個人が多数の肩書きを持つ時代

奥田浩美氏(以下、奥田):みなさん、こんにちは。株式会社ウィズグループ、及びたからのやま代表をしております、奥田と申します。

今日は30分という短い時間の中で、かなり骨太な話をさせていただきたいと思っています。タイトルは「ワクワクを仕事にする! 人生の歩き方」。

まず、私の自己紹介なんですけれども、こちらのように、実はここに書かれていない30くらいの肩書きを持っています。

この30という肩書きを、私はすごく自慢したいのではなくて、これからの時代というのは、仕事か家庭とか、仕事か子育てかみたいな、たった二つとかじゃなくて、10も20も30も、いくらでも選択肢が増える時代だと、そういう風に思っていて。

この30くらいの肩書きのうち、私が今お金にしているもの、お金になるものっていうのはおそらく1/4、1/5くらい。

1/3くらいは、お金にならなくって、さらに、未来にお金になるか、またはそういうお金みたいなものは関係ない。そんなことを次々とやっています。

私の自己紹介ですけれども、まずこちらが一番大きな仕事。日本の最先端の技術を伝えるような、会議のプロデューサーをしています。

この下のほうに「最先端の舞台」って書いてありますけど、まさに、世界中の最先端の、日本国中の、あるいは日本初というような最先端の情報を伝えるような仕事をしています。

一方で、こちらも私にとっての最先端の舞台です。最先端。何が。先ほどの最先端というのと、明らかに違う風景ですが、私にとってはどちらも最先端です。そちらの話は後でさせていただきたいと思います。

大事なことは亀の卵から教わった

いきなりこれです。会場の中で東京以外の出身の方手をあげてください。多いですよね。

まずはこのスライド「亀の卵から生まれた」。私は別に亀の卵から生まれたわけじゃないんですけども(笑)。実は、一番真ん中、左にいる女の子、これが私が3-4才頃の写真です。

鹿児島の屋久島というところの、栗生浜という、亀の産卵地で3才から6才まで過ごしました。

亀の卵から何が生まれたか、お聞きします。この中で亀の卵を食べたことがある人? いないですよね。今までこの質問を、何十回と聞いてきて、手を上げてくれた人、ひとりもいませんでした。

実は屋久島で私が小さい頃、亀の卵を食べて暮らしていました。こう聞くと、野蛮だなとか、自然の保護によくないなと思う方が、この中の99%だと思うんですけども。

実は、産卵された亀の卵の1/3くらいを、その町の中学生が町の中を売り歩いていました。そして、それは妊婦さんであるとか、お年寄りの方の滋養のために。

その売ったお金を中学校で集めて、そして、亀をふ化させて海に帰していくわけです。

そういう背景を知っているので、誰がこの卵でいい思いをしたかを考えて、この話をすると、みんな、1/3の卵でお年寄りも元気になって、妊婦も。これは昭和 40年代くらいの話です。

しかし今、亀の卵を食べるって言ったらもう、悪いこと、自然破壊って言います。でも私は3才から6才の時に、亀の卵を食べる地域の人には、食べるなりの理由があって、食べないって選択をした人には、食べないなりの選択、あるいは正義があるということを知りました。

そういう世界の中で、異なる価値観があるんだと思っていました。

かっこいいと思うことを一番にやろう

さて、今日は「変化を起こす女性たちに贈る行動集」ということで、私、去年から1年かけて3冊の『人生は見切り発車でうまくいく』って本と『会社を辞めないという選択』という本『ワクワクすることだけやればいい』と、3冊の本を出したんですけれども。

この3冊の中で30分で、今日いらっしゃる女性の方々にお伝えしたいようなことを、ピックアップしてきました。

まずですね、こちら。『人生は見切り発車でうまくいく』という本の中から、ひとつフレーズを紹介します。

私はこの本の中で一番言っている言葉が「かっこいいと思うことを一番にやろう」ということです。

人生の選択肢がいっぱいある時、例えば、就職するとしましょう。就職する時に、あの会社のほうが規模が大きいとか、この会社のほうが給料がいいとか、大企業に行くか、小さな企業に行くか、この仕事をするか、あの仕事をするかってっていう時に、いろんな軸を持った数値であるとか、そういうのを考えると、人間はすごく思い悩みます。

でもその時に、自分がどれが一番かっこいいかという基準で、私は娘にも選んで欲しいという意味で、私も自分でそうやって選んできました。

かっこいいっていうのは、単純にミーハー的なかっこいいっていうことではなく、自分がかっこいいと思えることによって他の人も協力をしてくれることだと思っています。

社会にとってかっこいいことは、これから何か進んで行く時に、他の人も「あ、それ、いいことだね」って協力してくれたり、憧れたりしてくれるような内容、それがかっこいいってことだと思って、常に私はこの軸を選んできました。

今、私がかっこいいと思っていることをひとつ紹介します。これが私がもう一つやっている会社。先ほど最先端の地ですっていうふうに、山の中で家が朽ち果てていくような地域。そこでやっている私の仕事です。

今、私は過疎地の中で高齢者を相手に、タブレットですとか、スマートフォンを教えて、その人たちが困っているようなことを逆に吸い上げて、それを製品化しようという仕事をしています。

ここに書かれている共創の場作り、共に住民と何かを作る。これが、私が今一番かっこいいと思っていることです。

お茶の間で使うものは、お茶の間で作ろう

これは四国の徳島県の美波町という、徳島市から1時間半くらいの、人口7千数百人のところに作った私の事務所です。そこを住民の方々向けに週に1回とか、2回、開放をしてまして。

ITに関してわからないようなこと、タブレットとか、スマホとか、PCでもいいんですけれども、何でも聞きにこれる場をつくっています。

その時に、みなさんが何に困っていて、本来はどんな製品があれば高齢者の方々はスマホとかタブレットとかPCとかを買うのか。そういうことを調査をしています。

私たちにとっては、高齢者が使えないということ自体がとても大切な情報です。それはなぜかというと、基本的に私たちが今使っているスマートフォンとかタブレットは、主に、シリコンバレーなどを中心に、22才~40才くらいの主に男性が作っていると思っています。

スマートフォン、タブレット、この中に高齢者が使いたいもの、あるいは女性が本当に使いたい物があるのか? 基本的にはおそらくシリコンバレーの中心、22才~40才、給料はおそらく1000万以上はもらっていて、スタンフォードとか、そういう先端の大学を出て、そういう人たちが作っているものなんじゃないか。

例えばお店に行ったときに、おじいちゃん、おばあちゃんに、ここで好きなもの買いなさいって言って、並んでいるものが、キャミソールとか、ホットパンツみたいなものしか無いところで「何で使いたいと思わないの?」「何か使いなさいよ」って言っても、キャミソールは買わないよねって、そういうことです。

なので私は今、お茶の間で使うものは、お茶の間で作ろう。そういうことをすすめています。

なぜそういうことをやっているかというと、今、開発というものが、とっても身近でやれるようになったと思っているからです。

昔は私たちが何かのWebサービスを作ろうと思うと、大きなサーバーを持って、おそらく1000万、あるいは1億といった設備投資が必要だったものが、今やいろんなWebサービスによって、クラウドなど仕組みを使うとどこにいても製品が作れる。あるいは小単位のもので開発ができる。そういう時代が来ています。

開発者は実際に使う側の目線でモノを作っていない

こちらのほうは、今日はあまり長く説明できないと思うんですけど、私が四国の徳島でやっている実証実験です。

そろそろおじいちゃん、おばあちゃん、出てくるかなと思うんですが、こちらでやっているのが、グラスですね、メガネ型の端末。

これはジェスチャーで動きます。ジェスチャーで、あ・い・う・え・お・とか、ピってやったらメールが飛ぶ。カシャっとやったら、写真が撮れるというようなことを、地元の方々に使ってもらって検証をしてもらっています。

こちらに写っている手前の方が、開発をしている会社の方で、時々ちらっと見える奥の方、奥の外国人がこの開発者です。スウェーデン人です。

この彼らがこの実験をした前の週に、実はバルセロナのモバイルショーみたいなところに行って、絶賛されて帰って来ました。ジェスチャーで動くとか、反応が早いとか、素晴らしいと。その製品を一週間後にこの南町という過疎地に持って来たんですけれども、そこで言われたのが、まず一言。

おばあちゃん、この、手をずっと前にしている姿勢は辛い。だれが使えるんだろう。電車の中でこんなにしてたら、痴漢に思われるわな。

結局、何かの開発をする時に、開発者は実を言うと、ものをどうやって早く動かすか、ものをどうやって小さくするか、そういうことが、どんどん頭の中にあって、実際使う側、特に多様な人の側から作っていくというのが発想がないですね。っていうようなことを、ここでやっています。

そして私たちは、お茶の間で使うものは、お茶の間で作るっていう発想のもとに、地方の活性とそれを繋げる自治体と出会いまして、今週鹿児島に行くんですけれども、鹿児島の肝付(きもつき)町というところで、共創の町肝付というプロジェクトを立ち上げます。

その町は、都会で作っている最先端のものを、どんどん私たちの町に持って来てください。持って来てくれたら、住民、あるいはお子さんのいる家庭とか高齢者とか、そういう人たちがどんどん使って試してあげましょう、そして一緒にプロダクトを作っていきましょうと。そういう町を作り上げていきます。

それが上に書いてある、かっこいいと思うこと。

私はこういうことが一番かっこいいと思ってやってるんですが、実はまだ2年間、あまり利益が出ていません。でも、利益が出ていないというものの、これは今どんどんと反響がありまして、これからお金を生み出してくる分野になると信じていますし、実際動き始めています。

私の中ではこの本の中に、あふれる思いがあれば、社会を動かして自治体が動いたり、さらに国も動こうとしています。

でも最初は、こんなのやっても誰もついてこないよなとか、儲からないよなっていう、軸で考えていたら生み出せないものが、かっこいいことややってみようっていうので動き出せたりする。そういうことを、私は本の中で書いています。

あふれる思い。実は、あふれる思いっていうのは、ものすごい遠くを見てあの世界に行きたいな、こういう世界を作り上げたいなっていうような、そんなものすごく高尚なものではなく、以外と身近に、課題の中から生まれてくる場合があります。