イノベーションに必要な5つの改革

関口:三木谷さんは、薬が一応方向が見えた次の球としては、もう一回またテレビやろうとかですね(笑)。

三木谷:全方位外交でやらせてください。TBSさんも含めまして(笑)。僕は思うんですけど、イノベーションを起こしていくって、今は千載一遇のチャンスですよね。インターネット革命によって地殻変動が起こっている。にも関わらずなかなか、残念ながらLINEさんとか、あるいはゲームとか、そういうもの以外なかなか出てこない、一番大きなポイントっていうのは規制が大きいんだと思ってます。よってこの規制改革を本当に推進するっていうことが1番目の条件だと思っています。

で、2つ目はですね、我々も含めて、ある程度成功した人が、もう一回その資金を還元するということで。これもですね、3年後の自民党の税制大綱で公開株と非公開株の損益通算できなくするっていう、わけのわからないことを今言っていましてね。ますますリスクマネーが流れ込みにくくなるんですけれども。やっぱりそのリスクマネーがどんどん流れていく仕組みを作っていくっていうのが2つ目。

で、3番目は人材の流動化。やっぱり、日本の大企業はすごい技術はあるんですよね。でもそこで死んでる。人材も死んでるし、技術も死んでる。やっぱりこれを簡単に切り出して外に出せるような仕組みにしなくちゃいけないし。ベンチャーの最大の問題点は、人材の獲得っていうのがあるんで。大企業が人を囲い込まないように、今回もね、労働法の改正法っていうのがあったんだけど、途中でちょっとひよっちゃって進まなくなったんですけど。これも絶対やらないとダメだと。それは企業にとってもダメだし、働いている人にとっても不幸だと思うんで、これはもう絶対やるべきだっていうのが3番目と。すいません、いっぱい出てきて。

で、4番目は、やっぱりグローバライゼーション。世界のマーケット向けに商売すると。楽天も遅まきながらやっていますけども。やっぱり日本のマーケットってシュリンクしていくわけですから。海外に向かって商売をしていくっていうことで、段々とそういう流れになっていったらいいんじゃないかと。

で、最後に言うと、技術者の数がどんどん減っていってるということが、一番大きな問題で。日本のいわゆるコンピュータサイエンスに関係するような学部の卒業生がだいたい2万3千人なんですね。中国だと100万人を超えていると。だから50分の1。アメリカだとだいたい20万人から30万人で、それでも10分の1っていうことなんで。技術者の数が足りなすぎるんで、それは負けますわなって話だと思うんですけど。だからどうするかっていうと、技術者の数を増やす。それから技術者をもっと呼んでくるというようなことで、高度人材の、いわゆるビザの問題だったり、移民の問題っていうのを、しっかりやらなくちゃいけないっていうところかなと思ってます。

関口:三木谷さんのお話にありましたけど、イノベーションを日本から起こすっていう意味では、大企業もやんなきゃいけないんですけども、イノベーションを起こしやすいのは比較的ベンチャーだと。これは昔も今もそうだと思うのですが。

「田植え文化」からの脱却を

関口:ここからお聞きしたいのは、今度どうしたらベンチャーを起こせるかというところですね。すでに三木谷さんのお話にもありましたけど、熊谷さんにもお聞きしたいし。それと三木谷さんに私が最初にお会いしたのは、たぶん1997年、楽天市場を起こした直後くらいで取材でお会いしたんですけれども。そのときに興銀を辞めてですね、今日の楽天っていうのをですね、当時予想してたのか、どうなのか。で、今日はたくさんのベンチャーの経営者が集まってらっしゃるんで、彼らにメッセージとして、ベンチャーやる時に何が大事なのかっていうのをちょっとお聞きしたいんですけどね。

三木谷:文化的な問題は結構でかいなと思ってまして。日本ってやっぱりそもそも田植え文化なんですよね。田植えっていうのは村人とですね、違うことをやっちゃったら、村八分になって生きていけないと。水もみんなで共有してるんで。スタンドアウトしちゃいけないっていう基本的な文化が根底にあるっていうふうに思っていて。やっぱり、別に農家の人がダメって言うんじゃなくて、田植え文化からの離脱っていうのは必要だと思うんですよね。

で、そういう意味では、やっぱり多少何を言われてもですね、マスコミに叩かれようが、前に進むんだという気概が本当に今必要で。もうアジアでも遅れてきちゃってるんですよ、大きく。やっぱり国際的になる、多少失敗しても海外に出るというようなね、やっぱりもう一回、日本は海洋国家にならんといかんというふうに思ってます。

「常識」はいらない

関口:じゃあ、熊谷さんどうですかね。日本でベンチャー起こすためには何が必要か、それとベンチャーの経営者にはこれが必要だと。

熊谷:僕、実は今グループの上場企業6社あるんですけど、そのある1社の取締役会で、先日怒鳴りまくってですね、監査役の指摘に、僕あんまり口答えしたことないんですけど。その「一般的に見て」みたいな表現があって。「世の中ではこうなんだ」みたいな話があったんですね。でも僕、「一般的なことなんて、株主さんも世の中も僕らに求めてないよ」って、ものすごいブチ切れて、ちゃぶ台ひっくり返したんですけどね。

やっぱりですね、夢を持って、で、自分がその夢を達成したら、世の中がすごくよくなる、多くの人が笑顔になるというのを確信したら、それを信じて突き進むと。今インターネットの時代で、起業するコストとか必要な資金とかってすごい以前と比べて少なくなったじゃないですか。サーバを借りてコードが書けたら、どんな革命でも起こせるわけですよ。

で、自分が信じていることが正しいと思ったら、周りの人がどう見るか、メディアさんがなんて言うかは関係ない、もう。もうそれを信じてガンガン突き進むと。やっぱそういう考え方が必要で、それをよしとする社会になってほしいですよね、本当に。

自分が不便に思ったことを事業化する

関口:ただそのパッションとかやる気とか情熱、これは大事だと思うんです、これはもう大前提で必須ですけれども。ただ一生懸命やっているだけじゃ、たぶん道は開かれなくてですね、やっぱり技術の変化とか新しいパラダイムがやってきたときに、瞬間すぽっとあく空白の地帯とかですね、新しいチャンスみたいなのがあって。そこをちゃんと見極めるっていうことがたぶん大事で。

たとえば熊谷さんのとこで言えば、今の「お名前.com 」もそうですけど。そのドメインネームっていうものを、当時はJPNICという日本の管理団体みたいなところが、割り振っていたと。で、そこで普通の人たちは、そこでしかもらえないと思ったんだけれども、熊谷さんはそうじゃなくて、アメリカに直接仕入れに行くっていう、これはある意味では目のつけどころが全然違ったと思うんですよね。そういう意味で言うと、ベンチャーやっていく上で、こういうところを、やっぱり目のつけどころを考えなきゃいけないっていうとどうですかね。

熊谷:いつの時代も、今もまったく変わんないと思うんですけど。自分が不便だと思ってること、あと「こうだったらみんなハッピーだろう」と思うことを、信じてやり続けるだけですね。当時たとえばドメインも日本語、日本円で買えなかったんですよ。英語、ドル。しかも当時ドメインのコストは基本的に今と変わってないんですけど。国内で販売されている方が、ドメインの登録料何十万円。

で、月々維持費なんか掛かりゃしないんですよ。維持費なんて掛かんないのに、月の維持費何万円っていうのを請求されてたんですよ。これじゃ日本のインターネット普及しないと思って、日本語、日本円で、もう激安にしたわけですよね。だからそれって単純にシンプルに、自分がそれじゃ不便だなとか、高いなとか、こうであってほしいと思うことを事業化してるってことだと思うんですよね。それは今の時代もあんま変わらないっていうことですよね。

日本ではキャッシュフロー・マネジメントが重要

関口:じゃあ、三木谷さんどうぞ。

三木谷:3つパターンがあると思うんですよ。1つは革新的成功モデル。だからもうこのモデルはいけるんだって思って、最初から設計してやるモデル。この前の新経済サミットでアンディ・ルービンも言っていましたけど。別にアンドロイドを作ろうと思って会社を作ったわけじゃないっていうことがあるんで。これは改善型で、いろいろやっているうちにそのモデルに行き着くっていうモデルと。

もう1つは「下手な鉄砲数打ちゃ当たる戦略」って言ってですね(笑)。色々やってみたら、そのうちの1個当たりましたっていう、色んなパターンがあると思うんですよね。

ただ一番重要なことと僕は思ってるんですけど、とくに日本の場合はやっぱり金が尽きちゃいかんと。アメリカみたいに、40億50億、すって毎回投資してくれって感覚じゃないと思うんで。やっぱりキャッシュフロー・マネジメントをしっかりした上で、革新型のモデルに賭けるのか。よくわかんないけど色々やってみて、その中からうまくいったやつを選ぶのか。それとも今やってるものを、どんどんどうやって変えていくのかっていう、こういう体系だった考え方っていうのは、ある程度必要じゃないかなとは思いますよね。