広告費をかけずに急成長--ECサイト「北欧、暮らしの道具店」のヒットの秘訣とは?

「ファクトリエ」と「北欧、暮らしの道具店」の今と今後 #1/2

IVS 2015 Spring Miyazaki
に開催

IVS 2015 Spring・特別インタビューにクラシコム・青木耕平氏、ライフスタイルアクセント・山田敏夫氏が登壇。雑貨専門ECサイト「北欧、暮らしの道具店(運営:クラシコム)」を立ち上げた青木氏は、雑誌メディアにひけを取らないコンテンツ作りや、ソーシャルメディアごとに異なるアプローチなど、従来のECサイトとは違った広告費をかけずに売り上げを上げる施策について語りました。

急成長中のECサイト「ファクトリエ」と「北欧、暮らしの道具店」

藤田功博氏(以下、藤田):IVS特別番組をお届けしております。次は「ファクトリエ」と「北欧、暮らしの道具店」の今と今後をテーマにしたいと思います。株式会社クラシコム代表取締役の青木さんにお越しいただきました。ありがとうございます。

青木耕平氏(以下、青木):よろしくお願いします。

藤田:そして、ライフスタイルアクセント株式会社代表取締役の山田さんです。よろしくお願いします。

山田敏夫氏(以下、山田):よろしくお願いします。

藤田:今日は、ぴったり衣装も合わせていただいて(笑)。

山田:そうなんですよ! この日のために(笑)。

青木:本当にこの日のために。

藤田:白シャツにジーンズで、靴のテイストまで同じになっていますね。

山田:靴下だけは変えようか、ってね。

青木:そうなんです。

藤田:かなりおもしろい画になってますけど。

青木:恥ずかしい(笑)。

山田:ホント、奇跡的ですよね。

青木:奇跡的。

山田:先週会った時、話しておけばよかったですね。

藤田:つかみはばっちりということで(笑)。山田さんのほうから、自己紹介をお願いします。

山田:はい、ライフスタイルアクセント株式会社の山田と言います。私は「ファクトリエ」というファッション通販サイトを運営してまして、現在全国20工場と提携しています。世界ブランドをつくる日本のアパレル工場の商品を直接インターネットで販売するというサービスです。

藤田:では、青木さんよろしくおねがいします。

広告費ほぼゼロで急成長

青木:はい、株式会社クラシコムの青木と申します。我々の会社は先ほどご紹介もいただいたんですが「北欧、暮らしの道具店」という雑貨のECをやっている会社になります。

事業の特徴としては、Eコマースが基本的には広告で新しいお客様を取り込んで、ポイントとかセールといった販促でリピート化していって収益を上げていくというのが一般的なモデルなわけですけども。

我々の場合はほぼ広告は使わずに、我々自身が広告を出していただけるようなコンテンツメディアになって、コンテンツの力でお客様に集まっていただくということで、広告費をほぼゼロに近い形で急速な成長を続けることができているというところが1つの特徴になってですね、今日こうやってお呼びいただけたのかなと思っております。

よろしくお願いいたします。

藤田:よろしくお願いします。では、今と今後なんですが、今について、もう少し紹介を深堀で、ここ1年くらいの取り組みを含めて、ご説明いただければと思うんですけども。じゃあまず、山田さんのほうからお願いいたします。

山田:はい。この1年、私たちはトピックスとしてはやっぱりリアルを試したいということで、去年末から銀座にフィッティング・スペースをオープンしました。

そして、そこでのイベントも毎週のようにやってまして、工場長を呼んだり、酒蔵、醤油の蔵とか、いろんなコラボレーションをしてですね、どれだけリアルなお客さんと接することができるかやってます。

お蔭さまで月に300~400人くらいお客様に来ていただいてまして、その半数が商品を何かしら買っていただけるような、僕らとしては基本的にはインターネットという窓口でしか接していなかったところから、お客様とリアルな場で接して、しかもそれが購入につながる、1つのきっかけになっているかなと。

そして今年の3月に、次は実家である熊本にリアル店舗をつくりまして、この半年で銀座と、あとは九州でいうと熊本っていうところが、オープンしたという状況ですね。どちらも非常に好調でして、工場数もこの1年で倍になってまして、今のところは順調に推移している状況です。

衣食住すべてにつながる日本文化を知ってほしい

藤田:ショールームでの醤油みたいなテーマは、服とまた違うテーマのイベントをされるっていうのは、どういう狙いがあるんですか?

山田:私たちは「語れるもので、日々を豊かに」という理念を掲げていまして、その理念に沿って、語れるものをつくっている作り手と使い手をつなぐということをやっています。なので、地ビールの蔵元もあれば、活版工場の印刷の機械を持ってきて、そこでみんなで印刷を体験するとかですね。

僕らのファクトリエという語れるものが好きなお客様は、醤油であれば天然酵母を使った300年の歴史を持つ蔵があるんですけど、そこでつくったお醤油もきっと好きなんじゃないかとか、発泡酒もいいけれど、プラス200~300円出して、コクのある地ビールもいいんじゃないか。

同じレイヤーと言いますか、そういうことを欲している方々に体験を提供していくっていうのを、ファクトリエとしてもコンセプトと合いますし。

衣食住で言うと、衣の部分で言うとメイドインジャパンってこの20~30年でやっぱり10分の1に減っていまして、日本酒も最盛期から3分の1に減っていまして、林業もほぼほぼ壊滅的という状況で言うと、衣食住すべてにつながるような日本の文化とか、知っていただく機会があればなと思っています。

藤田:そういうイベントをされる時っていうのは、どういうふうに集客をされるんですか?

山田:集客はですね、基本は私たちのインフォメーションページでのブログの告知が多いです。大体、月に4本やってまして、1つが工場ツアー、工場の現地集合、現地解散というのと、工場の方を呼んでのワークショップと、異業種の作り手とのコラボイベントだったり、着こなしセミナーという新商品が出た時にお客様にやっているものなのですが。

基本はすべてブログと僕らの会員向けのメルマガ、すべてすぐに埋まってしまうので、埋まり次第終了というふうにしてます。

コンテンツメディア編集部としての体制作り

藤田:なるほど、ありがとうございます。では、青木さん。紹介をもう少し深堀りでお願いします。

青木:はい、この直近1年というお話をいただいたんですけども。先ほど自己紹介でも申し上げましたように、我々コンテンツメディアとしてお客様に楽しんでいただける、あるいはお役に立てる情報を、いかに質の高いものをたくさん提供できるかという編集部の体制作りというのは、一貫してやってきていることの1つとしてあります。

今ですと、大体月間で百数十本くらい。例えば商品ページも1つのコンテンツですし、それ以外の物も含まれますけども、大体100本くらいの読み物のコンテンツと、30ページくらいの商品ページを作成するというような体制をつくることができているという状況で、ここは引き続き拡充していこうという状況ですね。

藤田:何名くらいのチームでそれだけの量を。

青木:うちの場合は、入社のタイミングでですね、すべての職種、例えばカスタマーサービスとか、仕入れを担当するマーチャンダイジングの担当者とかも含めて、全員がライティングと、スタイリングして写真を撮るというテストを経て入ってくるんですね。

なので、今専業で執筆をしている人間は大体5~6人というところなんですが、それ以外の人間もほぼ全員がコンテンツをつくるというところに一定関わっているという状況です。

あと、今期いくつかテーマがあった中では、1つは僕ら自分たちを買い物ができるメディアだと言ってきているわけですけど、メディアからもう少し解釈を広げて、パブリッシャーになっていこうというコンセプトで事業を展開していく。

パブリッシャーになっていくということの中で、そのコンセプトに基づいてやってきていることの1つは、モノをつくるということなんですね。

小売事業者がモノをつくるというと、いわゆるPB的な文脈で語られることが多いと思うんですが、僕らにとってのモノづくり、実は今僕らの子会社でジャムをつくる会社をやっていたり、あるいはグラノーラやケーキっていうおやつをつくる会社をやっていたりして、そこでつくったものを「北欧、暮らしの道具店」というところで販売するっていうふうにやってるんですが。

この主な目的は、PBで利益率を高めようということではなくて、それも僕らにとっての重要なコンテンツで、出版社でいうところの書籍づくりみたいな感覚があってですね。

例えば、マンガで言うとワンピースというのが流行っているから、2匹目のドジョウを拾うために、うちはちょっと山賊で1本やろうという企画が出版社内であったとして、誰に書いてもらおうか?

鳥山(明)先生、そろそろ復活してくれないですかね、っていう話を持っていって書いていただけたら、それをパッケージして流通網に乗せていくというのが、出版社の仕事だと思うんですね。

我々もパブリッシャーとしてモノをつくるとはどういうことかを考えた時に、社内に、これぐらいのプライシングで、こういうパッケージでこういうジャムをつくれば、多分このくらい売れるだろうという企画があって。

外に料理家の方だったり、すでにお店を始められているような方で、スケール的に単体でできないという人たちを見つけてきて、ジョイントで会社をつくって、そこでつくったものを売っていくという形で。

基本的には全部自社でやっていくというよりも、そういうふうにして、著者の方を社外に見つけていって、子会社をつくって、そういう商品を増やしていくということを、今期2社くらい立ち上げてやってまして、年間数万個くらいのものを売っていくということを(やっています)。

ソーシャルメディアの種類によってコンテンツの見せ方を変える

青木:もう1つは、どちらかというと、僕らにとってオリジナル商品、PBの意味合いが強いのが、実際の出版物をつくるっていうことなんですね。自分たちでリトルプレス、20ページ弱くらいの冊子をつくって、すべてのお買い物をしてくださったお客様に2種類、隔月で出るものを必ずお付けしているんですけども。

お客様からのご要望でそのバックナンバーを買いたいという方がたくさんいらっしゃって、そんな人ちょっとしかいないだろうけど、ちょっと売ってみるかとやってみたらですね、月間3000冊くらい売れるんですよね。

藤田:3000冊!

青木:ええ。僕らは雑貨を主にやっているので、オリジナル商品といえば、コップつくったりだとか、お皿つくったりしないといけないのかな、ハードル高いなと思っていたらですね、コンテンツでお客さん来ていただいているんで、このお客様にとって一番欲しいものはコンテンツそのものかもしれないという発想に転換して。

昨年からムックであるとか、リトルプレスのバックナンバーであるとか、そういう出版物を自社で企画、製造してそれを販売する。これがやはり非常にいろんな意味で、可能性がある商売になってきているという感じですね。

もう1点注力していることは、去年1年はソーシャルメディア向けのコンテンツのパブリッシングという考え方で。

昔はソーシャルメディアからどう人を呼ぶかということを考えていて、集客のツールという考え方だったんですけど、どちらかというと今は、サイトで企画してリリースするコンテンツを、各ソーシャルメディア等々の媒体に向けて再編集をして、そのパッケージに合わせてパブリッシングしていくという考え方でコンテンツを広げてまして。

この企画はInstagramにこの形に直して投稿する、YouTubeには動画として投稿する、サイトではこういうふうに見せる、Facebookではこういうふうに見えるということを前提に最初から企画して、コンテンツのリリースで各媒体に流し込んでいくという形で。

Facebookは1年間で20万(人)くらいフォロワーを増やして、Instagramも1年間でゼロから15万人くらいまでフォロワーを増やすことができたというのは、お客様へのプレゼンスを高めることができた1年だったかなという感じですね。

藤田:ECの王道として、基本的にはショップを開きます、広告で集客します、ページ内容を改善してコンバージョンレートを上げます、と。これをグルグルグルグルPDCAで回していって、大きくしていくのが王道ですという中で、いかなるタイミングというか、いかなるきっかけでコンテンツが大事だということになったんでしょうか。

青木:もともと、そこまで戦略的な意識もなく、よくあるショップブログというものを創業当初普通に書いていて。要は日記に近しいものですよね。それをほぼ全員の社員が書くということでやっていたところを、お客様からお褒めいただくのはそのことばっかりだったんですね。

藤田:そうなんですね。

通販は粗利と購買頻度が高いものでないと成り立たない

青木:一方、別の側面として、売り上げはありがたいことに当初から急速に成長できていて、わりとトントン拍子に売り上げは上がっていったんですけど、気が付いたら「あれ、全然利益残らないんだね」と(笑)。いろいろ考えていくと、雑貨を通信販売するっていうこと自体、根幹が通常の通販のフォーマットからすると間違ってたんだなってことに気づいたんですよね。

藤田:根幹のところに疑問符がついたんですね。

青木:通販って基本的には粗利が高くて、購買頻度が高いものでないと成り立たない。なぜなら、購買頻度が高くて、粗利が高いってことは、初めて買ってくれた人が、このくらいの期間に5回くらいは買ってくれるなって予想して広告費がかけられるんで、広告で必ずリードを取らないといけないという宿命を抱えている以上、それしかない。

それって何かというと、使ったらなくなる、食べたらなくなる、あるいは陳腐化が早い。こういう特徴を備えてて、かつ粗利が高いっていう商品じゃないと、通販で儲からないってことがわかってきた。

結局、だから昔から健康食品とか化粧品とか、食べたらなくなる、使ったらなくなるっていうものがいい、陳腐化というところでいうと、アパレルっていうのは昔から通販でいい。

あれこれ、コップ全然なくならない! と。しかも去年使ってたコップが今年は恥ずかしくて使えないということもない、と。「あれ、通販でコップ売ってちゃダメだったんだ」ってことに、やっと結構経ってから気が付くっていう、本当ダメダメなんですけど(笑)。

普通のやり方やったんじゃあ、このままずっと売り上げ伸びていっても絶対幸せにならないから、幸せになれるかやめるか、どっちかだよね、というふうに思うようになって。

じゃあ、幸せになるためにどうしたらいいだろうって考えるようになると、商品の粗利を高めるっていう方法が1つあるじゃないですか。でもそれは、ものすごい開発費を突っ込んで、高く売れる商品をつくるか、ものすごいバイイングパワーを持って安く仕入れられるようにするか、どっちかしかない。

でもこれ、どっちも小さい事業者にはできませんということになり、粗利の部分でイノベーションを起こすことは絶対できない。

一方で残っていたのが、通販の事業者って急速に成長するためには、大体売り上げの20%くらいマーケティングの費用に突っ込みましょう、っていう何となくのセオリーみたいなのがあって。

もしこれを、要するに販管費の中から売り上げの20%を占めていたものをゼロにできたら、粗利が倍になったのと近しいくらいのイノベーションですよね、PL上の中で。なので、これをゼロにするっていうことってできないんだっけってことを考え始めた。

その中で、さっき話してたお客様からお褒めいただいていたブログの件があって。もともとどちらかというと、自分がお店屋さん志向っていうよりもメディア志向なんだよな、って言うのを思った時に、いわゆるEコマースと、いわゆる雑誌みたいなメディアって何が違うんだろうってことを考えたんですね。

ファッション誌とかインテリア雑誌とか、モノの情報の集積じゃないですか。そうすると、Eコマースもモノの写真とテキスト、モノの情報の集積っていうことで言えば、全く同じものであると、本質的には。

雑誌はおもしろく読めることを優先している。かたやEコマースのほうは買いやすいということを優先しているということでしか違いがない。一方雑誌は、お金払って買ってもらえて、かつ集客力があるから広告まで入れてもらえている。

僕らもおもしろく読める商品の情報の集積ということにすれば、広告を出す側から取る側に変わることができるんじゃないか、と。

そうすれば当然、さっき言った広告の出稿っていうのは、当然のことながらゼロになるかもね、という。その時はもう、ただの与太話に近い話。

ただ本質は、そこにどうやっていくかということはいろいろあるけども、本質はそうだろうというところの中で決断したっていうのが、2010年の終わりくらいごろですかね。

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2 お客様が神様である必要はない--ECサイト「北欧、暮らしの道具店」「ファクトリエ」に共通するサービスへのこだわり

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