幸せな未来を実現する方法

井庭崇氏:皆さん、こんにちは。井庭です。今日は、僕はここで逆さになって踊ったりしません。けども皆さんに、ちょっとしたアイデアを紹介したいと思います。

今日僕が、どんな話をするかというと「自分たちの望む、豊かで幸せな、理想的な未来を実現する」そういった方法についてお話したいと思います。

ちょっと魔法みたいですよね。これを僕は今研究をしていまして、その研究をしている中で出てきたことをご紹介したいと思うわけです。

先端的な研究なんですけれども、それ自体は難しいことは全然なくて、今日家に帰ってからお父さん、お母さん、子供でやることもできますし、今日帰りの電車の中ですることもできる。ただ、とても重要なことなので、この場で皆さんと共有したいな、と思っております。

未来は予測するより自分で作ってしまおう

さて、今日の話。「未来を実現する」ということなんですけれども。

未来。未来というのは、「未だ来ていない」というふうに日本語では書きます。今を生きるということはとても大切なんですけれども、よくよく考えてみると、僕らはこれから先はずっと先は未来なので、毎日未来を生きていく、ということになります。これから死ぬまで毎日毎日新しく来る未来を生きていく、ということになるわけです。

でも僕らが普段、いろいろな友達とか、家族や会社の同僚、いろいろな人と話しているのは、どちらかというと未来の話というよりは、今の話であったり、過去の話であったりするわけです。

そういう中で、未来について考えるということはとても大切で、未来について考えるときにいつもこの言葉を思い出します。

Alan Kay(アラン・ケイ)という人の言葉なんですけれども。

「未来を予測する最善の方法は、それを自ら『つくる』ことである」

そういう言葉です。これは放っておいても、今から寝て明日を向かえても、明日は来ます。未来は来るんですね。でもそうやって、傍観者のように関係なくどこかから未来がやってくる、というのではなくて、自分が自分らしく未来を創っていく、そういうことが重要だ、ということがこのメッセージに込められているわけです。

このアラン・ケイという人は、パーソナルコンピュータの父と言われていまして、僕らが今、家でパソコンを使ったりしてますね。個人でパソコンを使っているというのは、何十年前にはありえなかった光景です。コンピュータは部屋くらい大きくてですね、軍事の目的だったりとか、科学計算のために使われていた。

その時代に、「これからはコンピュータを一人ひとりが持って、そして、そのコンピュータを使って表現をしたり、あるいは、何か勉強、学びをしたりですね、そういったことをしていく時代になるんだ。コミュニケーションをしたり、そういったことをしていこう。そういうためのコンピュータの利用があるんだ」ということを言って、それを実現してきた一人ということになるわけです。

僕らが社会を変えるというと大きな話になってしまいますが、例えば「自分がこれから将来どういうふうに生きていくのか、あるいは自分たちの家族がどういふうにあったら幸せなのか?」そういったことを考えて作っていくというのは、僕たち一人ひとりがやっていかなきゃいけないことだということになるわけです。

自分たちの関わり次第で、いい方向にもいったり、悪い方向にいったり、イマイチな方向にいったり、そういうことになるわけですね。なので、「僕らは、自分たちのより良い幸せな未来に向かって何ができるか」ということを日々考えて実践しているということになるわけです。

幸せの定義は曖昧で、人それぞれ違っている

ただ、幸せというものがどうもぼやっと。みんな幸せになりたいですよね。でも「幸せって何か?」って人それぞれ違いますし、それぞれ時期によっても違うかもしれません。とても曖昧な、もやっとしたものになっているはずです。あるいはそれを、どこかから出てきたキャッチコピーやスローガンのようなものでひと言で言ったとしても、一部しか言っていないようなことになってしまう。

もやっとしていて曖昧なものを、1人で実現するときも、やはりそれは難しいですし、それを例えば「家族みんなでつくろう」とか、あるいは「自分たちの友達グループで作ろう」、もしくは「地域で作ろう」、「会社で作ろう」、そういったことをしてる場合には、自分たちの先にある、未来にある幸せがどんなものか、ということを考えて実現していかないといけない。

だけども曖昧なので、これがみんなちょっとずつ違ったところ考えていたりですね、違うようなイメージを持っていると、だんだん、だんだんですね、何かうまくいかなくなってきているという感じで、話が合わなくなってきて。

「そういうことじゃないだろう」とか、「どうして、こういうことが幸せじゃないのに、そういうことをしてくれないんだ」というようなことで、喧嘩になってしまったりとか、あるいは、うまくいかなくなってしまう、実現できなくなってしまう、ということがよくあるわけです。

未来のビジョンを言葉にすることで、幸せのイメージを共有しよう

そこで今日僕が皆さんと共有したいアイデアというのは「どのような未来が幸せなのかを言葉にしよう」ということです。

言葉にするだけですので、今日家に帰っても電車でもできます、という話ですね。何の道具もいりません。自分で考えて話していけばいいということになるわけです。

そうすると、1つの言葉じゃなくて、いくつも言葉を作ります。「こういう未来がいいよね」「こういうことが幸せだよね」ということを言葉にする。

そしてそれを話の中で、みんなでその言葉を作ってそれを共有すると、そういった未来にある、先にあるまだ来ていない幸せがどういうものなのかというイメージが、共有できるようになります。

もちろん、絵が得意な人は絵で描くのもいいでしょう。あるいは、何か違う表現にするのもいいと思います。でも言葉というのは、何の道具もいらずに、話の中で普通に会話の中で使うことができますし、ずっと記憶の中にとどまって、それをずっと持ち運ぶことができます。

「どんなときがどんな幸せ?」幸せのカタチに名前をつける

なので今日お話ししたいのは、「言葉で幸せのかたちに名前をつける」ということになります。

ちょっと抽象的に言っても、イメージがつかないかもしれないので……。うちの家族でですね、子どもに「どんなときに、幸せか?」と聞いてみました。

未来の言葉をつくるポイントは、どんなときが幸せかということを自分に問うてみたり、一緒にいる人に問うてみたりする、聞いてみたりする、そういうところから始まります。

うちにいる子どもたちに、「どんなときが、幸せ?」と聞いてみました。

そうすると、いくつか出てきます。

「みんなで買い物しているときは楽しいな」

普通に家の近くのスーパーに行くわけですけど、その中で「買い物しているときは楽しい」という答えがきました。「あ、そうなんだ。そうなんだね」と。

「ドライブに出かけているとき」

これはちょっと想像していましたが、みんなでどこか旅行に行ったり遊びに行ったりする、それは楽しいね。

あとは、「パパも一緒にテレビを見ているとき」という答えが返ってきました。これは僕が普段、夜も含めてあちこち研究や活動をしているので、なかなか一緒にテレビを見る時間というのは限られているんですけれども、そういう時間が幸せなんだということを改めて聞いてみて、知ることができました。

幸せの共通点を見つけて、自分の未来に組み込む

こういったことをよく見てみると、共通点があるんじゃないかな、ということなんですね。

今回、これで見て僕が感じたのは、「家族で一緒にいるということ、何かを一緒にするということは、すごく幸せだ」というふうに子どもたちは感じているんだな、というふうに思いました。

なので、「家族と一緒」という言葉を作りました。

そうすると「これから何かをしようか?」「今週の土曜日、日曜日、何しようか?」というときに、「家族と一緒に何かをしよう」ということが発想ができて、そういうことを思いついて、それを提案したり話し合ったりすることができるわけです。

もちろん家族の幸せってことは、それだけにとどまらなくて、もっといろいろ話していくと「楽しい場所に行ったりすると、それは幸せだよね」とか、「美味しいものを食べているときは幸せだね」とか、「新しい発見、何か本を読んだり、いろいろな何かを見に行って新しい発見があるときも幸せだね」と。

こういったような、いくつかの要素で成り立っている、いくつもの要素で成り立っている。なので、1個だけ、「家族で一緒だけでいいんだ!」ってことではなくて、楽しい場所もあれば、新しい発見のときもある。それが同時に起きることもあれば、別々の日に起きることもある。

でも、そういったことの総体が、全部まとめて幸せということを形作っている。こういう言葉を作ろうということです。これが、「幸せのかたちに名前をつける」。

幸せの辞書を作って自分たちで使っていく

幸せというのは、三角形であるとか、四角であるとか、一言で言えるわけではないんですね。なのでいろんな言葉、いろんな側面からその幸せを自分たちで言葉にして、自分たちで定義をしていくということです。

ここを見てわかる通り、ここに出てきた言葉は、ある種当たり前というか、そんなに特殊なことは書いていません。これを自分たちで作ったということに価値があります。自分たちの幸せの言葉の辞書は、自分たちでつくるしかありません。

なので自分たちで作って、それを自分たちで使っていく。そういったことが、未来に向かって自分たちの幸せな未来を作っていく大切な1歩なんです。

「幸せのかたちに、名前をつける」ということが、自分たちの幸せな未来をつくる大きな1歩となる、ということになります。

自分の大切なものを定義して「自分らしさ」を見つける

僕は研究でこういったことをしているという話をしましたが、今のは家族の例ですが、例えば「自分たちらしく生きていくためには、自分たちらしさってなんだろう?」「自分たちの幸せってなんだろう?」「自分の幸せに感じること、大切に思っていることってなんだろう?」ということを、みんなで考えて話し合っていく中で自分らしさを見つけていく、そういうワークショップを開いています。

先週、東京でやったワークショップなんですが、中学生くらいから大人まで参加して、みんなで自分たちらしさを、自分で自分のことを考えるんですけれども、その途中でいろんな人と話しながら、それをまとめていく。そういうワークショップです。

その1週間前には、僕はブラジルにいました。ブラジルというと、ちょうど地球の反対側ですね。日本の反対側です。ブラジルで同じようにワークショップをしまいた。

ちょうど夏なんですけれども、もっと大人たちがですね「自分たちらしさって、なんだろう?自分たちが大切にしているもの、幸せってなんだろう?」ってことを考えて、こういうふうにまとめたりもしています。これが「自分たちらしさ」なんですね。

家族や自分だけじゃない、理想の環境のつくりかた

その他にも、自分たちの理想とする幸せな未来っていうのは、自分たちの中の大切にしているものだけではなくて、例えばオフィス。自分たちが働く会社の環境がどんな環境が良いだろうか、ということも話し合って作ったりもします。

これは実際に、オフィスで働いている皆さんが、どういうオフィスが幸せなんだろうか、自分たちの理想なんだろうか、ということを話して、右下のオフィスができたんですけども、こういったかたちで自分たちの理想の場をつくったりしています。

あるいは、今新しいカフェを作ろうとしていまして、カフェを利用する人や、その供給をする人、そうした人たちとみんなで、どんなカフェが理想なんだろうと考えて、その理想的な幸せなカフェをつくるということもやっています。これは来年オープンします。

その他ですね、フューチャーセンターというのがいろいろなところにあるんですけれども、「未来を考えよう」という場がいろんな地域にでき始めています。

そのいろんな地域ででき始めているフューチャーセンターというところで、例えば「農業の未来」、地元の農業をどうやって良くしていくかということを、農家の方々と話していたり、ママさんたちが自分たちの子育てをしながら働く、そういった未来はどんなようなあり方があるだろう、ということを話し合って、それも言葉にしています。

それぞれ農業も60個くらい新しい造語ができて、未来を語るための言葉ができましたし、働き方、子育てしながら働くという生き方についても50、60くらいの、そういった言葉ができてきます。こういうことを研究でやっているわけです。

これは他にも、「自分たちの専門的な分野の発展をどうやっていくか?」という未来図をみんなで描くということを9月にアメリカでやったものですが、こういったかたちで言葉にしていくと、このときも30、40の言葉ができて、早速この日からその1個の言葉を実践しようということで。

右下にいる彼がかっこよくてですね、「未来は、今から始まるんだ!」と言って、その日から実践をし始めた、ということをしていたりもします。

自分の理想を共有する時間は意外と少ない

こういうふうに「自分たちがどういうものを理想とするのか?」というのは、意外と語っていないんですね。あるいは、考える時間ってなかなかなくて、目の前の問題を解決するとか、過去のいろいろなことからも勉強しようとかですね。そういうことが多くて、なかなか自分たちで「自分たちの未来をこうしていきたい。こういうのが理想だよね。こういうことが幸せだよね」という時間が、なかなか日常の中ではありません。そういう機会が少ないです。

なのでそこを話す時間を作り、それを言葉にしていく。言葉にするとみんながそれを理解して、それを共有して、話し合って、そして明日も明後日もそれを覚えておくことができる、ということです。これが今日、僕が話したかったことです。

幸せを言葉にすることでみんなに共有しやすくなる

そうすると、何がいいかということも、ちょっと最後まとめておきたいんですね。

曖昧な未来のイメージが曖昧なままではなくて、5、10個の言葉、そういった言葉で成り立つようになるので、そうするとその言葉を使って未来のイメージを形作っていくことができる。

そのイメージを作れば、それに向かってみんなで動いていくことができるし、何をしたらいいかっていうことを考えることができます。

そして、2つ目。覚えておきやすくなる。

言葉なのですごく簡単で「家族と一緒」という言葉は簡単に覚えられます。難しい専門用語は何もありません。自分たちでつくる言葉なので、自分たちで覚えておくことができます。

そして、他の人と共有して話すことができるようになります。言葉なのでいつでもどんなときでも、カフェでもご飯を食べながらでも、いつでもしゃべることができる、使うことができる。そういったことが、このメリットということになります。

子どもたちが言葉にした「大切にしているもの」

大人の事例が続いたので、最後に子どもたちの話です。

僕の知り合いの東京コミュニティースクールというところで子どもたちが学んで、いろんなこと、おもしろいことをやっているんですね。プロジェクトをやって、自分たちなりに何かを見出していくことをやっている学校です。

この中で彼らが「自分たちが大切にしているもの」ということをまとめました。それが、「THE こども力」という小冊子にまとめられているんですけれど、その中から2つ紹介したいんですね。

1つは、「ねじれても広がる」というものです。

これはいろいろなアイデアを出していくときに話がねじれて、うまくいかなくなっているかのように感じるんだけど、そこから広がりが出てくると。単にパッと思いついたアイデアではなくて、ちょっとグチャッとなったところから始まりだということを、彼らは「ねじれても広がる」という言葉で表現しました。

これが、彼らの大切にしていることの1つだと。彼らはこの自分たちが小学生のときに体験したことを、これから大人になってもずっと「ねじれても広がる」ということを大切にしながら生きていけますし、また、大人になったらもうちょっと違う表現に変わってくるのかもしれません。こういったものを持っていくことができる。

あるいは「変なのがいい」と。これは、僕大好きなんですけれども。

「変なのがいい」

普通にただ、普通でこうじゃないか、ということを考えたときに、変だとかちょっと嫌だなとか、変じゃなくて普通がいいと思いがちだけれども、実は変というのは単に普通じゃないだけじゃなくて、とても新しかったり、おもしろかったりする可能性があると。

なのでギャグみたいなかたちで変だってことではなくて、「ちょっと普通と違う発想をすることをむしろ僕たちは大切にしているんだ」ってことを表現したわけです。

これも同じように、やはり自分たちが大切にしている未来、自分たちの大切にしていること、それを言葉にした例だということになります。

夢や理想、幸せのかたちは辞書に載っていない

ということで、今日僕がお話ししたかったこと、今日是非家に帰る途中でも、帰ってからでもいんですけれども、どんなときが幸せか、ということを自分自身で考えてみたり、家族や同僚、友達と話してみてほしいと思います。どんなときが幸せかと。

「どんなときが理想で、何が良いと思っているのか、どんなことを大切にしているのか」そういったことをまず話し合うことから始めて、それを言葉にするということです。

「幸せのかたちに名前をつける」

1つの名前ではなくて、たくさんの側面に一つひとつに名前をつけていく。この名づけるということはとても大切で、僕らのだいたい持っている辞書には、いろんな物の名前、あるいは形容詞はたくさん持ってます。動詞はあります。でも自分たちの夢や理想、そして幸せという物には、あんまり言葉がないんですね。

日本語も英語もそうでしょう。そういったことを自分たちで自分たちの未来に向かう辞書を作っていく、それが僕が今日皆さんに紹介したい、広める価値があるアイデアということになります。是非自分に何が幸せなのか問うてみて、是非家族友達とも話してみてほしいと思います。

以上です。どうもありがとうございました。