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『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブ決起集会(全4記事)

「いい経営理念は唱えるだけで戦術が見える」 カヤック・柳澤氏が語った、まずビジョンを考えることの重要性

『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブ決起集会において、C Channel・森川亮氏、サイボウズ・青野慶久氏、クックパッド・佐野陽光氏、面白法人カヤック・柳澤大輔氏が登壇し、「公益資本主義」をテーマに、 これからの会社のあり方について意見を交わしたパネルディスカッション。本パートでは、登壇者の自己紹介を含めて、それぞれの会社の企業理念について語ります。(『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブ決起集会より)

「経営理念」で検索すると、カヤックが1位に出てくる

山口豪志氏(以下、山口):ご紹介ありがとうございました。本日、このようなそうそうたるご登壇者の方々をお迎えさせていただいて、パネルディスカッションができることを大変うれしく思っております。それでは早速、お時間も限られておりますので、始めさせていただければと思います。

まず皆さんの自己紹介といいますか、ご存知の方が多いとは思いますが、改めてお話を伺って自己紹介のほうをいただければと思います。ただ自己紹介をするというわけではなくて、ぜひ皆様の会社の企業理念とともに、ご紹介いただければと思います。

ではまず、お一人目「つくる人を増やす」という経営理念をお持ちのカヤック柳澤さん、まずよろしくお願いします。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):はい、皆さんこんにちは。「面白法人カヤック」というキーワードをつけてます、カヤックの柳澤です。今日は公益資本主義ということで、僕も去年1年、実は原さんと一緒に学ばせていただいて、まだちょっと今ひとつ、どういうものなのかっていう説明ができないというか(笑)。

まだ全然勉強不足のためできてないんですが、それに少し沿って話してもいいですか? じゃないと会社の話とかしてもおもしろくないですよね。経営理念と少しそこに絡めて、最後話が着地できればいいなと思ってるんですが。

経営理念の話ということそのものは、非常に眠くなるおもしろくない話なので、どうなのかな? っていうのがちょっとあるんですけど、いいですか、理念の話させていただいて。本当に僕、他社の理念の話になると眠くなっちゃうんです(笑)。

僕自身はすごく経営理念オタクで、実は「経営理念」というキーワードで検索するとカヤックの経営理念が1位に出てくるので、そのぐらい他社の経営理念をものすごく研究しています。ただ「非常におもしろくないな」という類のもので。

経営判断で迷わないために必要なもの

柳澤:まず経営者の方が多いっていう話でしたので少しそういう全体的な話からさせていただくと、経営理念の大事さとかが理解できてないとか、経営理念とはどういうものかっていうのが理解されてない方が結構いると思うんですけど。

まず1番大前提となるのは「言葉が大事だ」っていうことです。結局言葉がすべての現実を作っているので、言葉をしっかり大切にしている企業っていうのが基本文化を作ったり、しっかりとしたポリシーを持ってる会社になってくるので、まず「言葉が重要だ」って認識が最初の頂点にあるので、はじめに言葉ありきじゃないですけど。

その中でやっていく過程で、いろいろ会社を運営していくと、実は経営理念というものが重要で。そういう指針になるようなものがないと、ぐるぐる判断軸で迷ったたびに苦しくなってくってことは、やってくうちにわかるんですけど、最初はまったくその価値がわからないから、どうにもなんないんだと思うんです。

なので、まぁ何となく「ふーん」と思って聞いていただければと思うんですけど。僕らが1番最初に生まれた言葉が実は「面白法人」なんです。それは、最初に普通会社って事業を考えると思うんです。事業を……何分ぐらいで話せばいいんですか? あんま長くなっちゃうとあれですよね?

山口:5分ぐらいで。

柳澤:5分ぐらい、わかりました(笑)。普通「こういう事業やろう」って、それにあわせてどういう人を雇うかって話になりますけど、事業を全く決めてなかったんで、こういう仲間と働こうってとこからスタートしてるんで、そうするとおのずと「どういう事業やろう? どんな会社にしよう?」って話になるんです。

その中で、「おもしろく働く会社にしよう!」っていうので「面白法人」というものです。ただ最初は、直感でそういうふうについたわけですが。そこから言葉が生まれたので「面白法人」、そこからどんどん考え方が、いろいろやっていくうちに深まって、まずは自分たちがおもしろがれば、会社にいる人たちもハッピーだから、これは最高の会社だなと思うんです。

ただ、それだけだと本当にもしかしたら、世の中に対してインパクトのないような事業に終始してしまうかもしんないので、まず「外から見てもおもしろい」って言われるようになろうと。

これは「影響力を持つ」ということだと思うんですが、そういう存在にまずなって、力を持ったら、世の中の人を「もっとおもしろく働く人を増やす」って、そういうことに繋がっていく言葉になるな、と思って面白法人とつけました。

いい経営理念は唱えると戦術が見えてくる

柳澤:これ自体を経営理念にしてもいいんです。経営理念って実は何でもないから、それでもいいんだけども、僕がいろいろ調べた結果、やっぱいい経営理念っていう定義があって、1つは事業の内容がもう少し理解できるとか、それによって入りたい人のイメージが湧くとか。

かつその言葉を唱えると戦術が見えてくるっていう、そのほうが経営理念としていいと思うんです。

僕はソニーミュージックで2年サラリーマンをやってるんですけども、「音楽を通して世の中を幸せにする」っていう経営理念なんです。端的に言うと。もっと長いんですけど。

つまり、音楽で事業をやるんだなっていうのがわかるし、それを使って社会に貢献するんだなっていうのがわかる、ってことになってないと、経営理念としての体はなしていない、っていうのがいろいろ調べた結果わかって。

おもしろく働くことを追求するためにどうしたらいいか? っていうのを、もうちょっと具体論に落とし込んだほうががいいな、というので「つくる人を増やす」ってやったんです。

つまりどういう点がおもしろいかというと、「自分が主体性を持ってこの会社を作ってる」とか、街づくりで言えば「この街を俺が作っている」と思えば思うほど楽しくなってくるんで、少し戦い方に落とし込んで「つくる人を増やす」。

短くしたのは表現の問題ですけど、言葉も変わっていくし、一番大事な経営理念は覚えやすいものがいいと思っています。覚えるために毎日唱和するとか、そういうスタイルもいいと思うんですけど、そういうのが苦手な会社はやっぱり覚えられるコピーにしたほうがいいので、短くして「つくる人を増やす」と。結果つくる人が増えれば、楽しく働く人も増えるだろう、ということなんです。

かつ、「戦い方が見えてくる」というのは、サービスを作っているときにユーザーも巻き込んで作っていこうという、何ていうんでしょうね。ビジネスとしての選択肢がこっちだなとはっきりわかってくるというものになったので、かつ「つくる人を増やす」って言ってるんで、何となく入る人も「何かを作ってる会社なのかな?」ってイメージが湧きますし。

結果的に220人のうち200人ぐらいはクリエーターの会社なので、そういう組織の戦略もわかりました。

ブレーンストーミング合宿で主体性のある人間をつくる

柳澤:ここまでが一応「面白法人」「つくる人を増やす」で、もう1つ実はあって。「どうやってより作る人間になっていくか?」と。体つきを、作る側の主体性のある人間にしていくんで、そこから先の方法論がブレーンストーミングなんですが。

ここで急に技術の話に入ってくるんですけども、カヤックでは「つくる人」を増やすために、「おもしろがる」ために、ブレストするんです。頭の脳をブレスト脳にしていくんですけども、そうすると何かこういう問題があったときに、例えば「これをどうやって売ろう?」かっていうときに「どうやったら売れるか?」って考えるとか。

例えば会社にいろんな悪い問題があったら、問題を作る側にまわってもらうために、社長になったつもりで考えろっつってもなかなか作る側にはまわれないので、そこでブレーンストーミングをするんです。「どうやったらこの会社は良くなるか?」とか。

これを1年に2回全員合宿で1日8時間やったりとか、毎日ブレストするんで、そうすると脳の思考が、何か問題があったときに「どうやったら解決するか?」っていう思考にどうしてもなってくんで、「つくる人」側になっていって、それで楽しく働けるようになってくると。

この一連の流れでそういう会社の雰囲気だったりを作っていくっていうのが経営理念の話なんですが……。ほら、全然おもしろくないでしょ? おもしろくない話なんですよ(笑)。

(会場笑)

山口:すごくおもしろいって思ってますよ(笑)。

人の作った仕組みは必ずアップデートが必要

柳澤:じゃ、佐野君にバトンタッチします。佐野君は本当こういうとこにめったに出てこないんで。今日短パンできちゃってるし。これは見どころ、1番。僕の話はいろいろネットセミナーに出てるんで。佐野君の話にバトンタッチしたいと思います。

(会場笑)

山口:はい。お願いします。

佐野陽光氏(以下、佐野):すごいふられ方ですね(笑)。こんにちは! クックパッドの佐野です。ちなみに会社を経営してる方ってどれくらいいるんですか? おお、多いな……。じゃ、これから起業しよう、もしくはそろそろ経営に……。なるほど、ほとんどだ。なるほど! こういう一方通行なの僕すごい苦手なんです。まず自己紹介ですか?

「毎日の料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす」っていうのがクックパッドです。生活の中で毎日の料理が楽しみになれば、必ずいい世の中になるだろうという、解決できる問題、それはわかっちゃったんです、それだけは。他がよくわからない中で。

だけどそれは確実に、なんかいい世の中になるな、心からの笑顔が増えるなっていうのがわかっちゃったんで、それだけを徹底的にやる会社が世界に1個ぐらいあってもいいだろう、という会社を作って経営しています。

公益資本主義に絡めるとしたら、1つ言えるのは、まずその「僕みたいな存在が許されてる」ってことは、たぶん今世の中がそういうものをすごく求めてるんだと思うんです。そもそも「存在が許されてる」っていう。一応、世の中の今の仕組みにのっとって企業を経営してるんですけども、まず捨てたもんじゃないぞと。

すごく大事なのは、僕も資本主義とかマーケットメカニズムとかすごく好きなんです。それを否定するもんじゃなくて、ただ何でも結局人間が作ったものなので、完璧なものはないわけです。必ずアップデートが必要なんだけど、そのバージョンアップがずいぶん遅れてるぞっていう感覚はあるんです。

だからその仕組みのほうをアップデートしてかなくちゃな、というので、原さんに会っていろいろ勉強して、いろいろ見るといろいろ見えてくるというか、できることもいくつか。

具体的に原さんが提案されてる「議決権をもう少し長期、その所有する人にのみ与えるような形にするのはどうだろうか?」とかっていうのは、すごくに理にかなってるし、具体的にできることだと思うんです。だから、何となく皆さんとシェアしたいのは、たぶん世の中みんなわかってるんです。「なんかちょっと足りないな」っていうの。

クックパッドみたいのが許されてるっていう事実もあり、でもさらにたぶん、仕組みのほうのアップデートもしてかなくちゃいけないっていうのが、僕らの世代に課せられたことなんですよね。所詮人間が作ったものなので、バージョンアップが必ず必要。それをそろそろしなくちゃいけない。

だから、あんまり現状を否定するというのは、思いっきり現状の中でも事業……。今回も来たのも、やっぱりここで戦ってる人たち、僕も原さんもちゃんと今のルールの中で戦ってるんです。

その上で、そのルールを「もっとよくできないかな?」っていうことが言える人たちとこうやって議論をして、少しずつ世の中の仕組みのほうも変えていけるようになったらいいな、と思って今日はここに来ました。

山口:ありがとうございます。

日本の働き方を変える実例になりたい

山口:では引き続きまして、青野さんお願いします。

青野慶久氏(以下、青野):いやもう何か胸いっぱいですね。柳澤さんの話と、佐野さんの話。全然関係ないですけど、僕料理始めたんですよ! これ一部上場企業で料理するって、結構すごくないですか?

僕今3人目の子供が4カ月前に生まれまして、今4時まで勤務というのやってるんです。4時まで社長、4時になったら帰る、と。帰って「木曜日はパパ料理の日」っていうのが決まってまして。

クックパッドさん使わせていただいてるんですけど、プレミアム会員じゃないんで、ちょっといまいち検索のほうができなくて(笑)。そろそろ申し込んじゃおうかな、ぐらいの(笑)。本当料理楽しいです。

サイボウズっていう会社は、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、グループウェアという情報共有のソフトを作っている会社で、97年に創業しました。当時インターネットの技術が出てるときに、あれを見て「あ、何かもっと皆が楽しく働けるようになるんじゃないかな?」っていう期待があって、僕の興味はたぶんそっちだったんです。

その「皆がもっと楽しく働けないかな?」っていうのが目当てで作ったんですけど、途中で初心を忘れてしまって、M&Aいっぱいやって、1年半で9社買収しまして、売上が4倍になりまして、「違う!」と思ってそのあと8社売却しまして、売り上げが3分の1になりまして(笑)。

上場企業としてあるまじきめちゃくちゃな経営をしてるんですけど、ただ自分がたどり着いた答えは、やっぱり「みんなが楽しく働ける社会にしたいんだ」っていうことで、「チームワークあふれる社会を作る」っていうのが理念にして今、至っております。

特に今、日本のチームワークの問題、特にチームワークという、会社でみんなが働く問題の中では「都会だったら女性が働けないよね」とか、「男性が長時間労働してヘロヘロになってるよね」みたいなのがあって、これ何とか変えたいなと思って。

私が4時に帰るっていうのも1つ、「できるよ!」と。「やろうと思ったら短時間で効率よく働けるよ!」っていうのを見せたいと思ってやったりします。

ただ、まさに佐野さんがおっしゃったみたいに、これで負けちゃだめなんです。僕4時に帰って、サイボウズがボロッカスにやられてしまったら「それ見たことか!」ってなっちゃうんで、ぜひ実績を上げながら日本の働き方を変えられれば、てなことをチャレンジしていきたいと思っております。以上です。

山口:ありがとうございます。

C ChannelのイメージはMTV

山口:最後、森川さんお願いします。

森川亮(以下、森川):C Channel代表の森川です。3月までLINEの代表しておりました。たぶんでこの中で1番年上で48歳ということでいろんなビジネスをしてきたんですが、そろそろ僕もいつ死ぬかわからないので日本のために一生懸命やろうということでいろいろ考えてきました。

今、世界を堅苦しく見ると、資本主義と民主主義というものがある意味デファクトになりながら、一方でその課題というのは、お金持ちの意見ばかり通るようになっていくことで社会の構造がちょっと歪んでる、という状況になのかなと思ってます。

僕自身は日本のために、例えば教育とか医療とかエネルギーとか、地方再生とか、そういうものをいろいろやろうと思って研究したんですが。

1番手っ取りばやい部分で言いますと、やはり社会というのは政治や官僚、そして国民がいて、そしてメディアがあって、その3つで回ってるっていうこと考えると、日本を元気にするためには、ちょっと今メディアが元気ないんじゃないかなと。

毎朝毎晩流れてくる情報は、比較的暗めの話が多くて、それを正面で受けていると、みんな暗くなってしまって。とにかく明るいメディアを作って日本を元気にしようということが1つと。

あと特に若い方。今やはり、どうしてもメディアをビジネスとして考えると、人口分布上年齢が高い人向けに出したほうが収益が上がるので、若い人が共感するメッセージを発信するメディアがないんです。若い人はテレビも見ないし、かといってじゃあ、ネットにあるかっていうとネットにもない。

それであれば、若い人が共感するメディアを作る。かつ、それをグローバルに持っていって、そこに出ている若い人たちが活躍すれば、そのままグローバルに出ていけるような、そういうものを今作ろうとしてます。

イメージ的にはMTVみたいなもので、MTVもそこに音楽が乗ったからこそ音楽ロックとか、R&Bとか世界が広がったので、そういう日本を元気にする、日本のいいところの文化を世界に発信して、そして日本中を元気にしようと。そして世界を明るくしようというふうに思っています。よろしくお願いします。

山口:ありがとうございます。

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