人は歳を重ねるほど幸せになるとしたら?
米国の調査結果から考える、高齢化社会の明るい未来

Older people are happier #1/2

世界的に問題視されている高齢化ですが、スタンフォード大学心理学・公共政策学教授でスタンフォード大学高齢化センター所長のローラ・カーステンセン(Laura Carstensen)氏は、高齢化社会は決して悪いことばかりではないと語ります。「高齢化のパラドックス」によって感情が安定し、若者よりも高齢者のほうが苦痛は少なく幸福度が高くなるという驚きの研究結果を発表しました。(TEDxWomenより)

20世紀に急激に増加した寿命

ローラ・カーステンセン氏:人々は長生きし、社会は「白髪化」している。私たちはこのようなことをよく耳にします。新聞やテレビで、頻繁にこの表現を見聞きします。

私が気掛かりなのは、あまりにもこのような表現を多く耳にすることで、長寿を自己満足もしくは安易に受け入れるようになっているのではないか? ということです。しかし、誤解しないでいただきたいのですが、私はすべての世代において、長生きすることは生活の質の改善につながるものと確信しています。

では、ここで一歩下がって総合的な視野で見てみましょう。20世紀の間に増加した平均寿命は、過去数千年の人類が進化した過程において増加した平均寿命総年数を上回っています。一瞬にして、我々の時代に寿命が倍になったのです。ですから、高齢化について今ひとつ理解できない思っている方はご安心ください。これは新しい現象なのです。

更に、出生率が同時に低下しているために、以前は多くの若者を底辺に、長年生きた少数の高齢者を頂点とするピラミッド型社会構造が典型でしたが、今ではそれが長方形に変形しつつあります。

もしあなたが、人口統計数値を見てゾクっと感じるタイプであるなら、まさにこの数値がそうさせるでしょう。

(会場笑)

というのも、人類歴史上初めて、先進国で生まれた子どもたちの大多数が高齢者となる機会があるからです。

高齢化は悪いことばかりではない?

では、どうしてこうなったのでしょうか? 私たちは、遺伝的には1万年前に存在した祖先ほど丈夫ではありません。寿命の増加は、注目すべき文化の産物といえます。この文化とは、人々の健康や幸福を改善するために科学やテクノロジーそして広範囲にわたる行動変化を束ねたるつぼです。

文化変容を通して、我々の先祖は、人々がより完全な一生を送ることができるように早死にを排除するよう努めました。

高齢化には問題も伴います。病気、貧困、社会的地位の喪失など、我々の成功の余韻に浸っている暇はありません。しかし、高齢化について更に学びを深めると明確になることは、全てが下り坂であるとは決して言えないということです。

というのも、高齢化は知識や経験の向上、そして感情面での生活の向上などの進歩をもたらすからです。

そうです、高齢者は幸せなのです。彼らは、中年層よりも、更には若年層よりもずっと幸せです。あらゆる研究が同じ結果に達しています。

「高齢化のパラドックス」によって、苦痛の少ない高齢者たち

最近、米国疾病予防管理センターがある調査を行いました。その調査は、単に「前の週に深刻な精神的苦痛を経験したかどうか」を報告するものです。この問に対して、「はい」と答えた高齢者数は中年および若者よりも少数でした。

また、最近のギャラップ世論調査が「前日、どれだけストレス、心配事、怒りを感じたか」を尋ねました。その結果、

ストレス、

心配事、

怒り、は年齢が上がると減少することがわかりました。

さて、社会科学者たちはこの現象を、「高齢化のパラドックス」と呼んでいます。そもそも、高齢化は単純な課題ではありません。そこで、私たちはあらゆる質問をし、この調査結果を覆すことができるか調べました。

私たちは、「現代の高齢者世代がいつの時代も最高と言えるか」聞いていてみました。つまり、今日の若者は、高齢になっても上記のような経過をたどらないかもしれないということです。更に私たちは、「高齢者は気落ちするような暗い日々を、ことさら前向きに捉えようと努力しているだけなのか?」と自問しました。

(会場笑)

しかし このような研究結果を否定しようとすればするほど、逆にそれを裏づける証拠が見つかりました。

人は年齢を重ねることで楽観的になっていく

数年前に、私は同僚と10年間に渡り同じ人物たちを追跡調査するという研究を行いました。当時、対象者は18歳から94歳でした。そして、成長するにつれ感情的経験が変化するかどうか、またどのように変わるかを調べました。

対象者にはポケットベルを携帯させ、昼夜を問わずランダムにポケットベルに連絡を入れました。そして、連絡する度にいくつかの質問に答えてもらいました。例えば、7段階評価で「今どのくらい幸せですか?」とか「今どのくらい悲しいですか?」とか、「今どのくらい欲求不満ですか?」 といったものです。

この調査を通して、対象者が日々の生活でどのような種類の感情や気持ちを感じているかを調べることができました。また、このように個人にフォーカスした研究を行うことで、ある特定の世代が特定の結果を出しているのではなく、同じ個人が時とともに楽観的経験を報告するようになったのです。

最高齢の年代においては、わずかな低下が見られますが、多少低下しているだけで、若者のレベルまで戻ることはありません。

よりプラスの情報を選択・認識するようになる

これだけで、高齢者が「幸せ」だと言うのはあまりにも単純すぎます。我々の研究結果では、高齢者のほうがより前向きで、更には若者よりも幸福と同時に悲しみも感じるという「入り混じった感情」を経験しやすいことがわかりました。例えば、友人に微笑みながら涙を浮かべるといったことです。

また、別の研究では、高齢者は他の年齢層よりも悲しみと容易に向き合うことができると考えられています。若者より多く悲しみを受け入れているのです。従って、高齢者の方が若者よりも熱のこもった感情的論争や議論を解決することに長けているか説明できるかもしれないと考えられています。

高齢者は 絶望ではなく哀れみの心で不公平を捉えることができるのです。そして、全てのものが平等ならば、高齢者は注意力や記憶のような認識の資源をマイナスよりプラスの情報に向けるのです。

このような画像を高齢者、中年、若者に見せて、記憶にとどめるよう依頼した結果、若者より高齢者のほうが、マイナスの画像よりプラスの画像を記憶していました。

更に、高齢者と若者に実験室でいろいろな顔の表情を観察してもらいました。そこにはしかめ面や微笑んだ顔もありますが、高齢者は微笑み顔のほうに目を向け、しかめ面や怒った顔は避けるという結果になりました。これは日々の生活において、より大きな喜びや満足という形になって現れると言えるでしょう。

しかし、社会科学者として私たちは、引き続き他の可能性を探りました。高齢者が比較的前向きな感情を報告するのは、もしかして認知的障害が原因かもしれないとも考えました。

(会場笑)

あるいは、プラス感情のほうがマイナスの感情より容易に処理できるので、プラスの感情に変換しているとも考えられました。もしくは脳内の神経中枢が衰えて、そこではマイナスの感情を処理できなくなっているのではないか? しかし、それは違います。

もっとも精神的に鋭い高齢者が、このプラスの感情処理をする人たちです。そして、本当に重要な状況では高齢者はプラスの情報と同様にマイナス情報も処理します。

優先順位が明確になり、人生の見方が肯定的になっていく

では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

今までの研究により、これらの変化は唯一人間にのみ備わっている時間を監視するという能力が あるということがわかり、しかもその監視できる時間には時計やカレンダーだけでなく寿命が含まれるのだということもわかりました。

そして、もし高齢化のパラドックスがあるならば、それは私たちが永遠には生きられないという認識であり、人生の見方が肯定的になるということなのです。

若い世代は典型的に時間は長く感じられ、人はたえず何らかのために準備をしてできる限り多くの情報を吸収しようとし、危険を冒し、探求します。私たちは「興味深いから」という理由で、好きでもない人たちと時間を過ごすことさえあります。

そして、実際予想もしていないことまで学ぶこともあります。ブラインドデートにだって出かけます。どうせうまくいかなくても明日があるのですからね。一方、50歳以上の人たちはブラインドデートはしないですね。

(会場笑)

年齢を重ねるごとに、計画対象時間は短くなり目標が変わります。ずっと生き続けるわけではないと気づけば、自分の優先順位が明確になります。そして、些細な事に注意が向かなくなり、人生を満喫するようになります。

更に、もっと人に感謝をし、もっと和解を受け入れることでしょう。また、人生の感情的に大切な部分に重きを置き、人生がより良くなり、日々がいっそう幸せになるのです。しかし、同時にこの視点の変化によって、以前にも増して不正に対して我慢ができなくなります。

高齢者の知識をもっと活用しよう

2015年までに、アメリカでは60歳以上の人口が15歳以下を上回るでしょう。高齢者で頭でっかちな社会に何が起こるのでしょうか? 「数字」が結果を出すわけではありません。「文化」がそれを決めるのです。

もし、科学やテクノロジーに投資して高齢者が直面する現実問題の解決法を見つけ、更に高齢者の本質的な力をフルに活用するなら、増加した生存年数で全ての年代において劇的に生活の質が改善されるのです。

そして、過去のどの世代よりも健康で教養があり、才能にあふれ、感情的に安定した何百万もの市民が、人生の実際問題に関する知識を武器にし、大きな問題の解決に意欲的な社会は、私たちが知っている社会より更に良くなるはずです。

最後に、92歳になる父が好んで使う言葉をお伝えします。

「年寄りをどう助けるかだけを話すのはやめて、彼らに私たち全員をどう助けてもらうのかを話し合おうではないか?」

ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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