeの動画でもですね、お話しして、けっこうなアクセスをいただいてるわけですが。

どの自己紹介でも、やるべき、おさえるべきポイントって一緒なのか? 実はちょっと違うんですよ、というお話しをしたいと思います。

自己紹介って大きくわけると、2つの場面にわかれるんですね。

大きくわけると2つですね。「ワンタイムの出会い」と、もう1つが「今後長いお付き合い」。この2つ、全然自己紹介で求められるものが違ってくるということなんですね。

1つ目「ワンタイムの出会い」。例えば、そうですね、異業種交流会。たくさんの人が集まって、その中でやる自己紹介。場面としてありますよね。

これ、前提にあるのは、その場で縁が作れなければ、その人とはもう2度と会いません。これが大前提なわけです。

一方、今後、長いお付き合い。例えば、新しい職場に来ましたよと。一番最初だから自己紹介してください。学校なんかで、一番最初に1人ずつ順々にやる自己紹介。

これって前提にあるのが、明日も会いますよ、明後日も会いますよ、今日がスタートだけど、明日も明後日も、その出会いは続いていく。これが大前提です。

人と付き合う理由は「すごい」と「好き」

この2つ、求められる自己紹介はまったく違うということにお気付きでしたでしょうか。どう違うのか?

さて、こちら、縦軸に「すごい」横軸に「好き」と書きましたが、これはですね、人と付き合う理由です。

その人「すごいな」と。その人と一緒にいたら、自分が得だから付き合う、メリットがあるから。もう1つが、この人好きだな、一緒にいて楽しいなと思うから、その人と付き合う。

自己紹介するのって、最終的にこの2つのアプローチがあると。結局、それを通じて興味を持ってもらう、その興味の持たれ方というのが「やるな」というものと「いいな」「好きだな」というのと、この2つのアプローチがあるということですね。

そして、もちろん一番いいのは、ここのところですね。

「すごいし、好きだ」と、思ってもらえること。これができれば最高なんですが、自己紹介ってやはり限られています。

「僕、すごいんです」っていう話と「僕、好かれるんです」という話、両方できる時間が、なかなかないわけですね。メッセージがごちゃごちゃと、ふくらみすぎてしまう。

だから、実際、ここをやるというのは、時間的にも無理だし、話がごちゃごちゃしてしまう。さまざまな理由で無理だと。

結果的に「すごいアピール」をするか、好かれるような話をするか、この2つのアプローチの取り方になっていく、ということなんですね。

そして「ワンタイムの出会い」に求められるアプローチのしかた、長いお付き合いを前提としてる時のアプローチのしかた、かなり傾向がわかれます。

簡単に言うと、ワンタイムの出会いは「すごいアピール」にいきがちです。いくべきです。

「今後の長いお付き合い」は、すごいアピールではなく「好きアピール」こちらにいくべきだと。なぜでしょうか。少し想像してみてください。

例えば、ワンタイムの出会い、異業種交流会で自己紹介する時、相手から「あ、この人と付き合う価値があるな」と「また会おう」と思ってもらうがための自己紹介ですよね。

まあ、イメージで言うならば、ビジネスとつなげるため。受け手からしたら「この人とビジネスしたら自分は儲かるかもしれない」と思ったら、次に行く。別に友達つくりに来ているわけじゃないでしょうから。

だから、こちら(すごい)のアプローチ。僕は、他の人たちよりも、あなたにとって付き合う価値がありますよ。僕と付き合ったら得ですよ、という形になっていく。結果的にこの「すごいアピール」に行くわけですね。

一方、今後長いお付き合い。例えば先ほど言ったような同じ会社の新しい部署に移りました。学校で学年が変わりました、といった時。

どうせ会うんです。明日も会うんです。明後日も会うんです。明々後日も会うんです。それはもう、決まってるんです。

だから「すごい僕付き合う価値、あるよ」という話よりも、こちらが「好かれる」。「この人、長いお付き合いをしても、自分にとってカンファタブル」だなと思ってもらうこと。こちらのアプローチのほうが、ローリスクだということですね。

これ、逆を考えてみるとわかります。そもそも「すごいアピール」って何なのか。そもそも「好きアピール」って何なのか、っていうことを、ほんの少しだけ、表現を変えて説明したいと思います。

はい。「すごいアピール」っていうのは、表現を変えたら、他と比べてすごいんですよということです。「みんな一緒にすごい」ではなくて「俺、他の人たちよりも大きい結果が出せるんです」という話なので、他との違いなんですね。

言い換えれば、その話を聞いている受け手とも違うんだと。違いにフォーカスをした話がなされます。

一方で「好かれる話」というのが「あなたと一緒」です。「ここも一緒ですね」「ここも一緒ですね」「ここも一緒ですね」。人間って、共通項に対して親近感を覚えますから。一緒の部分、聞き手と一緒の部分をアピールしていくことになります。

「すごいアピール」と「好きアピール」のアプローチの違い

想像してもらうとわかるんですが、例えば、同郷、同じところの生まれだったりしたら、それだけで、ぐっと距離、近づいたりするじゃないですか。一緒の部分があるから、好きになる。こちらのアプローチなんですね。

つまり「すごいアピール」と「好きアピール」では、全く違う方面に対するアプローチになっていくわけですね。で、これ間違うとどうなるのか。

間違うとどうなるのか。想像してみてください。例えば、異業種交流会で「一緒ですね」「一緒ですね」「一緒ですね」っていう、受け手と、他の人と一緒のところにばっかりアプローチしていったら、あなたである必要がない。あなたとまた会わなくても、別の人でもいいじゃないですか。

だから、ワンタイムの出会いの時は、こっち(好き)のアプローチをしても、次に会う理由にならないわけです。

一方で、今後の長いお付き合い。学校で、会社で。「俺はお前たちと違うんだ」「俺、違うんです」。

これって、ちょっとおもしろいかもしれないけど、その人は。ちょっと鼻につきませんか? 協調性が感じられない。学校とか会社の、今後ずっと一緒にいる人の、初対面の時に「インパクト」を求めちゃうんですね。変わったことをやっちゃうと、浮いてしまう。間違った方向のアプローチをしてしまうからだと。

まとめます。「ワンタイムの出会い」たとえば異業種交流会、などなどなどなど。こういったときは、今回あなたとつながらないと次はないよ。

だからこそ、ちゃんとつながっておこう。つながる理由になるだけの、他との違い。これを打ち出してください。他と一緒だったら、次回に出会う誰でもいいっていうふうになってしまいます。

一方、どうせ次会う。明日も明後日も明々後日も会う。今日がきっかけで「次、ちゃんとあるよ」。用意されてるんだったら、すごさなんて、じわじわアプローチしたほうがいいですから。

まずは共通項。好かれること。一緒にいてカンファタブルである、「一緒にいて少なくとも嫌じゃないよ」という、こちら側のアプローチを取る。このように心がけてみてください。

ここずれちゃうとね、さっきみたいな話になるから。ずれた自己紹介。これだけ避けるように気を付けてみてください。

以上、プレゼンテーションアドバイザーの野村尚義でした。