「ブルマはネイティブ」写真家・青山裕企氏が近作を振り返りながらブルマへの思い入れを告白

青山裕企 #3/6

月刊水中ニーソ2015年5月
に開催

「水中ニーソ」で知られるデザイナー・映像作家の古賀学氏が中野・Bar Zingaroで毎月開催しているトークショー「月刊水中ニーソ」。2015年5月に開催されたイベントでは、『スクールガール・コンプレックス』や『ソラリーマン』で話題の写真家・青山裕企氏との対談を行ない、ブルマ写真集『さよなら、ブルマ。』への思い入れや、『僕の妹は、写真家になりたい。』出版に至ったエピソードなどを語りました。また、青山裕企氏がフェティッシュな写真を撮る際、どのように構図を考えているかなど、制作に関する話題も語られています。

イベントに来ていた女性を妹として撮影

青山『僕の妹は、写真家になりたい。』これは珍しく、自分から持ち込んだ企画です。

古賀:1人の人をずっと撮ったんですよね。

青山:そうなんです。これは、まさにこういうイベントで、一番前に赤いワンピースを着た女の子が、真ん中で座ってたんです。で、ずっと見てたんです。さっき「いいことはない」って言いましたけど、気になっちゃって(笑)。ずっと見てるから。

それで、別に怪しい意味じゃなく、気になったから、イベントが終わった後に「ありがとうございます」って声かけて、「ちょっと1回撮らせていただけませんか?」って。怪しいか(笑)。

僕は普段言わないんですよ。自分からハンティングしないんですけど、気になったから1回撮ってみたんです。そうすると、撮りながら、また撮りたいと思ったから。

でも、そういうことは滅多にないんですよ。「どういうことかな?」と思って。でも、別にこの子が好きとか、そういうことでも、もちろんないんですよ。付き合いたいとかいうのでも全然ないし。でも撮りたいと思って。

ある時わかったのが、妹に見えると思ったんです(笑)。

古賀:青山さん、兄弟いるんですか?

青山:僕は、もともとずっと一人っ子で、いまは年の離れた妹はいるんですけど。まだ10歳です。だからいるんだけど、実感はないんです。いわゆる「妹感」がない。

古賀:親戚みたいな。

青山:そうです。となると、妹になってほしいっていうか。その子がすごい、なんというか、理想の感じなんですよ。要するに僕が抱いた気持ちは、「あ、この子に悪い虫絶対付いて欲しくない!」だし、もう家族的な。

だからその子に対して、いやらしい気持ちもないんです。だからこの写真集は、たまたまというか、彼女が高3になる時で、高校を出たら写真の大学に行って、写真家になりたいっていう子だったんですね。僕のトークイベントに来てくれたタイミングが。

そうしたら、「じゃ、1年間、妹として撮らせてください。僕が写真を教えます。教えるから、君も写真を撮っていって、1年間撮りためて、一緒に写真を展示しよう」ってなったんです。「僕は妹を撮る。妹は日常を撮る。それを1年間やろう」みたいなことで、出版は決まってないんですけど、とにかく撮り始めていたんです。

出版社には、別の全然違う企画を持って行ったんですよね。「こういうのを出しませんか」って。そうしたら、それは決まらずに、「ま、ついでにこういうことやってます」って、「妹が……!」っていう話をしたら、出すことなって。

1年間写真を教えて、妹としか見えなくなった

古賀:この本に、この女の子が撮った写真も載ってるんですか?

青山:載ってます。4月から3月まで、カメラは本当にガチで、僕が写真をはじめた時のFM10っていうマニュアルのカメラをあげたんです。フィルムカメラから撮らせて。

最初上手く撮れないじゃないですか。でもその写真とかも載せて、最後上手くなっていく、みたいな。本当にでき過ぎだと思うんですけど、その子も人見知りな子で。昔の自分に似てたので、ああ兄妹っぽいなと(笑)。

特に夏、すごい写真が楽しくなってきてくれたんです。だけど9月になって2学期になって、撮りたいけど、学校でカメラを人前で出せない……恥ずかしい……みたいな。

でも、「いや、頑張って出してみたら」みたいな感じで、人前で出して、まずは友達を撮って。でも最終的にはクラスで撮れるようになって。その時の体育祭とかの写真も載ってるんですけど。

妹はだんだん撮れるようになって。で、一番撮りたい子がいて。助かったのは、一番撮りたい子は女の子だったので。それが彼氏とか言われてもちょっと何かね(笑)。

古賀:お兄ちゃんとしてはがっかりしますよね(笑)。

青山:そう。でもリアルに、すごい憧れの女性が大阪にいるから、その子を撮りに行ってもらって。大阪まで派遣して。で、撮ってもらった写真が、とてもいいんです。

僕も妹を30回ぐらいかな? 撮影して。最後は卒業で、桜。やっぱりその子も1年経ってると、顔が全然違うんですよ! 僕も今、妹としか見えないんで(笑)。今その子は日芸の写真学科で、大学2年になったんですけど、頑張ってるんですよ。っていう本です。

古賀:この人も、写真家として出てくる可能性が全然あるんですよね?

青山:そうですね。

人に教えることで、自分に返ってくるものがある

青山『思春期ごっこ』。これは映画の企画で、2人の。やっぱり関係性がすごい気になりますね。でも水中ニーソも、ペアとかやってますよね?

古賀:実は撮り始めてて。

青山:やっぱり違いますよね?

古賀:違いますね。前にミュージックビデオで実はやってるんですけど、水中はまた独特の問題があって、打率が低いんですよ。10枚撮っても1枚ぐらいしか使えないみたいな世界なので。

だから打率がある程度ないと、低いもの同士掛けあわせても駄目じゃないですか。ですけど、撮ってるうちに、相当高打率で水中で顔とかポーズを決められる子たちが出てきたので。そのAクラス同士だったらっていう感じですね。

青山:今まで撮った中の、打率の高い女の子同士がコラボレーションすると。

古賀:1軍同士というか。

青山:なるほど。わかります。すごい難しいですね。

青山『新しい構図』。これは写真の教科書の第2弾ですね。最近教える機会がすごい多くて、ワークショップとかゼミとかやってまして、今日もその生徒が来てくれてますけども。

古賀:写真って、表現でもあるんですけど、同時にお稽古事だったりするじゃないですか。

青山:そうですね。

古賀:お稽古事の先生でもあるってことですよね?

青山:今はそうですね。僕は、全然イメージないかもしれないですけど、撮り方を教えてて、撮られ方もずっと教えてるんですよ。もう7年ぐらいやってるんですけど、美容の専門学校で、モデルコースっていうのがあって、そこで撮られ方を。どう動くだとかっていうのを、ずっと教えてるんです。

だから、それって教えながら、すごい写真に活かされてて。教えながら、自分に返ってくるところもあるんですよね。

独特の表現を始めるとお手本がいなくなる

青山:写真って、もちろん水中で写真撮ってる方も他にもいるとしても、自分で何とかするしかないじゃないですか。教科書とか、師匠とかじゃなくて。

古賀:青山さん、師匠いるんですか?

青山:いないです。でも、さっき古賀さんが『スクールガール・コンプレックス』のことを発明って言ってましたけど、水中ニーソも発明だと思うんです。撮ってて、もう古賀さんにしかわからない「こう撮るといい」みたいなのがあって。

古賀:ある程度抜けてくると、お手本がいなくなるじゃないですか。

青山:なるほど。そうですね。

古賀:海外のアーティスト含めて、水中ポートレートとかありますけど、ある程度出揃ったところから、一番独特の表現みたいなのにすべった途端、お手本がいなくなる世界で。

あとは現場でモデルにレクチャーしながら、「あ、こういうことか」みたいな発見を毎回するんですよね。

青山:撮りながら発見しますよね。その感じは、実は教えながらすごいあって。だから、「教えてます」って言ってますけど、すごい教わってるんですよね。そういう気持ちはあります。

ブルマは完全にネイティブ

青山『さよならブルマ。』。『スク水』に続きまして。

古賀:一迅社のシリーズ(笑)。

青山:そう。一迅社のシリーズです。

古賀:さっきから、フェチものはだいたい一迅社なんですね。

青山:これ、今まで誰にも言ってないことを、今日言ってもいいですか?

古賀:はい。

青山:本当に誰にも言ってないんですけど、僕、ブルマがすごい好きなんです。

(会場笑)

古賀:最初から?

青山:はい。……以上です。だから、これも実は、最初別の企画だったんですけど。

古賀:じゃあこれは青山さん企画なんですね。

青山:さも企画で撮ってます臭を出しつつ、とっても思い入れのある企画なんです。(『さよならブルマ。』っていう書名で)後ろ髪引かれながら、別れを告げている。

古賀:ブルマなくなりましたもんね。

青山:そうなんです。だからこの本は相当クオリティを。さっきの『絶対領域」とか『スク水」はね。

古賀:付け焼き刃だからね。

青山:これはもう大丈夫です。ネイティブ。

古賀:ブルマネイティブ(笑)。

青山:だから、研究してません。思いのたけをぶつけてます。

構図を考えるときは、狭いポイントから広げていく

青山『台湾可愛』。これも女子高校生なんですけど、もう完全に顔が出てますね。これは僕の考え方で、さっきの『新しい構図』の本にも書いてあるんですけど、「顔が出てないからフェティッシュ」っていう考え方は、合ってもいるんですけど、それがもちろん全てではなくて。

要するに、さっきの類似本とかもそうですけど、顔を切ればいいんじゃないかなって思っている人たちがいる。

古賀:単にトリミングすればいいと思ってる人たちが。

青山:そうですね。でも、そうじゃなくて、やっぱりまず女の子を見て、どこが気になるのかっていうのがありますよね。絶対領域が気になるとか、胸でもいいし、パイスラッシュが気になる、とか。気になるのはパーツなんですよね。

人を見た時に、「まず全身が気になりました」なんて人はいないですよ。瞬間的にいろいろな点を見て、「あ、全体的にいいな」と思うかもしれないけど、まずはやっぱり狭いポイントを見るので、そこから広げていって、どこで止めるかっていうのが、基本的な僕の構図の考え方なんですね。

だから、「切る」じゃないんです。写真っていうのは普通「切る」なんです。トリミング。数多あるこの世界を、どこで切るか。それを縮めていく。

古賀:フォーカスですね。

青山:そうです。僕はフォーカスしてから広げて、止めるっていう作業をしてるんです。だから、実は顔が出てる写真でもフェティッシュな要素はじゃんじゃん入ってるし、むしろよりフェティッシュなんですよ。

だから顔切りたい人は切ってもらえばいいっていうか。顔が写ってたら、顔にまず目がいくのは、人間の自然な反応ですけど、顔が写ってる写真こそ、顔じゃない部分に、どれだけフェティッシュさを入れられるかっていうのが、実は重要なポイントだし、そういうことができる、できないっていうところで、決まってくるかなとは思うんですよね。

古賀:どこかにフォーカスして、ズームアウトしていくみたいな感じですね。

類似本をリスト化して分析していた

青山:そうですね。でも、それを学んだのは、まさにその類似本だったんですね。最初の方にめっちゃ研究したんですよ。序盤の頃は、みんな買ってたんですよ。買うのもどうかと思ったんですけど(笑)。買って研究してたんですよね。どこが一緒なのか、どこが違うのかっていうのを研究して。

古賀:書店の店員さんが、類似本の領収書に「ユカイハンズ」っていう青山さんの事務所の名前を書いてたんですね(笑)。

青山:そう。領収書で切ってはいますけど、買ってて。その頃にいろいろ話を聞いたら、その類似本の中には、グラビア雑誌とかエロ雑誌で使った写真を、まさにトリミングして収録してるっていう本があったんです。

でも、やっぱりそれを見た時に「違う」と思うのは、トリミングしてるからで。その発想が違うっていうのは、やっぱり写真の最終的な見られ方で。

もちろん一緒に見える場合もあるかもしれないけど、根本的に違うんじゃないかなと思ったんですよ。そこで、学びました。すごく学ばせていただきました。

古賀:類似本がこんなに出た作家って、他にあまりいないですよね。風景とかはいらっしゃるみたいですけど、ポートレートであまりいないですよね。

青山:本当は網羅したかったんですよね。30冊ぐらいまでは、全部リスト化してみたんです。いつかそのリストを出そうかなと思って。

古賀:ニセ青山リストを(笑)。

青山:僕が1冊ずつ分析する、みたいな。真面目にね。燃えないように。

古賀:炎上しないように。

青山:非常に紳士的に分析する。ここすごい、とか。いいところはいいって言うし。でも、さすがに「この労力の対価は何だろう?」と、得られるものが多くないですからね。本当に、燃えたくないんです。

古賀:炎上が嫌いなんですね(笑)。

青山:嫌です。穏やかに生活したいんで(笑)。本当に。

青山裕企の金字塔

古賀:これが最新作ですね(2015年5月13日時点)。

青山:来ました。『むすめと!ソラリーマン』ですね。女の子とソラリーマンっていう。ここで合体したんですね。

古賀:ついに合流が。

青山:僕はこれが、別に格好付けじゃなくて、自分の中の金字塔なんです。ここまでやってきたことが見事に合わさるっていう。

古賀:このためにやってたんだっていう。

青山:そうです。僕はこれで燃え尽きてもいいと思って、出しました。まあ、また来月出るんですけどね(笑)。でも、この本、作品が金字塔です。自分で言ってしまいましたが。

あと実は、海外で結構話題になってるんです、この画像が。意味がわからなさすぎるのか、謎な感じで。やっぱり日本の家族のありさまを見せてるのかっていうことで、イギリスのBBCっていう大手の放送の朝のニュースの中でも流れたりとか。

古賀:イギリスのNHKみたいなものですね。

青山:そうですね。国内でもいろいろ出ましたけど、特に海外がすごい感じで。今度、今年海外に、秋からニューヨーク、シンガポールに撮りに行くんです。

古賀:撮りに行くんですか?

青山:そこで撮って、展示みたいな感じで、海外に広げていくような展開になってるんですけど。やっぱりさっきの『スクールガール・コンプレックス」もそうだし、『ソラリーマン』も、どっちも全力でやってるから、『ソラリーマン』に対して、僕の中では、やっぱり評価がまだ低いと思ってたので、これを出したことで、一応今、海外でちょっと評価を受け始めてるので、それはちょっと嬉しい。正直嬉しいです。

制作協力:VoXT

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