採用のポイントはビジョンを共有できるかどうか

馬場保仁氏(以下、馬場):塚本さん、お願いします。

塚本昌信氏(以下、塚本):本当同じような話になって申し訳ないですけど、やはり僕が見るのは二つありまして。一つは皆さんおっしゃっているように、会社として、カラーとか、ビジョンがあるか、一緒のところが見れるかってところですよね。

会社作って16年になるんです。30人ぐらいまでは自分の目で見られたんですけど、それを越えた段階で自分ひとりでは見られなくなって。いろんな方と面接して、最後会ったりするんですけど。

やっぱり人を増やさなきゃなんない時って、いろんな試行錯誤が今まであったんです。

中でも技術力があるから多少、こういう言い方はなんですけども協調性に欠けている方に来ていただいたこととかもあるんです。でも、やっぱりいい結果にはならないんですよ。

なので、やっぱり一緒に仕事ができるかどうかと、プラス、ヴァンガードさんみたいに、うちの会社もやっぱり見ているところがありますので、そこに向かって走れるかどうかと。

その点を一つ見るのと、あと最初の話の繰り返しになりますが、ゲームが本当に好きかどうか、情熱を持ってゲームを作りたいと思っているかどうかですね。

うちの会社もトップに来るまでは夜中でも面接をして、基本的に僕が見るのはその2点になりますね。一緒のところが見れるかどうかと、ゲームが好きかどうかというところを見てます。

うちの会社というよりは、ゲーム業界に入って欲しい

馬場:はい。磯野さんお願いします。

磯野貴志氏(以下、磯野):うちはですね、僕は見てないんですよ。見てないわけじゃないんですけど。見ることもあるんですけど。

横山裕一氏(以下、横山):どっちやねん(笑)。

(会場笑)

磯野:もう一つ言おうかなって思って(笑)。

馬場:なるほど(笑)。無理はしないほうがいいです(笑)。

磯野:あの、基本的にはスタッフの方から、こういうセクションにこういう人が欲しいっていうのが上がってきてはじめて、じゃあ募集とか、もしくは応募が来たらそのセクションのところに流したりする。

そのセクションのリーダーとか使う人、もしくは教える人が欲しい人を採っています。なのでバラッバラです。正直入ってきて気にくわなかったら追い出すんで。

馬場:おー、恐ろしいですね(笑)。

磯野:いや本当に。だって無理じゃないですか。たった30分とか1時間の面接でどこまで見れるかと。限界があると思ったので、とりあえず働いて見ようと。

なのでスタッフからこの人欲しいですって言われたら「はい、いいよ。いいよ」っていうのが、大概最終ですね。そういうふうになっちゃいました。いつの間にか。昔はちゃんと見てたんですけどね。

馬場:なるほどね。

磯野:こういうとこに来て、喋ったりもして仲良くなったりもするんですよ。そういうことを繰り返していくとですね。そこで採用決定者が自分だと無茶苦茶悪い気がするので、だって「あんなに良いこと言ったじゃないですか!」と「なんでじゃあだめなんですか?」となるんで。こっちに権限ないんで、ごめんね、と言おうかなと。

馬場:じゃ、今日、磯野さんにつながる意味あるんですか?

磯野:ありますよ。一応だって(笑)。

(会場笑)

磯野:会社紹介してたりとか、その、つながった子のためには親身になりますよ。

馬場:ありがとうございます。

磯野:ちゃんとアールフォースさんとかすごく良いですよって紹介しますよ。

馬場:スーパーコーディネーターですね。

磯野:はい。

馬場:なるほど。

磯野:僕らは、うちの会社に入るんじゃなくて、ゲーム業界に入ってほしいと思っています。

馬場:いや本当、その通りです。きれいにまとめていただいてありがとうございます。

合同新人研修のメリット

馬場:じゃあ育成について、各社どういうことやっておられるのか、何か特長的なこと、になっているんですけど、挙手、あっ横山先生。

横山:いや塚本さんに。

馬場:じゃ塚本さん。お願いします。

塚本:うちの会社は、わりと皆さん興味があるという入ってすぐの研修とかの話をいたします。たぶんゲーム業界の中で変わった研修だと思うんです。

弊社とイニスさんという開発会社さんが中目黒にあるんですけど、東京の。あとへキサドライブさんという大阪と東京にある会社さんで、基本その3社ですね。あとその年によって1社入ったり入らなかったりするんですけれども。

その3社の新人で、合同新人研修というのを毎年行ってまして、約4月から5月の中旬ぐらいまで今ぐらいまでの時期の1か月半程度、ビジネスマナー研修からゲームに関するプログラムとか、サウンドとか、企画とかの研修を、3社の新人達で一緒にやるという研修を行ってます。

意図はいろいろあるんですけれども、まずはみんなちっちゃい会社、中規模の会社なんで、やっぱり大企業ほど同期というのはいないんですね。

なので3社で合同の新人研修をやることによって大企業と変わらないような同期といえる人間の人間関係の構築してほしいというのもありますし。

馬場:塚本さん、それ何人ぐらいですか?

塚本:今年はちなみに24〜25人だったんじゃないかな。

馬場:多いですね。

塚本:あともう1点は、やはりその新人同士といえどもライバルなんですね。会社背負ってきてますので。不思議なんですけど入った段階で各社、カラーがあるんですよ。新卒の新人の方々でも。ヘキサドライブさんはヘキサドライブさんみたいなカラーがあるし。

馬場:みたいな?(笑)

塚本:みたいな……。どういうのだろ、プログラマーがすごくできる感じがあったり、イニスさんはお喋りずっとしてたり、うちはわけわかんなかったり(笑)。

みたいなカラーがありまして、それぞれライバルなんですので、若い間から他社と競うとか、周りの会社を見て、井の中の蛙になって欲しくないという意図もあって。そういう研修からまず始めてますね。

いきなり現場に叩きこむ

馬場:あと、磯野さん。

磯野:はい。うちはそんなすごいことやってないですね。いきなりチームを持たせて最前線に立たせます。

馬場:現場で叩き込むんですか。

磯野:そうですね。結局リアル仕事が一番育つって、何年かやってて思ったので。もう専門に関しては、そういった、最初から一番いいよってところで、ってことで。

逆に仕事がないところに研修とかテストってやるよりは、いきなり仕事に出ちゃって、その代わりその分お金は当然クライアントからいただかないで、育てていくっていうのが最近の形になりました。

それとは別に電話研修とかビジネスマナーは軽くやっているんですけども、電話かかってくるやつは、全部その人がとるっていう習慣になったりですね。そんな感じです。あんまりおもしろくないですね。ここは。

馬場:いえいえ。例えばさきほどその、磯野さんが決定者じゃなくてマネージャーなど幹部の方々決定されると。その方々はずっと面倒を見られる?

磯野:もちろんです。

馬場:その方のチームに配属ですか?

磯野:そこの下に付くって形です。

馬場:採った人の下ですか?

磯野:はい。

馬場:それはずっとですか?

磯野:いや、だいたい1プロジェクトです。そのプロジェクトが終わるまでは確実にその下で。その後、逆に他にあてないと変な色が付いちゃったりするので、別チームに入れたりとかして、ぐるぐる回ったりもします。

馬場:結構最初の師匠って大切だと思うんですけど。

磯野:そうなんですよね。そこがボケだとどうしようもないんで。

馬場:怖いですよね。ちょっと。

磯野:あと逆に自分の師匠とか覚えてますね。ずーっと。

馬場:僕、師匠いなかったんでわからないですけど。

磯野:(笑)。はい。という感じです。

本人が自分で育つという意識が重要

馬場:じゃあ杉山さんどうぞ。

杉山智則氏(以下、杉山):トリは横山さんにまかせて。うちも同じなんですけど、社内研修、これは社員がやる研修もやります。それから社外の一番最初に言いましたけれど、社会人になって欲しいんだというのがあるので、一般的な社会人の新人研修も受けてもらう。

それから、半年間は基本、そういうのは踏まえたうえですけれども、すぐ実戦投入するんですけどお客様、というかクライアントからお金をいただかないで、サポートする形で実戦投入してとにかく現場に早く入りなさいという方針はあります。

それから先ほどのブラザー制度っていうか、フォローしてくれる人間を、人事とかが選定してというかお願いして、彼には彼が良いんじゃないかなという形で、必ず1人は立てて面倒見てもらうっていうのはやっています。

それで今の形でパーフェクトなのかというと全然パーフェクトではないと思っていて、いろいろまだ手探り状態ではあるんですけれども、やっているかんじですね。大事なことは会社も一生懸命育てたいっていうことを伝えたいし、そういう活動をしていきたい。

でも一番大事なのは、本人も育つんだって言うその気持ちもすごい重要で、主体的に自主的に、より早く育つようになるためには、どうしたらいいかということを考えて行動することが非常に重要だと思っている。

あくまでも会社側はサポートで本人が育ってねっていうところを。これも持っている人が育つと思います。

馬場:まーたぶん、この後、横山さんが僕と同じこと言うと思うんですけど、皆さん学生さんじゃないですか。結局学生さんって、なんだかんだいって教えてもらうのが当たり前だった思っているんですよ。当たり前なんですよ。月謝払ってるんで。

なんですけど企業に入った瞬間プロなので、お金もらうんですよね。それが育ててもらって当たり前とか思ってると難しいんですよ。

何でかっていうと、それは先ほどから皆さん仰ってますよね。ゲームって意志を持って進まないといけないんで、当然育てる。戦力になって欲しいから採ったわけだし。

なんだけど、自分で進もうと思わないと絶対にダメで、そこには少なからず何かしらのプロフェッショナリシーがなきゃいけない。それを本当に忘れずに徹底して努力して欲しい。と僕は思ってますし、たぶん横山さんも賛成するはずです。

横山:そうですねー。

(会場笑)

新入社員はまず戦隊ヒーローに?

横山:うちの会社はですね。新卒で入ったら、まず戦隊ヒーローになります。

馬場:意味わかんないっすねー(笑)。

横山:意味わからない? 説明します。リノベンジャーっていうのになるんです。リノベンジャーって何かって言うと、これはうちの社員が出した案でですね、それを今年から実行してるんですけど、会社の改善案を3つぐらい出すんですよ。それを2か月間かけて会社を改善していく。

それによって、周りとコミュニケーションとらないといけない。あと、会社が改善されたら「おっ良かったね、良かったね」と言われるわけです。

それはもう、あらかじめポスターみたいなんで張り出されますからね。そうすると結局感謝されるんですよね。先輩から感謝される。先輩から注目されるっていう場所をつくる。これが実は今、うちが新人研修でやっている新しい試みの一つです。

馬場:ちなみにどんな改善案がでました?

横山:えーっとですね、なんだったかなー?

馬場:社長が喋らなさすぎて。

横山:いやー、なんだったっけ?(笑) ちょっと今、リノベンジャーやっているやつが後ろにいるんだけど、どんなんやったっけ?

棚の周りをきれいにするとかね、そんなくだらないことから。あと、みんなの体力不足をなんとかしようとか。そういうの、本当に。

馬場:それどんな解決案がでるんですか?

横山:なんだっけかなー、ちょっと忘れましたけれども。

馬場:立って仕事ずーっとしようって?

横山:それもあったかなー。

馬場:立って仕事するの流行ってますから。

横山:ひと駅歩くとかも、あったかもしれませんね。「それをどうやって見届けんねん、おまえ!」っていう感じなんですけど。

まーそういうね、他愛もないこともあるんですけれども、そういったことを立案させて自分で実行させるっていう機会を持たせる。

プログラマーにはゲームを見て仕様を書かせる

横山:あと各職種別にはカリキュラムを立ててます。例えばプログラマーでしたら、うちの作ったゲームの「三国志パズル大戦」って言うのがあるんですが、それを必ず3日間遊んでもらいます。それで、仕様を全部出してもらうんですよ。パズル部分のね。

それで、出しますよね。必ず足りないんですよ。「おまえ3日やってて足りないのか!」って絶対に言われるわけです。

そこで「あっ、ゲームって、実はやっぱり奥が深いんやな」っていうことがわかるわけです。それで仕様を出してそれに基づいて実際に1週間半ぐらいで作るんですよ。これをやります。

こうすると必ず、それをC++とUnityで作って、1か月ぐらいの研修なんですけど、これをやると、ほぼ確実に銃を持って前線に出れる状態にまで持っていける。っていうような感じですね。

馬場:何人ぐらいの方で、面倒を見るんですか?

横山:先輩はですね、実はうちにはもう一つあって新卒というのは実は、新卒が教育されるのわけではなくて、新卒が入ることによって教育されるのは中堅なんですよ。うちはキャップ制度というのがあって、各職種にキャップがあるんです。

これはね、リーダーとは違うんですよ。必ず中堅なんです。中堅でそんなにすごい人じゃない人を実は抜擢するんです。そいつらに結局最終的には面倒見させる。

あとは面接した人に「おまえこいつどういうふうに育てるんか? 青写真書けよ」というふうに言って教育させる。

そこで全体的に教育される側も、新人も中堅も一緒に成長できる。そのようなビジョンを描いて会社運営をやっている。という形です。落ちがないですなー(笑)。

馬場:本当にね。びっくりしたんですよ、今なんか。

磯野:すばらしいです。

理念実現の中での研修

馬場:杉山さんところでもリノベンジャーやられてましたよね、昔。

杉山:はい。うちはですね、理念実現の取り組みってやつをやっていて。

馬場:それはカラーの違いですね。

横山:ハハハハ(笑)。

馬場:リノベンジャーというのか、それとも。

杉山:ま、あの、柔らかい会社と堅めの会社のあれがあるのかもしれないんですけど(笑)。まぁそういう形。で、ちょっと違うのがですね、うちは実は全員参加です。全員参加で。

馬場:全員というのは新人だけじゃなくて?

杉山:新人だけじゃなくて本当にほぼ全員参加。

馬場:ですね。

杉山:3か月スパンで、まぁ、仮に1月からはじめたら、3月までなんですけど。3月までで何かやるんですけど。1月の頭、1月のスタートの頭の月にですね、みんな俺たちの仕事って言うのは、理念を実現することだよね。

今、実現できているか? できていないよね? それで、この現実を理想の実現した形に近づけにゃいかんよね。

じゃ、「何が問題で俺たちは今実現できていないのか?」っていうとですね、何かしらのみんな意見は持っていますよね。こうしたらもっと良くなる、もっとこうしたら理念は実現できるんだっていうことの小さいことから、大きいこと、いろいろあると思うですよ。

もう「何でも良いから言いな」っていう話をすごい出してもらって、小さい話で言うと、小さいかどうかわからないですけど、掲示物が煩雑でよくわかりませんとか、そういう話からもっとみんな素直にならにゃいかんよね。

みたいな、そういう話から、大きい話から小さい話からいろいろ出るんですけど、それをたくさん、もう「好きなように言ってくれ」っていう話をしてやります。

それでその後「これを実行していく度にという形でリーダーを選出しましょう」「立候補でもいいし他薦でもいいよ」って言って、そこにいる部の会でやっているのです。

だいたい20人ぐらいの部なんですけど、20人が半分必ずリーダーになって、半分が必ずサブリーダーになって、それを実行していく。

もちろん出てくる数がたくさんあれば、その時実行されないのはあるのですけれども。そんな感じでやってるんです。

馬場:なるほどなるほど。

「ふり返り」が改善を促進する

杉山:それを最終的は3か月後に、3か月間でいいから1歩前進しようという形の成果を見てもらって、出してもらって、それをまた部の中で少しずつ報告してもらって、3か月後に部で発表して、いいものを全体発表という形でやってます。

実は去年の大賞は、どんなんが出たかと言いますと、これ実は皆さんもやると良いかなーと思ってるんですけど。

「ふり返り」って言うのが、去年の大賞をとりました。どんなことかって言いますと、1か月やった時に良かったこと悪かったこと、改善ポイントというのをただメールで送ってもらうんですよ。

それを無記名でまとめる人間がまとめて、このプロジェクトでは、こんなことが良かった、悪かった、改善ポイントですっていうのがまとまってくるんです。

それが出てくると首脳陣というか、ディレクター、管理陣でみんなでそれを見るんです。

そうすると、良かった点はいいんですよ。悪かった点と問題点に何かしらそこに、焦げ臭いヒントがあるんですよ。何かここの辺うまくいってないなってところが、人間うまくいってない時にそこら辺に出てくるじゃないですか。

なのでそこを見てこういう意見が出てくるのは、我々はどう改善するのかというようなことを、実はそれをヒントに早い段階でアクションを起こせるんですね。

それで事前にプロジェクトの軌道修正だとか、フォローアップができたりして、すごく良かった。これがだからコストパフォーマンス的には、たかだかメール1本もらってまとめてみんなで見るだけなんですけど、すごく良くて大賞を取ったということなんです。

そういうようなことを全員がリーダーとなって、もしくはなおかつ3か月ほど次の期に入ると逆になってもらうんですね。サブリーダーがリーダーに。みんながリーダーになっていろんなことを会社の良くなる方法、理念を実現する方法を、小さなことを考えてもらうっていうことをずっと今やってます。あの、すごく……。

馬場:新人も中堅も問わずってことですよね。

杉山:新人も中堅問わずです。

馬場:私も会社背負っていると。

社員全員で会社に関わることが変化に繋がる

杉山:そうですね。なおかつ新人はまずリーダーでやって、お願いしますね。どれでもいいからリーダーやってっていう話をしますね。そうすることによって、リーダーって誰だかわからないけど、誰かがサブリーダーに入ってくれるわけですよね。

そうすると、その2人で何か一つのテーマを自分が決めた、もしくは他薦されているかもしれないけれども、それを3か月間だけ取り組むっていうことがあって、それ自体がうまくいくかいかないかわからないんだけれども、でも着実に変化をもたらすことにはなる。なっているかなとは思います。

馬場:なるほど。

杉山:感想としては、会社って変えれるんですねっていうみたいな。私たちってやれることがたくさんあるんですねっていう感想がひじょうに今出てきていて。

だからこそいろんな事を考えていこう、っていうようなことや、すごくいい雰囲気とかですね、みんなから全員から感じていて、すごくいい形で今進めてやれてるなあと思います。

馬場:全員がなんか、会社もなんか、経営というわけじゃないかもしないですけど、あり方に参加して意識を持ってやっていくところが、新人も何も関わりなくやれているということですよね。

杉山:そうですね。それを常にやっていると、ああいうことになりますね。