女子高生を商品化した「JKビジネス」の自体

仁藤夢乃氏(以下、仁藤):みなさんこんにちは。仁藤夢乃です。今ちょっと喉を痛めておりまして、お聞き苦しいところもあるかもしれませんが、今日はよろしくお願いいたします。私は孤立・困窮状態にある10代の少女を支える活動を行っています。

具体的には、夜の街の巡回や、終電前に家に帰らずにいる少女への声掛けや、十分に食事を摂ることができていない少女や、ネグレクトをされて育った少女への食事提供、売春や人身取引などの性暴力の被害に遭った少女たちによる自助グループの運営や、女の子たちを取り巻く実態を伝える活動、夜の街のスタディツアーなんかも開催しています。

東京を中心に活動を行っているのですが、相談は全国から寄せられていて、北海道から沖縄までの少女たちと出会って関わっています。

(記者の)みなさんのお手元に報告書をお渡しさせていただきましたが、去年は1年間で84名の少女と出会い、人身取引や性搾取の被害に遭った少女からの相談が多くありました。

JKビジネスに関わる少女が58名、個人売春をしている少女23名、斡旋者の下で管理買春をさせられている少女17名と出会いました。中には知的障害や発達障害の少女が狙われて搾取されているというケースもありました。そういう少女たちが自傷行為や自殺未遂を行うというケースも後を絶たず、関わっています。

今日は、いま日本で深刻な問題となっている「JKビジネス」についてお伝えします。「JK」は女子高生(Joshi-Kosei)の略で、JKビジネスとは女子高生の若さや未熟さ、性を売りにした商売のことです。

具体的には、個室マッサージ店として営業し少女に性的なサービスをさせる「JKリフレ」や、無店舗型で少女が客と自由にお散歩する「JKお散歩」などが存在しています。

今でも秋葉原ではこのような光景が見られます。青い星が男性で、ピンクの星が女の子です。男の人がいっぱい通っている通りに女の子が立って客引きをしています。この右端の2人は何やら交渉している様子があります。

東京だけで毎年5000人以上の少女が従事

夜になるとこのような光景が見られます。2メートル間隔で女の子たちは立って客引きをしています。「お散歩に行きませんか?」「ご飯食べませんか?」と声をかけています。

ここで働く少女とは80名以上と関わっていますが、その全ての少女が客引き中にお客さんから買春や性交渉を持ちかけられたと話しています。

警視庁の発表によると、JKビジネスは2013年に東京だけで200店舗が存在しました。1年間に101人の少女が保護や補導、逮捕されています。私は東京だけで毎年5000人以上の少女がこうした仕事に従事していると推計しています。

これについてはアメリカの国務省が2014年に発表した人身取引の報告書でも指摘されています。日本では家出した少女が買春の被害を受けていることや、JKお散歩が児童買春の温床になっていることが指摘されています。

しかし日本政府はこれらに対する取り組みをほとんど行っていないのが現状です。このことについては、詳しくは『女子高生の裏社会』という本にも書いています。

JKビジネスには様々な業態があります。女子高生を撮影するものや、最近では少女が折り紙で鶴を折る様子をマジックミラー越しに見学して下着を観察する「JK折り鶴作業所」というお店の摘発がニュースになりましたが、他にも少女による占いだったり、少女によるカウンセリング、少女との会話を売りにした「JKコミュニケーション」や、ゲームができるプレイルームなど、風営法に引っかからないようなグレーゾーンで営業をして、摘発とのいたちごっこで存在しています。

これらは組織的に少女を巧みに勧誘しています。求人情報サイトや、Twitter・LINEなどのSNSに求人を掲載したり、街でスカウト行為をしています。

「観光案内のアルバイト」という説明を見て面接に行ったら「男性とデートをする仕事だ」と言われ、学生証のコピーを取られてしまったのでそのまま働くと、カラオケや漫画喫茶で客から性行為を強要されたと泣きながら話す少女や、街でスカウトを名乗る人物に声をかけられて仕事を紹介すると言われたり、大手芸能プロダクションが運営するカフェやスタジオがあると騙し、ポルノ動画を撮影される被害もあります。

高校生だけではなくて小中学生が被害に遭うこともあるんですが、こうした声掛けへの危険については教育をされていません。一方でスカウト側は、少女たちに馴染みあるツールに入り込んでいって、少女を誘い込んでいます。そのため特別な事情を抱える少女以外にも入ってきています。

性奴隷のように働かされ、人間以下の扱いを受けた少女もいる

私は少女たちへの取材や話を聞く中で、ここで働く少女たちは3つの層に分けられると考えています。

「1.貧困層」「2.不安定層」「3.生活安定層」です。特に3に注目すると、両親との仲も良く、学校での成績も良く、将来の夢もあって受験も控えているような普通の女子高生がリフレやお散歩に入り込んでいっています。

どれも3分の1ずつぐらいそういった女の子たちが入っています。

そうした少女たちは、LINEやカカオトーク、TwitterやTwicasなどのアプリ、あとは「斉藤さん」という知らない人とテレビ電話がつながるアプリだったりとか、ブログやゲームのメッセージ機能などで情報を得たり、仕事に誘われたりしています。

業者はかわいいホームページを作っています。例えば「もえなび」というサイトがあるんですけど、そのサイトの中にはJKビジネスの求人が東京だけでも数百店舗掲載されていて、このサイトを経由して店にアクセスし被害に遭った少女に多数出会っています。

こうしたビジネスが困難を抱えていない少女にまで拡大していくと、特にこの1の貧困層の少女だったり、見た目やコミュニケーションや知能に困難のある少女はJKビジネスでも働けず、売春宿に囲われたり、より痛い、汚い、臭いところで性奴隷のように働かされ、人間以下の扱いを受けた少女とも出会っています。

孤立・困窮した少女たちが商品化されている

この問題について語る時に「需要と供給があるからなくならない」という人が多くいます。私もそう思っているんですが「需要」と「供給」はどこにあるのかということをみなさんに考えていただきたいです。

この写真を見ると、一見、少女が自ら男性を誘っているように見えますが、実際には少女の裏には、彼女たちを管理する大人がいます。

需要と供給というのは「売りたい大人」と「買いたい大人」の間で成り立つものですが、そこに未熟な女子高生たち、特に孤立・困窮した少女たちが商品化されているのが現状です。

日本では少女の売春について自己責任論や貞操観の問題として語られることが多くあります。でも実際には切迫した問題を背景に抱えている子も多く、家族からの性的虐待やネグレクト、貧困や精神的不安などを抱えている少女が3分の2ほど存在しています。

経済的に困窮し、給食費や修学旅行費を支払うために売春に足を踏み入れたと話す中学生とも出会っています。しかしそうした少女たちが警察や児童相談所などで「保護未満」として処理されてしまっている現状があります。

児童相談所では中高生が虐待の被害に遭っていても、売春や家出などの問題行動がある少女はまず警察へ行ってくださいとか、精神的に不安を抱えているなら病院へ、などとたらい回しにされることがあって、十分な調査もなく家に帰されている女の子たちも多くいます。

私は中学や高校の授業でお話しすることもあるんですけれども、そういう時に中学や高校の学校長の先生たちとお話をすると、校長先生が虐待の通告をしても動かないという話も聞きます。

保護所内で子どもに虐待が行われるケースも

また、子どもを保護するはずの児童相談所が、一時保護所内で子どもを管理・矯正し、虐待している実態もあります。今日はこれについては詳しくお話ししませんが、先日日本テレビの『news every.』という番組が特集を組みました。

少女たちにとって保護は恐れるべきものとなっている場合もあります。夜の街で店の女の子に声をかけた時、第一声に「保護じゃないよね?」って怯えた表情で言われることも少なくありません。

児童相談所にはいろいろ問題点はあるんですけども、職員は専門職ではないので、青少年や虐待についての知識がないスタッフも多く、問題です。また開所時間は朝8時半から夜5時までのところが多く少女たちの実態と合っていません。

日中は学校などで外出しているので、少女たちの安全が守られていることも多いんですが、虐待などで危険を感じる夜間に彼女たちが自ら駆け込める相談窓口というのが不足しています。

少女が児童相談所や警察に被害を訴える際に、少女自身が詳細に整然と、大人が理解できるように被害を訴えることができなければ、話すら聞いてもらえないということが多くあります。

私たちはそのような機会の同行支援を行っていますが、背景に目を向けて、生活状況を改善するという観点に関わってもらえるかどうかは、それぞれの機関で出会った職員の質によるというような現状になっています。

一方でJKビジネスの経営者たちは、少女たちに支援よりも先につながって、彼女らに必要な衣食住や関係性を与えるような形で近づいています。

帰るところがないなら家を紹介する、お腹が空いているなら食事を提供、時には悩みの相談に乗ったり、地方まで片道のチケットを送って少女を呼び寄せることもあります。さらに、少女たちを担い手としてとらえ、役割ややりがい、仕事を与えて利用するというやり方をしています。

受験に向けた学習支援や、買い物帰りに休憩できる居場所を提供している店もあります。困っている少女に対し、必要なものを具体的に与え、そこから取り込んでいくというやり方があります。

「ケア付きの補導」の必要性を訴えたい

JKビジネスに関して、警察や行政はチラシ配りを禁止する条例や、高校生がJKリフレなどで働くことを禁止する条例を作り、違反した少女を補導して取り締まるというやり方をしています。

児童買春に関しては、警察はネットを通して売春を持ちかける少女に客のふりをして近づき、おとり捜査で補導する「サイバー補導」に力を入れています。これは一定の効果はありますが、補導した少女のケアにつながる背景への介入などは行われていません。

私は支援につながれずに危険に行き着いた少女を発見し、補導した後ケアにつなぐ「ケア付きの補導」の必要性を訴えたいです。

また、少女の補導では需要と供給を絶つことにはつながりません。お店の摘発や、少女に買春を持ちかける男性こそ補導し、家族や職場に連絡するなどの対策立てるべきだと考えていますが、JKビジネスでは少女を買う側への対処は行われていません。

愛知県では全国で唯一JKビジネスの全面禁止条例を作りましたが、雇い主への罰則しか設けていません。

もちろんこうした人身取引は許せませんが、JKビジネスを取り締まるだけでは少女たちの置かれた状況は変わりません。JKビジネスの店舗数を越えるほどの支援の充実や、JKビジネスのスカウトを越えるほどの伴走支援者が求められています。

「保護未満」とされる少女たちの受け皿もなければなりません。また日本では子どもの性の商品化に寛容な社会ができてしまっています。児童ポルノも容認され野放しになっていて、こうした現状や認識を変えていかなければ少女たちの置かれた状況も変わらないと思っています。

私も10年前、街をさまよう生活を送っていました。家庭が荒れ、高校を中退し、お金がないときにはビルの屋上で寝たこともあります。JKビジネスに近い業者に勧誘され働いたこともありますが、そのお店の店長が児童買春の斡旋をしていて、多くの友人たちが傷つくのを見てきました。

今、この問題はさらに深刻化して、一般化して表面化しています。しかし、日本にはこの現状をエンターテイメントとして取り上げるメディアやバラエティ番組も多数存在しています。今日ご参加の皆さんが問題を真摯に受け止め、報道してくださることを願っています。

私たちは、すべての少女が衣食住と関係性を持ち、困難を抱える少女が暴力を受けたり、搾取に行き着かなくてよい社会を目指して活動しています。

現在、こうした少女たちが夜間に駆け込める一時シェルターの開設を計画して寄付を集めています。この活動を今後も応援していただけたら幸いです。

ありがとうございました。