なぜ夫は妻の話を聞かなくなるのか?
聞く力を鍛える5つの方法とは

Julian Treasure: 5 ways to listen better

妻が夫に愛想を尽かすケースのひとつに「話を聞いてくれない」が挙げられます。では、なぜ夫は妻の話を聞かなくなるのでしょうか? サウンドコンサルタントのJulian Treasure(ジュリアン・トレジャー)氏は、科学技術の進歩や音声情報の過多によって、人々の「聞く力」が低下していることを指摘します。人々のリスニング力の喪失に警鐘を鳴らすとともに、聞く力を鍛える5つのエクササイズを紹介しました。(TEDGlobal 2011より)

夫が妻の話を聞かなくなる理由は、音のフィルターにあった?

ジュリアン・トレジャー氏:私達の聞く力は失われつつあります。コミュニケーションの60パーセントをリスニングが占めているのにも関わらず、たったの25パーセンントしか理解できていないのです。この会場の皆さんは違うと思いますが、これは事実です。

(会場笑)

リスニングを「音から意味を取る」作業ととらえてみましょう。これは精神的な抽出作業で、クールな方法でこれをやってみたいと思います。

(雑音が流れる)

例えばこんな状況の飲み会で、「デビッド、サラ、ちょっと聞いて!」と言うとしましょう。そうすると何人かが気づいて立ち上がるでしょう。こうして雑音とシグナルを聞き分けてパターンを認識します。

区別はまた違って、例えばこのノイズを数分間聞くと、もう聞こえなくなります。変化のあるものを聞き取るので、変化のない音は聞こえにくくなるのです。

そこにはフィルターが存在します。それによって必要なものに集中できます。ほとんどの人がこれに全く気づいていません。けれどある意味、このフィルターが真実そのものと言えます。なぜならそれ自体が意識の注目そのものだからです。

1つ例を紹介しましょう。意識することが音やリスニングにおいて非常に重要なのです。私が妻と結婚した時「出会ったの頃のように彼女の話を毎日聞く」と約束しました。しかし今では毎日できていないことになってしましましたが。

(会場笑)

それでも関係を持つ上でいい心がけではあります。

音には時間や空間など、様々な情報が含まれている

それだけではありません。音は空間と時間を教えてくれます。今この部屋で目を閉じてみると、音の反響で空間の広さを感じることができます。ほんの僅かな雑音によって、どれだけの人が自分の周りにいるのかもわかると思います。

音には時間情報も含まれているので、時間だってわかります。実を言うと、過去から未来への時の流れを体感する主な方法はリスニングだったりします。

「音そのものが時間であり意味がある」

すばらしい引用ですね。

人の話を聞かない世界は他人に無関心になる

私は序盤に、「聞く力は失われつつあります」と言いました。なぜそう言ったのか? これには多くの理由があります。

まず初めに、私達は様々な記録方法を発明してしまいました。書面、録音、録画などなど。丁寧で正確なリスニングの特別な価値などもうなくなったのです。

2つめ。視覚的・音声的な不協和音で、今や世界は非常に騒がしくなっています。ただただ聞きづらくてしんどいのです。多くの人がヘッドフォンに逃げ込み、公共の音声的風景は、何百万もの小さな個人の泡のようになってしまいました。こんな状況では、誰も何も聞いていないのと同じです。

私達はせっかちになってしまい、おしゃべりはもういらなくなって、簡潔な説明を求めてしまっています。個人的には危険なことだと思うのですが、会話という術は個人放送なるものにうってかわられてしまっています。

悲しいことに、特にイギリスでは今やよくあることなのですが、そんな状況でのリスニングの量はどれほどのものなのでしょうか?

私達の感度は鈍ってきています。注意を引くためにメディアはこうして私達に叫びかけます。そのせいで静寂や繊細さ、声なき声といったものが聞こえづらくなっているのです。

リスニングの喪失は深刻な問題です。些細なことなどではありません。なぜなら、リスニングとは、理解へのアクセスだからです。意識的なリスニングが理解を生む。

人の話を意識して聞かないことによって、他人に無関心な世界を生んでしまいます。非常に恐ろしい世界です。

「聞く力」を高める5つのエクササイズ

ここで、意識的なリスニング力を高めるための、5つの簡単なエクササイズを紹介します。聞きたいですか?

会場:はい!

初めに重要なのは、沈黙です。1日たった3分の沈黙で耳をリセットして再調整し、静寂を聞き取ることができるのです。完全に無音である必要はなく、とにかく静かであればかまいません。

2つめ。私がミキサーと呼んでいるものです。最近では当たり前になりましたが、騒音の中にいたとして、何種類の音を聞き分けられるかということです。湖とかきれいな場所でもできますよ。「鶏が何羽いるか?」「どこにいるか?」「どこから波音が聞こえるか?」リスニングのクオリティを高めるにはいいエクササイズですよ。

3つめ。味わいと呼んでおり、美しいエクササイズです。平凡な音を楽しみます。例えば洗濯乾燥機。この音はもうワルツですね。1、2、3。1、2、3。1、2、3。すばらしい。注意して聞いてみると、何でもない音でもおもしろいのです。私はこれを隠れコーラスと呼んでいます。これは私達の周りに常にあるものです。

4つめ。1つ選ぶとしたら、恐らくこれが最も重要なエクササイズです。それは、リスニング・ポジションです。聞いている対象に対しての適切な聞き方を調整します。最初にお話ししたフィルターを使います。対象を意識するためのレバーとして、フィルターであらゆる調節をします。

聞き方や理解のスケール調整はまだまだありますので、楽しんでみてください。

5つめ。RASAという頭文字なのですが、リスニングやコミュニケーションの際に使えます。「RASA」とは、サンスクリット語で「本質」という意味です。  

RASAのRは「Receive」で、人に注意を払うことを意味します。Aは「Appreciate」で、「ふーん」「おー」「なるほど」といった、会話でのちょっとした相づちのことです。Sの「Summarize」は、「つまり」といって要約する大切さを表しています。そして最後にAで「Ask」で、相手に質問をしてみることです。

聞くという行為は人生そのもの

今となっては、音は私のパッションであり、人生そのものです。それ関係の本も書いています。多くの人にとっては難しいことになってしまいましたが、聞くという行為は私の人生そのものなのです。

全ての人が、意識的に耳をかたむける必要があると私は考えています。それは、空間と時間の中で私達を取り巻く世界、そして理解をもって精神的にも他人と繋がるためなのです。なぜなら私の知る限り、全ての根本理解は、芯からの理解とリスニングを伴っているからです。

だからこそ、スキルとして学校でリスニングを教える必要があるのです。なぜそれが行われていないのか、おかしなことです。学校でそれを教えることができたなら、恐ろしい世界でさえも人を理解しようとし、少なくともそのために話を聞くような場所にできるのです。

私個人にはどうすればいいかわかりません。でもここはTED。TEDのコミュニティならできます。私とお互いに繋がりあっていただければ、この願いを届けることができるのではと思います。

そしてリスニングを学校で教われるようにし、意識して人の話が聞ける世界にしようではありませんか。それは繋がり合い理解し合う、平和な世界です。今日は私の話を聞いていただき、ありがとうございました。

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