トシ・ヨロイヅカは手が届くエンターテイメント

斧屋氏(以下、斧屋):じゃ、次行きましょう。次はパティスリー。これはToshi Yoroizukaで食べられるチョコレートパフェなんですけど、チョコレートパフェのイメージはもうないですね。

能町みね子氏(以下、能町):取りづらそう。

斧屋:この上に付いているのがチョコレートの飾りなんですけど、お客さんから「ロウソクみたい」と言われていると、鎧塚さんはおっしゃっていました。チョコを取って、フランボワーズを楽しみつつ、最後はアプリコット。とにかく味が単なる甘味だけじゃなくて酸味とかの振り幅があって、すごい小さく見えますけど、相当楽しめますよ。

横山シンスケ氏(以下、横山):おいくらぐらいですか?

斧屋:1,000円ちょっとぐらいで、そんなにしないです。Toshi Yoroizukaってすごい高級なイメージがあるかもしれないんですけど、こんな感じのカウンターで。

斧屋:さっきのように、目の前で作ってもらえる。

能町:高級そうですけどね。

斧屋:高級感ありますけど、全然手が届く。1,000円ちょっとぐらいですから、おすすめです。とにかく目の前で作ってもらえるのは1つのエンターテインメントで、それ自体が楽しめますね。

東京パフェ学

鼻からマイナスイオンが出るパフェ

斧屋:これは表参道のGLACIELっていうアイスのデザートのお店で、パフェも出しています。見てもらうとわかると思うんですけど、フルーツパフェ系のさっきのものに比べて、果肉、果実を非常に小さくカットしていますね。

先ほどのフルーツパーラーは引き算の思想でしたけど、パティスリーは足し算。調和です。何かと何かの組み合わせを意図するので、1個1個のパーツはわりと小さめにすることが多いです。だから苺の果肉もすごく小さくカットしている。ブルーベリーも半分にカットして。

能町:これ、ブルーベリーなんだ。

斧屋:下はソースになっているので、真ん中から下は混ぜて食べたり、とにかく合わせ技みたいな世界です。

能町:もっと基本の話なんですけど、そもそもパティスリーってなんですか?

斧屋:基本的にはお菓子屋さんです。

能町:お菓子屋さんってことで考えればいいの?

斧屋:お菓子屋さんでいいです。

能町:フルーツパーラーは?

斧屋:フルーツパーラーは、ケーキは基本的に出さない。

能町:パティスリーはケーキ屋さんのオシャレなバージョンみたいな感じ?

斧屋:そう思ってもらっていいです。

能町:なるほど。

斧屋:じゃ、次行きましょう。これもGLACIELなんですね。これは書籍には載ってないんですが。

能町:この白いのは何?

斧屋:これはメレンゲです。このパフェはマスカットのパフェですけど、途中のゼリーが美味しいパフェは本当にいいパフェで。フルーツとかを入れると、何だかんだ作り手はフルーツの力にみんな依存しちゃうじゃないですか。

だからゼリーとかプリン系のものがあると、どうも質が下がる傾向もなくはないというか。ただ、そういう脇役が固めているパフェは本当に良くて、どこかでも書いたんですけど、このパフェのゼリーを食べた時に鼻からマイナスイオンが出て……。

能町:あまりいい例えじゃないね(笑)。

斧屋:いや、それはパッションだからしょうがないんですけど。

能町:ああ……。パッションだからしょうがない…。

(会場笑)

パティスリーとフルーツパーラーの違いとは

斧屋:次は代々木上原のBIEN-ETREです。

斧屋:これも月替わりでパフェを出している、大変素晴らしいお店で。

能町:挑戦的。

斧屋:グラスの形状が非常に特徴的ですね。普通は下が膨らむと、なかなか難しいなと思うんですけど、下にアイスが入ってたりとか。ここもケーキ屋さんですから、サクサクしたものとか、焼き菓子系のものが、いろいろ細かくまぶされていて、非常に食感もよく、美味しいです。

能町:上のはなんですか?

斧屋:上は焼きりんごかな。焼きりんごとさつま芋を使っている秋のパフェなんですけど。

横山:下のほうのは何ですか?

斧屋:そこは、何か焼き菓子とか、サクサクした食材を。

横山:結構ざっくり言いましたね(笑)。

斧屋:ここは細かいものを上手く組み合わせていて、組み合わせの妙が楽しめるお店です。これとこれを合わせたらこうっていう感じの、足し算とか調和、よく「マリアージュ」って言ったりするんですけど、そういうのが楽しめる。

横山:足し算系、引き算系っていう分け方ができるんですね。

斧屋:それがパティスリーとフルーツパーラーの大きな違いだなと思います。

自分のタイミングで遊べるパフェは魅力的

斧屋:これは赤坂にあるショコラティエ、チョコレート屋さんのデリーモ。

能町:これ、すごいね。アイスしかないように見えますけどね。

斧屋:これはかなり重そうに見えて、確かに重いんですけど、最後までいけちゃう。

能町:このタレみたいなのかけるんですか?

斧屋:タレっていうか、これチョコレートソースですよ!

横山:タレっていうと急にジャンル変わりますよね(笑)。

斧屋:それを好みでかける。何かをかけるパフェって結構あって、おもしろいなと思いますね。好みで、自分の好みのタイミングで遊べるので。こっちに任される部分がちょっとあると楽しくなる。

ここはピスタチオのアイスとチョコのアイスがどんどんって入っていて、ピスタチオが結構ガツンと来るんですよ。重みがある。

途中にフィアンティーヌっていう、薄い焼いたクレープ生地的な、サクサクの中でも一番小さめに属するやつが入っていて、すごく食感がいい。これはノイズにならない。

能町:なるほどね。色合いも楽しい。

斧屋:これはデリーモの中で一番好きなやつです。

代々木上原・アステリスクの限定パフェ

斧屋:これはアステリスクですね。これも代々木上原で、1,000円しないパフェなんですけど、この店は本当に時期限定で出すところで、夏季限定でしかパフェが出ないお店なんです。

能町:これは何のパフェ?

斧屋:これはマンゴーベースのパフェで、ソルベは5種類ぐらいから2種類とか選べたり。あと、本にも書いてある通りなんですけど、シュトロイゼルっていうサクサクしたものが適度な大きさで入ってます。

横山:能町さん、これはどう食べますか?

能町:私はこれ……どこだろな。手前の生クリーム辺りをすくって様子を見ますね。どう崩れるか。

横山:まずそっちですね。

能町:そこからしか行けないかな。

横山:先生はどうですか?

斧屋:これは上のメレンゲ食べちゃいますね。

能町:そうなんだ……。

斧屋:正しさとかないから。

能町:どっちが正しいわけじゃない。

斧屋:勝手にすればいいと思います。

横山:それ言ったら今日、もうおしまいですよ!

口の中で広がる和風パフェの魅力

斧屋:続きまして、和風パフェです。これはコクセンっていう、自由ヶ丘のお店の焙じ茶のパフェですね。

斧屋:これは三越前の鶴屋吉信。

能町:これは何かもう、パフェかどうかってだいぶ怪しくなってきますね。

斧屋:これはかなり口が広くて、しかも底が浅いので、ちょっと「あれ、パフェか?」ってなるんですけど。抹茶がほんと深い味わいですね。

斧屋:続いて人形町の森乃園かな。

横山:お箸が付いているのがいいですね。

斧屋:これはパフェとわらび餅とセットで。

横山:美味しそう!

斧屋:結構庶民的なお店です。これはお店の2階なんですけど、雰囲気がいいですね。

能町:これ美味しそうですね。

斧屋:和風のパフェって色合いをどう出すかっていうのが課題になってしまいがちな気がするんですよね。派手さがフルーツの感じよりは少ないので。

能町:フルーツはあまり入れられない?

斧屋:フルーツをバンバン入れたら、もはや和風のパフェじゃなくなっちゃうので。

能町:和風は絶対元気系はないんですね。

斧屋:中身はいろいろ入っているパフェで、わらび餅とか、抹茶と黒蜜のアイス、豆乳ベースの抹茶プリン、抹茶の寒天、黒糖の寒天、豆乳ベースの小豆のプリンとか諸々。他にもいろいろ入っていて、層がものすごく細かいんですよ。

和風のパフェで、ここまで層がハッキリくっきり細かく分かれているパフェって、なかなかなくて。これは原宿のぎおん徳屋さんですけど、和風の中では本当に多彩さでは群を抜いている。

能町:お店は甘味処みたいなんですね。

パフェはSNSで共有するのも楽しい

横山:でも、さっき能町さんも話していたんですけど、今はInstagramとか、みんなとにかくアップして共有するって文化だって考えると、やっぱりパフェはアリですよね。

能町:そうですね。

横山:写真撮って、「今パフェ食べています」って上げると、ビジュアルが非常にいい。

能町:何かちょっと「わっ」とは思いますよね。派手だなって。

斧屋:これは上からなんですけど。

能町:上からだと結構元気じゃないですか? そうでもない?

斧屋:違うなー。

能町:違うんだ。

斧屋:でもすごい華やかで、書籍では僕は「万華鏡を見てるような」っていう表現をしているんですけど。

能町:確かに。

斧屋:要は、すくっていっても層がどんどん変わるんで、色が変わっていって、食べれば食べるほど景色が変わっていく楽しみがあるパフェですね。