核兵器よりも世界的なウイルス感染--ビルゲイツが語る人類の脅威と5つの対処法

Bill Gates: The next outbreak? We’re not ready

マイクロソフト創設者・ビル・ゲイツ氏が今後、大規模感染が起こる可能性があるウイルスの脅威について語ったスピーチ。西アフリカでエボラ出血熱が流行した際、具体的な治療方法が見つからず、大きな混乱を引き起こしました。ゲイツ氏はエボラ出血熱からの教訓を生かし、人類が病原菌に立ち向かうために準備すべき5つことについて語りました。(TED2015 より)

人類の脅威が「核戦争」から「ウイルス」に

ビル・ゲイツ氏:私が子供の頃、最も恐れられた災難は、核戦争でした。そのため、私たちは地下にこのような筒を用意し、缶詰や水を保管しました。核爆弾が襲ってきたら、私たちは地下へ降り、しゃがみこんでこの筒の中身を食べることになっていました。

今日の最も危険な世界的大参事は、こういったことではなさそうです。代わりに、こういうことだと思われます。

もし、この先10年のうちに10万人以上を殺すものがあるとすれば、それは戦争ではなく、とても感染性の高いウイルスであろう、と。

ミサイルではなく、病原菌なのです。さて、この理由のひとつは、私たちが核兵器の抑制には大いに投資してきましたが、疫病を防ぐシステムにはなんら投資してきていないことです。

つまり、私たちは、次なる伝染病への準備ができていません。

エボラ出血熱から見えたシステムの欠如

エボラ出血熱を見てみましょう。みなさんもたくさんの厳しい状況を新聞で読んだことでしょう。ポリオを根絶に追いやった時のケース分析ツールを通して、私はエボラの場合を慎重に追跡しました。

何が起こっているのかに目をやると、問題はシステムが十分に機能していなかったことではなく、私たちがシステム自体をまったく持っていないことだったとわかったのです。

事実、とても明らかで重要な欠如している点がいくつかあります。

現場へ行き、その病気が何かを見極め、どこまで広まっているかを調べるための、すぐに動ける疫学者の団体などいませんでした。

症例報告は紙で届きました。それは、電子化されるまでにとても時間がかかり、また非常に不正確なものでした。

すぐに動けるメディカルチームもいませんでした。私たちは、準備の整った人々へのつながりを持っていなかったのです。「国境なき医師団」はボランティアを集め、素晴らしい仕事をしました。

しかしそれでも、これらの国々に何千人ものスタッフを投入するには、とても間に合わないスピードでした。

大規模な伝染病には、非常にたくさんのスタッフが必要になります。エボラの場合、治療法を確認する人がいませんでした。

診断法を見る人もいませんでしたし、どんな道具を使用するべきか見る人もいませんでした。

スタッフがいれば、例えば生存者の血液を採取して処理し、その血しょうを他の人々を救うために使用することができました。しかし、それは実現されませんでした。

たくさんのことが欠如していました。これらは、本当に世界的失敗です。WHOは、伝染病を監視するために設立されたはずなのに、今私が話したようなことはしません。

映画の中ではまったく違うように描かれていますが。美男美女の疫学者が準備万端で、現場へ駆けつけ、危機を乗り越えますが、それは単純にハリウッドの世界でしかないのです。

(会場笑)

エボラが西アフリカ以外に広まらなかった3つの理由

準備を怠ると、エボラより圧倒的にひどい伝染病を招くことになります。今年のエボラの進行状況を見てみましょう。約1万人が死亡し、そのほとんどすべてが西アフリカの3ヶ国に集中しました。

それ以上に広まらなかった理由は3つあります。1つ目は、ヘルスワーカーの勇敢な働きがたくさんあったことです。彼らは患者を発見し、それ以上の感染を防ぎました。

2つ目は、ウイルスの性質です。エボラは、空気感染はしません。感染すると、大変具合が悪くなるため、多くの人はベッドから動けません。

3つ目は、エボラがたくさんの都市へは流出しなかったことです。これは単純に幸運でした。もし、もっと都市へ流出していたら、症例数はもっと増えていたでしょう。

次回は、私たちはそんなに幸運ではないかもしれません。感染しても症状が出ないため、飛行機に乗ったり、市場へ出かけたりできてしまうようなウイルスが現れる可能性だってあるのです。

ウイルスの感染源には、エボラのように自然由来の場合と、生物兵器テロの場合があります。つまり、文字通り何千倍も事態を悪くするものが存在するということなのです。

事実として、1918年に流行したスペイン型インフルエンザのような空気感染をするウイルスの場合を見てみましょう。

何が起こったかというと、それは本当に速いスピードで世界中に広まりました。そして、3千万人以上がこの伝染病により死亡しました。これは深刻な問題です。私たちはよく考えなければなりません。

しかし実は、私たちは実によい対応システムを築くことができます。ここで話しているようなすべての科学や技術の恩恵を、私たちはすでに受けています。

公共の場から情報を得、また情報を公開するための携帯電話があります。衛星地図を利用して、人々がどこにいて、どこへ動いているのかを見ることができます。

生物学における発展のおかげで、病原体を調べ、それに対抗できる薬やワクチンを作る時間を劇的に短縮できます。

私たちには道具があります。しかし、これらの道具は世界的な健康システムのために使用される必要があります。そして、私たちにはそのための準備が必要です。

ウイルスに立ち向かうために準備すべき5つこと

どうやって準備をすればよいか。最もよい教訓となるのは、繰り返しますが、戦争をするときに何をするか、ということだと私は思います。兵士は、いつなんどきも出陣できるよう待機しています。

部隊をスケールアップするための予備軍もいます。NATOには、すぐに配置できる機動部隊があります。

NATOはたくさんの戦争演習を通して、兵士たちはよく訓練されているか? 燃料や輸送、無線の周波数を理解しているか? などをチェックしています。彼らは完全に準備ができているのです。

つまり、このようなことが、伝染病に対処する際に必要なことなのです。

鍵になるものは何でしょうか? まず、貧困国におけるしっかりとした健康システムが必要です。母親が安全に出産でき、子どもがすべてのワクチン接種を受けることができ、同時に、疫病の発生にいち早く気づくことができるシステムです。

次に、医療部隊が必要です。ノウハウを持ち、医療訓練を受け、すぐに動く準備ができている人々のことです。

それから、これらの医療人たちと軍隊を連携させることが必要です。軍隊の、素早く動ける特性を活かし、輸送と場所の確保を行うのです。

私たちはシミュレーションをする必要があります。機動演習ではなく対病原菌演習です。どこに欠陥があるか見つけるためです。

最新の対病原菌演習は、2001年にアメリカで行われましたが、あまりうまくいきませんでした。今のところ、1対0で人類は病原菌に負けています。

最後は、ワクチンと診断学におけるたくさんの研究と開発が必要であること。とても速く効くアデノ随伴ウイルスのワクチンのように、いくつかの大きな打開策もあります。

これがどのくらい費用がかかることなのか、正確な金額はわかりませんが、起こりうる被害に比べると、そんなに大きくない額だと私は確信しています。

世界銀行は、もし世界的なインフルエンザが発生した場合、世界経済は3兆ドルを超える打撃を受け、何百万人もの人々が死ぬであろうと予測しています。

これらの投資は、単なる伝染病への備えを通り越して、重要な利益をもたらします。一次健康管理、研究開発、これらが世界の健康における公平性を向上させ、世界をより安全でよいものにしてくれるのです。

だから私は、これを何よりも優先すべきだと思います。パニックになる必要はないのです。

スパゲッティの缶詰を買いだめすることも、地下へ逃げ込むことも、必要ないのです。しかし、今すぐ取り組む必要があります。時間は味方してくれないのですから。

事実、エボラの流行から得られる前向きなことがひとつあるとすれば、それは、エボラが次への準備に対する早めの警告、警鐘であったということです。

今始めれば、私たちは次なる伝染病に備えることができるのです。

ありがとうございました。

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