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「経営者」が育てる次世代リーダーの方法論とその意識とは~次のリーダーをいかに開発するか責務として考える~(全3記事)

「放送が終わると同時に注文が来るかわかる」ジャパネットたかた創業者が語る、伝えることの難しさ

2015年6月3日、ProFuture主催 経営プロサミット2015にてジャパネットたかた創業者・髙田明氏とProFuture・寺澤康介氏の対談が行われました。このパートでは、通販番組「ジャパネットたかた」の名物社長として成果を出し続けていた髙田氏が、能力を発揮するためのマインドセットについて語ります。さらに、自ら通販番組のMCとして立ち続けた経験から、人に伝わるかどうかが正確にわかるというエピソードも。伝えたつもりで伝わっていない、ということはよくありますが、そこを分ける要素はどこにあるのでしょうか?

できない理由は自分が作っている

寺澤康介氏(以下、寺澤):ご講演の中でもマインドの重要性っていうことをすごくお話をされていましたけれども、ひじょうにマインドが大事。ただこれは、1日講義されたからマインドがつくかというと、なかなかそういうものではなくて、普段からの心がけが……。

髙田明氏(以下、髙田):もうそれは常に語り続けること。私も29年間社長をやってまして、振り返ってみたら29年間、毎日、今でも語り続けているような気がしているんです。

私は30年いるベテランの社員でも、今入ったばかりのパートのみなさんにも、同じ立ち位置でしゃべります。熱い情熱を持って語る。パッションというのをすごく持って語ります。

「三つのション」というのがあって「ミッション」と「パッション」と「アクション」という、ミッションを持って夢を持って情熱を持ってアクションを起こしてそれを実現していくという「三つのション」が必要だと思います。

先ほどちょっと社長とお話ししたんですけど、やっぱり人間「できない、できない」って悩むことってございますよね、人事制度でも何でも。でも、できない理由って何でしょう?

私はこう思うんです。できない理由は自分が作っていると思うんです。できないって言葉で言ってるのは自分でしょう? 本当はすべての人ができるんだけども、できないっていうところからスタートしたら、できるわけがない。

子どもの教育なんかでもすごく僕は思うんですけども。この前NHKの「課外授業 ようこそ先輩」という番組のロケがあって、長崎の平戸小学校へ54年ぶりに教室に行きまして、3日間通ったんですよ。そこで24人の生徒と8時間面談したり、3日間朝6時半ぐらいに家を出て、佐世保から1時間ぐらいかけて通いました。

20数分の番組だったんですけども、6年生なんかだと、もう子どもじゃないなと思ったんですよ。向き合ってみるともう大人と一緒だなと。大人が子どもを見る時に、子どもだと思うんですけどそうじゃないんですね。

会社もそうかもしれませんね。新人だと思っていても、本当は秘めたすごい力を持っていて、それをどれだけ引き出せるかということ。引き出せない子もいて、やっぱり今でも悩んでるんですよ。その人たちの力を引き出してあげること。

できないと言っている子に「本当はできるんだよ」っていうのも教育の一環。まず自分ができると信じないとできないですよね。ですから私はそれを自分の中に覚悟として決めたんですよね。やってやらせていただいてできたっていうことだったんですけども。

ゴルフで「90切り」の目標を設定

髙田:今はゴルフに覚悟の言葉を決めてるんですよ。先ほどみなさんは私をゴルフが上手いっていう顔で見ていただいたんですけど、社長、そんな風に私を見てらっしゃいますかね? そうは見えませんですか? 

寺澤:じゃあ挙手していただきましょうか(笑)。髙田さんがゴルフが上手だと思われる方はちょっと手を挙げていただけませんか?

髙田:今挙げた方は人生間違ってますね(笑)。

(会場笑)

髙田:ゴルフを始めたのは20年前ぐらいで、ジャパネットカップという、ラジオで募集してっていうのを福岡の方でやってるんですよ。それを含めて年に2~3回お付き合いで行っている程度で、実は半年ぐらい前のスコアは139なんですよ。でもちょっとやばいなと思って、社長やめる覚悟をしていましたから。

昨年の暮れに、ある銀行の頭取や地域の方と10人ぐらいで食事してる時に、酒が入りましてね「1年以内に90を切る」と宣言しちゃったんですよ。

(会場笑)

髙田:みんな信じてないんですよ。会社で言ったら「とんでもないことを宣言しますね」と言われちゃったんですけど。140の人が1年で90を切ると思いますか?

そう言いながら、4月まで何にも手を打ってないんです。もうあと時間がないじゃないですか。5月に入ってちょっとやろうと思って、レッスンに2回行きました。ここの指が痛いんですけどね。

それで「90を切るには」っていう倉本さんの本を買いまして、その本を2回3回と読んでいるうちに、140だったのが110で回ったんですよ。そしたら社内から「おぉ~」って。これ、100切るのはそんなに問題でもないなって思いました。倍飛ばせばいいだけですから。

(会場笑)

髙田:簡単ですよ、倍飛ばせばいいんですよね? ゴルフされてる方はわかりますよね。僕がなぜ90にしたのか、なんで100と言わなかったんですかと聞かれた時に、100は簡単じゃないかと思って、80は無理だと思った。90はちょうどいい難しさだったんですね。

本を見たら「パターを30回以上振ったらもう90切れない」と倉本さんが書いてらしたんですけどね。なんかいけそうな気がしてるんですよ。

6月に文化放送さんのくにまる(ジャパン)さんっていうラジオで5日間番組の収録があって、いろんなことを語り合うっていう回がありまして、そこでゴルフの話がちょっと出たんですけど「もし90を切ったら特別番組やってくださいよ」って言ったら、その場で決まりました。

「もし90切ったら文化放送で特別番組を組みますよ」って。だから僕はやらないわけにはいかないんです。

やれないって僕が言ったらやれないから、やれると思ってます。たぶんこうしてみなさんに聞いたら、ほとんど99%ぐらいの人が手を挙げませんか? どうですか? みなさん。90は切れるだろうと思われる方は手を挙げてみていただけません? ……ほら!

(会場笑)

一生懸命やった失敗は必ずその人のプラスになる

髙田:教育とか思いっていうのはこれなんですよね。だから私は90を切る。ゴルフの中に教育とか生き方があるというのは、1年ぐらい前から語り出したんです。夢を語る一環として、僕は今ゴルフやってますよって。その時は120を目指してたんですよ。

120はアウトでもインでもどっちから始めても60-60でしょう? 70の時にあと50で回ろうとするんですけど、ちょっと昼休みに1杯酒を飲むんですよ。これがダメなんです。50で回ってる途中で、さあ残すところあと5ホールぐらいになったら、そこから大叩きしてるんですよ。

その時人間はどう考えるかっていうことですよね。その時に僕がどう考えるかというと、切り替えるんです。120は、70いった時にじゃあ後のハーフを50で回ろうと目標を変えました。そして17ホールぐらいに来た時に、もういよいよこれは足してみたら140ぐらいになっちゃうんですよ。また元に戻っている。

その時にどういう目標を人間は立てるか。「わかった、このPar4を1回でもいいからパーで取ってみたい」と切り替えたら、そこに120の時と同じぐらいの目標が自分の中に出てくるんですよ。しかしさすがにうまくいかないんですよ。18ホールに来ました、もう140以上叩いている。

さぁ、最後のパター。その時の目標は決まってるんですよ。10mのパターをここから入れる。そこまでもう8打も9打も打ってるんですよ。「10mを入れる」っていう目標に自分の目標を変えます。スーッと入った瞬間に……入ったかどうかは言いませんよ?

(会場笑)

髙田:でもこの瞬間に、自分の人生の目標が描かれてるんです。私は夢を語るとか、リーダーが部下を教育するのはそういう教育でもいいんじゃないかなと思って。

自分は自己更新っていう考えで、プロセスを100%頑張って、結果はあまり気にしない。そこに至るまでのプロセスで最高の努力をしたかっていうことを教育はやっぱりやっていくべきじゃないかなと。

だから失敗して怒られるっていう部下がいますけれども、本当は失敗した時になんで怒られるかを語らなければいけない。

一生懸命やった失敗は必ずその人のプラスになるし会社に貢献するんだけれど、失敗した時に「なんで社長は怒るんですか? 怒らないと言ったじゃないですか」と言われたら「お前、100%やったか?」と。

ちょっと話がずれましたけど、僕はそんな風に、ゲーテが言うように、信じれば最終的に思うとおりの人間になると信じて生きてきていますし、そういう意味ではこのリーダーの教育でも部下の教育でも、マインドっていうのはすごく大事なんじゃないかなぁという気がいたします。

「伝えたつもり」がいちばん怖い

寺澤:ちょっとスポーツつながりで、今日の講演の中でも錦織(圭)さんの話が出ましたけれども、錦織さんがいまこれだけうまくいっているというのには、マイケル・チャンコーチの存在っていうのが言われていますね。これはいまのお話とすごくつながると思うんですけれども。

マイケル・チャンさんがテレビで言ってたのを見たんですけれども「錦織は自分で自分に限界を作っていた」と。能力はあるのに、一流のトッププレイヤーと対戦する時に「自分はまだ憧れている」とか「対戦できて光栄だ」みたいな気持ちがあった。「いや、負かす相手だろう」と。

そこのマインドを変えることによって能力が発揮されると。トレーニングっていうのもものすごく大事なんでしょうけども、マインドセットがしっかりできてないと、常に限界を作ったところで留まってしまうというところがやっぱりある。

髙田さんのお話の中でも、100%自分を信じて、自分が目標を立てて立ち向かうマインドが非常に重要であるということでしたが、それはリーダーにとって非常に大事なことなんですね。

髙田:めちゃくちゃ大事だと思いますね。ところが、意外や意外、自分が「伝えてるつもり」になっていることはありませんか? いま社長がお話しいただいたことや私がお話ししたことはみんなやってるんだよという方が、たぶん半分以上いらっしゃると思うんだけれども、本当は相手がそれを感じてないということがいっぱいあるんですよ。

なぜ私がそう言うかというと、私は物を売ってる人間なんですけど、100%とは言いませんが、90%ぐらいは放送が終わったと同時に注文が来るかどうかがわかります。

自分が「伝えた」「伝わった」と思った瞬間にそれが来るんですけど、自分が「うまく伝えることができなかったな」って思ったら、本当に注文の電話がほとんど鳴らないんですよ。

私の会社にも10人くらい若手の語り手がいますけど、その教育のためにあと1年残ってるんです。「伝えたつもりがいちばん怖いよ」「やってるつもりがいちばん怖いよ」って。みなさんの人事の分野でも「伝えたつもり」とか「言ってるつもり」になってませんか?

伝えたい気持ちが伝わって相手が徹底して理解したならば、相手は反応を示して、すごく自分たちの思うとおりになってくると思うんですよ。

偶然や運は信じない

髙田:長崎県の清峰高校という名前を聞かれたことはございませんか? 佐世保市と平戸市の中間に北松南高校というのがあって、そこが清峰高校という名前に変わったんですけど、実は春の甲子園で優勝したんです。10年ぐらい前ですかね。

そこの吉田さんという監督と1回会うことがあったんです。選手はみんな地元の高校生なんですよ、普通は野球入学でしょう? みんな佐世保の近郊に住んでいる生徒で日本一になってますから。

それが今のマイケル・チャンさんのことと同じで、おそらくスキルも一気につけていくわけですけど、やっぱり目指すものとか「思い」っていうのを相当語られたんじゃないかと思いますね。

だから奇跡じゃなくて、起こるべくして起こってることじゃないかと思うんですね。偶然じゃなくてですね。

僕は偶然だったり、運がよかったっていうのはあんまり信じないんですよ。運がいいというのは1回や2回あるんですけど、100回続きません。100回続けば必然になると僕は思っています。

いまのコーチのお話も、時間が制限されている中で、コーチは何をコーチするかということですよね。だからマイケル・チャンさんの影響は相当錦織さんの中にあるんだろうなぁと思います。テニスの基礎はもともと全部錦織さんは持ってらしたんですもんね。

ゴルフの本の中にも書かれているんですけど、基本の基本の基礎とか基礎知識は絶対に要るんですね。これを無視しては今申し上げていることは成り立たないですね。

でも本を読んで、僕のフォームがおかしいとか言われても、安心したのは、基礎の基礎だけを覚えれば、自分流の構え方で打っていいんだと。無理にフォームを変えようとなんかしたら、逆に90なんて切れなくなるっていう。「あ、なるほどなぁ」と。これを読んだ瞬間に「あ、90いくな」と思ったんですけどね(笑)。

寺澤:ありがとうございます。マインドが大事だと。そしてもうひとつは、とはいえそのマインドをどうアクションに変えていくかということですね。

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