年を取ることは怖くない
人生最後の30年を幸せに過ごす方法

Jane Fonda: Life's third act

医療や科学のめざましい進歩により、私達の寿命は祖先よりも平均30年伸びたと言われています。私達は人類に追加された残りの30年間をいかに謳歌するべきか? 女優のジェーン・フォンダ氏は、研究結果や偉人の話を例にして、年齢を重ねても幸せでいられる考え方を紹介します。

私達は34年もの追加人生を手に入れた

前世紀人類はさまざまな変化を遂げましたが、中でも最も重要なのは人類の寿命が延びたことではないでしょうか? 我々の寿命は私達の曽祖父母より平均して34年も長いのです。考えてみてください。34年とは成人してから生きる期間そのものですよ。しかしこれが私達の人生にどんな意味を持つのかについては未だ明確な答えは出ていません。

未だに年を重ねることについての古い概念がまかり通っているのです。よく言われる曲線です。生まれてから中年期に人生のピークを迎え、あとはそのまま落ちていくだけ、という。

(会場笑)

年を重ねることは望ましくないこと、恐れるべきこと、病理であるのだと言われています。しかし今日の哲学者、アーティスト、医者や科学者の多くが私が呼ぶところの「サード・アクト(3rd Act))、つまり人生の最後の30年間に着目しています。実はこの人生の最後の30年はその期間独特の成長期であると言われるようになりました。人生の中期が青年期や幼少期とは異なるように。

人生の最後の30年をいかに使うかを考えるべきです。その期間をいかに幸せに過ごすか、この期間をいかに適切に表現するかも考えるべきなのです。昨年私はこのテーマについてよく調べて、ものを書いてきました。そして私は年を重ねるということは階段を上がっていくようなものであると表現するのが適切であるという結論に至りました。人の精神が鍛錬され、英知を身につけ、真の自分自身になっていくという。

年齢を重ねることを恐れる必要はない

年を重ねることは全く悪いことではありません。年齢を重ねていくことが有益であるのはある限られた人たちだけにとってではないのです。50歳以上の多くが、以前より気分が楽になった、ストレスを感じなくなった、怒らなくなった、不安感がなくなったと言うのですから。ある研究では「年齢を重ねると幸せ度が上がる」とまで結論づけているんです。

そんな研究結果に出会うなんて予想もしていませんでした。だって私も年を重ねて大分落ち込みましたからね。

(会場笑)

40代後半の時は毎朝起きてすぐに考える6つくらいのことは全部ネガティブなことでしたから。怖かったです、自分が気難しいおバアさんになってしまうのではないかって。でも今私は人生最後の30年に突入していますが、今がこれまで生きてきた中で最も幸せな時期だと感じます。

人生がとてもうまくいっていると感じるのです。わかったことは、実際に年を取ってみると恐れの感情が静まるのです。年を取っても自分は自分であり、むしろ若い頃よりも自分自身でいられるのだということに気がつきます。ピカソはかつて言いました「若くなるには多くの時間が必要である」と。

もちろん、年を重ねることは美しい! と必要以上に加齢を美化するつもりはありません。年を取ることで、人生の最後の数十年が必ず誰にとっても充実した自己の成長期となる確証はありません。何かが不足しているかもしれませんし、遺伝的に問題があるかもしれません。3分の1は遺伝的問題なので、これを我々がどうすることもできません。

しかし逆に言えば人生の最後の30年をいかに充実した期間にするかについて、3分の2は私達自身がコントロールできるという意味でもあります。

今日は近年我々が得た追加30年の人生をどのように生きるか、そしてこの期間で何ができるかについてお話したいと思います。まず最初に人生を階段に例えることからお話しましょう。皮肉なことに年を重ねると階段を昇るのがキツくなりますけどね。

(会場笑)

もちろんこの私もその一人です。皆さんご存知の通り、この世界は「エントロピーの法則」によってコントロールされています。エントロピーとはすべてのものがだんだんと減少し消滅するという熱力学の第2の法則です。そしてこの法則にはたったひとつだけ例外があります。それは人の精神です。人の精神は上へ上へと階段を昇り続け、私達を完全で真の自分へ、そして英知へと導くのです。

肉体は衰えても精神は向上し続ける

私が今話していることの例を挙げましょう。物理的に、身体的な障害がある時ですら、精神は成長し続けるのです。3年ほど前に「ニューヨークタイムズ」のネイル・サリンジャーという57歳の引退した弁護士についての記事を読みました。彼はサラ・ローレンス大学のライターのグループに参加し、書くことへの情熱を見つけたそうです。その2年後、彼はALSと診断されました。この疾病は命に関わるとても重い病気です。彼の身体はどんどん弱っても、頭は変わらずシャープでした。

この記事の中でサリンジャー氏は彼の身に起こっていることを表現するのにこう書いています「私の筋肉が弱くなっていくにつれ、私の書くものはどんどん良くなっていく。段々と話すことも困難になる中、私は自分自身の声を手に入れた。消滅しながらも成長している。多くのものを失いながらも、ついに自分自身を見つけた」ネイル・サリンジャーさんはまさに人生最後の30年の階段を昇り続ける人を象徴しています。

自分のこれまでの人生を振り返る

私達は誰もがみな精神とともにこの世に誕生します。しかし時にはその精神が人生の困難に打ち負かされそうになります。幼児期に暴力、虐待、ネグレクトの被害に合っている人もいるでしょう。両親がうつに苦しんでいることもあるでしょうし、そして両親が私達をありのままに愛することができないこともあるでしょう。人生で抱えた傷に今でも傷ついている人もいるでしょう。人間関係が完結していない、まだやり遂げていないことがある、と思うこともあるでしょう。

人生最後の30年でやり遂げなければならないこととは、私達が「まだ終わっていない、満足していない、人生を終える前にこれだけは」と思うことをして人生を終える準備をすることかもしれません。

私の場合60歳の誕生日を迎えた時に人生最後の「サード・アクト」が始まりました。どうやって最後の30年を生きればいいだろうか? 何を成し遂げればよいのであろうか? と考えて気がつきました。どこに向かって生きるのかを知るためには、今までどんな人生を歩んできたかを受け止めねばならないということに。

そこでこれまでの人生の生まれてからの30年と、その後60歳までの30年を振り返り、私は一体当時どんな人間だったかを理解することにしました。両親や他者が望む自分ではない真の自分を。私の両親はどんな人達だったのか? 両親という枠を外した時、一体彼らはどんな人間であったのか? 祖父母はどんな人間だったのか? 祖父母は私の両親とどんなふうに接していたのか? そのようなことを考え、調べ始めました。

その数年後、このように調べ始めたこのプロセスを「ライフ・レビュー」と心理学者が呼んでいることを知りました。そして心理学者が言うには、このプロセスにより人生に新たな重要性と意味を見出すことができるとのことです。

私がそうであったように、皆さんもこのプロセスによって自分の責任だと感じていたことや自分とはこういう人間であると考えていたことが、本当はあなたの責任でもなんでもないということを知るはずです。そして当時に戻って、自分を傷つけた人を許すことができるのです。そしてもちろん自分自身を許すこともできます。自身の過去から自分を自由に解放してあげるのです。そして過去の捉え方を変えるよう努力することもできます。

物事の捉え方で人生の質は決まる

このテーマでものを書いているうちにヴィクター・フランケルの「Men’s search for meaning」という本に出会いました。彼はドイツの精神科医で、5年間ナチスの強制収容所で過ごしました。彼は収容所にいる間、誰が無事にここを去ることができるか、誰が恐らく命を落とすかを見極めることができたそうです。

彼はこう書いています「その状況にどのように反応するかを自分の意思で決定する自由を除いて、人が持っているすべてのものは奪われる可能性がある。そしてその自由が我々の人生の質を決定する。豊かか貧しいか、有名かそうでないか、健康かそうでないかは関係ない。我々がいかに現実を捉えるか、その現実にどんな意味を与えるか、その現実にどのような態度で向き合うか、どんな状況で感情を揺り動かされるか、これが我々の人生の質を決定する」。

「サード・アクト」の目的とは、必要に応じて自身の過去の捉え方を変えることではないでしょうか? 認知研究によると、これを神経学的にできるようになると脳の中に神経回路が生まれるそうです。長期間ネガティブな思考で過去の状況や出来事に反応していると、そのネガティブな神経思考回路が脳の中に生まれるというのです。そして時間とともにそのネガティブ思考が神経学的にも定着していくのでネガティブでいることが通常の状態になってしまうのです。

それをするのにストレスや不安を感じても、過去と向き合い、過去の捉え方を変える事ができれば、脳の神経回路にも変化が起こります。そして過去の出来事へのポジティブな捉え方を維持することができれば、今度はポジティブ思考が普通になります。温度計をリセットするようなものですね。

あることを体験するのではなく、その体験について熟考することが人を賢くするのです。そしてそれが私達が真の自分、英知と真実に近づく方法です。

女性は完全体、真実の姿で生まれてきます。私達は自主性と主体性を持っています。しかし思春期を迎えると同時に、非常に多くの場合女性は皆と同化しようとし、皆から好かれようとし始めます。そして私達女性は他者に自らの主体性を預けてしまうのです。

しかしこの「サード・アクト」では主体性を持って生まれたままのところからやり直すことができるかもしれません。そして今回自分の主体性を取り戻したらそれはただ単に「自分自身」となることに留まりません。

年を重ねた女性は世界で最も人口比率が高いです。もしも私達が過去と向き合い、自分自身を再度取り戻したら、世界中で文化的変化が起こるはずです。そしてそんな先輩女性たちの姿から若い女性達も自らの人生設計を考え直すきっかけになるのではないでしょうか。ありがとうございました。

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