京都紋付袴の「黒染め」とアパレルメーカーのコラボで生まれた新しい衣類とは

Traditional Japanese dyes on the path to eco-friendly fashion | Toru Arakawa | TEDxKyoto

伝統的な男性の着物「紋付」を100年間染めている京都紋付の荒川徹氏。ピーク時では年間に約200万反(たん)生産されていましたが、現在では約50分の1の4万反に減少。伝統的な黒染め技術が失われつつある危機に面しています。荒川氏は伝統技術を保全するために2つのプランを実施。その内容の1つめは伝統的な技術を使って新たなデザインのアパレル製品をつくること、もう1つは黒染めの技術を使った衣服の再生でした。(TEDxKyoto2014 より)

伝統的な男性の礼装「紋付」の歴史

荒川徹氏:私は京都でこの紋付を100年間染めている会社の荒川徹と申します。今日はみなさまに2つのご提案をさせていただきたいと思っています。

(扇子を取り出して)その前にこれ、武士で言う脇差しの刀なんですね。

みなさまに敬意を表するためにここ(床)に置かせていただきます。それと、ちょっと緊張してますので、転落防止のために置かせていただきます。

(会場笑)

画面を見ていただきますと、紋付。これですね。この紋付を染めております。

着物産業はなかなか厳しい状態で、以前は2兆円産業と言われていたんですけれども、現在では約4000億円に減少しています。その中で、われわれは今日2つの提案をさせていただきます。

1つは着物の伝統的な技術を使ってアパレル製品を作るという提案。そして、もう1つはわれわれのこの黒染めという技術を使って、洋服を再生してアパレル産業をエシカルな産業に変えていこうという提案です。

まず、簡単に紋付の歴史をご紹介させていただきたいんですけれども。

10世紀にその起源は始まります。そして17世紀、武士の社会で略礼装として紋付が着用されるようになりました。

そして明治32年、天皇陛下のお母様が亡くなられた際に国の法律によって黒紋付袴が第一礼装として制定されました。そのあと、明治時代には海外から洋風の文化が入ってくる。庶民も苗字を使えるようになりました。

そして苗字を使えるようになってから、ここについている家紋ですね、家紋をそれぞれのご家庭に持たれるようになりました。

現在においてはどういった形でこの紋付が着られているかと申しますと、例えば結婚式。結婚式の時に男性が紋付袴。そして、お葬式の時に喪服。

そして、画面上では祇園の芸子さん、舞妓さんの「事始め」という行事が京都であります。その事始めの時に裾に模様のある艶やかな着物をお召しになっております。

こういったことが着物の歴史でございます。ピークでは年間に約200万反(たん)生産されていました。

着物産業の衰退と次世代に向けた取り組み

それが現在では約50分の1の4万反に減少しております。これはこの紋付だけではなく、日本の伝統産業全てで言われていることです。

われわれはこの伝統産業を、日本のすばらしい技術をいかに世界に広げるか。いかに後世に残していくか。

ということで、技術と新しいデザインを融合させて、次の世代に向かって技術を残していこうと考えております。

こういった、現場の社員なんですが、職人さん。細かな仕事をしております。こういった職人さんがどんどんどんどん減少しております。

われわれも、私のおじいさんの時代から商売をしておりまして、おじいさんが現場で手の爪の間が染料で真っ黒だったんですね。そんなことを覚えております。

また、背中を見ていただきますと、右と左で全然色目が違います。これ失敗じゃないんですね。これ(右)が普通の染め。こちら側(左)が真っ黒に染める技術です。

この技術を活用して、黒を極めていきたいということで提案をしております。

不思議なもので、京都では、まず柄を染める着物屋さん、そして無地を染める染屋さんに分かれます。

その中で無地は黒と色に分かれます。われわれは約100年間、黒を専門に黒を極めてきて、それが今われわれの技術の根底にございます。

私が父の跡を継ぐきっかけとなったのは、私は大学を卒業してまず最初にプリント基板のメーカーに勤めました。

私が朝会社へ行くと、社長が来られて、ふと父の名刺を私に渡されたんですね。実は昨日のパーティーで君のお父さんに会ったよ、と。

名刺を交換したんだと言って、父の名刺を出されました。

父の名刺を見ると「二代目御黒染司」という肩書が書いていまして、その名刺を見た時に自分の中で家業というものをよく考えて、いろんなことを振り返って、それからその夏にその会社の家業を継ぎました。

アパレルメーカーと着物業界のコラボ

継いだ後も、着物業界、特に紋付業界は斜陽で、どんどん需要が低迷して参ります。その中で、なんとかこの技術を後世に残していけないか。

なんとか業界を、形を変えてもいいから残していかないとあかん。という思いに駆られている矢先に、アパレルの小売さんからコラボレーションの提案がございました。

その時に、われわれの黒という技術を使って、いろいろとアパレル製品を作りたいというご要望がございました。

それをきっかけにわれわれは今持っている技術を使って、形を変えて後世に残していこうということで動き始めました。

画面にございますように、シューズメーカーとコラボしたり。いろんな商品を作り始めました。

弊社のホームページからある女性が応募してきて、弊社のコンテンツにすごく興味を持って、すごく熱いメールだったんですね。

ただ単に採用のメールというと通常は軽い気持ちが多いんですが、われわれが持っているコンテンツをよく研究して、それを磨きたいというような内容でした。

彼女は岡山で有名なデニムメーカーのデザインと企画をしていました。彼女が入ってから、われわれの技術を外から見た目でどのように磨いていったらいいかということが、体でだんだんわかるようになりました。

デニムであったり、セーターであったり、トートバッグであったり、いろんな商品を作り始めました。

そこで核となったのが、我々の技術の右と左の違い、黒さの違いです。われわれ黒染めという業界では黒さの違いなんですけど、着物業界ではいろいろな技法がございます。

例えばこれは、絞り、友禅、ぼかし、型染めですね。

われわれは自社の黒染めだけではなく、着物の加工技術を使っていろいろな製品を開発したいということで、今手描きのTシャツであったり、ぼかしと型染めを用いたり。

そういった着物のデザイン、技術、アパレルのデザインを用いて、いろんな技術を開発しております。

その中でアパレルの有名なブランドなんですが、こちらも弊社の黒に興味を持っていただいて、黒極めるということで今展開しております。

最終的には着物の技術を残したい

最終的にはわれわれはやはり着物の技術を残したいという思いで展開しております。

1つ目の提案は、着物の技術をアパレルに活かして着物の伝統産業を守っていくと。2つ目のご提案は、現在では日本で年間約200万トン以上の衣料が廃棄されていると言われています。

リサイクル率を申し上げますと、空き缶とかペットボトルより低く、10数パーセントです。

みなさんのご自宅のタンスの中の衣類を思い出していただくと、たぶん半分以上がお召しになっていない。

これはある自治体の古着を集めた倉庫なんですが、山のように古着が積まれています。こういった衣類は環境に対してものすごく負荷がかかっています。

今世界で言われているのは、地球1個分の生産に対して1.5個分の消費がされているということです。

古着を染め直して新しい衣類として再生

そこでわれわれは昨年の10月にWWFジャパンとコラボレーションを行いました。どういった企画かと申しますと、古着を黒く染めて再生しましょうよという企画でございます。

今われわれはみなさんのお手持ちの古着を染め変えて再生しようというプランを実行しています。

今彼女が着ている洋服は、元は画面上のああいった衣類です。それを黒く染め直すことによって再生しています。これは不思議なんですが、胸元の刺繍は元の色が残っています。

なぜかというと、化学繊維で染まらないんですね。われわれの加工は天然繊維を染めるという加工です。化学繊維は染まりません。(女性に向かって)ありがとうございます。

次の男性も同じようにもともとはああいった衣類でした。ここの赤い柄、ここにボーダーのラインがあるんですが、このボーダーの部分はプリントがされていまして、この部分はまだ色が残っています。

ここの縫製の糸もそうですね。これは天然の糸じゃなくて、ポリを使って縫製されているのでこのように残っていると。

このコーデュロイのパンツも、そこのステッチが、縫製の糸がそのまま残っていると。もともとシミがあったり汚れがあった衣類です。(男性に向かって)ありがとうございます。

次に彼女が着ている衣類なんですが、これも同じく、ちょっと画面では見づらいんですが、全体に黄ばみがありました。その黄ばみを黒く染めて消しています。

ボタンのところなんかは、貝殻を使っていますのでその部分は染まらずに残っているということでございます。(女性に向かって)ありがとうございます。

次の男性が着ている衣類なんですが、これも画面上見ていただいてわかりますように、下は真っ黒に染まっています。上はボーダーが出ていますし、例えばここのステッチですね、これもそのまま染まらずに残っています。

次に、このコートはすごく表情がおもしろいんですけど、綿とポリの混紡です。太陽の下に行くと玉虫色に見えます。

黒とポリが交互に編まれていて、それがポリの部分が染まらずに、黒の部分だけが染まっていると。そしてこのボタンホールのステッチなんかも、ポリの繊維を使っているので染まっていないと。全く新しい衣類として蘇るということです。

われわれはこの技術を使って、1つはみなさんがお持ちの古着を染め直して新しい衣類として再生しようということです。

このプランは、ハードは染め変えるというハードですが、それに対していろいろとソフトフェアを組み込んで提案しています。

熱い心を持って自分が信じる道を歩む

今、アパレルのデザイナーに提案しておりますのは、デザインをする時から、はじめから染め直すという企画を頭に入れて加工を施しておこうよ、糸使いをしましょうよと。

そして、消費者がお召しになった衣類を再度染め変えることによって、2回使えるという新しいデザインの考え方。これを広めていきたいと思っています。

最後に私が申し上げたいのは、まずは今日のプランは2つございます。伝統技術を保全して、新しいデザインをする。それと、黒く染めるという技術を用いて、衣類を再生する。

今回こういうプレゼンをさせていただいて、私が常に思っていることは、自社の持っている、私自身が持っているコンテンツ・技術に対して、熱い思いを持ってそれを深く探求していく。

そしてそこに夢とビジョンを持てば、いろんな人の力をいただいて、それが広がっていきます。TEDのこういう場をわれわれ一介の職人がしゃべらせていただくこともすごい機会です。

ただ私は事業を通じていつも心に思っているのは、誰にも負けない熱い心を持って自分が信じる道を歩んでいくと。

夢を持って伝統産業を守って、次の展開をしたいと思っています。どうもありがとうございました。

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