CG技術は単なる娯楽のためにあるのではない

山本恭輔氏(以下、山本):皆さん、こんにちは。千葉県立千葉中学校の山本恭輔です。まず僕がなぜこの場に立ってるかと言うと、Tehuさんとこの人体模型を通して知り合ったからなんです。この模型は僕のCTデータから作られている僕の体そのもののミニチュアで、通称スケルトンです。

ご存知の方もいるかもしれません。Tehuさんと僕はこのようにテレビやインターネットなどを通してお互いの存在を知り、そして去年のEdu×Tech Fesで偶然出会って、そのおかげで今この場に立たせていただいています。

今日は僕がこのスケルトンを手にする前と手にした後で何が変わったのか? そしてそこからわかった、これからの中高生に必要な3つの要素をご紹介したいと思います。

僕は3、4歳の頃からピクサーの映画が大好きで、CGに興味がありました。

そして僕は将来ピクサー社に入ってアニメーションの映画を作ることで、夢の大切さを世界に発信したいというふうに考えています。

千葉県立千葉中学校へ入学後、CGについてゼミという時間で研究を始めました。

僕はそこでCGの専門学校であるデジタルハリウッドやMARZAという、ピクサーのような会社を日本で作ろうという試みをされている方の話を聞いて、研究発表しました。

そうしたところ、ある先生が全校生徒の前でこんなことを言いました。

「CGなんかの研究をして何の社会貢献になるんだ」と。単なる娯楽の話だというふうに思われてしまったのです。

ここで僕に火が付きました。それ以来僕は、様々な分野の世の中の役に立ってるデジタル技術について、調査をし始めました。

世界中の若者にすばらしいしいアイデアを広めたい

そして見つけたのがこの「ITで医療を変える」という記事でした。

ここにはMacの無料のオープンソースのOsiriX(オザイリクス)というソフトを使って、患者さんのCTデータを基に3Dのデータを構築し、更にその3Dデータから3Dプリンターを使って、体の中を見えるような造形を作るという技術です。

僕はこの技術にとても興味を持ち、詳しく知りたくなったので、開発者の神戸大学の先生にメールを送って質問しました。

そうしたところ、僕が本気で質問してることが伝わり、先生も真剣に答えてくださいました。そしてその後に先生の講演が東京であることを知り、僕はおもいきって自分の足で先生に直接会いに行きました。

そこでたくさんお話を聞かせていただくことができました。

実際にこのように手術室に持ち込んで活用したり、更に手術用ロボットのシミュレーションにも使ったり、最近ではなんと本物の臓器のようにウエットな素材の質感の模型を作ることもできるんです。

僕はこの学んだ最先端の技術を学校の友達と共有したいと思い、先生を学校にお呼びし講演していただきました。

そしてその講演の最後にサプライズプレゼントとして頂いたのが、この模型なんです。40パーセントサイズの僕の模型です。

僕はこの模型を手にして自分の体の中を見たことで、健康や命について考えるようになりました。だから自分だけの宝物にして終わりたくありませんでした。

そこでこれを日本中の、そして世界中のティーンエイジャーに見せて、命のことや健康について考えてもらうきっかけにして欲しいと思うようになりました。そこでこのアイデアを広めることにしたんです。

アイディアを生み出し、発信することの大切さ

杉本先生の講演の中でTEDや『プレゼンテーションzen』についての紹介がありました。

僕はこれでTEDを知って、世界中の広めるべきアイデアを生活の中に組み込むようにしました。お風呂でも。

皆さん、笑うとこですよ(笑)。

(会場笑)

僕はそのアイデアを生み出し、発信するっていうことの大切さを知りました。またプレゼンテーションzenという本のシリーズをすべて読破し、その著者である<a href="http://logmi.jp/33764"target="_blank">ガー・レイノルズ先生に関西まで直接会いに行きました。

ガー先生は日本の禅の文化をプレゼンの準備段階に取り入れることで、よりシンプルで伝わるプレゼンができるというアイデアを発信されている方です。

ガー先生は初めてお会いした時に、こんな言葉を言ってくださいました。「大切なのはプレゼンのスキルよりも伝えたいという熱意、パッションなんだよ」と。

そして僕に初めてのアイデアを広めるチャンスがやって来ました。これはある企業のイベントなんですが、日本一の夢を決める大会でした。僕はそこで学校外で初めてのプレゼンをし、最終選考まで残ることができました。

また、2度目のチャンスはNHKスーパープレゼンテーションという番組の告知イベントでした。

そこのイベントでは抽選で選ばれた10人のうちの1人として、英語でプレゼンをするチャンスを得る事ができましたが、なんとこのとき準備期間が3日しかなく、しかもすべて平日。前日は遠足でした(笑)。

(会場笑)

でも、僕がそれでも準備して初めてやった英語のプレゼンを今日は30秒間お見せしたいと思います。

(映像開始)

(映像終了)

実はこれは、その日唯一のスタンディングオベーションを頂くことができた瞬間なんですが、それは僕に難しい表現がまだできないため、自然と英語がシンプルになり、思いを率直に伝えられたからだというふうに考えています。

そしてこのプレゼンテーションの様子をNHKのEテレの特番で放送していただき、それをきっかけに様々な場で自分のアイデアを広める機会を得ることができたんです。

そして今年のお正月にも学校の活動を紹介していただいたりだとか、先ほどの『プレゼンテーションzen 第2版』には数ページ協力させていただきました。

教育現場におけるiPad活用法をまとめた

一方僕は学校のポスターセッションンにおいて、動画を見せるためにiPadを学校で初めて活用しました。学校のスタンスとしては「スマートデバイスは百害あって一利なし」だというような先生方なので、あえて許可を取らず本番で突然使ってしまいました。

新しい風を吹かせたかったんです。実際に見ていただいてわかるように、生徒や先生が皆興味を示してくれたんです。

そして1週間後には、英語科に1台iPadが入りました。

英語の先生が授業に使おうと思って購入されたんです。が、残念ながら効果的な活用方法がわかりませんでした。

そして教育現場での活用ガイドのようなものがまだなかったので、僕は次のゼミで、教育現場でiPadを活用されている先生方をインタビューして回り、登場したばかりのiBooks Authorでまとめて公開しました。

そうしたところ、こんなにたくさんの方々が読んでくださったんです。そしてこの時から交流させていただいてる先生方は、日本の教育のICT化を先頭に立って引っ張っていらっしゃる先生方です。

中にはこのようにデジタル教科書学会という学会を立ち上げた方や、公立高校で1人1台のiPad導入に加え、更にはApple TVやiTunes Uを活用することで、授業を休んだ生徒も授業を受けられるような工夫をしている方もいます。

更に、今日もそこに来ていただいていますが『iPad教育活用7つの秘訣』という書籍をまとめられた先生もいます。

僕もこういうふうに協力させていただきました。

どんなに素晴らしいアイデアでも、伝わらなければ価値がない

僕はこのスケルトン模型を手にしてから1年半、自分が得たものを自分の中で消化して、何らかの形で発信することが楽しくて仕方ありません。

僕たちが日ごろからICTを使って発信することはもちろんですが、リアルに繋がることで自分たちのアイデア、そして更に熱意、パッションをシェアし、そしてそれが世界を変えていく第1歩になると僕は思っています。

リアルに繋がるというのは今日の皆さんのように空間を共有するということです。それではこれからの中高生、デジタルネイティブに必要な3つの力をご紹介します。

1つ目は常に最先端のものを視野に入れておくことです。

僕たちデジタルネイティブはSNSやインターネットで、常に最先端のものに触れられるチャンスが誰にでもあります。社会が向いてる新しい方向を常に知っている必要があります。

2つ目はその分野のプロフェッショナルな人たちとリアルに繋がることです。

僕たちはICTを使っていろいろな現場の人たちと繋がれるようになりましたが、実際に会って話をしないと信頼関係は生まれません。僕の今回の経験でわかったように、世の中には中高生に手を貸してくれる大人が本当にたくさんいます。だから是非リアルに繋がりましょう。

そして3つ目です。3つ目は自分の得たものを広く伝えることです。

どんなに素晴らしいアイデアがあったとしても、それを人に伝えてわかってもらえなければ、そこに価値なんかありません。

僕が最初にCGの研究発表をした時に、あのような酷評をされたのも、僕に伝える力が足りなかったからだと考えています。そして内に秘めているアイデアでは人々に影響を与えません。人に伝えることでアイデアはより深まるのです。

可能だと定義すれば、世界を変えることができる

僕のこの1年半の行動はこれほどの人の輪を生み、その想いと体験をまとめたスピーチは内閣総理大臣賞というかたちで国が認めてくださいました。

社会は僕たち若者が行動を起こすことに期待しています。

実は僕、明日も卒業試験なのですが、今日このイベントにTefuさんに誘われて、こんなチャンスは逃せないと思って来てしまいました。今日ここに来たことが皆さんにとっても僕にとっても、新たな行動の第一歩なんです。

「We can change the world, if we define it’s possible」

私たちがそれを可能だと定義した場合、世界を変えることができるんです。

ですからここにいる私たち、そして皆さんと一緒に最先端を見据え、リアルに繋がり、アイデアを伝えることで一緒に世界を変えていきましょう。ありがとうございました。

制作協力:VoXT