THE YELLOW MONKEYのドキュメンタリー映画「パンドラ」

高橋:今日ちょっと映画プロデューサーが1人いらっしゃいますので、非常にドキドキしながら話しました。今日、「パンドラ  ザ・イエロー・モンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE」という映画をプロデュースしていただいた、曽根さんというパルコの方がいらっしゃいまして。拍手しましょう。

(会場拍手)

高橋:「パンドラ〜」っていうのは、2013年に作りました、ロックバンドのTHE YELLOW MONKEYのドキュメンタリーの映画でして、もしかして吉田さんともこの話になるかも。というのは、ある日急に吉田さんからメールが来て、去年か、今年の初めくらいか。「THE YELLOW MONKEYの「パンドラ」見ました」っていうのが来て。

実はその前、吉田さんに、「DOCUMENTARY of AKB48」の2014年の「The time has come」っていう大島優子さんの卒業する、シリーズ第3作目かな。これを実は試写会に吉田さん来ていただいて、観ていただいたらメールが来て、「あまり良くなかった」っていう、厳しいご意見をいただいて。

でもすごくありがたかったなと思ったんですけど、いろいろそこでご指摘いただいたのは本当に理に適っていて、やっぱりもっと早い段階で吉田さんに見てもらえばよかったなと思っていたんです。

そうこうするうちに今年の初めに、いきなり吉田さんからメールが来て、「パンドラ〜 観ました」って吉田さんからメールが来て、「すごい良かった」って言って下さいまして。

たぶんそれで「会いましょう」という話になっていたんです。3月の終りから4月頭に会おうと思っていたら、今回この話をいただいて、「そうか、公の場で吉田さんと話すのも悪くないかもな」と思ったのが、きっかけにもなっていますね。

多根:そうなんですね。

高橋:今回本編はあれなんで、予告を観てもらいましょう。

113本のライブする中で摩滅していったもの

(「パンドラ」予告編上映)

高橋:これは吉田さんに非常にご好評で。AKBをやるはるか前、1998年から1999年にかけて、1年間で113本のツアーをやったTHE YELLOW MONKEYというバンドがありまして、そのバンドが1年間やるうちに、結構いろいろなことがあったんです。

それを当時撮り溜めていたんですけど、あまりにも辛すぎて、全然公表できなかったんです。そのままお蔵入りしていたものを、今回形にしたいと事務所からオファーをいただきまして、やるんだったら、やっぱり映画がいいと思ったんです。

内容的に、113本やる中で、非常に精神的に磨滅していって、結果的にはバンドの解散にも繋がっていったような出来事でもあったので、これはファンだけじゃなくて、大勢の方に見ていただけるものにしたいということで、それも急だったですね。

それは逆に自分発信だったんですけど、恐らく3月ぐらいにお話しをいただいて、6月ぐらいから作って、9月に公開していたような。その時には「DOCUMENTARY of AKB48」の経験もあったので、「できる!」と僕は踏んでいて、やっぱりぜひやるべきだと思って、いろいろご協力いただいて、形にすることができたっていう感じなんです。

恐らくみなさん、どちらかと言えばAKBの方がご興味あるかもしれないんですけど、もし機会があればぜひ、ご覧いただけるとありがたいです。当時の映像はほとんど自分で撮影していて、これで「自分で撮影した映像も悪くないかも」ってちょっと思っちゃって、そのあとの「DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う?」は自分で回しちゃったっていう。

結構これとこれ(「パンドラ」と「DOCUMENTARY of AKB48 The time has come〜」)って、何か自分の中でちょっと繋がっている。自分的には、ですけど。ただ、吉田さんから言わせると「THE YELLOW MONKEYは良かったけど、こっちは正直イマイチだ」っていう。

多根:吉田さんは厳しい時があって、『「おもしろい人」の会話の公式』ができた後に、「何かここおもしろくなかったじゃないの」って怒っていることがあって。

高橋:編集的な部分でっていうことですか?

多根:はい。本が出る前に言ってよと思ったんですけど(笑)。

高橋:自分で見ておきながらね。

「パンドラ」の経験があったから、浮かれることができなくなった

多根:そうですね。いろいろ、ちゃんと見て厳しいところは厳しいんですけど、本当にTHE YELLOW MONKEYのお話はすさまじいですね。それが解散になったっていうのは。

高橋:そうですね。それだけじゃなくていろいろあるんですけど、ただ、それまでイケイケというか、バンドとしては上り調子だったんです。それも僕は目の当たりにしていて、それがある時、まるで白から黒に反転するかのように、一夜にしてじゃないですけど、本当に数ヶ月にしてバッと暗雲立ち込めるのを目の当たりにして、本当に愕然としたというか。

だから今でも僕、正直あまり浮かれることができなくなっちゃって、アイドルブームだとか言っても、そんなにワクワクしたのってなくて、そのぐらいトラウマと言ったら変だけど、「あ、こういうことってあるんだ」という驚きに繋がった出来事でありましたね。

多根:実際目の当たりにすると。ずっとコンサートは付いていたんですか?

高橋:そうなんです。ずっとではなかったんですけど、途中であまりにも状況が大変過ぎて、ぷらっとお伺いして撮るなんてできない瞬間だったこともあったりなんかして。

多根:確かにそれだけの重みがある映像になったのかなって思いますね。

高橋:そうですね。だから出会いって大事なんじゃないかなと思うのは、ミュージック・ビデオのディレクターとして、結構若い頃からやらせていただいて、THE YELLOW MONKEYと共にずっと坂を上ることが出来、頂上が見えてそれから解散の流れで、図らずも俺も転げ落ちちゃって、そのあと鬱とまでは言わないけど、何年か暗黒時代が仕事的にはあって。

今から思えばその時に作ったものも結構出来はよかったんですけど、「もう駄目かも」みたいな状態で、その「もう駄目」という時に、急に「アイドルMVを」っていうお話が秋元さんから来て、初心に帰ってやったのが、一番最初のAKBのシングルのミュージック・ビデオだったんですよね。

ある種の精神状態の煮詰まりみたいな、本当に奥さんと「監督辞めて、次どうやって食っていくか」っていう家庭会議すら開かれている状況の中でやっていたので、逆にそれが良かったんじゃないかなとは思います。

多根:やっぱりやってみたら他人から「よかった」と言われることもたくさんあるんですか?

高橋:やってみて初めて気付く自分の得意、不得意っていうのもあると思うんです。アイドルもやってみてそうだったし、ドキュメンタリーもそうだし、そもそもミュージック・ビデオそのものが、さっき言っていたように、僕そんなに知らなかったし、白状するとロックもあまり詳しくなくて、THE YELLOW MONKEYやるまで。

じゃ、何やっていたんだっていう話なんですけど、映画ぐらいしか、全然本当に。とってもマニアックな人だったんだけど、いろいろな出会いと、その中でやっていったことで、いろいろな可能性を広げていただいて、今日に至っているなと思います。

アイドルの撮影経験を活かした劇映画をやってみたい

高橋:そろそろ吉田さん来てほしいな。

多根:小田急線には乗っていると思います。

高橋:小田急線(笑)。これ、こんな感じで続けていても大丈夫なの?

多根:大丈夫です。

高橋:大丈夫ですか?

多根:来ると思いますが、来るまで続けていただければ。

高橋:はい。この本にも書いてありますよね。(吉田さんは)40分ぐらい1人で場を持たせたみたいなことあるんでしょ。

多根:そうですね。

高橋:持たせる方の気にもなってほしい(笑)。というのもありますけど、でも僕は楽しいんですけど、みなさんが楽しんでいただければなと。今日は吉田さんに「あまちゃん」の話を伺いたかった方がいらっしゃったら、ちょっと申し訳ないんですけど。

多根:これからもずっと、今のところはアイドル関係を中心にやっていかれる予定なんですか?

高橋:そうですね。来るもの拒まずでやっているところもありますので、あまり職種にこだわらず、何でもやろうかなと思っています。ただ、劇映画をやりたいなと今ちょっと思っています。

ミュージック・ビデオの中でいろいろお芝居を撮る機会があって、そこの中で培ってきたノウハウじゃないけど、やっぱりアイドルって特殊なんです。プロの俳優さんと違って、下手すると演技経験とかゼロな女の子とかもいっぱいいるんです。

そういう演技経験ゼロの女の子を、どうやってお芝居の気持ちに持っていくか、あるお芝居の形を作っていくかを、いろいろ試行錯誤しながらやってきたので、そのノウハウみたいなものを、どこかで1つ、ドキュメンタリーとは違う形で出せたらいいなと思っています。いろいろなことをしてきましたね。本当に。

多根:確かに、本当にいろいろなジャンルのものをやっていらっしゃいますよね。今まで「でも、これは断ろうか」と思ったものってありますか?

高橋:もちろん。若い頃はよく突っ張って断ったりしていたんです。だけど、いつからかな。そういうの意味ないなと思って、何でもじゃんじゃんやることにしました。たぶんモーニング娘。さんをお断りしたのが最後で、それは僕の方があまりにも詳しくなさ過ぎて、申し訳ないなと思って。

あまり詳しくない人が作っているものぐらい痛いモノはないじゃないですか。詳しくないというか、当時はそこに深く興味が持てなかったので、そういうものをやっちゃうのは、本当に申し訳ないなと思って、それだけお断りしました。

制作協力:VoXT