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『起業家』の著者が起業家の本質に迫る(全2記事)

nanapiもコーチユナイテッドもたじたじ!? CA藤田晋氏が、若手起業家たちのホンネに切り込む!

2013年4月に著書『起業家』を出版したサイバーエージェントの藤田晋氏がモデレーターとなり、気鋭の若手起業家5人それぞれの事業と経営意図に鋭く切り込んでいるセッションです。若くして起業することのメリット&デメリット、日本の起業環境の問題点から資本政策まで、それぞれの実体験を踏まえて赤裸々に語られています。(IVS 2013 Springより)

CA藤田氏が若手起業家に切り込む!

藤田晋(以下、藤田):藤田です、どうぞよろしくお願いします。今日は「『起業家』の著者が起業家の本質に迫る」というお題をいただきましたので、僕より若い起業家の皆様が、普段聞かれたくないことを中心に鋭く切り込んでいこう、って言うほど切り込めないですけど。ただサイバーエージェント出身の大竹さんにだけ厳しくいこうと思ってますので(笑)。よろしくお願いいたします。では最初に自己紹介をしていただきたいんですけれども。小島さんからでいいですか? 

小島梨揮(以下、小島):株式会社ウィルゲート代表の小島と申します。本日はよろしくお願いします。

小島:私たちの会社はSEOと検索エンジン上位表示サービスをメインに成長している会社で。今120名ほどでやっているんですけれど。多分ここに呼ばれた理由にもなっていると思うんですけど、若くして起業したんですけれど、大失敗して借金1億円くらい負って。そこから失敗を重ねながら今に至る、という感じが特徴だと思います。本日はよろしくお願いいたします。

藤田:有安さんお願いします。

有安伸宏(以下、有安):初めまして、コーチ・ユナイテッド株式会社の有安と申します。「Cyta.jp」という学びの流通市場、マーケットプレイスの授業やっております。簡単なスライドなんですが、こんな感じのウェブサイトです。

有安:先生が登録していて、この先生の体験レッスンを予約できる。対面のレッスンを提供します。僕、実はこの先生のレッスンを毎週受講しているんですけど。

「マッチングサイトですか?」と言われるんですけど、マッチングサイトではなくて、予約機能と決済機能を全部提供していると。マッチング課金ではなく継続課金というのがビジネスモデルの特徴になっています。レッスンはこんな感じで、場所は全部貸し会議室とか貸音楽室みたいなところでレッスンを提供している、という感じですね。これ先生と生徒で、全部レッスンは1対1です。

有安:こんな感じですね。先生と生徒。

今全国で140種類くらい、語学とか楽器とかあとは資格教育とか。いろんなジャンルを全国で3000回以上くらいやっています。受講生が全国で、オフラインで受講している方が2万名を突破してきて、グイグイきています。よろしくお願いします。

大竹慎太郎(以下、大竹):よろしくお願いします、株式会社トライフォートの大竹と申します。弊社は2012年8月に創業いたしまして、ポイントとしては、よく話にあがる点としましては、今従業員数100名いるんですけど、このスピード感で成長している、というところで色んな話をいただくことが多かったりします。

大竹:経営陣に関しましては共同代表で展開していまして、もともとクルーズさんのCTOを務めていた小俣と、サイバーエージェントに大変お世話になりました、サイバーエージェント出身で、営業や企画を中心に強みを持っている私が組んで、全く別々の強みを活かしてタッグを組んで会社をやっているというような状況です。

大竹:事業といたしましては、スマートフォンアプリの受託開発というのをメインでやっていまして、単なる受託は全くやっていなくて、企画から入って、運用まですべてこなすと。さらにマネージドクラウド事業というところに関しましては、自社でサーバーを大量に購入しまして、自分たちが開発したサービスに関しては、自分たちのサーバーで捌いていくというような展開を行っています。

こちらはですね、企業当時あるPRに大成功いたしまして。フジテレビさんいらっしゃると思うんですけれど、大変申し訳ございません。「リッチマン・プアウーマン」のドラマをパクってですね。「これはPRに使えるぞ」ということで、この画像をそのまま使わせていただきまして、こんなことをやったところですね。「いいね!」の数が1300くらいで、コメントが600も。私と小俣のフェイスブック、合わせていただきまして。

大竹:これに関しては大したオチはないんですけれども、そろそろ時間がきましたので……。よろしくお願いします。

古川健介(以下、古川):株式会社nanapiの古川と申します、よろしくお願いいたします。nanapiというハウツーのメディアというかサービスをやっておりまして、月間2000万UUくらいのサービスを、従業員70人くらいでやっております。こういうIVSとかそういったイベントでは雛壇起業家的な、賑やかしとして呼ばれることが多いです。学生時代から起業していたりして、いろんなサービスをやってきたのが特徴ですね。よろしくお願いします。

白木夏子(以下、白木):初めまして、株式会社HASUNAの代表取締役兼チーフデザイナーを務めております白木夏子と申します。私はよく社会起業家というカテゴリーでいろんなところに呼ばれることが多くて、こういったIVSの場は場違い極まりないなと思いながらも、すごく素晴らしい経営者の先輩方にたくさん会える、ということで参加させていただきました。私の会社、HASUNAではジュエリーの製作と販売を行っているのですけれども、こういうジュエリーとか結婚指輪や婚約指輪を作っているのですが。

白木:その素材となっているものを、発展途上国の鉱山ですとか、パキスタン、コロンビア、ペルー、ボリビアの鉱山ですとか、あとミクロネシア、ルワンダ、いろんな国から仕入れて、現地の鉱山労働者の方、職人さんたちの生活改善を行いながらジュエリーを作るということを行っています。

白木:もともと、私が大学生のときにインドの鉱山を訪れたのがきっかけで、そこで見た鉱山で子どもがたくさん働いていたり、すごいひどい状況で働いているのを目にしたので、そういった状況をジュエリーを作ることで改善したいなと思って、この会社を今から5年前に立ち上げました。

白木:現在では南青山に本店がありまして、名古屋栄に昨年オープンして、今年、伊勢丹の新宿本店の1階に入りまして、現在、鋭意拡大中であります。よろしくお願いします。

「創業時のハッタリ」は重要

藤田:ありがとうございます。では僕のほうからいくつか、それぞれにご質問させていただきまして、その後全体に対する質問をして、時間があれば会場の皆様から質問を受けたいと思いますので、よろしくお願いします。もしありましたら、逆に質問していただいても結構です。

では早速大竹くんからなんですけれども(笑)。確かに今思い出したんですが、さっきの「リッチマン・プアウーマン」をパロッた写真をどこかで見かけてイラッとした覚えがあるんですけれど(笑)。

とはいえですね、よく見たらまだ創業1年も経っていない、こちらにいる小島社長とかどれだけ苦労しているんだと思っているんだ、というくらいですね、社歴が浅いにも関わらず、大変な成長をしていて。そういう意味では、僕個人としては「創業時のハッタリ」というのは、実は何もないところから起業する人にとってすごく重要だと思っているので。そういう意味でうまくやったなと思っているんですけれど、そのへんをどの程度、最初の創業の作戦のなかに入れていたのか、お聞かせいただけないでしょうか?

大竹:そうですね、創業当初から「せっかく我々が組んでやるのであれば、徹底的に行けるところまで行こう」ということを共同代表の小俣と話しまして。一番最初にビジョンというか目指すものを掲げたんですね。「Facebookを軽く超える」というものでして。そこから逆算していくと、圧倒的なスピードで成長せざるを得ないよね、というところに行き着きまして。

そこをひたすらやりきっているというか。もともと小俣も上場企業の役員をやっていましたし、私もサイバーエージェントでお世話になって、いろんなものを学んだというなかで言うと、結構オールドルーキーだという感覚がありまして。僕も小俣も30を過ぎてちょっと経ちますので、今からやるのであれば徹底的に、日本で一番高い成長率で成長しないとやる意味ないよね、くらいの感覚で展開しております。

藤田:ライブドア事件以降、あまりいなくなった鼻息荒い起業家で、素晴らしいと思います。ただ最初トライフォートの話を聞いた瞬間に「これは危ないな」と思ったんですが。最大のリスクが、小俣さんと喧嘩するんじゃないかなと思っているんですけれど。ダブル代表というのがそもそも難しくて、そして社長とCVO/CTO 。これうまくいくと、何でアイツが社長なんだって小俣さんも腹がたってくるでしょうし。うまくいかなかったら、やっぱりアイツが社長だからダメなんだと腹がたってくるでしょうし。めったにうまくいかないですけど、どうやって乗り越えていきますか?

大竹:そうですね、小俣とも創業のときにも色々話したんですけれども。お互いわりとトップでやりたかったっていうのとですね、もともと人間的に、営業に強い僕と技術に強い小俣で組んで、ロジックで組んだらうまくいくよねっていうイメージがあったんですけど、それ以上に人間的に合うなあと、コイツとであれば本当に苦楽を共にできるな、という印象をお互い最初に持ちました。

その中で一番いい形ってなんだろうなと思うと、ダブル代表という形が一番キレイだったかなと。逆にどっちかが上でどっちかが下というのは、そちらのほうが、お互い何らかにつけて不満が出てくるかなと思ってですね。色々と創業当初考えたんですけれども、結果的に今の形になったと。

藤田:一度離婚を経験した私としては、そんな甘いもんじゃないと思いますけど(笑)。僕からのおすすめとしては、うちの会社も昔は役員がすごいギスギスしてたんですけれど、定期的に合宿とかで皆で飲むようになってから、すれ違いがなくなりましたので。飲むのがおすすめです。

大竹:そこはですね、かなりサイバーエージェントさんから学ばせていただきまして。僕と小俣は非常に仲が良くて、土日も一緒にいることが多くて。

ネガティブな奴は早くつまみ出せ

藤田:じゃあ、もうわかりました(笑)。続いてウィルゲートの小島社長にお話を聞きたいんですけれど。僕は今日、札幌に来る飛行機のなかでウィルゲートの本をすべて読んできたんですけれど、大変な苦労をして。まだ27歳ですけれど結構な経験を経ているように見えるんですが。そのなかで色々気になったところがいっぱいあったんですけど、かなりのページ数を、社内の社員たちのネガティブな発言や会社批判に腹をたてているシーンに使われているんですが、そういう状況をどのように乗り切ったのか、教えていただけますでしょうか。

小島:少し状況を説明しますと、私が設立2年ですぐ資金調達をして、本当に経験のなかった、当時20歳くらいで経験がないときに多くの人を雇用して、経営者としての力がないのに1億調達して30人にすぐ拡大したんですけれども、すぐボロが出て、組織が崩壊したんですよね。そのときに「こんな会社入らなければ良かった」とか「小島さん人望ゼロですよ」とか「なんでこんな会社で働いているのか意味がわかりません」とか、後から退社した人のパソコンのチャットの履歴から出てくるんですよね。

藤田:そこのシーン読んでて気になったんですが、チャットの履歴を見てるんですか?(笑)

小島:全員見ているわけじゃないんですけれど、とくに気になって。「どんな会話してたんだろうね」って見たら、悲しい履歴が出てきたって感じなんですけれど。その時に腹もたちましたし、借金もずーっと続いてたんで、400万とか500万という形で毎月膨れ上がる借金が出てくるなかで、業務時間中に副業したりとか、うちの資産であるソフトウェアをチャットで他社に流したりとかですね。そういうところを見て、もう本当に想いとか色んなものを共有して成長したかったけれど、全然そういうのはできないんだなと。信じようにも信じられないというのが当時の心境でしたね。

藤田:ちなみに僕は創業のかなり早い段階から、「ネガティブな芽を見つけたら一刻も早く潰せ」という。放っておくとどんどん伝播してそれがマジョリティになると手がつけられないんで。会社を批判してたり、ネガティブなことを言ってる奴を見つけると「早くソイツをつまみ出せ」と。それがオススメです。

若くして起業するメリット・デメリット

藤田:あと、創業が18歳ですよね? ちなみに僕も24歳で創業して、よく尋ねられると「もっと早くやれば良かった」と思っていましたし、自分に息子ができたら、ぜひ僕より若く起業させようと思って。ちなみに7月に息子がうまれる予定なんですけれど。ただどうしても僕の息子、もうすでにボンボンなんで、ハングリー精神とか反骨心を育むの難しいなと思っているんですけれど。学生時代から始めたことで、プラスの面とマイナスの面あったと思うんですけど、極端に若い年齢から起業することのメリットデメリットについてどう思っていますか?

小島:色々メリットもあると思うんですけれど、デメリットから説明しますと、やはり経験が圧倒的に不足しているので、何が正解なのかわからない、教えてくださる方もいないので、回り道をしては失敗し、回り道をしては失敗してという連続で。そのダメージも結構、例えば組織で1億円の借金を負うとか、そういうのが結構大きなダメージになってくるなというのがあったのと。

あとは他にも若いから、「うちの社長経験がないから全然何言ってるかわからないよね」、「全然ダメだよね」っていうふうに、レッテルで判断されやすいので信頼関係を醸成しにくかったなっていうのがあります。

メリットに関してはその分だけ、ひとつひとつの痛みと、二度とやってはいけないんだなということに対しては、かなり敏感にキャッチアップしてやっていけるから、成長しやすいんだなというところと。あとはそこから先の可能性であったり、例えば「小島くん大したことないけれど、20歳で1億円売上あるの? じゃあうちも出資するよ」みたいな。若いからすごい、と、大したことやっていないけれどそういうふうに見ていただける、可能性を見ていただけるのはメリットなんじゃないかなと思いますね。

藤田:そういう意味では今現在27歳。確かにゴルフの松山英樹選手とか石川遼選手とかも、若いと注目されて、そこで活躍できればさらにすごいけど、できなければ聞かなくなってくるし。松山選手と同じような活躍をしても、結構ないい歳だとあまり注目されないですけど。そういう意味ではこれからどのように巻き返すというか、伸ばしていくつもりですか?

小島:やっぱり自分自身が失敗から学んだことが多いので、そこはやっぱり同じような失敗を踏まないように、行けるところまで行きたい。行くのであれば、インターネットって人々の生活を変えるような可能性を持っていますし、そういうふうな事業を作っていきたいなっていうのが私の想いですね。なので1000億とかそれくらいの単位で売上なりシェアなりを取って、人々の生活を変えるようなことを、継続的に生み出せるような組織を作っていきたいなと思いますね。事業だけではなくて。

経営者がネット上に出ることで採用しやすくなる

藤田:ありがとうございます。では古川さん。ネット上では頻繁にお見かけしたんですけれど。今日初めて実物を見かけまして。本当に、ブログを見てもちょっとした文章を見ても、本当に筆力があるなと、書くのがうまいなというふうに感じているんですが、もともとコミュニティを作るエキスパートみたいな方なんですけれど。経営者自身というか社長がネット上で頻繁に登場し、かなり使いこなしているということの経営に関するプラス面とマイナス面があれば教えてください。

古川:プラス面で言うと、インターネットサービスを作っている会社の人がインターネットサービスを知らないというのはやっぱりマズイと思うので、藤田社長が「アメーバを一番使っているのは自分だ」と仰っていたように、あらゆるサービスを自分で使っているというのはプラスかなと思いますね。

藤田:使いすぎということはないですか?

古川:そうですね。マイナス面で、「社長ってヒマなんですか?」と昨日も外部の方に言われて、けっこう重要な会議の場で言われたのですごい恥ずかしかったですね。まあヒマだと思いますね(笑)。

藤田:僕も特にブログにけっこう力を入れていて、本当に現代経営者にとってブログを書けるっていうのは、ほんとラクなことだなあと思って。声を枯らして集めて説明しなくても書けばなんとかなるし、スピーチでコケても後から書き直すっていうのができるので。そのへんの話が広いですけど、現代の経営者とか起業家にとって筆に力があるというか、書く能力が高いということについて、古川さんどう思っていらっしゃいますか?

古川:やっぱり採用とか見ても、かなりブログ経由での採用が多くてですね。特に採用のサービスを使ったりエージェントさんを使ったりするよりも、そもそも来る人のモチベーションが高かったりとか、意識が良かったりする場合が多いので、そういった面でも直接的に経営にプラスの面が多くて。ブログというのは社長が書いたほうがいいかなと思ってますね。あと社内に向けてのメッセージも、なかなかできる機会が、人数多くなるにつれて少なくなってくるので、そういう意味でも「こういうことを考えているんだよ」というのをわかりやすく発信できるというのはプラスかなと感じています。

メディアのマネタイズについて

藤田:あと事業面なんですけど、古川さんは「したらば」をライブドアに売却してエグジットしたり、あとnanapiも成功させていらっしゃいますけれど。数年前からの風潮で僕がひっかかっているのが、マネタイズは考えなくてもいいと。アメーバもそうして大きくしてきたわけですけれど。その代わり極端に大きくしなくてはいけないというプレッシャーもあったんですね。メディアが大成功収めればマネタイズは後からでもいいと思っていたんですけれど、メディアを大成功させなければいけないというプレッシャーがさほどでもない、マネタイズしなければいけないほどではないんだけれど。

マネタイズを考えないで中途半端に終わるメディアや起業家も増えていて、こんなんでいいのかという考えもあるんですけれど。だから極端にでかくするか、ちゃんとマネタイズするか、どこかにうまく売却するか。3つに1つかなと思っているんですけど。それについては「nanapiみたいに」と思っている起業家も多いと思いますけどどういうふうに考えていらっしゃいますか。

古川:おっしゃるとおりで、すごい規模にならないとマネタイズできないと思っています。2000万UUになりましたと言ったりするんですけれども、これでもマネタイズできるかというと「全然です」という感じなんですね。やっぱり日本で最低でも50番以内に入るくらいのアクセス数にならなきゃいけないですとか。あとは最終的にYahoo!を超えるPV数がないと意味がないかなというふうに思っているので、そこは意識してますね。

ただ、逆にマネタイズをうまくやって成功するパターンのメディアももちろんあると思っていて、いいとは思うんですけど、自分はあまり得意ではないので、とにかく大きなメディアを作るというのを今集中してやっているような感じですね。

藤田:基本的にはnanapiとしてはとにかくデカくするというところに集中していると。

古川:そうですね、マネタイズはまだまだ先かなというふうに考えていますね。

ネットぽくないWEBサービス

藤田:わかりました。では有安さん。このCyta.jpのCtoCのビジネスモデル、そもそも事業内容が素晴らしいなと思いましたけれども。その一方で非常に面白いんですが、クリティカルマスを超えて認知される、こういう受講の仕方があるんだとか、こういうところで講師登録してちゃんと仕事になる、というところを理解させるというところが、例えばこれが英会話とかだとネットを通じて、英会話を教えてもらえるというのがパッと理解できますけど、そこの認知させる部分が非常に難しいんじゃないかなと思ったんですけど。そこについてはどのように?

というのはネットサービスって、コンセプトはいいんだけどそのまま埋もれて聞かなくなるっていうのが、実は水面下にものすごくたくさんあるので。そういうふうにならないように、どうしていこうというふうにお考えですか?

有安:ありがとうございます。僕らのサービス、すでにトランザクションが発生していて月額黒字になるフェーズまできているんですけれど。消費者としてはそれがWEBサービスなのかリアルなサービスなのか、どっちでもいいんですよね。抱えているイシューが先にあって、例えば「ギターがうまくなりたい」とか「イタリア語を趣味でやりたい」とか。そういうイシューがあるので。それがCtoCの新しいコンセプトのサイトなのか、そのへんの教室なのか、どっちでもいいんですよね。

なので僕らの集客のスタンスとしては、「こういう新しいコンセプトですよ、新しいモデルですよ」ということはほとんど言わずに、かつ僕らのCyta.jpというブランドについてもほとんど言わずにUXを作りこんで、普通にドラム教室を探している人に触れるようにして、そのまま体験レッスンを受講してもらって、というふうに繋げています。

藤田:「ギター習おう」と思って気がついたら来てた、という感じですね。

有安:……っていうようなモデルにしていますね。それは先生も生徒も両方ともで、先生は全員面接をしているんですけれども。そこで説明をして初めて「ああそういう仕組みなんですね」という感じですね。

藤田:けっこうSEOが大事ですよね。

有安:そうですね、サーチは非常に重要ですね。サーチとあとクチコミですね。

藤田:クチコミとサーチ。ちなみにこの事業内容をパッと見たときに、ネットビジネスって一口で言っても、インフラに関わっていない、我々みたいなネットビジネスだけにとっても、Eコマースと広告は全然違うし、広告と言語ももちろん違うし。その意味ではこのビジネス、かなりリアル寄りというか、ちゃんとした経営者じゃないとダメというか。

ネットビジネスがちゃんとしてないわけじゃないんですけど。自分がちゃんとしてないんじゃないかと(言われるかもしれないですけど)。そういう意味でいうと、“ネットネット”していないというか、ネット業界との違和感みたいなものを感じないですか?

有安:違和感というと敵増やしちゃいそうなのでアレなんですけど。作り込んでいるオペレーションは、本当にネット系の会社ではないということはよく言われますね。例えばクオリティを担保するためにどうするかという話なんですけど、ネット企業だったらアンケートをバッと配信するんですけれど。僕らの場合は、ミステリーショッパーの会社に委託をして、実際にリアルに受講してもらって、そのレポートを全社に返してもらおうとか。そういうリアルな受け手の方にダイレクトに聞くことが多いので。

僕らとしては、WEB系かリアルのサービスなのかというのは特に意識していなくて、消費者にとって一番いい手段を提供していると。なのでメールでプッシュしてユーザーが動かないときは電話もしますし、他の手段も全然やります。

藤田:そういう意味ではかなり地に足がついてますよね。

有安:そうですね、よく言えばなんですけど。地味と言えば地味なんですけど。それは経営者の好みの問題なんで。僕はこれが正しいと思っているので。

藤田:地味系と。

有安:地味系……、堅実系と言ってください(笑)。

認知度の低いサービスをどうブランディングするか

藤田:すみません。では白木さん。最初に、僕ちょっと社会起業家について認識が甘いんですけど、非営利ではないんですよね。

白木:ではないんです。株式会社なんですけど。

藤田:ちゃんと利益を生んで社会の役にたとう、という考え方ですよね。エシカルジュエリーって倫理観に基づいたジュエリーという。これコンセプトとしては皆知っていることなんですか?

白木:そのときってエシカルってパソコンで叩いてほとんど然出てこなくて。もちろん英語でethicaと検索すれば「倫理的、道徳的な」ということはいっぱい出てくるんですけれど、日本語では全然認知されていなかったんですけれど。ここ数年、特に3.11の後エシカル消費っていうのがすごく注目されるようになってきて。消費者が買うときに裏側のところまで見る、つまりモノだけじゃなくてその裏側に誰がいるのか、この払ったお金がどこに届いているのか、東日本に届いているのか、それともインドに届いているのか、という、そういうところまで見て買う……っていう消費スタイルが広まってきたということで。よく新聞や雑誌とかに取り上げられることが増えてきて、最近ではかなりファッション業界では、エシカルという言葉はすごく認知されてきたのかなと思ってます。

藤田:僕の知り合いのジュエリー会社の経営スタイルも、かなり営業ノルマを課してきてすごい勢いで売りつけるんですけど。そしたらジュエリー業界は(どこも)似たようなもんだという話を聞いたんですけど。そんな肉食獣がひしめく業界でどのように売っていくんですか?

白木:私も、実は母親がファッションデザイナーだったり、自分でジュエリー作ったりとか色々やってきたんですけれど、仕事としてジュエリー業界に入ったことはなくて、全然未経験で周りにもジュエリー業界で働いている人ほとんどいないなかで、ジュエリーの会社を立ち上げちゃったので。全然そんな肉食獣のところだとは思っていなくて。

でも特に攻撃されたり、とかは何もなくてですね。完全にエシカルジュエリーってすごいブルーオーシャンだったのかなと思って。あまり競合とか考えずにやっているので。今年3月に新宿伊勢丹にオープンしたんですけど、1階のジュエリーがいっぱい並んでいるようなところでやらせてもらっていて。周り50ブランドとか、いっぱい並んでいるわけですよ。それこそ肉食獣の人たちばかりかもしれないんですけれど。その中に入ってやっていけるのかなとすごい不安だったんですけれど、なんとか今やることができていて。

藤田:そういう「社会的倫理性の高いジュエリーを買いたい」という消費者心理はすごく理解できるんですけれど、それをどう伝えていくか。何か読んで感動したら、「どうせ買うなら、こういうの買おう」ということになると思うんですけれど。白木さんの広報戦略というのはどのようにお考えですか? 出過ぎると叩かれそうだし、出ないと知ってもらえないし。

白木:それはすごく難しくて。やっぱり最初に認知してもらうには、私が色んなメディアで取り上げていただいて、世界中には鉱山で働いている子供たちが100万人もいて、皆すごく劣悪な労働環境で働いていて大変なんです、ということを言ったりすることが一番の広告にはなるんですけれど。でもだからといって、「かわいそうだからジュエリーを買いたい」とか、そういうことでは売りたくなくて。普通にジュエリーの会社としてデザインで売りたい、という気持ちもあるんですね。

なのでそのさじ加減ってすごい難しくて。「かわいそうだから買ってください」みたいなニュアンスが出てしまうような、雑誌や記事には出ないことにしていて。基本的に「このHASUNAのジュエリーを買ったら、世界中の鉱山で働いている人や職人さんたちが笑顔になるんですよ」というポジティブなメッセージが伝わるような媒体に積極的に出るようにしています。

藤田:何かで読んでて、アフリカ大陸で原石を磨くまでやって安く輸出して、欧米の国で加工し高く売ると、それが良くないという話を読んだんですけど。そういうアフリカの現地生産でバリューをつけるところまでやりたい、ということなんですけど。そんなのに取り組んだら巨悪の利権構造とか……。

白木:巨悪(笑)。そうですね、業界のなかにいる人には「本当に気を付けないとすごく危険」とか、本当に殺されかねない世界なので。私もよく現地に行ったりするんですけれど。やっぱり現地での権力関係も事前にちゃんと調べて、どこの民族がその地域ではエライかとか。ちゃんとボディガードもつけていくようにはしているんですけれど。でも別に私ひとりが地球上で「エシカルジュエリーがいいんです」とか「鉱山労働者がこんなに苦しいことやっているんです」とか声を上げているわけではなくて。

いま世界的に、アフリカやうちが取引している南米のコロンビア、ペルー、ボリビアなど、そういったところでも、鉱山労働者の方や発展途上国で鉱山を持っている人たちの中でも、すごく人権に対して熱い心を持っていて、「この世の中をよくしたい」と思っている方が増えてきているので。そういうパートナーと一緒にやることでうまくやれているのかなと思っています。

藤田:起業家が既得権益に切り込むと身の危険が伴うこともあるので、お互い頑張りましょう。

白木:そうですね(笑)。

上場は必須なのか? 各社の資本政策

藤田:ではちょっと皆さんに聞いていきたいんですけれど、まず資本政策について考え方を聞いていきたいんですが、まずコーチ・ユナイテッドはホームページを見たら資本金1000万って書いてあったんですけど。

有安:そうです、僕が100%で。

藤田:100%? これからどうしていくつもりで?

有安:事業のフェーズに合わせて柔軟に、あらゆる選択肢を否定せずに。玉虫色なんですけど。

藤田:何か隠しているんですか?

有安:いや違いますけど(笑)。ちょっと言うと広まっちゃうとアレかなと。今現在だとキャッシュが先に入ってくるビジネスなので、資本調達を頑張るよりも、売上を上げた方が早いだろうというような考えでずっとやってきたので。かつ自分のキャッシュで回せたんですけれども。今後もっと大きなジャンプが必要であれば当然そういう選択肢は否定しませんし、色んな選択肢があると思っています。

藤田:上場しようとか、そういう目標を持っているわけではない?

有安:いえ、上場してそのお金で何やるのか、という絵がしっかりあるんであれば、全然あると思います。

藤田:すごい言い回しですね。ではトライフォートはどういう資本構成なんですか?

大竹:はい、今のところ完全に自己資本で、私と小俣のみの資本で経営しております。で、その後になんですけれども……。

藤田:何も聞いてないんですけれど(笑)。

大竹:今後はけっこう柔軟に対応していきたいなと思っていまして(笑)。色々考えたんですけど、今のところ自己資本でうまく回っているので、行けるところまでは行ってみようって思っているのと。あと事業自体がどっちかっていうと、いきなり自社サービスでアプリを出すのではなくて、受託という黒子に回っているというところもあるので。スケールはしないけれどもある程度、潤沢にキャッシュを回していくことができているので、今のところは。

藤田:大きなお世話かもしれないですけれど、リーマンショックの頃に、けっこう受託開発がバタバタ潰れたんですけれど。それは派遣で雇い入れてたり、受託にしているときは「何か業績や事業環境が変わったときに、そこのコストをバサッと切れて、柔軟にコストを小さくして生き延びれるから」という発注側の理屈があって、それがそのまま戻ってきてしまうというか。人件費だけが重くのしかかってしまう、という状態に変わってしまうと、山の天気のように危険な状態がやってきますけれど……。

まあ、大きなお世話でしたね(笑)。どうして受託から始めたんですか? 小俣さんがいるなら、いきなり自社タイトルでもいけたような気がしますけど。

大竹:リスクが大きいなあと思いまして。事業のポートフォリオというのを考えて、受託の会社にするつもりは全くないですし、ゲームの会社にするつもりも全くないんですよ。なので今はノウハウを蓄積していって……。

藤田:じゃあ何の会社になるんですか?

大竹:「世界最強の技術会社になるぞ」というふうに考えています。

藤田:いま暗記したのを言ったみたいな感じですね。

大竹:いやいや(笑)。日々デイリーでそのへんは伝えていますので。

藤田:デイリーで。将来的には上場とか考えているんですか?

大竹:可能性としては有り得るなと思っているんですが、具体的に動いているのは全然……。

売却するよりも、買って大きくしたい

藤田:なんか皆、歯にモノが挟まったみたいな言い方ですね。では古川さんの会社は今センシティブなのかもしれないですけど。

古川:資本政策ですか?

藤田:グロービス・キャピタル・パートナーズ(グロービス)から出資を受けているんですよね?

古川:そうですね、グロービスさんから受けていますね。我々のビジネスは、どちらかというと記事とかを集めて、それがハウツーなので、毎月ちょっとずつPVが集まる記事が多いので、(資金を)回収するのにすごい時間がかかるんですね。先にお金を集めて、とにかく一番メディアが大きくなるというところに注力するというような資本政策ですね。

藤田:ちなみにエグジット(会社を売却)するというのは、こういうIVS界隈の人はエグジットしたら「おめでとう」と言ってくれるし、そういうのを祝福するような文化ができてきていたような気がするんですけど、やはりなんだかんだ言っても日本の経営者は「この会社を守らなければ」みたいな、独立にこだわるところがありますけれど。売却についてどのような考えをお持ちですか?

古川:売却はすごくいいと思うんですけど、サービスを大きくするために買う側になりたい、というのはすごいありますね。とにかくサービスを大きくしたいというのが一番の行動原理としてあります。

藤田:合併はいいけど、買う側がいいと。

古川:そうですね。そういう形で色々なサイトが融合していって、すごいサービスになればいいと思うので、そのへんに関してはポジティブではありますね。

藤田:「したらば」はライブドアに売却したんですよね。一回そういう売却を経験すると、シリアルアントレプレナーと呼ばれている人たちのように「コツを掴むなあ」という印象があるんですけど。皆が買いたがるものをいち早く作って、サッと売るのがうまいなみたいな。もうnanapiはそういうふうにはしない?

古川:市場に合わせたモノを作って「これは買いやすいでしょ」というものがあんまり好きではなくて。ちょっと変なものとか、言葉で良さを説明できないようなものを作ったほうがいいなという思いがあって。そういうものを作りたいですね。すごいページビューあるけど、何が良いのかわからないとか、そういうもののほうが面白いんじゃないかというのはありますね。

藤田:確かにnanapiはそうですね。

古川:そうですね、ちょっとよくわからないかなぁという。

藤田:けっこうオリジナルティのあるサービスですよね。

古川:「何でないんだろう」と思って作っていたんですけれど。コストはかかるわ、手間はかかるわ、考えなければいけないところは多いわで。しかも4年くらいやってても儲かる気配がないという。明らかに分の悪いサービスなんですね。なので、面白いかなぁというふうに思っていて。

つまり他の会社がやろうと思っても「面倒くさくてやってらんない」というところが、いいのかなと思いますね。Cyta.jpさんとかもオペレーションが相当面倒くさくて、なので他がやろうと思っても到底できないみたいな。そういう形が好きですね。

藤田:ブログのように自動で拡散するような仕組みは付け加える予定はないんですか?

古川:そうですね。なるべくnanapiに来て、そこで検索して解決するような仕組みを目指してはいますね。

藤田:質が下がるからやりたくないということですか?

古川:いや、最近新機能を作ってもソーシャルボタンはつけないようにしていて。なんかダサイなあと思って。フェイスブックボタンとかがあるのが……。

藤田:すみません、つけまくってて(笑)。

古川:いえいえ、すみません(笑)。自分たちが作ったボタンを広めたいじゃないですか、できれば。そこをやりたいなあというのはありますね。

資金を調達しても、体制が整っていないと意味が無い

藤田:わかりました。じゃあ小島さん。本によると、けっこう株主が怒って最後「買い取れ」と言ったシーンが出てきたんですけど。あれバイバック(株式の買い戻し)条項みたいの入っていたんですか? 株主が……。

小島:いえ、入ってなかったですね。

藤田:で、買い取った?

小島:買い取りました。

藤田:なんで嫌だって言わなかったんですか?

小島:すごく罪悪感もありましたし、自己責任の感がすごく強かったんですよね。

藤田:それは株主……、投資家の自己責任なんじゃないですか?

小島:そうですね(笑)。でも自分にとっては、本当に未熟だった自分に投資していただいたので、その恩を返したかったですし、変に不義理なこともしたくなかったので。筋を通しておけるところは通しておこうっていうところが当時は強かったですね。

藤田:ウィルゲートは今後はどういう……。昔は上場目指してたんですよね? 最年少を目指してたら(リブセンスの)村上君に抜かれたみたいな。

小島:そうです(笑)。同い年ですからね。

藤田:今後はどういうご予定で?

小島:直近で資金が必要になってはいないので、資金調達して資本政策していくっていう予定はないんですけれども。単純に資金を調達したからといっても伸びるものでもないなというのが、本当に身を持って体験したと思っていて。組織が同時に成長して磐石な体制、基盤がないと結局、すぐに崩れていくんだなというのが……。

藤田:ちなみにご著書の中では、「サイバーエージェントは売上5億くらいしかないのに250億円くらい調達して、あれだったらウチもできる」って書いてありましたけれど。あの頃の考えとは変わってきた?

小島:そうですね、すみませんでした(笑)。

投資してもらうならお金持ちに

藤田:いえいえ、とんでもない(笑)。あとは、HASUNAの考え方も聞いておきましょうか。資本とかどういう考え方なんですか?

白木:エンジェルの投資家の方たちがいて。株主自体は11人もいるんですね。

藤田:その方々は特に目的もなく応援という意味で?

白木:全くリターンとか計算せずに「私の夢に出資してください」って言って出してもらったんです。

藤田:とくに報告もそんなにしない感じで?

白木:全然していなくて。時々会ってご飯食べて。「今こういうふうになっているので、今度お客さんを連れてきてください」っていうぐらいです。

藤田:僕もやっぱり出資してもらうなら、そういう人がおすすめですよね。やっぱり金持ちがいいですよ。金に余裕があって出資したことも忘れてるような人。「あれどうなった? どうなった?」って聞きに来る人はけっこう一喜一憂するので。

上場している株価見てるみたいに、グワッと上がったら「これすごい価値になったじゃないか」、すぐ落ちると「もうダメだ」みたいな感じで。「え? そんなこと忘れてた」みたいな人に投資してもらうくらいがちょうどいいですよね。

白木:そうですね、うちのビジネスモデル自体が明らかにリターンがあまりでないだろうなというビジネスモデルで。一応2期目から黒字化はしているんですけれど。でも全然、利益率とか……。いわゆるITネットベンチャーの方たちが上場して売却して、とかそういう発想では全くなかったりするので。全然発想が違うのかなというか、資本政策とかもちょっと特殊なのかなと思ったりしています。

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