慈善活動にはパンクの精神がたりない--「協力」と「抵抗」で世界を変えるフィランソロパンクとは

フィランソロパンク: ジョン・クルーグ at TEDxTokyo (日本語)

非営利団体「トイレット・ハッカーズ」の共同創設者であるジョン・クルーグ氏は、世界の公衆衛生やを糞尿問題はじめとした社会問題の解決に取り組んできました。従来の伝統的な奉仕活動では問題の解決には至らないと気付いたクルーグ氏は、世界に変革を起こすため、フィランソロフィー(慈善活動)とパンクロックを組み合わせた「フィランソロパンク」という造語を作成。このスピーチでは「フィランソロパンク」に必要な要素について語られました。(TEDxTokyo 2013 より)

黒澤明監督作品『生きる』から学んだこと

ジョン・クルーグ氏:みなさま、こんにちは。今のようなご紹介を受けますと、どうやって集中力を保とうかととても心配になります。

日本に初めて来たとき、日本への理解というのは、とても少なかったんです。今もさほど知っているわけではありません。

私は自称オタクです。というわけで、最初日本の関心というのは、私が集めたコミックブック、アニメ。例えば、黒澤明のような映画からもきました。侍映画などもありました。

そして実際に日本に来たときに、あまりに興奮したので私は、まずは相撲に行きました。ただ、相撲場所のシーズンではなく、誰も相撲をしていませんでした。

それが、私の日本の最初の経験でした。日本への経験が続くということを祈っています。

今、日本のことでまだまだ発見が多いのは、日本映画です。特に、黒澤明監督の映画。日本の戦後の偉大な映画監督です。

黒澤監督が作った映画の中で私が特に思い入れのある映画があります。『生きる』という映画です。

『生きる』という映画のあらすじは、中年の市役所に勤めている人が、人生の晩年になってガンの宣告を受けるのです。そして、自分の内側を考えて、生きることの意味を考え出すのです。

自分は生きている間、あまり人を助けてこなかったということを思い起こし、それを追求していこうと思います。

やり方ですが、彼は夢・ビジョンがあったのです。近くの暗渠(あんきょ)、下水に蓋をして、そこを子供たちの公園にしようと思ったのです。

というわけで、その映画の主題と、私の持つ夢が関係あるのです。主人公、勘治さんと私に重なるものが、直接ではないんですけど、下水とトイレということで関係があります。

世界におけるトイレの問題

二度目の来日ですが、ありがたいことにINAXのトイレミュージアムに行きました。本当はタウンミュージアムなんですが、中にINAXのトイレの出展があったのです。

私は社会奉仕事業家です。私が率いている組織は「トイレットハッカーズ」といいます。とても不思議な語感ですね。トイレットハッカーというのは何でしょうか?

先進国の人々は、世界の40%の人々が基本的な衛生にアクセスがないということに気を回すことはほとんどありません。

もっともシンプルなトイレもありません。ただ単に不便なだけじゃない? と思われるかもしれませんが、そんな問題ではないのです。

下水溝の暗渠をトイレに変えたい

過去10年間、多くの子どもたちは、第二次世界大戦以降の武装戦よりも亡くなった人数の数が多いのです。

それは年間で言えば、150億人。子どもとしておよそここにいらっしゃる10倍の人数が亡くなるということです。どうやってこれを解消していくのでしょうか。

先ほどの『生きる』の中の勘治さんという主人公ですが、私の夢と希望からそれほどかけ離れた夢をもっているわけではありません。

下水溝の暗渠を、いつか私はトイレに変えたいんですけれども、でも挑戦は大きいということで、どうやってそれを対処していくのでしょうか。

いろいろな資源があります。でも私たちは、ベストな方法で資源を使いこなしているとは思いません。

フィランソロフィー(慈善活動)は、世界でいろいろとやっていますが、気取ったチャリティーイベント、パーティーなどの催しがあります。私自身もそういった主催をしたことがもちろんあります。

でも、こういった伝統的な奉仕活動、フィランソロフィーはあまり効果的ではない。もっとうまくやりたいということで、もっと資源の効率の良い配分方法を考えたいと思いました。では、どうやればいいでしょう。

慈善活動とパンクロックを組み合わせた「フィランソロパンク」

今、世界中でトレンドが起きています。本当にワクワクするような動きが起きています。企業とフィランソロフィスト、そして社会起業家の三者が問題を解消しようとするのです。そしてそれをビジネスとしてやるのです。これはおもしろいことですね。

彼らの心構えを私は言葉として造語を作ったんです。フィランソロフィーという言葉、フィランソロピアという言葉、これはギリシャ語が出典なのですが、人間への愛を表している言葉です。

もちろん黒澤監督の言葉にも通じますね。生きるという言葉に通じます。

フィランソロフィアという言葉は、互いのために生きるという本質を持った言葉です。ということで、パンクロックの文化とこのフィランソロフィーという言葉を掛け合わせて造語にすると、とてもおもしろいのではないかと私は思ったのです。

人間愛、フィランソロフィーとパンクロックの組み合わせです。その資質というのは何でしょうか。パンクロックがヒューマニティのために動くというのは、どういう意味合いでしょうか。

まずは、何事も受け入れるということです。たとえば失敗も受け入れなければなりません。社会奉仕家というのは、なかなか失敗を受け入れないものがあります。本当は失敗が起きがちなんですけれども、なかなか受け入れられません。

でも本当のことを言うと、失敗を正直に受け入れれば、イノベーションが起きるのです。こういったリスクを取らなければ、イノベーションは進みません。ということで、企業、市民そして社会起業家にとっての意味合いは何でしょうか。

まずは、恐れないということです。ただし、決意を持った恐れのない心というのが、フィランソロパンクには必要です。

課題の解消はライブのモッシュ・ピットに似ている

パンクロッカーというものは、とてもゴチャゴチャで現場では大変ということはわかっています。ということで、火事場だけではありません。

現場での不可能なようなタスクに対しても対応しなければなりません。やらなければいけないことは、どうせやらなければいけないのです。

みなさん、モッシュ・ピットはご存知ですか? ライブ、ヘビメタなどのコンサートでみんながダンスをして飛び上がったりして、やや危険な踊りなんです。

頭を蹴られたりするようなこともあります。もっとひどいこともありますが、それを生き延びればとても楽しい踊りです。

グローバル課題を解消するというのは危険かもしれません。先ほど言ったモッシュ・ピットのような危険な踊りにも似ています。だけれども、やれば楽しいのです。

さて、フィランソロパンクの2つ目の特徴は、Do it yourself 自分でやれということです。 

政府は何もしてくれません。この惑星すべての人々にトイレは提供されません。誰もそのやり方を教えてもくれません。もし知っている人がいたならば、もうすでに実行されていたからです。ということで、自分でしなければいけないパンクロック精神ですね。

パンクロックというのは、本当にシンプルです。3つのコード構成でだいたいのものが作れてしまいます。

パンクロックはなんでこんなに簡単か。それは、音楽を民主化したいという意図があって、誰もが音楽に携われるということを発展させたかったのです。音楽の中でも意味合いの多い音楽です。

そして人の手の中に音楽を戻す。特にプロフェッショナルではない、スキルのない人たちの中に音楽をもたらす。クールですね。Do it yourself 自分でやる、という精神が宿っています。

企業の献金を自分でやる。何でも自分でやるということは、ハッカーを自分で自らやる。ということを意味しています。どんどん、テストテスト、何回も繰り返しやらなければいけません。

フィランソロパンクは「協力」と「抵抗」が重要

次の、フィランソロパンクの特徴は、コラボレーション、協力です。パンクロックのバンドで、ベーシスト、ドラマー、そしてシンガーがいますので、1人だけのメンバーのグループというのはあり得ませんね。

ともに一緒になってひとつのバンドになります。私たち、社会奉仕家もバンドが必要です。仲間がいります。ベーシストもビートが必要、リズムも必要です。私たち全員が必要なのです。

慈善家奉仕家、フィランソトフィストでさえも1人で活動しているということはありません。背後には会社がいたり、大勢の人々がいらっしゃいます。真の変化のためには、協力が必要です。

次は、抵抗。フィランソロパンクには抵抗が必要です。もともと抵抗というアイデアを持っています。25億人の人にはトイレがないので、戦わなければいけません。

そして、識字率の低いところで、字を習わなくていいというようなアイデアに対しても抵抗しなくてはいけません。

人々はお互い協力をしなければいけない。それは抵抗です。でも、大義を持った抵抗です。これが、私が言いたいフィランソロパンクの本質です。

昔は持っているもので戦おうとしていました。欲しいものに対して粘ろうとはしていませんでした。なので、今は私たちフィランソロパンクというのは大義を持って、何か欲しいものに対して粘るということをしたいと思います。

メッセージ入りのTシャツを使ってガンの母親をサポートした女性

フィランソロパンクはこのような人たちです。これは、私の友達です。ヤエールと言います。カナダ人です。

ヤエールさんは、お母さんが2009年に乳がんの診断を受けました。それで家族は一体となって、ガンは家族をがっかりさせるようなことではない。ガンによって人生の運命を変えられてはいけないと思いました。

ヤエールさんは、医者ではないですし、研究家でもないし、世界を変える方法を学校で習ったわけでもありません。

だけれども、お母さんをサポートしたかったので、Tシャツを作りました。Tシャツに書かれている文言は強いので、母親は捨ててしまうのではないかと思ったのですが、立派に着こなし、道を歩いていました。道行く人々は、とてもお母さんを応援してくれたのです。

家族の誰かが病気になったり、ひどい状況になったとき、がっかりします。残念な気持ちで落ち込むことが起きるんですけれども、その気持ちを彼女はTシャツにぶつけました。

彼女は勉強する内に、早期発見さえすればガンは90%治るということを発見しました。しかし、研究は新しい研究にばかり焦点があたっていて、なかなか基礎研究に関しては、焦点があっていなかった。

そういうことで、Tシャツを作りつつ組織を作りました。ガンなんかやっつけてしまえという組織名です。彼女は今、100万、1000万単位で高校生を動員して、高校生が親御さんとどうすればガンを予防するかという会話に弾みをつけるような活動をしています。

人々はどんな社会でも変わっていく力を持っている

3月11日以来、日本ではいろいろな市民の活動が起きています。社会的な活動がここ日本で育っているのを見てとてもうれしいと思っています。昨晩、10万人のメンバーを送り込んだという団体の話を聞きました。

(会場拍手)

日本では見られるか見られないかわからないですけど、まだ効果も今から成果を待っているところですけれども、日本での社会貢献が進んでいるのは確かです。

映画『生きる』の中に出てきた、公園で遊ぶ子どもたちは、ここにいらっしゃる方々と同じです。

人々はどんな社会でも変わっていくという力を持っています。自分でやるということを実践し、そして抵抗をするという気持ちを持って、協力を通じて変わっていけるのです。フィランソロパンクの態度があれば、振る舞いがあれば、世界に大きな変革をもたらすことができます。

ここでとても簡単なエクササイズをしたいと思います。みなさまにお願いしたいんですけれども、グーを作ってください。グーを手で握ってみてください。

まずは、人差し指と小指を立ててください。握った手の人差し指と小指を立てていただいて……。みなさんの写真を撮りたいんです。

みなさんこのようにしてくださいますか?

みなさん私のフィランソロパンクの仲間だということでお写真を撮らせてください。すごい、かっこいいです!

ご清聴ありがとうございました。

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