人類がより進化する社会をつくる会社を目指している
山口豪志氏(以下、山口):次の質問はきっと皆さん白熱すると思うんで、このために時間を取っておいたと言っても過言ではないんですけど。テーマとしては「未来の話」をぜひしていただきたいと思っています。
皆さんの会社で「今後こんなことしていきたい」とか、もうまさに10年後とか、30年後とか、もしかしたら100年後、皆さんの会社であり、皆さんはどういうものを残したいかっていう要望をぜひ聞かせていただきたいと思うんですけど、森川さんからお願いできますでしょうか?
森川亮氏(以下、森川):そうですね。メディアとは何かということだと思うんですけど、やっぱりどうしてもビジネスになってしまうと、どうやったら儲けるかっていうことが基軸になりますよね。
でもメディアというものは、本質的にはメッセージを伝える役割で、かなり社会に法規的なものがあると思うんですよね。
僕的に考えると、やはり世の中を元気するということはすなわち、元気になるようなメッセージを伝えると。やはり世界中の人を応援するとか、いつも笑顔を映すとかですね。何か元気なメッセージが流れているか。
多分それだけで、結構みんな明るく楽しく生きられるんじゃないかなって思うんですけど、何かやっぱり普段から悲観的なものとか、残念なものとかそういうものが流れているので、だんだんみんな元気がなくなったりするので。
むしろシンプルに言うと、世界中に笑顔が溢れるような、そういうすてきな言葉とか、すてきな人とか、すてきなサービスみたいなものをバンバンバンバン降らせることによって、人間は元気になるし、そのことによって、人類がより進化してくるような、そういう社会を作る会社にしたいなと思っています。
司会:ありがとうございます。
「会社の最後は解散でいい」
青野慶久氏(以下、青野):サイボウズはチームワーク溢れる社会を作るということなので、チームワークにこだわっていきたいと思っています。チームワークにこだわると、結構みんな楽しく生きられるんじゃないかと思っています。
例えば、スポーツをする時に、足が速い時に、例えば100m走で1位になったと。それは嬉しいんですけど、リレーで勝ったほうが嬉しくないですか? 何しろバトンを持ちながら繋いでいかれた時の。
やっぱり、みんなで自分の役割を果たして貢献して、切磋琢磨して、感謝されて、実はそこに人間が幸福を感じるツボがあると思うんですよね。武者小路実篤が「幸福は感謝に宿る」みたいなことをおっしゃっていて、まさに貢献だったり、感謝だったりっていうのをチームワークとともに広げていくっていうのが、中長期的にやりたいことです。
ただこれ、僕がやりたいことなんですよ。これをメンバーに引き継ぎたいとは思ってはいないんですよ。なぜかというと、メンバーはメンバーで、また多分違う要求があると思うんですよね。
だから、よく会社が永続してなんぼみたい話があるんですけど、僕はちょっと疑ってまして、僕としては最後は解散でいいんじゃないかなと思ったりしてます。また次の世代の人たちが、次の会社を作ったらいいと思うんですよね。うまく分割するなり、引き継ぐなりして、ちょっとそんなこと思いながら商売してます。
山口:ありがとうございます。
ミッション達成には1000年以上かかる
山口:佐野さんの未来、おもしろいな。青野さんがすごい本質的なところを突いてきましたね。
佐野陽光氏(以下、佐野):会社が永続するべきかってすごく難しい問題ですよね。
本当はだから、会社ってそれこそミッションがあったら、ミッションが達成したら解散すべきですよね、簡単に言うと。
だけどその定義がすごく曖昧なのに、すごく強い権利が許されてる。法人ですからね。ほぼ人と同じ権利を認められてる変な法の下の人格っていう。僕はそこで悩んでるんですけどね。
僕はどっちかっていうと、クックパッドを始めてこういう会社っていう形態にしたのも、ゴールは本当にすべての人が、日常で料理を楽しんでる世界にすることなんですよ。
当たり前のように料理が生活の中にあって、これって結局作る人を増やすのにすごく繋がっていて、食に関して主体性をみんなが持つんですよ。
だから、食うには困らない人ばっかりの社会になるんだと思ってて、すごくいろんなイメージができるんですよね。料理をする、料理があるだけで。それを徹底的にやる。
それをすべての、100億人ぐらいになるんだとしたら、100億人がすべて当たり前にそれが行われているような世の中にするっていうのがゴールなんですけど、始める時から大体100年ぐらいはかかるかなと思ったんですよね。
そうすると多分生きてらんないんです。僕は100年も。27歳ぐらいの時にやって。そうすると何かの組織というか、何かの僕以外の形にそれを宿さないと、これは達成できないミッションだというのがあったので。
会社っていう形態を選んで、その会社を本当の意味でパブリックなもの、一部の人が所有するものではなくて、みんながパブリックが所有しているものにしたいなというふうに今進んでいて、10何年やっても本当に1パーセントもいってないので、このままだと1000年ぐらいかかっても達成できないなというような状況なんですけど。
あと、何話してんだっけ? 「中長期的に考え、今後していきたいこと」。でも、それです。それを徹底的に、料理をするようにしたい。料理が当たり前になる。しかも、それが生活の中で楽しみになるような社会にしたいなと。
山口:ありがとうございます。
「オワコン化」との戦いが面白法人の宿命
山口:柳澤さんは?
柳澤大輔氏(以下、柳澤):そうですね。今の流れを踏まえる話とそうじゃない話、どっちにしようかなというふうに思って今聞いてたんですが。個人的なのと会社とあって……。
会社に関しては去年12月に上場しましたので、1つ問われているのが「面白法人、おもしろくなくなっちゃうんじゃないの?」というご意見とか、「クリエイティブと経営というのは両立するのか?」と。
この問いは公益資本主義、世界に貢献と経営的に利益を上げることが両立するのかっていう、本当にほぼ同じ問いだと思っているので、これに関して新しいチャレンジする義務をいただいたので、これからそれを証明していくっていうことだと思っているんですが。
株主という1つの仕組みを、株式市場という株主の人に参加してもらうっていう仕組みを使っていろいろおもしろいことをしていこうっていうのは、中長期的に考えている中の1つで、外から見ておもしろいって言われなきゃいけないので。
おもしろさを追求している企業の仕組み、ギャグ漫画とかもそうなんですけど、短命に終わるっていうことなんですよね。気をつけないといけないなと。
大体おもしろい時期って一瞬なので、「なんか終わったよね」っていうか、「オワコンになっちゃったね」って、「おもしろくなくなっちゃったね」って言われていく宿命を背負いながら戦い続けるみたいな、非常にしんどい戦いなんですよね。
そう考えると株主を使って、とんでもなくおもしろいことを最初にバーンとやってしまうと、その後できなくなってくるので「なんか最近つまんない」みたいな話になっちゃうので、徐々にそこはやっていこうというふうに個人的には思っています(笑)。
社員200人を人事部に配属
柳澤:1年目に関してやったことは、まず今うちの社員200人、全員名刺に「人事部」って入ってるんですよ。おもしろいコンテンツを作るために優秀なクリエイターの採用は必須です。
うちはリクルートにちょっと近いので、退職者も独立者もどんどん応援して、最近は公認していて、ある程度出ていってしまうので、どんどん入ってくるっていうとこで、全員人事部ってつけるだけで採用意識が高まって、結果的に半年間採用コストが30パーセント下がるっていうような、非常にシンプルで効果的なアイデアだったんですよね。
これ、どの会社にもできると思うんですけども。であれば、株主にもまずは人事部になってもらって、採用に協力してもらって、株主人事部化作戦ということで、株主から採用したら、何か金銭的な対応とかできないのかって。そういうのは法的に何とか品供与罪になっちゃうのでできないというので、鳩サブレを39枚送るっていう、そういう謎のところに着地したわけなんですけど(笑)。
(会場笑)
それでも、株主に人事部になってもらおうと。今株主専用のSNSがあって、株主の中の意見交換をし、それを取り入れていくと。それも結構難しくて、本当は僕らがいろいろコメントしたいんだけど、それもできないんですよね。
やはり、株主平等主義って仕組みがあって、もし発信するなら全部に入れなきゃいけないので、株主限定のコミュニティーにしてるので、なかなかせっかくいい意見にも、こちらのコメントができないんで、一方通行になっちゃうんですね。
そんなような仕組みをやりながら、いろいろ調べてたら、やっぱり長期保有してる人に対しての株主優待を多くするみたいなことをやってる会社はあります。
ただ、長く保有しているというチェックが、なかなか本当にずっと持っていたかっていうのができないので、年に2回しか株主名簿が見れないので、そのタイミングで売ったり買ったりして、そのタイミングで持ってると一応長期保有しているっていう判断になるんですけれども。それはそれでいいと思うんですよね。
人に対して、何かしっかりと1つのものを一緒にやっている仲間だということで、何か優待を増やしていくっていうようなことで、長く持ってもらう。そう考えると、いろいろ考えたんですけども、これはサイトにも書かせてもらったんですが。
やはり配当をなくすっていうのは、ある種、株価のキャピタルメインで株主に還元するっていう発想になるので、株主と一緒に長くやっていこうという考え方と矛盾するんじゃないかなっていうふうに個人的には思い始めて。
やっぱり配当増やすっていうのは早いタイミングでやるべきだろうなっていうふうに、株主の発想としてはそっちが正しいんじゃないかなっていうのはサイトで発信させてもらったので。
まとめると、そういった株主に対して一緒に戦っていく仲間だと思ってもらえるようなことっていうのは、中長期的にやっていきたいなというのが会社としての話ですね。
働く場所や住んでいる所を楽しくすると、人生がおもしろくなる
柳澤:個人的には、先程出てきたブレストっていうのを今、鎌倉の地域の活動でやってるんです。地域のお年寄りから学生を集めて、この街をどういうふうにしておもしろくなるかとか、どんなプロジェクトをやるかっていうのを月1回みんなでブレストしてやっていくと、もう3年ぐらいやってるんですけど、どんどん街が好きになる。楽しくなってきます。
カマコンバーっていう、今夜中に木金だけ9時からやってるバーがあるんですけど、そこに誰かしらいて、何かちょっと街の企みがあるみたいな。その活動を通してわかったのは、やはり働く場所を楽しくすると人生がおもしろくなるなという思いで面白法人に就きましたけど、住んでるところもやっぱり楽しくなってくると、もっと楽しくなるんですよ。
僕もう本当に、これやって会社も楽しいけど、今地域も楽しいんで、どっちももう無敵な状態になるなっていうのがわかったので、なかなか皆さん住むとこって適当に便利さとかで決めてるんだけど、本当はその街を作っている感覚になれる場所に、あとからでもできると思うんで。
その方法はいくつかありますけども、これをキーをもっとバックアップするべきだな、っていうのが僕が気づいた観点で。
そういう地域の活動、アメリカなんかは推奨していると思いますけど、できればどこに本社を置くかっていうのも、その会社のビジョンと理念なので、そこを置くんであれば、その地域に対して貢献する社員の活動のうちの活動をバックアアップすることで、より楽しくなってくるんで。
本業にも多分、経済効率もあると思うんですね。実際見てると、本業で多少ちょっと行き詰まりそうな方が、地域の活動で楽しくなってきて、また本業が楽しくなるって世界があるんで。
ここを会社側がバックアップするような体制にあると、日本全体が元気になるんで。それは個人的な活動なんですけれども、いいことなんじゃないかなと思って今ちょっといろいろ実験したんで、議論のノウハウもたまっています。
いろんな地域に展開したり、企業にも興味あるところにはお話したりっていうのができるかなっていう、長期的に考えていることです。
山口:ありがとうございます。